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童貞と共に人として大切な何かを亡くした話9【完結】
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503 :ED ◆WayzE/RKE2 :2011/05/31(火) 22:05:25.48 ID:WsDM33uN0
大垣「ED君がマネージャーとして頑張ってくれてるのは理解してる。でも、そのせいで監督としての仕事に影響出てるでしょ」

確かに、この頃の俺は完全にキャパオーバーで締め切りを守れなくなって色んな人に迷惑をかけたりもしていた。

大垣「それと高橋さんがED君とはやっていけないって言うんだ」

結衣達の面倒は見ないと高橋が宣言してから 俺と高橋の間には完全に溝が出来ていた。

俺と高橋では事務所の運営方針も隔たりがあり 元々、神経質な高橋と基本的に大雑把な俺とはソリが合わない。

更に、俺の本業はディレクターでマネージャーは素人。

なのに事務所の責任者は俺で、事務所の稼ぎがしらは俺の担当。

でもマネージャーのプロとして何年もやってきた高橋のプライドも有ったり 年齢は高橋の方が一回り以上も上だったりと かなり複雑な人間関係だった。


俺「俺を外して高橋さんが結衣たちを見るって事?」

大垣「結衣だけじゃなく、全部高橋さんが見る」


俺「事務所から完全に手を引けって事?」

大垣「うん」

俺「俺は今更、高橋さんを信用出来ない。コイツは一度結衣達を見捨てた奴だぞ!!」


俺は完全に切れて声を荒げてしまった。



504 :ED ◆WayzE/RKE2 :2011/05/31(火) 22:07:24.14 ID:WsDM33uN0
高橋「出来ますよ」

出来なかったから、俺がマネージャーやらなきゃならなくなったんだろうが!!


俺「俺が何の為に、どんな思いでマネージャーやってきたと思ってんだよ…どれだけの物を犠牲にしたと思ってんだよ…」

美貴の顔を思い出した。

俺がマネージャーなんか始めなきゃ、今も美貴は俺の隣に居たんだと思う…

美貴だけじゃなかった。

マネージャーをやる為にディレクターとしての仕事を減らし事務所の赤字を補う為に自分のギャラを差し出し…

この事務所の為に出来るだけの事はやってきたつもりだった。


大垣「マネージャーが本当にED君のやりたい事なのか?」

確かにマネージャーは自分が本当にやりたい事ではなかった。

最初は無理矢理押し付けられ、嫌々やってた仕事だった。


でも結衣や夏たちを守りたい。

事務所の人間全員が幸せになって欲しいと思うようになって気付いたら、事務所は俺自身にとっても凄く大事な物になっていた。


俺「もう決定なの?」

大垣「相談じゃない。決めた事だから…」

大垣に裏切られたと思った。



505 :ED ◆WayzE/RKE2 :2011/05/31(火) 22:09:17.51 ID:WsDM33uN0
事務所を後にした俺は結衣と話し合う事にした。


俺「大垣さんに事務所を辞めろって言われた」

結衣「なんで?嫌だよ」


俺「もう決定らしい。取りつく島も無かった」

結衣「そうなの?」


俺「俺が独立して事務所作ったらついてくるか?」

結衣「うん。でもディレクターは?」


俺「そしたらマネージャーに専念しないと無理だな…」

結衣「そっか…でも一緒に居られるならマネージャーじゃなくても良いよ」


俺「それじゃ意味無い…何とかするからさ…」

結衣「分かった…」

クリスマスまで、もう一週間を切っていた。



506 :ED ◆WayzE/RKE2 :2011/05/31(火) 22:10:51.44 ID:WsDM33uN0
大垣からはマネージャーとしての仕事はするなと言われていたが 俺は無視して、以前と変わらずに仕事をしていた。

23日クリスマスイヴの前日。

イヴは結衣がクリスマスイベントに出る事になっていた。

この日は、翌日のイベント用の衣装の準備と打ち合わせの為に結衣と合流。

この前の一件以来、結衣は心なしか元気が無い…


俺「どうした?体調悪いか?」

結衣「別に…大丈夫…」

俺「そっか…」


イベントは何組かのアイドルが集まって、ファンの前で歌やトークをする。

結衣は歌手志望ではないので、持ち歌とかがある訳じゃない。

なので、クリスマスに因んだ曲を何曲か歌う事になっていた。

結衣は過去にボイストレーニングを受けていた事もあって意外と歌が上手い。

歌にも自信があるし、何より大好きなファンと触れ合えるイベントを結衣は心待ちにしていた。


俺「衣装どうすんの?」

結衣「あんまりベタなクリスマスの格好したくないから、普通の可愛いワンピースにしたい」


俺「それじゃつまらなくない?」

結衣「だから小さい天使の羽付けたい」

俺「分かった」



507 :ED ◆WayzE/RKE2 :2011/05/31(火) 22:12:26.79 ID:WsDM33uN0
とりあえず天使の羽を探しに行く事に…

まずはLOFTやハンズのコスプレコーナーを見て回る。

結衣「なんかどれも安っぽい…」

確かに売ってるのは、プラスチックやゴム製のチープなのばかり。


結衣「これは嫌。他も見る」

姫の仰せのままに…

都内の雑貨屋やおもちゃ屋、手芸屋なんかを片っ端から探して回る。

何軒か回って見つけた本物の羽毛で出来た翼。

サイズも丁度良い。

ただ問題はコスプレ用ではないので、そのままじゃ付けられない。


結衣「どうやって付けようか…」

俺「衣装に直接縫い付けるかね」


結衣「私、裁縫出来ないんだよね…」

俺「はいはい…姫の仰せのままに…」


ウチは子供の頃、母親が家を出て行ってから家の中で裁縫や料理は俺の仕事だった。

弟の雑巾や体操着袋とかを作っていたりしたので簡単な服位なら作れる程度には裁縫が出来る。



508 :ED ◆WayzE/RKE2 :2011/05/31(火) 22:14:13.19 ID:WsDM33uN0
とりあえず結衣の注文通りに翼を衣装に付ける。

横ではセットリストと言って、結衣が翌日の曲順や、トーク内容などの進行を考えているが あまり集中して出来ていない。

結衣「今日はもう帰っちゃダメ?」


まあ結衣のワガママは何時もの事だが 仕事に対しては、常に全力な結衣が仕事の事でワガママを言うのは珍しい。


俺「とりあえず仮縫い終わるまで待てよ。お前が帰ったら微調整出来ないだろ…」

結衣「えー」


俺「それよりセットリスト決まったのか?」

結衣「まだ…」


俺「何やってんだよ…間に合わなくても知らないぞ」

結衣「体調悪い…気持ち悪い…」


流石に俺も少しイライラしだす。


俺「分かったよ。じゃあ今日は帰れよ」

結衣「ゴメンね」

俺「その代わり必ず今晩中にセットリスト作れよ」

結衣「分かった」

結衣を自宅まで送り届けた後、俺は帰って衣装作りを続けた。

気付けば、日付けはすでにイヴになっていた…



>>次のページへ続く
 
カテゴリー:読み物  |  タグ:青春, 結婚,
 


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