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机の上に予言が書いてあった。
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33 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/07/16(木) 04:55:20.16 ID:7wm2QxL+0.net
安堵した所で、昨晩の予言を思い出す。そう、まだ問題は残っているのだ。

「どうしたの?」そんな僕の青い顔をみた彼女は、優しく問いかけてきた。


僕は知っている事の全てを話して、その後に相良さんの話も聞いた。


どうやら、相良さんは僕の思った通り、僕の予言を見ていたようだった。

ある日の放課後、僕のクラスメイトに用があったようで、僕の教室で その友達を待っていたらしい。その時にたまたま見つけたと。


34 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/07/16(木) 04:55:40.06 ID:7wm2QxL+0.net
最初は僕がいじめにあっていると思った、と言っていた。そうだろうな、僕もそう思ったんだし。

相良さんは それが予言であると気づくまでにそう時間はかからなかったようで、意地悪な神様に細やかな反抗をしようと企てた。僕の失う物を、失わないように努力したそうだ。

予言には法則性があるらしく、何かを失うのは四度ある休み時間か、放課後のどこからしい。僕は全く気がつかなかった。

その時間を少し注意して見張っていれば、予言を覆すのは容易い、と彼女は得意げに話していた。

しかし、僕が昨日の予言を伝えると、彼女の顔は一変して白くなった。元々とても白い顔ではあったが、もっと白く。その時 僕は何か違和感を覚えた。

今までの予言は全て物に対してのものだった。だが今回は違う。人の心だ。机の下を転がったペンを拾って終わりではない。そう簡単にはいかないのだ。


35 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/07/16(木) 04:56:23.11 ID:7wm2QxL+0.net
昨晩考えていた計画を相良さんに伝えると、少し難しい顔をして両の手を組み、考え事をし始めた。

僕の計画とは、なるべく友達二人と会話をするという単純なものだった。

相良さんの言う予言の法則を組み合わせて考えると、休み時間と放課後に不自然じゃない程度の会話をする。会話をすれば、雰囲気から怒っているかどうかが分かるはずだ。

会話の途中で空気が悪くなったら、すぐにでも その場を離れればいい。予言の効力は今日までなのだから、今日だけやり過ごせばいい。

僕も計画の細かい所まで考えていると、難しい顔をしていた相良さんが急に笑顔になり、また左手を口元に寄せて くすくすと笑い始めた。




36 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/07/16(木) 04:59:21.50 ID:7wm2QxL+0.net
「どうしたの?」

不思議に思って声をかけると、微笑だった相良さんは大きな声で笑い始めた。

あははは、と綺麗に笑う彼女を呆然と眺めていると、ようやく一息ついたようで、事のあらましを話してくれた。

「ふぅ……ごめんごめん。いやさ、簡単な事を思いついちゃったよ」

簡単な事……。なんだろう。必死に頭を動かしても、僕の頭には計画よりいい案が浮かばなかった。

「予言通りにしちゃおうよ」

まだ少し笑いの含む声で、彼女は言った。


37 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/07/16(木) 04:59:50.92 ID:7wm2QxL+0.net
「友達を失えってこと?」

彼女としばらく話してみて、悪ふざけで そんな事を言う人じゃないというのは分かっていた。何か考えがあるのだろう。僕は彼女の言葉の続きを待った。


「私と君はもう友達だよね?」

唐突だった。友達という定義はよく分からないが、予言の事を話したのは彼女が初めてだし、僕を助けてくれていたのも彼女だし。

「もちろん、相良さんさえよければ」

うん、ならもう安心だ。といって彼女は僕の手を握った。

「付き合っちゃおう、私達」


38 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/07/16(木) 05:02:49.37 ID:7wm2QxL+0.net
突然の事に困惑した。

女の子の友達もろくに出来たことのない僕が、こんな突然に、それもこんなに可愛い子と……?

願ったり叶ったりだが、僕の頭には疑問が絶えなかった。


「待って。突然過ぎるし、しかもそれと予言、どう関係が……」

言いながらはっとした。そうか。

「気づいた? 予言を覆すのが難しいなら、予言通りにしちゃえばいいんだよ。友達を失って、彼女ができる」

一石二鳥じゃない? と彼女は微笑んだ。


39 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/07/16(木) 05:03:19.07 ID:7wm2QxL+0.net
疑問が解消されたのと同時に、彼女の頭の回転の早さに感動した。

彼女が成績トップだった事を知るのは、もっと後になる。

僕はといえば、まだ色々とこんがらがっていて、脳の処理が追いついていなかった。

「それにね。私、前からずっと気になってたんだよ、君の事。そうじゃなきゃ、助けてあげようなんて思わないよ」


脳の処理よりも先に、幸福感が身を包んだ。

幸運というのはこういう事を言うのだろう。どん底に落ちた昨晩に比べ、その時の僕は天に昇るような気分だった。


40 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/07/16(木) 05:05:51.90 ID:7wm2QxL+0.net
「ごめん……なんかまだよく分かってないんだけど……よろしくお願いします」

彼女は「なにそれ」といってまた笑い出した。


その姿につられて、僕も笑い出す。

顎が痛くなってきて、目に涙が溜まり始めた頃、僕らは手を繋いだ。

「なんか、よく分かんないけど」

右手で彼女の左手を握って、左手で頬をぽりぽりと掻く。

「神様も、お節介だね」

左手で僕の右手を握る彼女は、そういってまたくすくすと微笑んだ。

教室の予言の机に向かって歩く僕達の足音は、窓の外から聞こえてくる冬の音に重なった。


41 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/07/16(木) 05:10:59.35 ID:7wm2QxL+0.net
どうだったかな?

これが高校生の頃に僕に起きた神様の気まぐれだよ。

ロマンチックな話だと思っただろう?

僕もそう思う。


ちなみに、あの後に予言は起きなくなったよ。縁結びの神様だったんだろうね。




42 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/07/16(木) 05:11:17.95 ID:7wm2QxL+0.net
あれから僕と彼女はずっと一緒にいる。あの時から五年経った今でも、ずっとね。

高校卒業してすぐに僕は地元の企業に就職して、アパートの一室を借りて彼女と同棲してる。

彼女はというと大学に通ってるよ。今は二回生だね。

……と、所で僕がこの話を思い出したのは、ある出来事がきっかけなんだ。


簡単に言うとね、予言はまた起きたんだ。


43 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/07/16(木) 05:13:24.99 ID:7wm2QxL+0.net
一ヶ月前、僕のアパートにあるデスクの上に落書きがあった。

その日は日曜日で、休日最後の日を満喫しようと椅子に座って気がついた。


それはシャープペンで書かれたような文字で、そこには『炬燵こたつを買う』と書いてあった。

突然に舞い降りたその非日常への入り口は、僕に寒気を感じさせた。


昔と違って、今は非日常に憧れる事はなくなった。むしろ日常が恋しかった。


44 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/07/16(木) 05:13:57.88 ID:7wm2QxL+0.net
仕事へ行って、帰ってくると家には彼女、相良咲が居て、二人でご飯を作って。そんな日常が幸せだった。

そんな中に現れた非日常。迷惑な事この上ない。


それに今は二人で同居している。どちらを対象とした予言かも分からない。

とりあえず僕はその予言を消しゴムで消して、この話を咲にするべきかどうかを考えた。


ちょうど咲は外出中で、考える時間は沢山あった。

せっかくの休日をこんな風に過ごさなきゃいけない事に憤りを感じつつも、頭を冷やしてゆっくりと考える事にした。


45 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/07/16(木) 05:16:52.75 ID:7wm2QxL+0.net
夜になって、咲が帰ってきた。

十八歳になってすぐに普通車免許を取得した彼女は、バイト代を必死に貯めて中古の軽自動車を買った。

昨今には珍しい、ミニディスクが挿入できるカーオーディオが付いたムーブ。

その車の独特なエンジン音で、いつも帰ってきたのが部屋の中からでも分かる。


玄関の鍵が開いて、扉が開いたが中々咲は中に入ってこなかった。大きな段ボールが玄関につっかえて中に入れないようだ。

「おかえり。これは?」

重い荷物を部屋に運ぶのを手伝って、一息つく。


46 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/07/16(木) 05:17:26.73 ID:7wm2QxL+0.net
「ただいま。もうすぐ冬だからね。炬燵、買ってきたよ」

そう、炬燵だった。予言通り。


「そうか。とりあえず押入れに入れておく?」

予言通りになったことに疑問も持たず、普段通りに接する。


昼間のうちに考えて、予言の主が誰だかあらかた検討がついていた。

とりあえずは様子を見るとしよう。


「せっかくだし出そうよ。別に電源つけなくてもテーブルとして使えるんだし」

それもそうか。元々使っていた小さなテーブルを片付けて押入れにしまい、炬燵の入った大きなダンボールを解体して、それを部屋の中央へ設置した。


暖かい冬になりそうだ。



>>次のページへ続く
 
カテゴリー:読み物  |  タグ:青春, すっきりした話, 胸キュン,
 


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