桜木町だろうが何処だろうが居るはずもないのだが、どうやら冬美その人が居るようだ。って言うか、奥尻逝くって有言実行してるから、当たり前といえば当たり前。
周りを見渡すと、土産物屋の店先で上下赤のFOXハケーン!
もう間違いないわ、とっくに俺の存在に気付いチラ見しているみたいだが、何故だか気付かないふりをしている様だ。
うーんどうすっかなー、こっちから行くべきか、来させるべきか・・・俺も冬美もアホかww、さっさと声掛けよっと。
バイクを停めて最短距離で冬美に近づき、挙動不審なFOX 女に声を掛けた。
俺『おう、奇遇だな、こんなとこで何してんだw』
冬美『あっれ譲二さん何でここに そういえば奥尻逝くって行ってましたね 忘れてました あたしも気が向いたんで来て見たんですけど』
俺『昨日の朝言ったこともう忘れんのかよw、まだ芋焼酎残ってんのか?www、それに なんで一息に喋ってんだよwww』
冬美『あたし、べ、別に譲二さんが居るからって来たわけじゃないですYO!』
うっはwwwツンデレktkrwww
俺『まー何でもいーよ、今からキャンプ場探すのマンドクサだべ、俺がテント張ってる場所案内するから付いて来いよ』
冬美『わたしまだキャンプするって決めたわけじゃないですYO!、温泉が近くにある所じゃないとキャンプしたくないんです』
俺『温泉が近くにあるキャンプ場って、この島じゃ自動的に俺が居る場所しかねーんだよ、昨日 観光案内所で聞いたから間違いないYO〜』
冬美『そうなんですか!じゃあ仕方ないかな、・・・・付いていっていいですか』
俺『何だよ その仕方ないって、人に物頼むときの心遣いに付いて小(ry』
冬美『・・・・・スミマセン、連れて行って下さい、おながいします。』
多少の脚色wwはあるが、こんな風に最初の再会を果たした俺と冬美。
この時の俺、もう冬美に惚れかけてたな、間違いない。
俺『さてどうする、すぐ移動するか?それとも どっか見ていくか?』
冬美『いやー、とりあえずテント張って、それから考えます』
俺『んじゃー行くか、場所は島の反対側だけど、真ん中あたり大体真っ直ぐ行ける道あるから そっちいくべ』
冬美『はい、んじゃ後ろ付いて行きますね〜』
キャンプ場までの最短距離(だと思う)道を行き、出会ってから二回目の千鳥走行だ。
俺が路片側を走り、冬美がセンターライン側だった。
付かず離れず、決して右ミラーの視界から外れる事はない。やっぱり上手いな・・・、安心して前を走れる。
以前から ずっと一緒に走っているような気さえする、確か三十分もしない内にサイトに着いた。
小高い岬の上にテント10張り位で一杯になるくらいのサイトだが、洗面所もトイレも清潔で申し分ない、充分過ぎる位だ。
一番奥の海側に張った自分のテントの前で停車し、そのすぐ後ろに冬美が停まった。
俺が居ない間に札幌ナンバーの四人家族、自転車で来ている若いカップルのが それぞれひと張りずつ増えていた。
冬美『ここですか〜うわー海のすぐ側なんだ!眺めすっごくいいですね!』
俺『んじゃ好きな所にテント張って、それから温泉にでも行くか』
冬美『そうですね、どこに張ろうかな・・・・・』
と言いながら俺のテントの横辺りをガン見してる、曖昧に何かを訴えている冬美ワロスwww。
でも黙って見ているほうが面白いので、マドロス風に水平線を眺めるフリをしてすっとぼける俺。
三分ほど悩んだ末 冬美は結局ちょっと離れた場所に、でも間には もう別のテントが入れない位の微妙な近さにテントを設営した。
俺『さてちょっと早いけど温泉でも行くか、小奇麗だけど高いホテルと、建物は古いけど地元民向けの安いのとどっちにする?』
冬美『もちろん安い方、もー疲れたから観光は明日にしますよ』
俺『一瞬も考えないのなwwwだよなー、んじゃ行くか』
二台で遊歩道のような迷路のような道を下り、五分ほどで漁港の横にあるローカル御用達の温泉に着いた。
玄関の横に並べてバイクを停め、三十分後にバイクの前で落ち合うことにして温泉に浸かった。
ここは建物も風呂も綺麗ではないが、茶色でしょっぱい日本海側特有(だよな?)の泉質。
秋田や青森の海岸沿いの温泉とよく似た感じだ、不老不死とかあんな感じ(だったと思う)。
海流で繋がる海はもちろん、マクロに視ると陸も繋がっているのだなと感じながら浸かる。
きっかり二十五分後にバイクの前に戻り、五分間をストレッチにあてる。
風呂上りのストレッチは日課なのだ、やるとやらないとじゃ翌朝のキレがぜんぜん違う。
きっかり三十分で冬美はやってきた、
湯上りの時間を守れる女は珍しい、やはり男前だwww
冬美『夕飯どうします?、どっかで買い物して行きたいんですけど』
俺『この辺に店らしい店は無いと思ったな、でも俺が買出ししてあるから大丈夫だYO』
冬美『えーでもまたご馳走になっちゃうのは悪いですよ、今度は私におごらせて貰いたいなあ。』
俺『じゃあビールだけ奢ってくれよ、今夜が道内最後の夜だからな、残った食材で大盤振る舞いだ』
冬美『え・・・、もう帰っちゃうんですか、でもまだ ほとんど何も見てないじゃないですか』
俺『いや、もう見たいモンは見たし、八幡平辺りにもゆっくり寄りたいから、明日の午後には函館から船に乗ろうと思ってんだわ』
冬美『そうですか・・・・、じゃあ また今夜でお別れかあ・・・』
2人とも言葉少なにバイクに跨り、ビールを調達してテントに戻る。
小一時間の間にもう一つテントが増えていた、どうやら俺らと同じバイク旅のようだ。