2chの男女恋愛に関わる 復讐話寝取られ話旅スレ に特化した話題を掲載していきます。
easterEgg
 
 
 
 

私の「初めて」の話をしようと思う
(4ページ目)  最初から読む >>

 

\ シェアする /


97 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/06/20(土) 23:00:48.94 ID:d7vBTGF30.net
「……人生の、ケジメ、っつうの?」

「ケジメ」

私はタムラの言葉を繰り返す

「まあ、死ぬまで短い間だったけど生きてましたって、自分で納得するため、っつうか」

「ふうむ」

「せめて最後は人間らしく、ってな」


人間らしくったってなあ

フツーの人はもっと死ぬ前は、うまいもんでも食べたいとか墓でも作るかとか、そんなこと考えそうだけど

それにカンオケってちゃんとしたものを作ろうと思ったらそれなりに高くつくのだ



98 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/06/20(土) 23:07:06.87 ID:d7vBTGF30.net
「カンオケのお金、どうしたの?」

「麻雀で勝った金貯め込んだ」

「どんだけ巻き上げたのよ……」


「医者って金持ちなんだよ」

「……なんか、やな言い方するね」


「……そうだな」

道の先に大きな橋が見えてくる

トラックが排気ガスを巻き上げながら走り去ってった

病院が遠くに、小さな鉄の塊みたく見えた



99 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/06/20(土) 23:11:24.52 ID:d7vBTGF30.net
「タムラ」

橋の上にさしかかると いきなり風が強くなった

空が青い

下で大きな川がきらきら光ってる


私は風の音に負けないように声を張り上げる

「勝負してないタムラなんて、つまんないよ」

カンオケ一個でケジメだなんて

そんなこと俺が一番よくわかってんだ、というように、タムラは黙りこんでいた




100 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/06/20(土) 23:18:07.95 ID:d7vBTGF30.net
病院の前で、私とタムラは別れる

やつは眩しそうな顔で私を見上げて黙っていた

三年前とびっくりするくらいおんなじ顔だ

「オオシマ」

「?」

「ありがとな」

タムラは険しい顔で言った

私はちょっとほっとした

「お見舞いきていい?」

「やばくなったときだけな」

「じゃあやばくなったら連絡して」


そう言って私は電話番号をわたす

「いつでもかけて、学校の授業中だって駆けつけてくるから」

タムラは黙ってうなずいた



101 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/06/20(土) 23:25:38.36 ID:d7vBTGF30.net
帰り道は拍子抜けするくらい腕が軽かった

私は「ありがとな」と言ったタムラの顔を思い出してみる

三年前のクソナマイキな頃の表情に、少しだけ戻ってた気がした

……まだ大丈夫だよな、あいつ

大丈夫じゃなきゃだめなんだ、しっかりしてくれ頼むから

私は夕方になっていく帰り道を一人で歩きながら、祈るような気持ちでそう思った



102 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/06/20(土) 23:30:25.58 ID:d7vBTGF30.net
私の母さんはカンオケ職人だ

死んだじいちゃんもカンオケを作っていた

だから、たしかに私もいつかはカンオケ作りを継ぐのかなーって常々思っていなくもなかった


でもそれはなんとなく まだまだ先のことで

中学卒業してからかなー、とか

高校出てからかなー、とか

美大とか専門で彫刻の勉強とかしてからかなー、とか

はたまたカンオケ作りなんてやらずに一生終えるかなー、とか

まあ言ってみれば漠然と考えてた


でもそういうのって「いつ始める」とかじゃなくて、勝手にタイミングがきちゃうもんなんだろう

たとえばタムラがあと半年で死ぬとか、タムラがもしかしたらまだちょっとだけ頑張るかもしれない、とか

そういうことで



103 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/06/20(土) 23:32:09.97 ID:mtkb1fEV0.net
ほうほう


105 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/06/20(土) 23:38:03.69 ID:d7vBTGF30.net
家に帰って私は母さんを探す

工房のドアを開けたらデスクに座ってた母さんが振り返ってじっと こっちを見た

初めて見る母さんの表情だった気がする


私は、今までこんな真剣に誰かに頭を下げたことなんてなかったな、と思いながら

「私を弟子にしてください」

と、母さんに言った




106 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/06/20(土) 23:40:02.86 ID:d7vBTGF30.net
パンツを脱いで待ってくれていた人たちへ

これは私が初めて、カンオケを作ったときの話です

まだ脱いでたら どうかそのパンツをお上げくださいまし



107 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/06/20(土) 23:42:08.97 ID:70Tdbpio0.net
見てるよー


108 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/06/20(土) 23:48:00.03 ID:d7vBTGF30.net
だいたいの職人芸って そうだと思うんだけど、どう考えても半年そこらで一人前の技なんて身に着くはずがないよね

でも母さんは私を弟子に取ったし、タムラのカンオケ作りを(手伝うとは言ったけど)私にやらせると言った

母さんもじいちゃんに弟子入りしたのは、母さんの母さん、つまり私のばあちゃんが病気に倒れたときだと話してくれた

余命いくばくもないとわかったとき、じいちゃんは ばあちゃんのカンオケを何も言わずに作りはじめた

今の私とそう変わらない歳だった母さんが そのときにじいちゃんに弟子入りした、その気持ちは今の私ときっと同じようだったんだと思う



109 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/06/20(土) 23:51:14.03 ID:d7vBTGF30.net
その翌日からカンオケ作りに取りかかる


大体の工程は、

デザインを考える

それを材木に転写する

線に合わせて絵を浮き彫りにする

やすりをかける

こういう感じだ

「半年しかないから しっかりやりなさいね」と母さんは言った



113 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/06/20(土) 23:56:44.39 ID:d7vBTGF30.net
毎日一日一〇枚、私はデザインの原案を描く

大事なのは頭の中じゃなく描きながら考えることだと母さんも言ったし 私もそうだろうなと思った

学校には当たり前のように行かなくなって、私は朝から日が沈むまでひたすら描いた

絵なんて普段描かないから、写真を見たり人の絵を真似たり

何度も不安になった

「これでいいんだろうか」

「ほんとに ちゃんとよくなってるんだろうか」

「そもそもタムラに合うデザインをきちんと選べてるんだろうか」

「三年も会うどころか連絡さえ取ってなかった私なんかが」




>>次のページへ続く
 
カテゴリー:人生・生活  |  タグ:泣ける話, 青春, これはすごい,
 


\ シェアする /


関連記事

 
































easterEgg記事特集ページ

 

こちらもどうぞ

 

 

カテゴリー

 

 
 

殿堂入りのおすすめ記事

 
 
 

新着記事

 
 
 

おすすめ記事2

 

 

人気記事(7days)

 

 

新着記事