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借金のカタに取られた元カノの話
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99 :1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 01:30:12.86 ID:PH/p6D4G0
車なんて持ってないから自転車を飛ばす。

ロータリーで自転車を降りて改札口へ急ぐと彼女がいた。

笑いながらピョンピョン跳ねて手を振る姿が懐かしい。

さっきの心配は気のせいか? なんて思いながら付き合っていた頃もこんな風だったっけとか回想シーンが頭をよぎる。



100 :1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 01:31:16.02 ID:PH/p6D4G0
オレ「ようこそおいでくださいました」

彼女が仕事で言いそうな台詞を言ってみた。

ユキ「お辞儀の角度が甘いわね」

プロの厳しい指摘だ。

オレ「久しぶりに自転車の後ろに乗ってみる?」

ユキ「あの頃に比べると、ちょっとだけ重くなってるけど大丈夫かな?」

オレ「どんなに重くても平気だよ。家までずっと下りだからね」

ユキ「もうっ!」



101 :1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 01:32:00.46 ID:PH/p6D4G0
彼女は自転車の後ろに横になって座ると、オレの腰に手を廻してくる。

毎朝晩に通勤で通る道だけど、彼女が後ろに座ると風景が違って見える。

高校の通学路を走っているような気がする。

あの頃も部活が終わると彼女が校門で待っていて同じように二人乗りで坂を下って帰ったんだよな。



102 :1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 01:33:04.98 ID:PH/p6D4G0
ユキ「ねぇ、カズくん。ちょっと太らない? この辺りとか? ふふふっ」

そう言うとオレの腰辺りの余った肉をつまむ。

オレ「くすぐったいってば。

そりゃ、18才の頃の引き締まった肉体と比べたら劣化は否定できないさ。

でも、オレなんてまだマシな方だと思うけどね。

なんなら後で全部披露するぞ」


ユキ「もうぅ、バカっ!///」


そう言いながら背中にぎゅーっと、へばりつく彼女。おっけーのサインなのか?


途中でコンビニへ寄って適当に買い物をしてから自宅に到着。

コンビニのバイトがジロジロとオレを見てた。

コイツ、オレが晩飯の弁当を買う深夜にいつもレジにいる奴だ。

ざまあみろ、オレだって女連れのことくらいあるのだ。



103 :1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 01:35:09.89 ID:PH/p6D4G0
さて、オレ邸は2階建て安アパートの2階。

階段が鉄製で歩くとカンカン音がする建物。

6畳相当のワンルーム、というか本物の和室6畳。ボロ。まともなキッチンというか台所はないけど料理なんてしないから不自由はない。

食事はオール外食 or コンビニ。

それで運動しないから太ってくるというか腹周りだけ肉がついてくるわけだ。

オレ「ようこそ、我が家へ」

玄関のドアを開けて彼女を迎え入れる。にわかに片付けた感いっぱいの部屋。

ユキ「へぇー、一応きれいに片付いて……というか殺風景な部屋ね……」

オレ「寝るだけだからな。飾ったって仕方ないしさ」



104 :1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 01:36:10.35 ID:PH/p6D4G0
お茶とお菓子で話していたハズが、いつの間にか缶ビールと珍味に変わっている。

彼女は懐かしい写真を何枚か持ってきてた。二人が付き合っていた頃のもの。

いつ撮ったのか覚えていないものも混じっている。

二人で照れながら笑っている写真は他に撮影者がいたハズ。



105 :1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 01:37:47.71 ID:PH/p6D4G0
ユキ「あっ、その写真……吉田くんが撮ってくれたのよね……

私がお願いしたんだ。

カズくんとのツーショット写真が欲しいって。

まだ付き合う前だったけど覚えてない?」


コウジの名前がでてきて、それまでのフワフワした気分が一気に硬直する。


こんなことしてていいのか……? オレ……



106 :1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 01:38:51.25 ID:PH/p6D4G0
オレ「……あのさ、ひょっとして毎年開催してる同窓会って、コウジの企画か?」

ユキ「そう……今年で何回目だったかな……

今年こそは、カズくんが来るかなって言いながら毎年企画してたけど。

何度か実家にも電話したみたいよ……」


オレ「……そっか……」


ユキ「誤解しないで、吉田くんは私のこと……

私とカズくんのことを応援してくれてるだけで……

私のことなんて、なんとも思ってないから……

だから今日だって吉田くんが行って来いって言ったから……」



107 :名も無き被検体774号+:2013/03/01(金) 01:39:09.27 ID:zQz8VRX70
ゆきちゃんかわええー!



108 :1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 01:40:15.89 ID:PH/p6D4G0
>>107 かわいいです……


やっぱりだ。

あいつはずっとユキのことを思って応援してたんだ……

彼女のことが今でも好きなんだ……自分の気持ちを隠して……

素直じゃない奴め。


オレは、あの朝にキッパリと諦めたんだ。

そんなオレが今さら彼女をどうこうしようなんて都合のいいこと考えちゃいけない。



109 :名も無き被検体774号+:2013/03/01(金) 01:40:48.31 ID:UK6iZRUG0
見てるぞー

寝落ちそうだが←


110 :1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 01:41:15.79 ID:PH/p6D4G0
>>109 ありがとう。


オレ「……ユキ……送って行くよ。まだ帰る電車あるよな……」


ユキ「えっ? どうしたの?

突然……私、何か気に障ること言った?

もしそうなら謝るから……謝るから、そんなこと言わないで欲しい……」


みるみる彼女の顔が曇っていく。というかもう泣き始めてる。

でも泣かれても困る。

男の友情とはそういうものだ。

悪友の20年越し?にもなる恋心を踏み台にして、その女とイチャイチャなんてできんのだ。



111 :名も無き被検体774号+:2013/03/01(金) 01:41:53.51 ID:EqY3tIRzO
ユキちゃんモテまくりだな


112 :1 ◆U72pfJf7kg :2013/03/01(金) 01:43:06.10 ID:PH/p6D4G0
>>111 かわいいですからね。性格もいいですし。


わけもわからずオロオロと泣く彼女を追い立てるように家を出る。

そして無言のままで引きずるように駅まで連れて行くと目的地までの切符を買って渡す。


オレ「じゃ、コウジによろしく言ってくれ。あいつにはオレから後で電話しておく」

ユキ「あっ……違う、違うの――」


彼女の返事を最後まで聞かずに来た道を逃げるように引き返すオレ。

雨でもないのに顔がグチャグチャに濡れている。

目からも鼻からも水が出ているせいだ。



>>次のページへ続く
 
カテゴリー:人生・生活  |  タグ:青春, 純愛,
 


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