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数年前、自殺しようとしてた俺が未だに生きてる話
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285 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/11(金) 10:08:11.91 ID:cSmjjL1b.net
あ、あとレイと。

あ、でもコンビニくらいはないと食べものに困るな。

どうでもいいことを付け足していく。


っていうか、コンビニが成立するためには工場とか、農家とかは必要だな。

そしたら そこで働く人たちが必要になるわけで・・・・・・

内心では「お化けなんて嘘さ」の歌を大声で歌いたいくらいの気分だったから、こんなどうでもいいことを考えたのかもしれない。


と、想像の果てに俺は ふと思った。

違う。

こんなこと考えてても、俺の望む世界になんかならない。



286 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/11(金) 10:15:20.39 ID:cSmjjL1b.net
頭の中で考えてるだけじゃ、現実は何一つ変わらない。

それはレイに何度も言われたことだった。

けど、何度言われても わからなかったそれが、なぜかいま、俺の中で すっと理解に結びついたんだ。

俺がAを殺すのは、俺の望む世界に一歩でも近づくためだってこと。

なぜ俺がAを殺さなきゃいけないのかというと、それは俺が生きるためで、それにはAの命を押しのける必要があるんだってことが。



287 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/11(金) 10:17:05.68 ID:cSmjjL1b.net
レイの言葉を理解した俺は、興奮した。


目的のための手段。

そのための行動。


俺にも やっとそれがわかったんだ。



288 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/11(金) 10:36:04.70 ID:cSmjjL1b.net
喜び勇んだ俺は、言われたとおりの植え込みの地面を探った。

すると、指はすぐに小瓶らしきものを探し当てた。

公園のライトの光が届かない暗闇だったから、それが本当にレイの〈証拠〉か確かめる術はなかった。

けど、あった。

小瓶の存在は、俺の興奮に拍車をかけた。


レイの言葉は本当だった。

彼女は本当にここにいたんだ。


俺はすぐに家にとって返そうとした。

そのときだった。



289 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/11(金) 10:47:33.39 ID:cSmjjL1b.net
公園のフェンスの越しに、俺は信じられないものを見た。

Aだ。

Aはレジ袋片手に、道を挟んだ向かいのコンビニから出てきたところだった。

普通に歩いていたら、木が邪魔をして公園の中からコンビニは見えない。それは、俺が植え込みに座り込んでたから見えた、奇跡だった。


Aか? あれは本当にAなのか?


笑い出しそうになる膝を抱き込むようにして、俺は何度も瞬いた。

Aらしき人影は止めてあったチャリのところで、カバンをごそごそしている。

光に伏せられた顔は、暗くてよく見えない。


Aだ。

けど、俺は確信した。

あれは絶対にAだ。俺が見間違えるはずがない。



290 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/11(金) 10:50:25.51 ID:cSmjjL1b.net
けど、こんな夜中に何してるんだ?

いつも一緒の取り巻き連中はどこだ?


俺はコンビニの中を見通すように目を細めた。

しかし、そうする間に、Aはチャリにまたがり、暗い道にこぎだした。

一瞬、チャリの明かりが俺の目を刺した。



291 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/11(金) 10:57:17.35 ID:cSmjjL1b.net
俺はブランコ側の入り口から出ると、慎重にその後ろ姿を見つめた。

けど、その背中が遠ざかっても、取り巻き連中が現れる様子はない。

どうやら、Aは正真正銘、一人きりのようだった。


何だ?

俺は首をひねった。


どうしてこんな夜中に一人きりでコンビニにいるんだ?

それに、近所でもない、あいつの住んでる場所からは遠いコンビニに。

まさか、いままで遊んでいて、いまから帰るところなのか?

いや、それにしたって同じ地区に住む取り巻きと一緒じゃないってのはおかしい。



292 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/11(金) 11:03:07.33 ID:cSmjjL1b.net
はてなマークを頭にくっつけたまま、俺はAの背中を見送った。

それから、帰途につこうとした。


すると、公園を通り抜けて、滑り台側の入り口から出たとき、またしてもチャリが脇目も振らずに通り過ぎていくのに出会った。

とっさに顔を伏せたが、それは やはり俺と同じ中学生に見えた。


なんだ? これは??

頭のはてなマークが増殖した。

真夜中に、中学生がチャリを漕いでるって、普通の光景なのか??



293 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/11(金) 11:08:46.78 ID:cSmjjL1b.net
いきなり出現したなぞなぞは、簡単には解けなかった。


俺は考え込んだまま、無事部屋までたどり着き・・・・・・とりあえず、アレを取り出した。

アレ。つまり、レイの〈証拠〉だ。

光の下に取り出したそれは、キラキラ光って、レイのイメージ通りの涼しげな青い色をしていた。



294 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/11(金) 11:18:17.39 ID:cSmjjL1b.net
俺は小瓶についた土をティッシュで丁寧に拭き取ると、しばらく その光を眺めていた。

珍しくもないだろうけど、俺は子供の頃、「宝物」に無性に憧れた時期があった。

海賊の宝、とか、○○の秘宝、とか、そういうやつ。

そして、宝だ!って見つけてきたものは、タイルの欠片とか、鳥の巣とか、そんなもんばっかだった。


けど、これは違う。

これは、本物の宝だ。行動の結果、俺が勝ち取ったものだ。


俺は小瓶の蓋を開けた。

その瞬間、甘いいい香りが匂った、ような気がした。



295 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/11(金) 11:22:12.60 ID:cSmjjL1b.net
レイの匂いだ。

童貞な俺は たやすくそう信じ込んだ。

どうやって瓶の中にレイの匂いがこもるんだよ!

・・・・・・と、いまなら思えるが。。。


でも、あの一瞬、甘い匂いがしたのは事実だったかもしれない。

なぜなら、青い小瓶はたぶん、もともとは香水が入っていたらしき瓶だったからだ。



296 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/11(金) 11:38:46.75 ID:cSmjjL1b.net
けど、そんなことを知るよしもない俺は、中を覗いて、そこにあった紙片をつまみ出すと、大急ぎで蓋を閉めた。

レイの匂いを逃がしたくない、そう思ったんだ。


それから、瓶を置き、小さく折りたたまれた紙片をゆっくりと開いた。

いまでも その紙は俺の手元にある。

「レイ」

綺麗な筆致で、たった二文字だけ記された、小さな紙が。



>>次のページへ続く
 
カテゴリー:人生・生活  |  タグ:すっきりした話, 修羅場・人間関係, ためになる話, これはすごい, ためになる話, ちょっといい話,
 


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