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落書きの導き

 

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平日の午後。僕はいつも通り会社を出て、得意先への営業周りをしている。

仕事の話がなくても、顔を出しに行くだけでも仕事。この地道な作業が、わが社で成績を上げる一番簡単な方法だ。

ある程度の成績さえ上げていれば、途中の喫茶店で休憩しようが会社から文句を言われることはない。

こうして会社の外に出て、自分のペースで仕事を出来る今の会社に僕は不満など持っているはずがない。


午後3時。僕は決まって休憩を取る。

毎日喫茶店・・なんてのも正直給料日前には厳しくなるから天気の良い日なんかは、コンビニでスポーツ新聞でも買って公園でゆっくりなんてのが日課になっている。

「あはははっ 俺も昔こんなのやったな・・」

いつもとは違う公園。座ったベンチには 「ゴミ箱を見ろ」 なんて書いてあった。

こうやっていろんな場所を指示して、最後は「馬鹿が見る」なんて書いてあるのがオチだ。

「今の小学生でもこんなことやってるんだな」

なんだか懐かしい気分になった。

家でテレビゲームやネットなどに夢中になってるイメージのある今時の子供達がこうやって公園で、昔の自分達と変わらない遊びをしている。

「どれ・・ここは おじさんが引っかかってやるか」

昔と違い、今の子供達は どんなオチを考えているのか?

まるで自分まで子供に戻ったような、ほのぼのとした気分にさせられる。


ゴミ箱を見ろ・・滑り台の下を見ろ・・トイレのドアを見ろ・・

僕は公園の隅から隅まで歩かされた。

「おいおい・・オチはまだかよ・・」

自分達の時は正直3・4箇所程度で終わらせていた。しかしこれは、それどころでは終わらない。

「マジかよ・・どこまでやってるんだ?この子供達は・・」

普通の人なら ここら辺りで諦めているかもしれない。

何故なら次に指定された場所は電車を乗って隣町だったからだ。
大人なら呆れてやめるだろうし、こんなことに夢中になるような小さな子供達ならそんな所まで行かないだろう。

それでも僕は呆れもしなかったし、諦めもしなかった。

ここまでやるんだから どんなオチを用意してるのか?

僕が期待したオチは、本当にそこまで頑張った自分が滑稽に見えるほど馬鹿馬鹿しいオチだ。


「え〜と・・次は・・」

僕は落書きに導かれるまま隣町まで来た。

その町は昔妻が通っていた学校のある町だった。

仕事でも何度か来ている場所。土地勘は十分だったし、目新しさも感じない場所だ。

次に書かれていたのは、駅前にある商店街のゴミ箱の裏だった。

人通りも少ないわけではない。ここでゴミ箱を持ち上げ、ひっくり返すのは相当恥ずかしいが・・。

僕は周りを気にしながらゴミ箱の裏を覗き込むと「ここからの文字をメモしながら続けろ」と書いてあった。

その下は3文字のアルファベット。

僕は仕事で使っている手帳にそのアルファベットをメモした。


それからまた同じように様々な場所に行かされたのだが、3文字のアルファベットは続いていた。

その文字を見つけるたびに僕はメモをしていく。

僕は そこでピンときた。

「なるほど・・今時の子供らしいねぇ」

これを繋げるとアドレスになるのだろう。

それを開いてみると、僕達の時代で言う「馬鹿が見る」なんてオチが待っているはずだ。

オチ自体は見ていないが、この子供達がやらせたいことが見えた今、多少興味は薄くなったが、僕は最後までそのURLを確認した。


仕事から帰ると僕はパソコンに向かった。

昼間確認したあの落書きのオチを確認するためだった。

「先に寝るよ?」

妻が僕にそう言葉をかけてくる。

結婚して2年目。30歳になったばかりの妻は未だに少し子供っぽい。

それは見た目というのではなく、甘え上手な性格がそう見せているのだろう。

まだまだ甘い新婚生活気分を味わえているのは、妻のそんな性格のおかげかもしれない。

「ちょっと遊んでからすぐ行くから、先にベットに入ってていいよ」

当然妻とは頻繁に愛し合う夜が多い。

これで子供が出来れば変わるのだろうが、それはもう少し先の話になるのだろう。


妻が寝室に行った頃、うちの古いパソコンがやっと立ち上がった。

メル友なんてものはいないが、それでも形だけメールを確認してすぐに昼間メモした手帳を取り出す。

「どれどれ・・え〜っと・・」

僕は手帳と画面を見比べながら、間違いのように打ち込んでいった。

「よし・・これで・・・」

別に何も期待していない。ただどれだけ滑稽なオチが待っているのか。

僕はそれを確認したいだけだったのに・・。



「ようこそ」

黒い画面にピンクの文字でそう出てきた。

「ん・・なんだ・・これは?」

ただの子供の悪戯を期待していた僕の目に入ったのは予想外のものだった。
「ようこそ」と書かれた下には妻が卒業した高校名が書かれている。

そしてその下に

「卒業生ですか?」

「男子ですか?」

そんな簡単な質問がいくつか並び、最後に

「ここの入り口にアクセス出来るのは一度きりです。お間違えのないようにお願いします」

と書かれていた。

僕は、すべての質問にYESと答えた。もちろん僕が卒業生であるわけがない。

嘘だったのだが、おそらくこう答えることで先に進めるのだろうと予想してだ。

もしここで本当の事を答えて入れなかったら、二度と先に進めないかもしれない。


どういう作りなのか僕もパソコンに詳しいわけではないが、一度きりしかアクセス出来ないというのだ。ここは間違えられない。


すべての質問にYESと答えると、画面は僕の予想した通り次のページに進んだ。

「ようこそ。 男子だけの素敵な同窓会へ」

そんな文字が目に飛び込んでくる。

その下には何年卒業と書かれた文字が並び、クリックすることで開けるようだ。

なんのことはない。男子だけ・・なんて文字が気になったがただの同窓会HPといったところだろう。

「同窓会のページならあんな面倒なことして知らせなくてもいいのに・・」

普通の同窓会HPだったということで、多少がっかりしながらも僕は妻が卒業した年をクリックした。


「へぇ〜・・卒業アルバムかな」

妻が卒業した年をクリックすると、何人もの顔写真が出てきた。

卒業アルバムをスキャンしたのだろう。

写りは鮮明というには程遠い。

「そう言えば昔見せてもらったよな・・」

付き合い始めた当初、僕は妻の家に遊びに行った時に卒業アルバムを見せてもらった。

制服を着た初々しい妻。笑顔で写っていたのを覚えている。

「たしかC組とか言ってたかな」


僕は さらにC組と書かれた文字をクリックする。

「あぁ・・やっぱり。卒業アルバムのスキャンだ」

アルバムをなくすなんて人は そう居ないかもしれないが、こういうHPがあると気軽に見れていいものかもしれない。

確かに こうやってアルバムの写真を載せてるなら、公にHPを公表できないこともなんか納得出来た。

「妻は・・」

僕は何人も並んだ生徒達の中から妻を捜す

「平沢有紀」

そう書かれているのが妻だ。もちろん今では苗字が違う。

それでも付き合う前の関係では「平沢さん」と呼んでいた時期もあって懐かしい。


「ん・・でもちょっと待て・・変だぞ?」


僕は画面を見ていて不思議なことに気付いた。

それと同時に最初のページで出ていた「男子だけ」の文字が浮かぶ。

その卒業アルバムの写真を載せたページには女性生徒しか載せられてなかったのだ。

「どういうことだ・・・」

僕はマウスを動かし、男子が載せられているページを捜すが見つかる気配すらない。


>>次のページへ続く
 
カテゴリー:読み物  |  タグ:相手の過去, 性癖・プレイ,
 


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