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数年前、自殺しようとしてた俺が未だに生きてる話
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273 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/11(金) 04:41:02.31 ID:cSmjjL1b.net
三月・・・・・・もうすぐ二年の三学期も終わるんだ。

あのクソ教師のクラスも終わりか・・・・・・。

俺は しばし、ほとんど行くことのなかった教室のことを考えた。

不登校してても、あと一年で卒業できるんだな、そんなことも思った。


でも その前に、あいつを・・・・・・。

俺の思考がそれたためか、気がつくと暗闇は消えていた。あとに残ったのは、ノートに書き付けられた俺の汚い字だけだった。


『今日。久しぶりに部屋を出て、公園へ行った。レイとの約束のため。』

『3/9』

俺は その文字を目に焼きつけるように、何度も眺めた。


記録。


レイの言葉通り、それは俺の行動したという証となって そこに存在した。

努力が可視化されたんだ。



274 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/11(金) 04:50:20.29 ID:cSmjjL1b.net
俺の努力の証・・・・・・。

それを見ていると、嬉しさがこみ上げた。

身体に再び熱が戻り、ほんの少しではあるが、自信のようなものが湧いた気がした。

ノートに書いた文字は、あやふやな言葉よりもずっと確かに俺の努力を証明していた。

俺は なにもしなかったわけじゃない。

確かに行動をしたんだって、自分でも そう思えるような気がした。

・・・・・・俺がいまでも記録魔なのは、きっとこのときの快感を覚えているからだろう。



275 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/11(金) 05:01:22.93 ID:cSmjjL1b.net
この勢いで、Aを観察して、そしていよいよ・・・・・・!

再び浮かれて そう思った時だった。

俺は ある問題に気づいた。


それは・・・・・・時間だ。


ようやく明るくなってきた窓を見て、俺はうなり声を上げた。

朝寝て、夕方起きる。

この生活リズムは、果たして計画実行に向いているのか・・・・・・?



276 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/11(金) 05:12:08.50 ID:cSmjjL1b.net
いや、白昼堂々殺すわけにもいかないんだから、これでいいのか?

いやいや、でも それは手段にもよるだろ。

ナイフで刺すのと、毒殺じゃ、全然違うわけだし。

でも、あいつの行動パターンによっては、その手段も限られて・・・・・・

ってか、夜なら見つからないってわけでもないし。

あ、というより、監視カメラの位置とか・・・・・・



277 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/11(金) 05:19:38.44 ID:cSmjjL1b.net
「そんなことは考えても無駄」

しかし次の夜、そう相談した俺を、レイはあろう事か一蹴した。

「何でだよ、俺、ずっと考えて眠れなかったのに」「じゃあ、どうしろっていうんだよ」

「とりあえず、行動すること」「それが一番大切」「頭で考えても、現実は何一つ変わらない」「何をすべきかすら、見失う」


「でも・・・・・・」


「行動を起こして」「あなたにしかできないこと」

まだ時間も早いというのに、早々にレイはいなくなってしまった。



278 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/11(金) 09:17:08.62 ID:cSmjjL1b.net
行動すること、か。

少し前の俺なら、そこでまた悩みに悩んだ挙げ句、妄想に こてんぱんにやられて朝を迎えるコースが鉄板だった。

一度の外出に成功したとはいえ、それだけで精神がレベルアップするわけないし。

けど、それは置いておいても、一つだけ、俺の頭から離れて消えないことがあった。

あの公園にレイが残したという、〈証拠〉だ。

植え込みの中の、青い小瓶。

まさか、ただ小瓶を埋めたわけじゃないだろう。

中には何かが入っているはずだ。

レイの残した、何かが。



279 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/11(金) 09:20:02.65 ID:cSmjjL1b.net
ちらりと時計を見上げる。

午前一時過ぎ。

親はとっくに寝入ってる時間だ。

また、家を抜け出してみようか。

俺は ほとんど自然にそう考えた。

心臓は どきどきしていたが、それは小瓶の中身への期待だっただろう。



280 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/11(金) 09:32:05.05 ID:cSmjjL1b.net
結論から言うと、俺は忍び足で階段を降り、そっと家を抜け出した。

不審者だと思われたら どうしよう、とか

通報されたら、巡回中の警察に遭ったら、とか

いつもの ぐるぐるとした考えは、割合簡単に押し込めることができた。


そうなったら、そうなったときだ。


そう思えた理由は、この前の午前六時の外出よりは、他人もいないだろうと思ったのと、

〈とりあえず、行動すること〉

レイの言葉が後押ししてくれたせいも、大いにあるだろう。

それに、今回の目的もはっきりしてる。

レイの〈証拠〉を取りに行くことだ。



281 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/11(金) 09:38:22.11 ID:cSmjjL1b.net
とはいっても、俺は玄関を開けた瞬間、少し後悔した。

まあ、これはレイにも引きこもりにも全く関係ないことなんだが・・・・・・

俺、お化け怖いじゃん? 真夜中って出そうじゃん?

こないだのときは他人をお化け扱いしといてなんだが、俺は本物のお化けも怖かった。

○○公園は、昔の処刑場だったって噂もあったし・・・・・・



282 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/11(金) 09:42:54.13 ID:cSmjjL1b.net
けど、俺は意を決して歩き出した。

ってか、それくらい、どうしてもレイの〈証拠〉が欲しかった。


夜の町に人気はなかった。

俺の足音だけが ひたひた響いた。

時々、ぱっと明るくなる人感センサー付きの玄関ライトに飛び上がりつつ、俺は公園への道を急いだ。



283 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/11(金) 09:46:39.27 ID:cSmjjL1b.net
犬が欲しいな。

歩きながら、唐突に俺は思った。

別に動物に興味はないけど、こうやって歩くときに、犬を連れてたら、犬の散歩なんですって感じが出る。

不審者度も下がるだろう。

いや、それは犬を連れた不審者にグレードアップするだけか?


考えていたら公園に着いた。

案外簡単だったな、俺は余裕だった。



284 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/11(金) 09:57:41.42 ID:cSmjjL1b.net
要は他人に会わなきゃ平気なんだ。

俺は考えた。

引きこもるのも、外に他人がいるからだ。

だから、誰にも会わないって保証があれば、俺だってこれくらいなんでもないんだ。

そして、俺は大層馬鹿なことを思った。

あーあ、世界が俺一人だけだったらいいのに。



>>次のページへ続く
 
カテゴリー:人生・生活  |  タグ:すっきりした話, 修羅場・人間関係, ためになる話, これはすごい, ためになる話, ちょっといい話,
 


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