不思議な友人と暮らしたひと夏の想い出をぽつぽつ語る
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220 :M子 :2018/08/24(金) 21:33:41.37 ID:SY+9SeAEp.net
酷く嫌な予感がした。
昔、レイさんから聞いたことがあった。
『人格は混ざることがある。たくさんあった人格が一つになったり。いなくなって基本人格だけになったり。
恐らく世間でその状態は″治った″って言われるんだろう。精神が不安定な奴にとっては望ましい傾向だ。』
M子「え、えーっと…いつから、いないの?」
ドラ子「……たぶん、たぶんやけど。M子ちゃんと会った夜が最後やで。」
その夜は、ドラ子との電話を切った。
もう、ツチノコと会ってから1週間近く経ってる。それはさすがに変だ。
もし、もし万が一ツチノコがドラ子と混ざったとしたら。それは、一体どうしたらいいの?
顔は確かにドラ子と同じだけど、わたしに笑いかけた彼は、あの独特の話し方は。彼は。この世から、消えた?そんなの…
M子「そんなの、死んだのと同じじゃんか。」
ふざけるのもいい加減にして欲しい。
あんな馬鹿な夜が最後かよ。あんな、なんでもない会話が最後かよ。もっと、たくさん伝えたいことがあったのに。
会えて嬉しかったとか、まだ借りたゲームクリアしてないとか。こんなことなら、好きだってちゃんと伝えれば良かった。
わたしのことを、呼んだ夜が最後なんて。
嘘だよね、ねえ。返事して。
221 :M子 :2018/08/24(金) 21:51:42.88 ID:SY+9SeAEp.net
連絡が取れないまま、引っ越しの当日を迎えた。
ドラ子にとっては喜ばしいことなのかも知れないと思うと、連絡アプリで彼を呼ぶ気になれなかった。
アプリの画面はわたしが送ったくだらない文章で話は止まったままだ。
これがドラ子にとって良いことだとしたら、わたしがそれを壊すわけにはいかない。
姫「……で、わたしに泣きついて来たってわけですね。なるほど。」
M子「どうしたらいいか、本気でわからない。」
姫「どうせ最初から別れが決まってたんだからいいんじゃない、そのままでも。」
M子「……え?」
姫「さようならの仕方は、自分が決めるんじゃないの?ドラ子がとか、ツチノコが、とか。もちろんわたしが決めることじゃない。M子が決めること。」
わたしが、決めること。
その時偶然にも、コミュニティに出したわたしの脱退メッセージへの返事に、見慣れた名前が見えた。
″ツチノコ″
彼は消えてなかった。まだ、間に合う。
酷く嫌な予感がした。
昔、レイさんから聞いたことがあった。
『人格は混ざることがある。たくさんあった人格が一つになったり。いなくなって基本人格だけになったり。
恐らく世間でその状態は″治った″って言われるんだろう。精神が不安定な奴にとっては望ましい傾向だ。』
M子「え、えーっと…いつから、いないの?」
ドラ子「……たぶん、たぶんやけど。M子ちゃんと会った夜が最後やで。」
その夜は、ドラ子との電話を切った。
もう、ツチノコと会ってから1週間近く経ってる。それはさすがに変だ。
もし、もし万が一ツチノコがドラ子と混ざったとしたら。それは、一体どうしたらいいの?
顔は確かにドラ子と同じだけど、わたしに笑いかけた彼は、あの独特の話し方は。彼は。この世から、消えた?そんなの…
M子「そんなの、死んだのと同じじゃんか。」
ふざけるのもいい加減にして欲しい。
あんな馬鹿な夜が最後かよ。あんな、なんでもない会話が最後かよ。もっと、たくさん伝えたいことがあったのに。
会えて嬉しかったとか、まだ借りたゲームクリアしてないとか。こんなことなら、好きだってちゃんと伝えれば良かった。
わたしのことを、呼んだ夜が最後なんて。
嘘だよね、ねえ。返事して。
221 :M子 :2018/08/24(金) 21:51:42.88 ID:SY+9SeAEp.net
連絡が取れないまま、引っ越しの当日を迎えた。
ドラ子にとっては喜ばしいことなのかも知れないと思うと、連絡アプリで彼を呼ぶ気になれなかった。
アプリの画面はわたしが送ったくだらない文章で話は止まったままだ。
これがドラ子にとって良いことだとしたら、わたしがそれを壊すわけにはいかない。
姫「……で、わたしに泣きついて来たってわけですね。なるほど。」
M子「どうしたらいいか、本気でわからない。」
姫「どうせ最初から別れが決まってたんだからいいんじゃない、そのままでも。」
M子「……え?」
姫「さようならの仕方は、自分が決めるんじゃないの?ドラ子がとか、ツチノコが、とか。もちろんわたしが決めることじゃない。M子が決めること。」
わたしが、決めること。
その時偶然にも、コミュニティに出したわたしの脱退メッセージへの返事に、見慣れた名前が見えた。
″ツチノコ″
彼は消えてなかった。まだ、間に合う。
222 :名も無き被検体774号+ :2018/08/24(金) 22:04:20.73 ID:A0Umv8QE0.net
どきどきしてきた
223 :M子 :2018/08/24(金) 22:05:17.91 ID:SY+9SeAEp.net
M子「ねえ。」
ツチノコ「なんだよ珍しく電話なんかして、彼氏と喧嘩か?」
M子「まだ暮らしてもいないんですけどwww
じゃなくて、ちょっと黙って聞いてくれる?」
ツチノコ「ん?」
M子「本当は墓場まで持っていこうと思ってたんだけど、もうどちらにせよ結果なんて変わらないから言うことにした。返事は何にも言わないから聞いてて欲しい。
わたしね、ずっとツチノコの事が好きだった。いつもツチノコが言う変な意味で。恋愛としてツチノコの事が好きだった。
いつから好きだったのかはよくわからない、きっとイチと寝落ち電話する君の隣で泣いた時からかな。わかんないや。
でも、好きだから付き合ってとか。わたしだけとか、そんなこと望んでない。わかってると思うけど、わたしが困るから。
知ってて欲しかったんだ。わたしが君を好きだったってこと。ちゃんと、知ってて欲しかった。それだけなの。
…うん、聞いてくれてありがとう。それじゃあもう…」
ツチノコ「は?いや、それじゃあもうじゃなくて俺の話も聞いてけって。
いや、さ、全然気付かなかった、マジで。ごめ?。ありがとうな伝えてくれて。
なんつーか、受け取った。振るとかじゃなくて、ちゃんと受け取った。お前の気持ち。だー、いや、うまく言えねぇけど。俺の方こそありがとう。元気でやれよ。」
M子「うん。ありがとう、会えて良かった。」
ツチノコ「俺もだよ、お前と過ごせて、良かった。」
M子「それじゃあ、またいつか。」
電話を切って、深呼吸をひとつ。
不思議と涙は出なかった。
「あれ?M子?飯出来てるよ。」
「はーい、今行く。」
新しい場所、新しい景色。
ここがわたしのこれから生きる場所。
「さようなら、わたしの夏。」
-終-
224 :M子 :2018/08/24(金) 22:11:46.88 ID:SY+9SeAEp.net
ちなみに今でもドラ子からは連絡が来る。今日も仕事がつらいーねむいーなんて嘆きのご連絡が来てました。
ツチノコとイチは、わたしが引っ越してすぐに別れたらしい。ドラ子が教えてくれた。
彼がこの世界でまだ息をしてるのかはわからない。
わたしがもし、フィクションでこの話を書くなら。
世間の目とか、自分の立場とか。何も考えずに迷わずツチノコのところに飛び込んでいったんだと思う。ドラ子と仲良く暮らしながら、ツチノコと未来を見たかった。なんなら彼だけの体を、描いたかも知れない。
夏だけじゃなくて。春も夏も秋も冬も。ずっとこのまま幸せな時間を描きたかった。
それをしなかったのは、わたしがありのままを大切に思ったから。実在する彼らを、今でも好きでいるから。
きっと一生忘れないと思う。
225 :M子 :2018/08/24(金) 22:13:29.26 ID:SY+9SeAEp.net
劇的な展開も、幸せなツチノコとの未来もないけど。
わたしは今幸せです(´・ω・`)
なにかが質問あればどうぞ。
226 :名も無き被検体774号+ :2018/08/24(金) 22:17:03.91 ID:A0Umv8QE0.net
素敵な夏だったんだね。
読めてよかった!
今は彼氏と暮らしてるの?
229 :名も無き被検体774号+ :2018/08/24(金) 22:32:57.09 ID:SY+9SeAEp.net
>>226
ありがとう!
よんでくれてうれしい(´・ω・`)
そうだよー、料理が趣味の年下男子と一緒にいますー(´・ω・`)
228 :名も無き被検体774号+ :2018/08/24(金) 22:21:50.71 ID:Th51S69pH.net
お疲れ様でした
ただただお疲れ様でした
このスレに出会えて良かった
>>次のページへ続く
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