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俺と犬と女の子の話
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17 :名も無き被検体774号+:2012/03/22(木) 20:42:28.35 ID:mav3knV20
大学に入って部活も始めたけど、相変わらず河川敷にはちょこちょこ顔を出していた。
毎回ではないけど恵と会うことも多く、いつしか恵に会うために河川敷に向かう自分がいた。
一緒に練習することも多かったけど、彼女は決して俺に対して"教える"ことはしなかった。
指摘はあっても「>>1には先生がいるから、私なんかの言うことを聞いちゃダメ」と言って何も教えてくれなかった。
それが「自分はプロを断念した人間で、私が教えてしまってはプロに申し訳ない」という気持ちから来ていることを知ったのはしばらくしてからだった。
何度か会う間に連絡先の交換をしたり、実は恵が年上であることが分かったりしたけど、それ以上は何もなかった。
多分その時点で俺は恵に惹かれていたんだと思うけど、それ以上に犬のトレーニングが好きだったのかもしれない。
19 :名も無き被検体774号+:2012/03/22(木) 20:45:08.38 ID:mav3knV20
そんな中、大学入学後初めての競技会がやってきた。
俺が所属していた団体はJKCと呼ばれるところで、今は少し違うけど当時は10競技くらいに分かれていた。
CDI:5科目
CDII:10科目
CDIIIS:15科目
CDIII:20科目
CDX:30科目
服従作業中等科:7科目
これらがアマチュアと一般に分かれていた(一部共通)。
各科目10点満点での採点だったので、俺が出ていたCDIIアマチュアの部は100点満点が最高になる。
20 :名も無き被検体774号+:2012/03/22(木) 20:49:28.41 ID:mav3knV20
久し振りの競技会だし、前回大失敗したのもあって少しだけ緊張していた。
出場前、訓練士の先生から前回と同じことを言われた。
「失敗しても良いから絶対に振り返るな。」
実際にやってみれば分かるけど、犬と一緒に歩く時はたとえリードを付けていても、付いてきているか不安になって犬の方を向いてしまう。
これはアマチュアに限らずプロでもほとんどの人がそうなるし、歩き方も不自然になりがち。
それを俺の先生は妥協しなかった。
客のアマチュアにも「絶対に振り返るな。犬を見るな」と言い続けていた。
もっとも、これをバカ正直に受け止めていたのは俺だけだったけど。
でも結果的には「振り返らない」ことが大きな強みにもなった。
大学に入って部活も始めたけど、相変わらず河川敷にはちょこちょこ顔を出していた。
毎回ではないけど恵と会うことも多く、いつしか恵に会うために河川敷に向かう自分がいた。
一緒に練習することも多かったけど、彼女は決して俺に対して"教える"ことはしなかった。
指摘はあっても「>>1には先生がいるから、私なんかの言うことを聞いちゃダメ」と言って何も教えてくれなかった。
それが「自分はプロを断念した人間で、私が教えてしまってはプロに申し訳ない」という気持ちから来ていることを知ったのはしばらくしてからだった。
何度か会う間に連絡先の交換をしたり、実は恵が年上であることが分かったりしたけど、それ以上は何もなかった。
多分その時点で俺は恵に惹かれていたんだと思うけど、それ以上に犬のトレーニングが好きだったのかもしれない。
19 :名も無き被検体774号+:2012/03/22(木) 20:45:08.38 ID:mav3knV20
そんな中、大学入学後初めての競技会がやってきた。
俺が所属していた団体はJKCと呼ばれるところで、今は少し違うけど当時は10競技くらいに分かれていた。
CDI:5科目
CDII:10科目
CDIIIS:15科目
CDIII:20科目
CDX:30科目
服従作業中等科:7科目
これらがアマチュアと一般に分かれていた(一部共通)。
各科目10点満点での採点だったので、俺が出ていたCDIIアマチュアの部は100点満点が最高になる。
20 :名も無き被検体774号+:2012/03/22(木) 20:49:28.41 ID:mav3knV20
久し振りの競技会だし、前回大失敗したのもあって少しだけ緊張していた。
出場前、訓練士の先生から前回と同じことを言われた。
「失敗しても良いから絶対に振り返るな。」
実際にやってみれば分かるけど、犬と一緒に歩く時はたとえリードを付けていても、付いてきているか不安になって犬の方を向いてしまう。
これはアマチュアに限らずプロでもほとんどの人がそうなるし、歩き方も不自然になりがち。
それを俺の先生は妥協しなかった。
客のアマチュアにも「絶対に振り返るな。犬を見るな」と言い続けていた。
もっとも、これをバカ正直に受け止めていたのは俺だけだったけど。
でも結果的には「振り返らない」ことが大きな強みにもなった。
21 :名も無き被検体774号+:2012/03/22(木) 20:52:41.38 ID:mav3knV20
この日、大きな失敗も無く確か99.5点とかだったと思う。点数が発表された時点でトップ。
たまたま動きがすごい良い兄弟犬が同じグループにいて、それが最後まで出なかったので胃が痛くなった。
最後までどうだろうかと思っていたら、そのままトップが確定した。
今は少しルールが変わっているようだけど、この大会ではグループトップ同士の決勝戦があった。
決勝戦は指定された7科目70点満点で行われる。
正直緊張とかいうレベルではなかった。
何が行われているのか分からないレベル。
決勝戦が決まった時点で恵にメールを送ると「気楽にやんなさい。」とだけ返ってきた。
22 :名も無き被検体774号+:2012/03/22(木) 20:56:29.72 ID:mav3knV20
それで少しだけ肩の荷が下りた気がする。
とりあえず今できることだけを。
それは恵との練習中、彼女がよく言っていた言葉だった。
「練習でできないことは本番でもできないのよ。だから本番では今できることだけやったら良いの。」
結果は満場一致とも言える状況での優勝だった。
先生からの「ベリーグッドや!」という言葉で少し泣きそうになった。
この時俺とライリックを囲むように、クラブの人達で撮った写真は今でも宝物です。
23 :名も無き被検体774号+:2012/03/22(木) 20:58:32.78 ID:mav3knV20
ちょっと席外します。
24 :名も無き被検体774号+:2012/03/22(木) 21:04:45.79 ID:LOevEpO7O
犬飼ってるけど全く知らない世界だわ
26 :名も無き被検体774号+:2012/03/22(木) 21:11:56.17 ID:jt0YKG1A0
(・∀・)イイ!!
28 :名も無き被検体774号+:2012/03/22(木) 21:21:50.33 ID:mav3knV20
>>24-46
ありがとう
意外と目を通してくれる人が多くて嬉しいです
夏になる頃には、事前にメールをして河川敷に行く時間を合わせるようにもなっていた。
合流しては一緒に練習して、お互いにあれがダメじゃない?これがダメじゃない?という話をしていた。
大学に行っていなかった恵は、俺の大学の話もよく聞いてくれた。
俺は獣医学科に通ってたんだけど、犬飼いにそれを言うと一線引かれるのを分かっていたから、しばらくは恵にも伝えていなかった。
でもそれを伝えた時でも「そうなんだ?」の一言で彼女は済ませた。それがまた少し嬉しくもあった。彼女とはあくまで対等でありたかった。
29 :名も無き被検体774号+:2012/03/22(木) 21:27:44.81 ID:mav3knV20
そんな中で迎えた秋、1年前に大失敗をやらかした競技会がやってきた。1年前の失敗を糧に、自分なりにできることは全てやって臨んだ。
自分の前に出ていた同じクラブの人が出した点数が99.8点。
ほとんどの競技会ならそこで順位が確定するところだった。
ところがその後、また別の同じクラブの人が99.9点をたたき出した。
「これってさすがに無理じゃね?」という空気が、逆に少し気を楽にさせてくれた。
もう前みたいに緊張することはなかった。
そして出た点数が99.9点。
JKCの競技規定では、同点の場合は1種目目の点数が高い方が上位になる(同点なら2種目目、以下同)。
結果的には俺は最初の科目が9.9点で、同じクラブの人が10点だったので決勝戦には出られなかった。
それでも1位99.9点、2位99.9点、3位99.8点で全て同じクラブと言うのはちょっとした話題になった。
余談ながらこの競技会のあと、同じクラブはなるべく別グループにするという方針になったらしい。
30 :名も無き被検体774号+:2012/03/22(木) 21:42:12.35 ID:mav3knV20
その後も競技会に出て、それなりの成績を残し続けた。
仲の良い他クラブの人からは「>>1君と同じグループになったら1位は無理やから2位を狙えって先生に言われるんよw」と言われたりもした。
連戦連勝というわけでも無かったけど、この頃には事実上その地区のアマチュアではトップクラスにいたと思う。
そうすると一度は他の地域の人ともやってみたいと思うようになってきた。
基本的に他地域の人が参加しても何の問題も無いんだけど、アジリティーみたいに全国各地を飛び回る人は少なかった。
じゃあ来ないならこっちから行ったら良いじゃんと言うことで、春と秋に東京で開催されている本部競技会を目指した。
まあ本部と言っても関東の少し大きな大会と言うだけで、他地域の人は少なかった。それでも関東のレベルを知りたいというのもあって申し込んだんだ。
31 :名も無き被検体774号+:2012/03/22(木) 21:45:40.00 ID:mav3knV20
ちょうど春の本部競技会と前後して部活を辞めたり、2年に上がって専門科目が増えたりで、犬に割ける時間は少し減っていた。
それだけが理由ではなかったんだろうし、結局は自分の力不足だったんだろうけど、春の競技会は惨敗した。
大ミスはしなかったけど、犬の動きが全くいつもとは違った。
失意の中で恵にメールを送ると「井の中の蛙にならずに済んだでしょ?また1から頑張んなさい」と返ってきた。
全く持ってその通りだった。あの時好成績を残していたら、もうそこで全て終わっていたかもしれなかった。
32 :名も無き被検体774号+:2012/03/22(木) 21:48:38.46 ID:mav3knV20
それからは「とりあえず秋を」ということで練習をしていた。恵もそれに付き合ってくれた。
そんな中、他地域の競技会に出るんだったら免許が欲しいと思って教習所に通うようになった。確か3ヶ月くらいで免許を取ったと思う。
それを恵に言ったら「じゃあ今度ドライブに連れてって」と言われた。
33 :名も無き被検体774号+:2012/03/22(木) 21:52:48.35 ID:cJd8/Z8B0
あ、パンツ脱いだ
34 :名も無き被検体774号+:2012/03/22(木) 21:56:22.27 ID:mav3knV20
愛情かどうかは別にして恵には好意もあったから快諾した。
そして翌週末、2人で割と近くの夜景スポットに行った。
その帰り道。
恵「>>1は競技会出てて嫌なこと無い?」
俺「嫌なことか……。」
無いと言えば嘘だった。当時まだ19のガキ。好き放題やっていたし、俺の言っていないことを言いまわしては俺を蔑む人がいたのも事実だった。
俺「無くは無いけど、なんで?」
恵「……私、見習いやってたって言ったでしょ?」
俺「ああ、どこかは教えてくれんかったけど。」
恵「私ね、先輩たちから虐められてたのね。」
予想外の言葉だった。
恵「その時だけじゃない。高校の時も私は嫌われてた。」
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