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大卒だがまた大学に入る事を決心させた出来事
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659 名前:ミノル ◆SH9TJIMw 投稿日:02/06/03 23:40
待ちに待った6時。待ち合わせ場所に彼女は すでに来ていた。
「ウオ、スマン。つい張り切りすぎて遅れてしまった」
「いえ、無理に呼んじゃって ごめんなさい」
「で、何を食うのでしょうか。あ、俺は昼に吉牛だったので、それ以外ね」
ここで彼女が初めて笑うのを見た。なんともいえない笑顔だった。
彼女からの提案は、駅前のモスだった。
なんだか張り切ったデートにしては貧弱だなと思いつつも、ふたりで楽しくモスに向かう。安くても手軽でもうれしかった。
楽しい食事を終えて、僕は彼女を家まで送ることにした。
「え、でも もう遅いから」
「遅いから送るんじゃねえか。何をおっしゃっているのでしょうか?」
などとおどけながら、すっかり夜がふけた住宅街を歩く。
もうすぐ家に着くと彼女が言ったとき、ポツンと公園があった。何やら不穏な空気。よくない手合いがたむろしている。
「オイ、タカコ! 何やってんだよ!」
そのうちのひとりが、しんと静まり返った住宅街で彼女を呼んだ。
660 名前:ミノル ◆SH9TJIMw 投稿日:02/06/03 23:50
ヤバイ。かなりヤバイ状況です。向こうは5人、こっちは2人。
もう心臓をバクバクさせながら、僕はヤツらが近付いてくるのを待つ。
「タカコ! お前だれと歩いているんだよ」
「え、あの、バイトで一緒の人……」
ヤバイ、矛先が僕に向いている。
「オイ、お前よう。何タカコに手ェ出してんだよ」
「はぁ? 俺は何も——」と言った瞬間に殴られた。
そのあとは5人がかり。深夜の公園でボコボコに殴る蹴る。
しばらくヤツらに空き放題やられたあと、僕はノビてしまった。そんな朦朧とした意識の中、ヤツがとどめの一言。
「お前、タカコが普通だと思ってんの?」と最後の蹴り——。
待ちに待った6時。待ち合わせ場所に彼女は すでに来ていた。
「ウオ、スマン。つい張り切りすぎて遅れてしまった」
「いえ、無理に呼んじゃって ごめんなさい」
「で、何を食うのでしょうか。あ、俺は昼に吉牛だったので、それ以外ね」
ここで彼女が初めて笑うのを見た。なんともいえない笑顔だった。
彼女からの提案は、駅前のモスだった。
なんだか張り切ったデートにしては貧弱だなと思いつつも、ふたりで楽しくモスに向かう。安くても手軽でもうれしかった。
楽しい食事を終えて、僕は彼女を家まで送ることにした。
「え、でも もう遅いから」
「遅いから送るんじゃねえか。何をおっしゃっているのでしょうか?」
などとおどけながら、すっかり夜がふけた住宅街を歩く。
もうすぐ家に着くと彼女が言ったとき、ポツンと公園があった。何やら不穏な空気。よくない手合いがたむろしている。
「オイ、タカコ! 何やってんだよ!」
そのうちのひとりが、しんと静まり返った住宅街で彼女を呼んだ。
660 名前:ミノル ◆SH9TJIMw 投稿日:02/06/03 23:50
ヤバイ。かなりヤバイ状況です。向こうは5人、こっちは2人。
もう心臓をバクバクさせながら、僕はヤツらが近付いてくるのを待つ。
「タカコ! お前だれと歩いているんだよ」
「え、あの、バイトで一緒の人……」
ヤバイ、矛先が僕に向いている。
「オイ、お前よう。何タカコに手ェ出してんだよ」
「はぁ? 俺は何も——」と言った瞬間に殴られた。
そのあとは5人がかり。深夜の公園でボコボコに殴る蹴る。
しばらくヤツらに空き放題やられたあと、僕はノビてしまった。そんな朦朧とした意識の中、ヤツがとどめの一言。
「お前、タカコが普通だと思ってんの?」と最後の蹴り——。
662 名前:ミノル ◆SH9TJIMw 投稿日:02/06/04 00:02
気が付くと、縛られている。動けない。なんだか古くて狭い家にいるようだ。あたりは真っ暗。
ときどき、うめくような声が聞こえる。目を凝らすと、いきなり電気がついた。
……さっきの5人が、タカコを犯していた。
「よう、お前よ、タカコが普通じゃないってことを知らないようだな」
そういうと、ヤツはタカコの左手を乱暴につかむ。
「やめてー——!!」と絶叫する彼女。聞いたこともないような大声。
どさりという音とともに、僕の前に何かが落ちた。包帯を巻いた腕。根元から取れている。
タカコは義手だった。
664 名前:ミノル ◆SH9TJIMw 投稿日:02/06/04 00:10
もう そのあとはよく覚えていない。
どうやら僕は それを見せられて激昂したらしく、縄を無理やり解いて、ヤツらのところに飛び込んでいったらしい。深夜の大格闘。
覚えているのは、半裸のタカコをかばいながらヤツらに蹴りを加えていたこと。こっちは靴まで履いた状態、向こうは全裸というのもあった。
結局、最終的には引き分けとも言える状態だったけど、ヤツらは倒れても あきらめない僕に ほとほと呆れて、捨て台詞を残して出て行ってしまった。
あとに残された僕とタカコ。
交通事故で左腕を失ったこと。この体のせいでいじめが絶えなかったこと。
そのいじめがエスカレートして、ついには ああいった手合いの慰み者にされていたこと等々。
涙でグシャグシャになったタカコは話してくれた。
どうやら ここはタカコの部屋で、やっと借りることができたところらしい。
夕食がモスだったのも、ムチャクチャ貧乏だった彼女の精一杯の贅沢だった。
683 名前:ミノル ◆SH9TJIMw 投稿日:02/06/04 10:34
次の日、バイト先の忘年会兼クリスマスパーティが開催されると告知があった。
年に一度の大騒ぎらしく、古株連中は浮いている。よほど楽しいらしい。
僕はタカコとのそんな件があったので すっかり落ちていたので、当初は そんな催し物に参加する気は さらさらなかった。
それよりもまず、僕は顔を始め全身あざだらけ。周りにそっちの言い訳をするのに難儀した。
それから数日経っても、タカコは全然バイト先に顔を出さない。
バイト仲間に聞くと、一度シフトが入っていたんだけど、体調不良で休んだらしい。
「体調不良」の理由をバイト仲間の中で唯一知っている僕は、そんな痛ましい彼女を思い、胸が締め付けられていた。
684 名前:ミノル ◆SH9TJIMw 投稿日:02/06/04 10:40
いても立ってもいられなくなった僕は、あの日の記憶を頼りに、彼女の家の近くまで行ってみた。
とはいうものの、覚えているのは5人組に袋にされたあの公園まで。
そこから先、タカコの家は どこにあるのかわからない。
でも僕は なんだかひらめくものがあって、その方面に向かって歩き出した。
冬の夕刻の話だから、歩き出すとすぐにあたりは暗くなってくる。
ああでもないこうでもないと道に迷いながら、おぼろげながら覚えている道の特徴をつかんでその公園に向かう——きっとあの公園だ。
あの日の忌まわしき事件がフラッシュバックする。頭がキリキリする。
全身ピリピリさせながら公園のゲートをくぐると、すっかり漆黒の闇になってしまった公園のベンチに誰か座っている。
タカコだった。
685 名前:ミノル ◆SH9TJIMw 投稿日:02/06/04 10:48
……!! 彼女だ!!
駆け寄りたいのをグッと我慢して、さもたまたま通りがかったように振舞う。
「アレ? どうしたのこんなところで。偶然だね」
何を言っているんだ、僕は。でもこの間のことには言及したくなかった。
「……ミノル君……私……あの、私……」
マズイ、泣いてしまう。
「もうミノル君とは——」
「あのさ! こんどバイト先でパーティがあるんだよ! タカコちゃんも行くよな!?」
もう必死だった。彼女をとどめられるなら、手段を選ばなかった。
686 名前:ミノル ◆SH9TJIMw 投稿日:02/06/04 10:54
参加できないの一点張りの彼女。でもここで諒解してしまうと、僕は彼女となんだか ここでお別れのような気がしていた。
必死の説得、実に2時間。冬の寒空の中、体が凍りそうなのも忘れて、やっと僕はタカコをパーティに参加させる約束をさせた。
そのパーティ当日。古株連中が前々から浮かれていた通り、ムチャクチャな内容で、会は大いに盛り上がった。
タカコもなんだか楽しそうだった。時折見せる笑顔がうれしかった。
そういえばタカコをいじめていた■が今日は顔を出していない。
友人にそのことを尋ねると、「ああ、アイツ? 辞めたよ」とのこと。
なんでも、タカコに対するいじめがエスカレートしたのに対し、周りが引き始めて墓穴を掘ったらしい。そんな状況の中、■はバイトを辞めざるを得なかったそうだ。
そう言われて始めて気がついたが、タカコの周りにも数人、楽しそうに話し掛けている女の子がいる。
687 名前:ミノル ◆SH9TJIMw 投稿日:02/06/04 10:59
大盛況の中、パーティはお開き。連中は三々五々、余韻にひたりながらバラバラと散っていく。
僕はタカコを必死に探した。女の子数人の中に彼女はいた。マズイな、声をかけづらい。
「あ、ミノル君。タカコちゃんは ここだよ」
そのうちのひとりが僕に声をかけてきた。頭が混乱する。
タカコは真っ赤な顔をして下を向いている。どうやら僕も真っ赤らしい。
いつの間にやら、バラバラになっていた連中がひとかたまりになって、僕らふたりをニヤニヤ見ている。
そんな気まずい雰囲気の中、友人が、
「ホラ、ミノル。送っていってやれよ!」
その声をきっかけに、僕らふたりは連中の冷やかしと祝福の中、タカコの家に向かってリリースされた。
688 名前:ミノル ◆SH9TJIMw 投稿日:02/06/04 11:10
ふたりであの日と同じ道を同じ時間帯に歩く。
しばらく沈黙が続く。でもちょっとだけ違うのは、僕らが手をつないでいたこと。どっちからって感じでもない。いつの間にか、自然にお互いが手を取り合っていた。
例の公園の前に来てしまった。僕は思わず彼女の顔を見ると、「ミノル君、ウチに来てくれる?」と言われた。
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