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バイト帰りに出会った女子高生との数年間の話
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348 :1 ◆Rvi/ZSmlcg @\(^o^)/:2016/09/11(日) 00:59:36.66 ID:NvS4gIBG.net
それから十日ばかり経った。
戸田さんからは避けられている節がある。理由というと思い当たるものが一つしかない。やはり反射的に手を払ってしまったことだろう。
主に、というか全面的に俺が悪いのだから俺から話すべきなのだろうが取り付く島もない。そうもなると毛ほどしか存在しなくても確かにあった自信とかってものが揺らぐ。
349 :1 ◆Rvi/ZSmlcg @\(^o^)/:2016/09/11(日) 01:02:12.21 ID:NvS4gIBG.net
俺という人間は本当に弱い人間だと思う。おそらく依存体質なのだろう。
高校時代から今まで伊達に依存し、大学では白石に、今は戸田さん。
きっと無条件で肯定してくれる人間が欲しくて、寂しいのが怖いのだ。
そして こんな分析まがいのことをするのもきっと、戸田さんが少し距離を置いた状況で白石に依存する言い訳なのだろう。
本当に醜くて、賢しい男だ。
こうやって自己嫌悪するくせに、それでも白石に会いに いつもの場所に足が向いているのが特に最悪だ。
「来るなら連絡してよ…」
「…すまん…」
そうは言いながら白石の新しい連絡先は聞いていない。
「全く…毎回2、30分待ってから帰るんだから。」
些かふくれっ面の白石はそう言っていじっていたギターをしまって俺を見た。
「ちょっと歩こ?ね?」
俺は本当に弱いと思う。自分から言うべきなのに、欲しい言葉を言ってくれる白石に甘えている。
それから十日ばかり経った。
戸田さんからは避けられている節がある。理由というと思い当たるものが一つしかない。やはり反射的に手を払ってしまったことだろう。
主に、というか全面的に俺が悪いのだから俺から話すべきなのだろうが取り付く島もない。そうもなると毛ほどしか存在しなくても確かにあった自信とかってものが揺らぐ。
349 :1 ◆Rvi/ZSmlcg @\(^o^)/:2016/09/11(日) 01:02:12.21 ID:NvS4gIBG.net
俺という人間は本当に弱い人間だと思う。おそらく依存体質なのだろう。
高校時代から今まで伊達に依存し、大学では白石に、今は戸田さん。
きっと無条件で肯定してくれる人間が欲しくて、寂しいのが怖いのだ。
そして こんな分析まがいのことをするのもきっと、戸田さんが少し距離を置いた状況で白石に依存する言い訳なのだろう。
本当に醜くて、賢しい男だ。
こうやって自己嫌悪するくせに、それでも白石に会いに いつもの場所に足が向いているのが特に最悪だ。
「来るなら連絡してよ…」
「…すまん…」
そうは言いながら白石の新しい連絡先は聞いていない。
「全く…毎回2、30分待ってから帰るんだから。」
些かふくれっ面の白石はそう言っていじっていたギターをしまって俺を見た。
「ちょっと歩こ?ね?」
俺は本当に弱いと思う。自分から言うべきなのに、欲しい言葉を言ってくれる白石に甘えている。
351 :1 ◆Rvi/ZSmlcg @\(^o^)/:2016/09/11(日) 01:04:56.40 ID:NvS4gIBG.net
ゆっくり歩いて20分もすると川を越えて大きな公園がある。
二人で微妙な距離を維持して そこに歩いていく。会話とも呼べるものなんてほとんどない。
それでもこの日の白石が些か上機嫌だったのは分かっていた。心なしか足取りが軽そうに見えるのもそのせいだろう。
まぁ彼女と会わず自分に会いに来ていると解釈したのであれば納得できなくもない。
公園は随分と大きいところだったが街灯は少ない。
何となく昔を思い出すのは何故だろうか。
「そういや音楽の方はどうなんだ?」
思いついたのをそのまま口にしたので何とも漠然とし過ぎた聞き方だったが
「バンドの方でプロのレーベルからちょっと声かけられてるかな。」
自信満々といった具合に返事が返ってきた。
「へぇ!良かったじゃん!」
俺も自分の事の嬉しかった。高校の頃から言っていたことが少しずつ実現に向かっている。嬉しくて、同時に羨ましかった。
俺も昔は作家になりたいなんて ささやかな夢があった。歳を取ったのだろう。純粋に、ただひたすらに目標に向かって行けている白石が羨ましかった。
352 :1 ◆Rvi/ZSmlcg @\(^o^)/:2016/09/11(日) 01:07:07.10 ID:NvS4gIBG.net
「いやいやまだまだだよ。でもそんな感じだから音楽で忙しくてね・・・お兄さんから彼氏できなかったんだよねーww」
「・・・誰か紹介してやろうか?」
この言葉を笑いながら言うのに幾らか間を使った。できないくせにと白石は即座に言って笑う。
お察しの通りである。そんなことが出来るなら度々白石の所に足を運んだりなんかしないだろう。
「でもいい人だと思うな。お兄さんの彼女。お兄さんのいいところに気づけるんだもんww」
はにかみ笑いで俺の方を見て白石が言う。
今考えればお世辞だったのかもと思うけど、その時の俺は大分浮かれたんだ。
だって社会人になってから たぶんその言葉が一番うれしかったから。
353 :1 ◆Rvi/ZSmlcg @\(^o^)/:2016/09/11(日) 01:09:02.35 ID:NvS4gIBG.net
いい気分のまま我が家に帰ると家の横で人が倒れていた。
というか戸田さんが寝てた。
若干呆れも入っていたがとりあえず声は掛ける。
「戸田さん、戸田さん!こんなとこで寝てたら風邪ひきますって…」
「んー…こじまくーん?あと十分…」
「いやダメですって。ホントに風邪ひきますから…」
そういって体を揺するが起きる気配がない。
数秒考えて、鍵を開けて扉をひらっきぱなしにして「寝てる戸田さんが悪い」と確認も取らずに抱きかかえてそのまま家の中へ。
靴を脱がせてからベットに連れていって戸田さんを剝く。
この行程に若干の慣れを覚えている自分がいることに何とも言えない感情を覚えるがとりあえず下着だけ残して後は全て脱がせる。
354 :1 ◆Rvi/ZSmlcg @\(^o^)/:2016/09/11(日) 01:12:09.42 ID:NvS4gIBG.net
「やっぱり大変なのかな…」
付き合いだしてから気づいたことだが戸田さんは金曜は会社近くで飲むことが多い。結構気苦労が多いのかもしれない。
「んんー?」
不意に戸田さんが寝息をあげてむくっと体を起こした。
「あ、大丈夫ですか?」
「あれー?えへへーwwこじまくーん…んん?小島君?」
あ、酔ってる。会社では もうちょいしっかりしているんだが・・・
「俺の家の前で寝てましたから とりあえず家に入れて寝かせて脱がしましたけど かまいませんでしたか?」
「えっち〜ww」
上機嫌だな。戸田さんは意外にも酒好きだ。同時に俺の周りの奴らと同じく好きな割には強くない。
「けど どうしたの?今日定時近くで上がって言ったよね〜?ww」
「あー…」
どう説明しろと?
「元カノと散歩して元気づけてもらいました。」ってか?
言えるわけがない。
355 :1 ◆Rvi/ZSmlcg @\(^o^)/:2016/09/11(日) 01:15:26.41 ID:NvS4gIBG.net
「…女の子?」
悟り切ったような目で見ていた戸田さんの その言葉を理解するのに数秒かかり、声すら出せなかった。
「やっぱりか〜…」
「いや、いないですって!」
否定するしかなかった。疚しさとかそういうのを戸田さんよりも俺自身に言い訳するためにだった。
「別に嘘つかなくてもいいよ〜怒ってないし。小島君がばれないように女の子二人を同時に相手にできる位器用だと思ってないしね〜ww」
それを信用といっていいのか分からなくて何とも言えない表情をした。
それでも確信に似た何かを感じたようで戸田さんは俺の声を柔らかく流す。
「怒ってないからさ…私、まだ、かのじょ…でいて、いいよね?」
その言葉は、俺が聞いた中で一番怯えた様な表情で同時に一番弱々しい声だった。
「うわき…」
「へ?」
「うわき、してもべつ…にいいよ…?でも、私が、いちばん、がいい…」
それ以上戸田さんは何も言わなかった。
戸田さんの体が横に倒れていく。
357 :1 ◆Rvi/ZSmlcg @\(^o^)/:2016/09/11(日) 01:18:49.67 ID:NvS4gIBG.net
「…戸田さん?」
雰囲気的にいたたまれなくなって寝たふりとかかと思ったが どうやらこのタイミングで本気で寝落ちしたらしい。
「…何だかなぁ」
そっと戸田さんにタオルケットだけかけてベランダに出て静かに煙草を吸い始める。
どうするにしろ早めにした方が傷が浅いのは分かってる。分かっていて怖いのだ。人を傷つけるのがただ怖いのだ。
酔っていたのだろう。次の日に起きてみると戸田さんは何事も無かったかのように振る舞っていた。俺もそれに救われて何事もないかのように振る舞った。
戸田さんは最初から変わらず俺をぐいぐい引っ張っていく人だった。だからその日の散歩も戸田さんの思い付きみたいなものだった。
夜になっても眠らない街とはいえ夜道の散歩は昼とはまた違った風情を見せたりする。ゆっくりと戸田さんと雑談しながら歩く。
360 :1 ◆Rvi/ZSmlcg @\(^o^)/:2016/09/11(日) 01:22:11.07 ID:NvS4gIBG.net
戸田さんが「あっちに行ってみよう。」というと次は俺が「こっち色々面白そうな気配がする!」
なんて言ってフラフラあてどなく彷徨った。
途中から「この方向ではまずい」とは思っていた。思っていたが口には出さなかった。
会わないだろうなんて高をくくっていた。
「あっちに行きませんか?」
なんて一言言えば良かったのも分かっていた。それでも口に出さなかった。
「へぇ、ここからこう駅に出るんだ!」
そこは白石がいつも演奏している駅だった。
新たな発見に純粋に驚く戸田さん。
対して俺はその場に来てようやく微かな期待感とそれを優に超える焦りとかに近い感情を持っていた。
そしてその焦りは現実になる。
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