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数年前、自殺しようとしてた俺が未だに生きてる話
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299 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 03:16:23.50 ID:3y8Xfu8b.net
俺はしばらく紙片を見つめた。


「レイ」

その二文字は、俺の迷いや ためらいを断ち切ってくれるようだった。

流されてばっかりの俺に櫂を与え、自らこぎ出す勇気をくれるものだった。


そうだ。

俺は紙を傍らに置くと、引き出しを開けた。

記録だ。記録をつけよう。

俺はノートを取り出すと、そこに こう記した。


『レイの小瓶を取りに行った』

『帰る途中?のAを見かけた』



300 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 03:23:01.17 ID:3y8Xfu8b.net
それから、忘れがちな日付を記そうとした。

三月・・・・・・昨日の今日だから、十日でいいんだよな。

と、そう書こうとして、俺の手はふと止まった。

三月? あと一ヶ月で中三?

そうだ、もしかしたら・・・・・・。



301 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 03:29:12.04 ID:3y8Xfu8b.net
なぜあんな時間に、あんな場所でAを見かけたのか。

なぞなぞの答えは、本来ならば俺も置かれてるはずの環境を考えれば、至極簡単だった。

「受験か・・・・・・」

俺は思わず声に出して言った。


あそこには地元じゃ有名な塾がある。

スパルタで、夜12時まで自習室が開いてるところだ。

Aの家からは少し遠いが、あいつが通ってるとしたら説明がつく。

俺は、塾帰りのAを見かけたんだ。



302 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 03:39:47.87 ID:3y8Xfu8b.net
それなら、取り巻き連中の姿が見えなかったことにも説明がつく。

謎が解けた快感に自分で何度もうなずきながら、俺は考えた。

俺たちが通う中学は公立だ。

だから、ほとんどの生徒は高校も受験の必要もないような、名のない公立に進む。

学力の低い、取り巻き連中や俺のことだ。


けど、頭の出来の違う、一部のやつらは違う。

そいつらは大学付属の高校に進んだり、公立は公立でも、県内トップの公立を受験したりする。

俺をいじめるような最低野郎とはいえ、Aはなぜか頭だけは良かった。

〈Aの祖父は県会議員をしてるのね〉


レイの言ったとおりなら、それはAがいい家の坊ちゃんだからかもしれない。

そういう家は、学歴が必要だったりするんだろ、多分。



303 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 03:45:38.30 ID:3y8Xfu8b.net
これは もしかしたら、またとないチャンスなんじゃないのか??

俺はパソコンに飛びついた。

まだいつもなら話してる時間だから、レイもまだパソコンの前にいるかもしれない。

そう思って、チャットに文字を打ち込もうとした。

と、俺はログの最後に、妙な一文が増えてるのに気づいた。


「あなたはどうして自殺したいの?」


ん?俺は首をかしげた。

見ると、発言はレイのもので、時刻は一時間ほど前だ。

つまり、俺が公園に出かけている間の時間。



304 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 03:51:39.90 ID:3y8Xfu8b.net
そして その台詞は、俺が初めてレイと出会ったときに言われたものだった。


「あなたはどうして自殺したいの?」


胸にふっと不安がよぎった。

レイはどうしたんだ?

変な考えだが、俺はレイがバグったと思った。

だって、その台詞はまるで、アンドロイドが間違って記録媒体を初期化してしまったみたいに見えたから。



306 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 04:01:15.15 ID:3y8Xfu8b.net
「どうしたの?」

恐る恐る、俺はそう打ち込んだ。


「俺がいまでも自殺したいかってこと?」

「それなら、大丈夫だよ」

「とりあえずは」

「それより、すごい発見したかもしれないんだ」

「・・・・・・って、いるかな?」

「・・・・・・落ちちゃった?」


大分間の時間を空けて、俺はそう書き込んだ。

けど、どんなに待っても、レイの返事はなかった。

俺は なんとなく もやもやしながら、朝方ベッドに入った。


まさか、記憶がリセットされたわけじゃないよな?

レイの〈証拠〉を手に入れたというのに、それは確かに生きた人間の筆跡だったというのに、俺の中のレイは、再びアニメの無表情キャラに戻った。

俺は、記憶を消去され、たくさんのクローンと共に出荷されていくレイの夢を見た。



307 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 04:11:27.24 ID:3y8Xfu8b.net
けど、それは ただの夢だった。


「嫌な夢を見たから」

「なんとなく、心配になっただけ」

「虫の知らせなんて当てにならないものね」


現れるなりレイはそう言って、俺を安心させた。


「それより、すごい発見ってなに?」

「聞かせて」


よかった、いつものレイだ。俺は嬉しくなって、懸命にキーボードを叩いた。

レイの〈証拠〉を見つけたこと。

Aは塾に通ってるかもしれないこと。

そこには取り巻き連中はおらず、Aは一人きりであること。


この頃になると、俺のキーボード入力はそこそこ早くなっていた。

が、我流なので やっぱ遅いことは遅かった。



308 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 04:19:34.27 ID:3y8Xfu8b.net
「学校は いつから春休み?」

俺の報告を聞き終わると、レイは突然そう言った。

「え? 学校?」

「そう」

「知ってる?」


・・・・・・不登校の俺がそんなことを知るはずもない。


「3/27ね」

すると、レイがそう言った。

「え? なんで・・・・・・」

「市のホームページに一覧が載ってる」

「・・・・・・そうなんだ」



>>次のページへ続く
 
カテゴリー:人生・生活  |  タグ:すっきりした話, 修羅場・人間関係, ためになる話, これはすごい, ためになる話, ちょっといい話,
 


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