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俺と犬と女の子の話
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64 :名も無き被検体774号+:2012/03/22(木) 23:42:26.18 ID:0FpYAuAX0
2月暇だったけど暖かくなってから忙しくなってきた

年々患畜減ってきてるけどな

それは冷めるな。なんだそれって思うわ。

協議会にでてる飼い主さんもそんなこと言ってたな、完全に公平な審査が期待できないことあるって


65 :名も無き被検体774号+:2012/03/22(木) 23:50:04.22 ID:mav3knV20
>>64
冬場は寒いせいか売上落ちるよね

完全に平等ってのは難しいと思う

俺自身も「あ、これ補正入ってるな」と思うことはあった

でももう少し何とかしようがあったんじゃないかとも思う



66 :名も無き被検体774号+:2012/03/22(木) 23:54:13.51 ID:mav3knV20
それでも俺はなかなか訓練から離れることはできず、競技会にも出続けた。

ただ、今度はアマチュアではなくて一般(自由参加だけど実質プロと見習いばかり)の部で出るようになった。

そうすればもう少し高いレベルで評価されるんじゃないかと思った。

でも実際はそんなこと無かった。

一般の部でも表彰台は常連だったし、何度か優勝もした。

それはプロが6ヶ月(預かり訓練の一般的な期間)で仕上げる物を、俺は常日頃から一緒にいるという環境でやっているのだから、ある程度は仕方なかったのかもしれない。

それでも俺から見るとはるか上のレベルの人が自分と同じ点数だったりするのが嫌だった。

結局大学4年の秋、研究室に所属するために一人暮らしをすることになるのを理由に訓練から離れた。



67 :名も無き被検体774号+:2012/03/23(金) 00:04:04.54 ID:7FRajRda0
その翌年、恵は付き合っていた彼氏と結婚すると言って関東へ向かった。

何度も2人で遊びに行ったりしたけど、最後まで何も無かった。

後で聞いたら「>>1なら何されても良かったけど、何もしてこないから黙ってたw」と言われた。

そして迎えた6年生の秋のある朝。

目覚めると1通のメールが入っていた。

差出人は先生の奥さん、件名は「お知らせ」

いまだ目覚め切らない頭でメールを開くと「今朝主人が亡くなりました」とあった。

一瞬何が起きたか分からなかった。

それでもすぐに実家と、唯一連絡の取れるクラブの友達にメール/電話をして式に間に合わせた。

研究室は通夜と告別式の両日休むように伝えた。



68 :名も無き被検体774号+:2012/03/23(金) 00:07:12.38 ID:7FRajRda0
葬儀会場は大学の傍だった。

見慣れた顔が並ぶも、どうしても先生が亡くなったことを受け入れられなかった。

それでも棺に入った先生を見ては泣き、そして最後に知り合いの訓練士が言った言葉で号泣した。

「(これだけ汚い世界でも)あの人のことを悪く言う人は一人もおりませんでしたなぁ」

式場から泣きながら帰り、少し落ち着いたところで研究室に顔だけ出した。そこで卒業研究の指導教官と遭遇。

「なんで今日来なかったん?」

「知り合いの葬式に行ってまして……(つか連絡したやろ)」

「そんなことで休んだんか!?」

この時は迷わず殴るべきやった。



69 :名も無き被検体774号+:2012/03/23(金) 00:10:41.17 ID:7FRajRda0
それから色々家庭的にも不安定な中で国家試験を迎えた。正直受かるだけの余裕はなかったけど、何故か合格。

翌春からは某大学病院の研修医になることが決まった。

ちなみに卒業式後の謝恩会は、指導教官が来るという理由で不参加だった。


そんなこんなで大学病院の研修医としての獣医生活がスタートした。

家に帰れない日も多かったので犬は連れてこなかった。

周りに恵まれていて、忙しいながらに楽しい毎日だった。

関東の大学だったので恵や、その旦那さんとも何度か飲みに行ったりした。



70 :名も無き被検体774号+:2012/03/23(金) 00:13:05.05 ID:7FRajRda0
あ、1つ書き忘れた。

学生時代、犬繋がりで彼女ができた。何度か競技会を一緒に見に行ったりもした。

でも周りの俺へのクレーム(色々でっちあげられたりもしたけど)が全て彼女に行った。

「>>1が犬に関わり続ける限り、きっと私へのクレームは無くならない」という言葉で退学届を書いた。

まあこれは同級生の説得で教授に出す前に没収されて、一応は獣医になった。

でもこのあと、それまで運営していたサイトを全て消去し、犬関連の知り合いとは可能な限り縁を切った。



71 :名も無き被検体774号+:2012/03/23(金) 00:15:48.96 ID:7FRajRda0
研修医を終えてからどうしようか迷った。

最終的には地元に戻るつもりでいたけど、このまま関東の1次診療を知らないのもどうかと思った。

結果、知り合いが勤めていた病院で働くことにした。

そこが一番自由が効きそうだったから(実際かなり自由にやらせてもらった)。

それでも色々なことがあってうんざりしたので、ものの3ヶ月程度で大学院進学を検討。

研修医時代の大学に行き、教授と相談して3年間は勤めてからということで話をした。



73 :名も無き被検体774号+:2012/03/23(金) 00:19:53.30 ID:7FRajRda0
そしてなんとか2年が過ぎた頃、久し振りに恵から電話がかかってきた。

恵「久し振りw」
俺「久し振りやね」

恵「>>1って土曜日休み?」

俺「水日は休みやけど、土曜日は仕事やわ」

恵「おっけー。じゃあまた連絡するw」

その時は何のことか分からなかった。そして翌土曜日、珍しく俺指名の患者が来た。しかも新患。

誰かと思って見ると、恵がいた。



74 :名も無き被検体774号+:2012/03/23(金) 00:23:23.13 ID:7FRajRda0
俺「どしたん?」

恵「うん、うちの子のリンパが腫れてるの」

そう言って連れてきたのは、最初に俺が会ったのとは違うラブラドールだった(ちなみに最初のはGシェパードだった)。

恵「ネットで色々調べてみたんだけど、重い病気だったら>>1に診てもらおうと思って連れてきちゃった」

見た目は健康、でも全身のリンパが腫れている。中年齢のラブラドールだし、この時点で大凡の診断は付いていた。

「とりあえず検査するから少し預かるわ」

そう言って奥に引っ込んだ。



75 :名も無き被検体774号+:2012/03/23(金) 00:26:34.55 ID:7FRajRda0
いくつか検査をして病気と病状を確定。

俺「調べたんなら予想はしてるかもしれんけど、病名はリンパ腫で間違いないわ」

恵「やっぱり、そっか……」

俺の前で一度も泣いたことのない恵が、その時は旦那さんの胸で泣いていた。

それから2人を相手に、治療法や寿命に付いて話をした。

今すぐ決めなくても良いと言ったけど、恵はその場で方針を決めた。

「抗癌剤治療をお願いします、先生。」



76 :名も無き被検体774号+:2012/03/23(金) 00:29:32.51 ID:7FRajRda0
それからしばらくは2人で通院してたけど、ある時恵だけがやってきた。

俺「旦那さんは車?」
恵「ううん、今日は私だけ」

俺「家からやと車無いと来れへんやろ?」
恵「うん、だから免許取ったw」

恵は犬のために免許を取っていた。

そしてその日、働き出してから連れてきていたライリックと久し振りに対面。

第一声は「ライリック、太ったね」だったw



77 :名も無き被検体774号+:2012/03/23(金) 00:35:08.76 ID:7FRajRda0
動物の腫瘍というのは、残念ながら亡くなることが圧倒的に多い。

それまでうちの病院は担当医制が無かったけど、特に腫瘍症例や末期患者はなるべく同じ人が診た方が良いという考えの下、一人で診ることが多かった。

これに追随して自分で診るようになった勤務医も多かった。

そして、これはどこまでやるのが正しいのか分からないけど、俺はそういう症例は"なるべく飼い主の希望に沿う"治療をしたかった。

だから真夜中だろうが休みの日だろうが、飼い主から連絡があればすぐに俺に連絡してくれと周りに言っていた。

恵の場合は携帯の番号も知っていたから「何かあったらすぐに連絡してくれ」と言っていた。

それでも恵は絶対に夜中や休みの日には連絡をしてこなかった。

そして翌朝一番に「調子が悪い」と言って連れてくることが何度もあった。

そのたびに「担当医は俺だ。飼い主が獣医の予定なんか気にするな」と言い続けたけど、最後まで恵の姿勢は変わらなかった。



>>次のページへ続く
 
カテゴリー:読み物  |  タグ:青春,
 


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