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俺と犬と女の子の話

 

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1 :名も無き被検体774号+:2012/03/22(木) 19:53:53.47 ID:mav3knV20
普通の人はあまり知らないような世界の話を少しだけしてみようと思う



5 :名も無き被検体774号+:2012/03/22(木) 19:59:18.89 ID:mav3knV20
最初に彼女に出会ったのは今から10年くらい前の春頃だった

主な登場人物は

俺:>>1
当時18歳
大学入る直前
団体行動苦手な老け顔

彼女:恵(仮名)
当時23歳
家事手伝い
ちょっと天然っぽい童顔

犬:ライリック(仮名)
ボーダーコリー
当時1歳半くらい



6 :名も無き被検体774号+:2012/03/22(木) 20:04:03.33 ID:mav3knV20
当時俺は大学合格が決まったばかりの18歳だった。

たぶん多くの人が縁もゆかりもない世界だろうけど、高校時代から犬のトレーニングをしていた。

最初にはまったのはアジリティーと呼ばれる、馬術の障害馬場を基にしたものだった。

中学時代に飼いだしたラブラドールとやっていたけど、運動性能の高い犬が欲しくて高校2年の時にボーダーコリーを飼いだした。

ちなみにアジリティーってのは↓みたいなやつ。
ttp://www.youtube.com/watch?v=jtJ7OBou7iQ



7 :名も無き被検体774号+:2012/03/22(木) 20:09:58.57 ID:mav3knV20
ただ、これはいまだに日本人の中では賛否両論らしいけど、俺個人の意見としては基礎訓練があってのアジリティーだと思っていた。

そんなわけでライリックを飼った際に、たまたま高校の傍に有名な訓練士がいたのでそこのスクールに通うことにした。

基礎訓練をして、それができたらアジリティーをやろうと思っていた。

でもこの先生は完全に訓練一本の先生だった。少し分野は違うけど、ある世界大会で優勝したほどの実績を持つ有名な人でもあった。

そんな先生の下で色々教わって半年くらい経った高校3年の秋、所属団体主催の訓練競技会と言うのに出ることになった。

当時はまだアジリティーがやりたくて仕方なかったので、隣でやっていたアジリティーにくぎ付けだった。

それでも時間も圧してきて「じゃあそろそろ出します」という感じで望んだ本番。

それなりに犬の動きが良いのは分かっていたけど、この時に練習では無かったような動きを見せてくれた。

が、残念ながら7種目目で大きなミスをしてしまった。

後で聞くと審査員すら天を見上げたという失敗で100点中94.7。

講評でも「あれが無ければトップやったろうけど、今後に期待して大きく減点させてもらった」と言われた。


8 :名も無き被検体774号+:2012/03/22(木) 20:12:36.32 ID:mav3knV20
その瞬間に俺の心はアジリティーを離れて基礎訓練へ移った。

そんなこんなで大学受験も終えた18の春、最初に取りかかったのは基礎訓練だった。

あの日以来、それまで通過点としか思っていなかった訓練がたまらなく面白くなっていた。

そんな俺が練習をしていたのが、家から5分ほどの広場と、家から40分くらいのところにある河川敷だった。

その日も少し遠出をして河川敷で練習をしていた。



9 :名も無き被検体774号+:2012/03/22(木) 20:16:40.10 ID:mav3knV20
俺がやってた訓練は、簡単に言えばしつけの延長だった。

一緒に歩くとか、呼んだら来るとか、指示で座らせるとかそういった類。派手さは無いし、見てて面白い物でもないと思う。

一方でアジリティーは大掛かりな道具があったり、飛んだりくぐったりと見栄えも良かった。

だからいまだに年々アジリティー人口というのは増えてるらしい。

基礎訓練の方は安定してるものの、人口的にはあまり変わってないみたいだけど。練習をするにあたっては、基礎訓練は道具がほとんどいらないと言うのが幸いした。

アジリティーのように道具が必要になると、どうしてもどこかのクラブに所属したりする必要がある。それは高校時代に所属していたクラブの人間関係に嫌気が差していた俺には辛かった。

基礎訓練は誰とも会わず、自分のペースで練習ができる。これがこの世界にはまった大きな理由だったのかもしれない。



11 :名も無き被検体774号+:2012/03/22(木) 20:21:07.33 ID:mav3knV20
その日、いつものように犬を呼び寄せるという練習をしていた。

競技会の規定では、10m離れたところにいる犬を呼び寄せて、直接左側に付ける方法と、一度前に座らせてから指示で左側につける方法が許されていた。

俺がやっていたのは後者。

一度前に付けた後も、文字では説明しにくいけど人間の後ろを通して左側に付ける方法と、直接左側につける方法があった。

ライリックは切れ味の良い犬だったので、見た目も良い後者で練習をしていた。

犬を呼んで一息ついたところで左側に付けた。

その時不意に後ろから拍手をされた。

振り返ると犬を連れた女の子が立っていた。

人見知りでもあった俺は軽く会釈だけして、そのまま残りの練習を終わらせて帰ろうとした。



10 :名も無き被検体774号+:2012/03/22(木) 20:18:51.84 ID:GrCnANOn0
みてるお



13 :名も無き被検体774号+:2012/03/22(木) 20:26:12.27 ID:mav3knV20
>>10
ありがたい

帰ろうとする俺にその子は話しかけてきた。

「(訓練士)見習いさん?」

「いえ……ただのアマチュアですけど……。」

訓練に限らず、犬の散歩をしているとそれなりに犬飼いと知りあう機会は多かった。

それでも同年代(見た目的には年下だと思っていた)は少なかった。

親世代とは割と普通に話せたけど、同年代はあまり接することも無かったので少し戸惑った。

そんな俺の事情は無視するように彼女は続けた。

「アマチュアなの?!あの招呼(犬を呼び寄せること)から脚側(犬を左側に付けること)とかめっちゃキレイやった!」

眼が輝くってこういうことを言うんだなと思った。彼女(恵)は本当に嬉しそうに話をしていた。



12 :名も無き被検体774号+:2012/03/22(木) 20:24:27.29 ID:b3AJ9Qi6O
犬好きだけど、訓練凄いな。

楽しみに読んでます。


14 :名も無き被検体774号+:2012/03/22(木) 20:29:05.35 ID:mav3knV20
>>12
ありがとう

もうだいぶ昔の話だから思い出しながら書いていきます


訓練に理解のある同年代なんてほとんどいなかったから、俺もちょっと嬉しくなってそのまましばらく立ち話をした。

あまり詳しくは覚えてないけど「初めて出た競技会で大失敗した」とか「大学受かったからまた本腰入れてやりたい」とか話したと思う。

恵はそんな俺の話を笑顔でうなずきながら聞いてくれた。

でもその日は特にそれ以上の発展も無く解散。

彼女もよく河川敷に来ていると言っていたから、いつかまた会えると良いなという程度だった。



15 :名も無き被検体774号+:2012/03/22(木) 20:32:32.74 ID:mav3knV20
次に会ったのは、俺がしばらく留守にしていたのもあって大学入学後になった。

その日久し振りに河川敷に行くと、今度は恵が犬と一緒にトレーニングをしていた。その動きは物凄い機敏でキレイだった。

自分が通う訓練所の見習い達の作業を見ている気にさせられた。

「このペアーには絶対に勝てない。」

それがその時の正直な感想だった。


やがて練習中の恵が俺に気付いて手を振ってきた。俺も釣られて手を振り返し、彼女の下へ向かった。

恵「来てるなら声かけてくれたら良かったのに。」

俺「いや、あまりにすごくて声かけられんかった。」

俺は正直な感想を伝えたつもりだった。でもこれが彼女を少し不快にさせたようだった。



16 :名も無き被検体774号+:2012/03/22(木) 20:36:58.62 ID:mav3knV20
恵「勝てないって思ったんでしょ?」

思っていることをズバリ当てられて答えに困った。

恵「私、見習い(訓練士)やってたからね。」

俺「見習いやってたんや?」

恵「やってたよ。でも、やってたから犬動かせるわけじゃないよ。」

正直頭の中は?マークが浮かんでいた。

恵「やってもダメな人はダメだし、やってなくてもできる人はできる。それに」

俺「それに?」

恵「私は信頼してるの。だから犬を動かせるの。」

信頼?何を?恵の言わんとすることがよく分からなかった。でも彼女がその答えを言うことは無かった。



18 :名も無き被検体774号+:2012/03/22(木) 20:43:32.69 ID:b3AJ9Qi6O
>>16
奥の深い世界が想像出来る。

期待させるね。



>>次のページへ続く
 
カテゴリー:読み物  |  タグ:青春,
 


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