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机の上に予言が書いてあった。
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47 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/07/16(木) 05:22:11.29 ID:7wm2QxL+0.net
それから毎日予言は起きた。
何かを壊す、何かを食べる、何かを買う、種類は様々だった。
この時点で昔の予言と違う事が分かるだろう。あの時にあった予言はいつも何かを失うというものだった。そして、この偽予言は書かれたその日に起こる。
それに本当の予言なら、きっと擦ったら消えるようなもので書かれたりしないはずだ。偽予言は文字が少し擦れて滲んでいた。
全て含めて考えてみると、この予言を書いているのは、咲しかいなかった。
何が目的なのかは分からない。今はとりあえず予言に気づいてはいるが、咲が書いたとは気づいてないふりをしておこう。
そのうちにきっと思惑が見えてくるはずだ。
変わった甘え方なのかもしれない。
48 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/07/16(木) 05:22:43.46 ID:7wm2QxL+0.net
最初の偽予言からちょうど一ヶ月経った日、デスクを見てみるとその日も予言は書いてあった。
『恋人を失う』
僕はクスリと笑って、その予言を消しゴムで消した。
念の為、今日は咲と一緒にいよう。万が一、という事もあるし。
49 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/07/16(木) 05:24:46.55 ID:7wm2QxL+0.net
「買い物、行ってくるねー」
ささっとだけ化粧を済ませた彼女が玄関へ向かうのを引き止めた。
「僕も今日は休みだし、久しぶりにデートに行こう」
そういうと咲は満面の笑顔になって着替え始めた。
デートの為に買った服でもあるのだろう。最近少し寂しい思いをさせていたかな。
「三十分待って!」
彼女は洗面所に走っていった。
それから毎日予言は起きた。
何かを壊す、何かを食べる、何かを買う、種類は様々だった。
この時点で昔の予言と違う事が分かるだろう。あの時にあった予言はいつも何かを失うというものだった。そして、この偽予言は書かれたその日に起こる。
それに本当の予言なら、きっと擦ったら消えるようなもので書かれたりしないはずだ。偽予言は文字が少し擦れて滲んでいた。
全て含めて考えてみると、この予言を書いているのは、咲しかいなかった。
何が目的なのかは分からない。今はとりあえず予言に気づいてはいるが、咲が書いたとは気づいてないふりをしておこう。
そのうちにきっと思惑が見えてくるはずだ。
変わった甘え方なのかもしれない。
48 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/07/16(木) 05:22:43.46 ID:7wm2QxL+0.net
最初の偽予言からちょうど一ヶ月経った日、デスクを見てみるとその日も予言は書いてあった。
『恋人を失う』
僕はクスリと笑って、その予言を消しゴムで消した。
念の為、今日は咲と一緒にいよう。万が一、という事もあるし。
49 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/07/16(木) 05:24:46.55 ID:7wm2QxL+0.net
「買い物、行ってくるねー」
ささっとだけ化粧を済ませた彼女が玄関へ向かうのを引き止めた。
「僕も今日は休みだし、久しぶりにデートに行こう」
そういうと咲は満面の笑顔になって着替え始めた。
デートの為に買った服でもあるのだろう。最近少し寂しい思いをさせていたかな。
「三十分待って!」
彼女は洗面所に走っていった。
51 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/07/16(木) 05:33:49.38 ID:7wm2QxL+0.net
外出して帰ってくるまで、結局何も起こらなかった。
喧嘩する事もなく、映画館やアウトレットを周ると間に事故が起きる様子もなかった。
咲の様子もおかしい所はなかったし、むしろいつもより上機嫌だった。
以上を踏まえて、僕は確信が持つ。
さぁ、そろそろ聞き出そうか。
52 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/07/16(木) 05:34:29.98 ID:7wm2QxL+0.net
お風呂に入り終わって眠そうにしている咲の隣に腰掛けて、話しかける。
「なぁ、どうしてこんな事したんだ?」
さっきまでドラマのエンディングを流していたテレビはニュースに変わり、重苦しい話をしている。
咲は半分寝ているんじゃないかと思うほど、うつらうつらとしていた。
「何がー?」
寝ぼけ声で返事をする彼女は、もう目を閉じていた。
53 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/07/16(木) 05:35:44.58 ID:7wm2QxL+0.net
「ここで寝るなよ、風邪引くから。予言の事だよ」
予言の話をすると、咲は目を見開いた。
「あちゃー、バレてたの?」
彼女はとぼける事もなく、あっさりと認めた。
「そりゃバレてるよ。あの時の予言はいつもひらがなだったし、消せないように彫られてたし、いつも何かを失うようなマイナスな予言しか書かれてなかったんだ。何より、文字の左側が黒ずんでた。左利きの咲が書いたんだってすぐ分かったよ」
彼女は「細かい所まで覚えてるねー」と言ってバツが悪そうな顔をした。
54 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/07/16(木) 05:36:12.00 ID:7wm2QxL+0.net
「それで、どうしてこんな事したんだ?」
確信に迫る。一番に聞きたいのはそこだった。いや、予想はついている。だがはっきりと咲の口から聞きたかった。
「気づいてないの? 鈍いなぁー」
予想通り、だな。
55 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/07/16(木) 05:37:02.36 ID:7wm2QxL+0.net
「気づいてるよ。でも昔の咲なら直接伝えたろう? あの時みたいに」
あ、とだけ言って咲は黙り込んで、難しい顔をして、左手をこめかみに当てた。
「んとね、あの時言ってなかったんだけどさ」
実は私も予言、書かれてたんだよね。
56 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/07/16(木) 05:38:29.64 ID:7wm2QxL+0.net
最初は悪戯だと思った。
けど、それが予言だと気づくのは簡単だった。同じ事を経験してる人が近くにいたからね。
私はずっと貴方を見てた。だから予言の事も知ってた。
貴方がいなかったら多分イジメだと思ってたよ。あの頃の私は自慢じゃないけど勉強が出来て、色んな人から妬まれてたから。
友達も殆どいなくて、勉強しかする事がなくてね。皮肉なもんだよ。
いつも放課後、図書室で勉強してた。私が貴方の事を見てたの、気づかなかったでしょ?いつも本に夢中になってたもんね。
ずっと話しかけたいなって思ってたんだけど、勇気が出なくて。
そんな時に予言が現れたの。しかも都合よく貴方に関係する事だった。
57 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/07/16(木) 05:39:59.07 ID:7wm2QxL+0.net
貴方が消しゴムを失くして落ち込むとか、ペンを失くして落ち込むとか、そういうの。
だから貴方を助けて、仲良くなろうと思ったの。でも結果は失敗、余計な事をするなって怒られちゃった。
ショックでさ。すぐにトイレに駆け込んだよ。泣き顔も見られたくなかったし、何より貴方に酷い言葉をかけてしまいそうで。そんなの絶対嫌だった。
少し経って落ち着いて、私の予言を見に戻ったら、私と付き合って喜ぶって書いてあるんだもん。
すぐに元気になったよ。我ながら単純だけど、ね。
だから、自信満々で付き合おうって言えたの。卑怯でしょ?
だから今回も卑怯な事をした。
本当は私、臆病で、卑怯なの。
58 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/07/16(木) 05:40:34.26 ID:7wm2QxL+0.net
きっと咲は自分の中にある勇気を全部使って、この話をしてくれたんだと思う。
話の途中途中、鼻をすする音が聞こえて、肩は震えていて、顔はずっと下を向いていた。
自分の性格を偽って、僕と付き合ったんだ。それが嘘だとバレたら、嫌われると思ったに違いない。
実際、僕が付き合った理由はそこが大きい。
勇気があって、明るくて、つられて笑っちゃいそうなほど屈託無く笑う彼女に惹かれた。
でも、今は違う。
59 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/07/16(木) 05:42:45.98 ID:7wm2QxL+0.net
「そうだったんだ。なんか話が合わないと思ってたんだ。僕の予言を見ていたはずなら、友達を失うっていう予言も見ていたはずだもんね」
あの時の咲は友達を失うという僕の予言を聞いて顔を白くさせていた。
知っていたなら、こんな反応はしないだろう。
「そうだよ、ごめんね。騙してた」
「うん、すっかり騙されてた」
それから彼女はずっと下を向いたまま、黙り続けていた。
60 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/07/16(木) 05:43:16.31 ID:7wm2QxL+0.net
「それじゃ、恋人はやめよう」
僕が言うと、彼女はまた震えだした。
「私の書いた予言……その通りになったね」
少しだけ嗚咽を漏らしながら、両の手の平で目を擦りながら彼女は言う。
「ごめんね、ごめん」
61 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/07/16(木) 05:46:05.94 ID:7wm2QxL+0.net
僕はあの時の彼女みたいに、初めはくすくすと、それから大きな声で笑い始めた。
状況が飲み込めていない彼女は目を見開いてこっちを見ていた。キョトンとしている。
「ふぅ……ごめんごめん、意地悪した」
え? と声を漏らす彼女の手をとって、僕は言った。
62 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/07/16(木) 05:48:07.59 ID:7wm2QxL+0.net
「結婚しよう。これで君は恋人から、婚約者だ」
まだ理解できていない彼女は、呆気にとられたように、少しだけ涙を流しながら。
「ごめん……まだよく分かってないんだけど……よろしくお願いします」
僕はまた笑う。
「なにそれ」
彼女も笑う。
二人で大きな声で笑って、顎が痛くなって、目に涙が溜まり始めた頃、僕らは手を繋いだ。
デスクには、『こいびとをなくす』と書いてあった。
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