鬼畜
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「そうじゃない。でもこれ以上主人に嘘を吐いて、裏切っている事が辛いの」
妻は私が何か感付いたと知り、彼との関係を清算しようと思ったのでしょう。
「俺より旦那の方が好きなんだ」
「困らせないで。主人と彰君に対する想いは違うの。私には子供だっているし」
「駄目だ。何を言われても俺は別れない。例え嫌いになったと言われても」
「違うわ。私は彰君が好き。でも主人とは別れられないの。このままだと2人共不幸になる」
妻の言葉は、彼の方が好きでも子供の為に家庭をとると聞こえます。
これ以上は聞いていられず席を立つと、2人のテーブルの前に立ちました。
「あなた!」
「えっ・・・・・・」
「裕子、心配し無くても俺から別れてやる。子供達の事も、俺が育てるから心配するな。おい、清水とか言ったな、俺の家庭を壊した責任は重いぞ。一生纏わり付いて、お前を必ず潰してやる」
そう言い残して車に乗ると、涙を流しながら止めようとする妻を振り切って家に帰りましたが、彼には負け犬の遠吠えに聞こえたかも知れません。
「哲也さん、どうしました?こんなに早く」
母の問い掛けにも答えずに寝室に行くと、彼に車で送ってもらったのか、すぐに妻が入って来ました。
「あなた、ごめんなさい。許して下さい」
妻は泣きながら土下座しましたが、許せるはずが有りません。
「許す?許せる訳が無いだろ。今有る通帳と印鑑、キャッシュカードを全て出せ」
「許して下さい。お願いですから、話を聞いて」
「まずは俺の言った事を先にしろ」
私は妻が出してきた物全てをポケットに入れました。
「これは財産分与として俺が貰っていく。お前のような女の家族に、今まで散々金を使ってきたから、文句は無いな?
それと子供達はアパートが見付かり次第迎えに来る。お前のような淫乱な女に育てられては、子供達もまともには育たない。
それと慰謝料は1千万。おまえの得意なセックスで稼げる、風俗にでも勤めれば軽く払える額だ。
不服が有るなら裁判をする。じゃあ」
「待って。話だけでも聞いて」
その時、心配で立ち聞きしていたのか、母が血相を変えて飛び込んできました。
「哲也さん、待って。いったい何が有ったの」
「裕子と相手の男に聞いて下さい」
「相手の男?裕子!あなた、まさか」
妻は一層激しく泣き出し、母は何も言えずに立ち尽くしていました。
私はこのまま家を出てホテルにでも泊まろうと思いましたが、母が私の足にしがみ付いて放しません。
「哲也さん、ごめんなさい。私からも謝りますから、裕子の話を聞いてやって。お願い。お願い」
母を足蹴にするわけにもいかずに その場に座りましたが、妻は泣いていて何も話せません。
「裕子!泣いていないで、何か言いなさい」
「あなた、ごめんなさい。でも彼とは身体の関係は無いの。確かにあなたに嘘を吐いて2人で会っていました。でも私はあなたが好き。彼とは恋愛ゴッコをしてしまったの」
「恋愛ゴッコ?でも確かに彰君が好きと言っていたよな?」
「彼は真面目だから、逆にそうでも言わなければ何をされるか分からない」
「さすが30歳を過ぎて大学に合格した秀才。言い分けまで考えて有ったのか?それなら先週の旅行は、誰と行ったのか言ってみろ。全て聞いたぞ」
「それは・・・・・・・」
「2人だけで旅行に行って、身体の関係はないなんて、よく言えるものだ。それを俺に信じろと言うのか?30歳を過ぎた女と、20歳を過ぎた男が一夜を共にして、何も無かったと言うのか?」
「でも本当に身体の関係は無いの。それだけは信じて。お願い、信じて」
「俺が若い女と旅行に行ったら、裕子は信じられるか?」
「信じられないかも知れない。でも本当に何も無かったの。お願い、信じて」
「それなら、どうして旅行など行った?」
「別れる為に・・・・・・」
「別れる為に旅行に行った?意味が分からん。奴との事を、最初から詳しく話してみろ」
--------------------
入学して1ヶ月もすると皆それぞれ友人が出来て、何人かで連れ立って昼食をとる様になりました。
しかし、妻は それを羨ましく思っても、歳が違う事もあって、すぐには皆に溶け込めずに、いつもベンチで一人パンを齧っていたそうです。
彼もまた大人しい性格で友達が出来ずに、妻同様一人でポツンと昼食をとっていましたが、友達がいない同士、いつしか一緒に学食や近くファーストフードで食事するように成りました。
その後、徐々に2人は皆に溶け込んで お互いに友達も出来たのですが、仲間と食事に行ったりする時は、自然と隣の席に座り、講義の空いた時間や学校が終ってから、2人で喫茶店に行ったりする仲になっていきます。
服装や化粧が派手に成っていったのは この頃からで、おそらく妻は彼に気に入られようと必死だったのでしょう。
大学では、次第に恋人同士になる者も少なくなく、妻は、その様なカップルを見ていると正に青春だと思えて羨ましく、彼を好きとか嫌いとかではなくて、一緒にいると自分にも青春が戻って来た様に感じたと言います。
彼との仲がより親密に成ったのは、彼の車から妻が降りてくるのを、私が目撃した日からでした。
その時、彼は急に車を止め、妻に好きだと告白したのです。
若い男から好きだと言われて妻も悪い気がするはずも無く、その後はお互いを名前で呼び合い、学校以外では腕を組んで歩いたりもしました。
「ごめんなさい。若い子に好きだと言われて、有頂天になっていました。あなたの事も考えずに、恋愛ゴッコを続けてしまいました」
「恋愛ゴッコで、旅行まで行くのか?」
最初、何も考えずに その様な仲を楽しんでいた妻も、次第に罪悪感が大きくなって、この様な関係はやめようと言ったそうです。
「私には夫や子供がいるのを知っているので、彼も当然遊びだろうと思っていたら、
今まで女の人と付き合った事の無い彼は、私の事を真剣に想っていて、隠しているのが辛くて別れると言うなら、あなたに私と別れてくれと頼みに行くと言いました。
あなたから私を奪いたいと言いました。
この様な事をしていたと、あなたに知られたくなかった私は、どうにか説得したのですが、その条件が、最後の思い出作りに旅行に行く事でした」
それと慰謝料は1千万。おまえの得意なセックスで稼げる、風俗にでも勤めれば軽く払える額だ。
不服が有るなら裁判をする。じゃあ」
「待って。話だけでも聞いて」
その時、心配で立ち聞きしていたのか、母が血相を変えて飛び込んできました。
「哲也さん、待って。いったい何が有ったの」
「裕子と相手の男に聞いて下さい」
「相手の男?裕子!あなた、まさか」
妻は一層激しく泣き出し、母は何も言えずに立ち尽くしていました。
私はこのまま家を出てホテルにでも泊まろうと思いましたが、母が私の足にしがみ付いて放しません。
「哲也さん、ごめんなさい。私からも謝りますから、裕子の話を聞いてやって。お願い。お願い」
母を足蹴にするわけにもいかずに その場に座りましたが、妻は泣いていて何も話せません。
「裕子!泣いていないで、何か言いなさい」
「あなた、ごめんなさい。でも彼とは身体の関係は無いの。確かにあなたに嘘を吐いて2人で会っていました。でも私はあなたが好き。彼とは恋愛ゴッコをしてしまったの」
「恋愛ゴッコ?でも確かに彰君が好きと言っていたよな?」
「彼は真面目だから、逆にそうでも言わなければ何をされるか分からない」
「さすが30歳を過ぎて大学に合格した秀才。言い分けまで考えて有ったのか?それなら先週の旅行は、誰と行ったのか言ってみろ。全て聞いたぞ」
「それは・・・・・・・」
「2人だけで旅行に行って、身体の関係はないなんて、よく言えるものだ。それを俺に信じろと言うのか?30歳を過ぎた女と、20歳を過ぎた男が一夜を共にして、何も無かったと言うのか?」
「でも本当に身体の関係は無いの。それだけは信じて。お願い、信じて」
「俺が若い女と旅行に行ったら、裕子は信じられるか?」
「信じられないかも知れない。でも本当に何も無かったの。お願い、信じて」
「それなら、どうして旅行など行った?」
「別れる為に・・・・・・」
「別れる為に旅行に行った?意味が分からん。奴との事を、最初から詳しく話してみろ」
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入学して1ヶ月もすると皆それぞれ友人が出来て、何人かで連れ立って昼食をとる様になりました。
しかし、妻は それを羨ましく思っても、歳が違う事もあって、すぐには皆に溶け込めずに、いつもベンチで一人パンを齧っていたそうです。
彼もまた大人しい性格で友達が出来ずに、妻同様一人でポツンと昼食をとっていましたが、友達がいない同士、いつしか一緒に学食や近くファーストフードで食事するように成りました。
その後、徐々に2人は皆に溶け込んで お互いに友達も出来たのですが、仲間と食事に行ったりする時は、自然と隣の席に座り、講義の空いた時間や学校が終ってから、2人で喫茶店に行ったりする仲になっていきます。
服装や化粧が派手に成っていったのは この頃からで、おそらく妻は彼に気に入られようと必死だったのでしょう。
大学では、次第に恋人同士になる者も少なくなく、妻は、その様なカップルを見ていると正に青春だと思えて羨ましく、彼を好きとか嫌いとかではなくて、一緒にいると自分にも青春が戻って来た様に感じたと言います。
彼との仲がより親密に成ったのは、彼の車から妻が降りてくるのを、私が目撃した日からでした。
その時、彼は急に車を止め、妻に好きだと告白したのです。
若い男から好きだと言われて妻も悪い気がするはずも無く、その後はお互いを名前で呼び合い、学校以外では腕を組んで歩いたりもしました。
「ごめんなさい。若い子に好きだと言われて、有頂天になっていました。あなたの事も考えずに、恋愛ゴッコを続けてしまいました」
「恋愛ゴッコで、旅行まで行くのか?」
最初、何も考えずに その様な仲を楽しんでいた妻も、次第に罪悪感が大きくなって、この様な関係はやめようと言ったそうです。
「私には夫や子供がいるのを知っているので、彼も当然遊びだろうと思っていたら、
今まで女の人と付き合った事の無い彼は、私の事を真剣に想っていて、隠しているのが辛くて別れると言うなら、あなたに私と別れてくれと頼みに行くと言いました。
あなたから私を奪いたいと言いました。
この様な事をしていたと、あなたに知られたくなかった私は、どうにか説得したのですが、その条件が、最後の思い出作りに旅行に行く事でした」
「ほーう。でも奴らの話だと、その後も別れた様子は無かったよな?」
「彼はそれでも諦めてくれなかったので・・・・・・・・・」
妻は手を繋いだ事は有っても、身体の関係どころかキスもしていないと言い張り、私も喫茶店での彼の言葉を思い出すと、小さい声ながら、確かに友達の言っている事を否定していました。
「哲也さん。もう一度裕子にチャンスをあげて。もし裕子の言っている事が嘘だと分かった時は、哲也さんが出て行かなくても親子の縁を切って、裕子に出て行ってもらいます」
「お母さん。仮に身体の関係が無いとしても、俺を裏切った事に変わりは無いのです」
そう言いながらも母の言葉で少し冷静になると、もう一度妻を信じたい私がいます。
「分かっています。それは これから一生掛かっても償わせます。だからお願い。子供達の為にも、もう一度だけ」
母の言う通り 子供達の事を考えれば、勢いだけで軽率な行動も取れません。
「裕子、嘘は無いな?今の話に少しでも嘘が有れば、俺達は本当に終わりだぞ」
「ありがとう。一生掛かっても償わせて下さい。ありがとう。ありがとう」
私は暫らく様子を見ようと思いましたが、全て信じて許した訳では有りません。
妻に限って、そこまではやっていないと信じたいのですが、例え身体の関係が無かったとしても 妻の言った『彰君が好き』と言う言葉が、頭の中から消えないのです。
身体でも、妻の愛を確かめたいのですが、完全に信用する事など出来ない私は、2人が裸で絡み合っている姿ばかりが浮かび、とても抱く気には成れません。
「今日は学校に行かないのか?」
「行ってもいいのですか?」
当然、大学は辞めさせる気でいたのですが、このまま彼との接点が無くなっては、一生、妻の真意が闇の中に葬り去られる気がして、妻の本当の気持ちを探りたくて続けさせる事にしました。
(安定した家庭や子供達を捨てる事が出来ないだけで、本当は彼を愛してしまったと確認出来れば、俺は満足なのだろうか?)
妻と彼が顔を合わす事は最も嫌なはずなのに、私は壊れ始めていたのでしょう。
「奴とは一切言葉を交わすな。メールも駄目だ」
「・・・・・はい」
仕事中も、2人がラブホで抱き合っている姿が浮かび、早く帰って妻に今日1日の事を聞きたくて仕方が有りません。
「一言も言葉は交わしていないだろうな?携帯を見せてみろ」
携帯には、妖しい物は有りません。妖しい物が無いと言うよりは全て削除されていて、彼とのメールは何も残っていないのです。
「奴との今までのやり取りは、その都度消していたのか。この調子だと、今日のも消したかも知れないな」
「ごめんなさい。今日メールは来ませんでした。勿論私からもしていませんし、話もしていません」
「でも、奴の電話番号とメールアドレスは消せないようだな」
「それはゼミの連絡用に・・・・。彼だけで無く、ゼミの仲間は全て入っています」
そのことが面白くない私は、そのまま妻の携帯から彼に電話を掻けました。
「裕子か?旦那とはどうなった?」
「裕子?何を言っている!今からすぐに来い。慰謝料の話をしたい」
「あなたやめて!もう彼には関係ない。私が悪いの。私が償って行きます」
妻の彼を庇う態度で、更に私は壊れて行きます。
--------------------
彼がやって来たのは、それから2時間も経ってからで、しかも父親と母親が一緒です。
「おうおう。やる事は一人前なのに、責任を問われれば、パパとママが一緒か」
「責任はとります。裕子と一緒になって、2人で償って行きます」
その言葉で私が立ち上がろうとすると、その前に中学の教頭をしているという父親が、平手で頬を叩きました。
「まだそんな事を言っているのか!その話は出て来る前に終っただろ!」
「彰ちゃんに これ以上付き纏わないで。あなたの様な、夫も子供もいながら何人と浮気しているか分からないような女で、彰ちゃんの経歴に傷を付けられたくないの。あなたの様な女に引っ掛かった彰ちゃんが可哀想だわ」
小学校の教師をしているという母親は泣きながら、その後も妻に罵声を浴びせ続けました。
「馬鹿息子を庇う、親馬鹿の話は もう済んだか?慰謝料として500万。不服なら裁判をする。話は以上だ」
「何を馬鹿な事を。息子は何も悪い事をしていないのに、何が慰謝料だ」
「2人は旅行に行った事は認めている。あんた達は、本当に何も無かったと信じているのか?」
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