私が初恋をつらぬいた話
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38 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 15:11:56.51 ID:+beSXCVE0
高校2年が始まる。
先生はこちらに戻って来たが、すぐに会う事は無かった。
会って話がしたい、声が聞きたいとは思ったものの、なんとなく会いに行く口実が出来ずにいたのだった。
それでもメールだけは続いていた。
そんな感じで日々は過ぎ、その年の9月。
私がずっと歌を習っていた事を聞きつけた高校の先生から、文化祭の催しで歌ってみないか?とのお誘いがあった。
校内でも歌が好きな生徒を集め、楽器の得意な先生達の伴奏に合わせて、生徒が好きな歌を歌うという企画。
最初こそ断ったものの、友達からの何で引き受けなかった?の声や、打診してきた先生の猛プッシュもあり、結局私は1曲限定という約束で引き受けた。
引き受けたは良いものの、何を歌って良いのかが解らない。
面倒な事に巻き込まれたな…と思いつつ、私は友人達に歌って欲しい曲は無いかを聞いてみた。
様々な歌が提案されたが、その中でも特に仲の良かった友人のリクエスト、Fayrayのtearsという曲を歌うことになった。
女子高生の大好きな、切ないラブソング。
初めて聞いた曲だったが、何より歌詞が甘酸っぱくてなんだか恥ずかしく、歌う約束をした事をちょっとだけ後悔した。
文化祭も間近になった時、私は そういう経緯で初めて人前で歌を歌うことになったと、堺先生にメールをした。
先生からは、絶対に見に行くと返事があった。
私は先生にラブソングを聞かれることが物凄く恥ずかしくて、やっぱりちょっと後悔をしたのだった。
39 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 15:13:46.70 ID:LUqPOmqkP
きゅんきゅんしながらみてるよ〜
高校2年が始まる。
先生はこちらに戻って来たが、すぐに会う事は無かった。
会って話がしたい、声が聞きたいとは思ったものの、なんとなく会いに行く口実が出来ずにいたのだった。
それでもメールだけは続いていた。
そんな感じで日々は過ぎ、その年の9月。
私がずっと歌を習っていた事を聞きつけた高校の先生から、文化祭の催しで歌ってみないか?とのお誘いがあった。
校内でも歌が好きな生徒を集め、楽器の得意な先生達の伴奏に合わせて、生徒が好きな歌を歌うという企画。
最初こそ断ったものの、友達からの何で引き受けなかった?の声や、打診してきた先生の猛プッシュもあり、結局私は1曲限定という約束で引き受けた。
引き受けたは良いものの、何を歌って良いのかが解らない。
面倒な事に巻き込まれたな…と思いつつ、私は友人達に歌って欲しい曲は無いかを聞いてみた。
様々な歌が提案されたが、その中でも特に仲の良かった友人のリクエスト、Fayrayのtearsという曲を歌うことになった。
女子高生の大好きな、切ないラブソング。
初めて聞いた曲だったが、何より歌詞が甘酸っぱくてなんだか恥ずかしく、歌う約束をした事をちょっとだけ後悔した。
文化祭も間近になった時、私は そういう経緯で初めて人前で歌を歌うことになったと、堺先生にメールをした。
先生からは、絶対に見に行くと返事があった。
私は先生にラブソングを聞かれることが物凄く恥ずかしくて、やっぱりちょっと後悔をしたのだった。
39 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 15:13:46.70 ID:LUqPOmqkP
きゅんきゅんしながらみてるよ〜
40 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 15:14:21.63 ID:+beSXCVE0
ありがとうございます。
文化祭当日。私達の公演は14時から。
一曲限定と条件を提示してしまったが為にトリを持たされるという事を、私はその日の朝に初めて知らされた。
友人達は恋人とデート状態だったので、ただ一人何もする事が無い私は適当にその辺を見回ると、喧騒から逃げるように屋上に向かった。
やっぱり引き受けるんじゃなかった…
激しく後悔しつつ屋上のベンチに座り2時間くらいボーっとしていると、堺先生からのメールが鳴った。
「高校に着きました。今、どこにいますか?」
単純に歌を見に来るだけだと思っていた私はあまりに早い到着に驚いて、呆けていた頭も一瞬で吹っ飛んだ。
「何もする事が無くて、B棟の屋上に居ます。」
久しぶりに会えるドキドキと恥ずかしさで一人ソワソワしていると、返事を返してから15分くらいで、先生は屋上に現れた。
私に気がついた先生は、ニコニコしながら懐かしそうにこちらに歩いてくる。
昔と何も変わらないその姿を見て、心臓がドクンとなった。
「お久しぶりです、元気でしたか?」
「先生こそ、元気でしたか?」
自然と笑みがこぼれる。
「色々あったけど元気ですよ。…渚さんは変わりましたね、見違えましたよ。」
「先生はあまり変わりませんね。」
見違えたという言葉に不思議な心地良さを感じながら、数年ぶりの先生の柔らかい声に身も心もトロけていた。
43 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 15:16:26.37 ID:+beSXCVE0
久しぶりに会えた嬉しさに胸が一杯になって、何を話せばいいのか解らなくなった私は、さっきまで座っていたベンチにまた腰を下ろした。
先生も同じように、私の隣にチョコンと座る。
昔とは何かが違う心地良い沈黙の後で、今度は私から話しかけた。
「…先生って大変ですね。数年であっちに行ったりこっちに行ったり。」
私がしんみりそう言うと、先生はフフっと笑いながら小さくフルフルと首を振った。
「そうでもないですよ。元々引越し好きなんで、丁度いいです。」
「引越しが好きとか、変わってますね。」
私が笑うと、先生はちょっと照れた様に頭をかいた。
「よく言われます。でもどんなに快適な部屋に住んでいても、またすぐ引っ越したくなっちゃうんですよ。」
「ずっと同じところに居るのが苦手なんですか?」
「いや、そういう訳じゃ無いんですけど、部屋が変わると気分が変わるというかなんというか…」
「模様替えのようなもの?」
「そうですね、多分そういう感覚なんだと思います。」
引越しが好き…という事は、またすぐ違う所に行ってしまうのだろうか…
「じゃあまたすぐ、他の学校に移動したりするんですか?」
「いや、僕が好きなのは あくまで部屋を変えるって事ですから。」
「そうなんですか。」
「です。自分の好きな地域の中で、部屋だけを変えるんです。今回戻ってきたのも、自分から希望出したんですよ。ここが好きだから。」
先生はニコっと笑った。
ここが好き、自分から希望を出した…
別に私に会いたくてなんて言われてもいないのに、何故だか その様な事を言われた感じがして、また心臓がドキッとした。
44 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 15:18:14.95 ID:+beSXCVE0
それから他愛の無い話を途切れ途切れにしていると、突然私を呼び出す校内アナウンスが流れた。
ハッと気がついて時計をみると、もう13時半。
先生に会えて浮かれていた私は、本番前の最後の音合わせをすっかり忘れていたのだ。
「今の、渚さん呼び出してましたよね?」
先生は驚いて私を見た。
「……最後のリハーサル忘れてました。」
先生は珍しく大きな声で笑うと、早く行きなさいと私の肩をポンと叩いた。
「ごめんなさい、行ってきます。」
「はい、ではまた後で。」
呼び出された恥ずかしさと、先生に触れられたドキドキで耳が熱くなっているのを感じながら、私は急いで職員室へと向かった。
45 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 15:19:25.94 ID:+beSXCVE0
遅れたものの、リハーサルも無事に終了。スタンバイの為に会場に向かう。
会場となっているのは来賓玄関前のだだっ広い玄関ホール。
その場所は3階まで大きな吹き抜けになっていて、そこでストリートライブ形式で行われる予定だった。
14時になり公演スタート。
最初こそまばらだった観客達は、一年生の数名が歌い終える頃には相当な数になっていた。
ここまで観客が増える事を予想していなかった私は、やっぱりまた激しく後悔していたのであった。
あと一人で自分の番となった時、私は初めて知り合いを探して観客達の顔を見渡した。
一番前に友人達数名。その少し後ろに友人達の家族がチラホラ。
が、先生の姿はない。
あれ?っと思って上に目をやると、先生は2階からこちらを眺めていた。
ちょうど歌うときに立つ場所の真正面。
なんでよりによってソコなんだ…しっかり見えちゃうじゃないか…と心の中でツッコミを入れていると、すぐに自分の番は回ってきた。
46 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 15:20:44.86 ID:+beSXCVE0
促されるまま、皆の前に立つ。
私は観客達の顔を見ないようにしながら、緊張を抑える為に2.3回深呼吸をすると、準備OKの合図をした。
声の無いせーので、歌い始める。
歌いながら少し上に目線をやると、先生と目が合った。
いつもより少し真剣な顔で、でもやっぱりニコニコしながら先生は私をじっと見ていた。
途端に頭が真っ白になって目が離せなくなる。
甘酸っぱくて恥ずかしかった歌詞は、いつのまにか私の気持ちと同調して、気がつくとただ淡々と先生にだけ聞かせているかのように歌っていた。
歌い終わりホッと一息深呼吸して一礼すると、シーンとしていた会場は割れんばかりの拍手に包まれた。
途端に我に返って恥ずかしくなり、私は逃げるように早足で その場から立ち去った。
真っ赤な顔で一目散に屋上を目指す。
無意識に先生だけ見て歌っていた事が凄く恥ずかしく、なんであんな事になっちゃったんだろうと後悔で自分を責めた。
屋上について携帯を開くと、友人達からメールが来ていた。
良かったよ〜凄かったよ〜周りの人も褒めてたよ〜という お褒めの言葉に少しだけ嬉しくなってニヤニヤしていると、渚さんっと堺先生の声がした。
「やっぱりここにいた。」
ニコニコしている先生と目が合うと、また私の顔はカーっと熱くなった。
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