>>9
いっといで
彼女は昔からショートカットで、本田翼に似てるから翼にするわ
小学校に入学して、初めて隣になったのが翼で、俺は彼女に一目惚れした
今でもよく覚えてる
俺と翼は窓際の後ろから3列目で、教室は児童とその親たちで わいわいがやがやと騒がしかった
俺も翼も、それぞれ両親に教室まで連れてこられ、黒板に書かれた席順を確認した後、ふたりほぼ同じタイミングで席についた
母はちらっと隣の翼をみて、俺に「隣の席の女の子と仲良くするんだよ」と言っていた
それを聞いて、翼が恥ずかしそうな顔をしながら俺をみた
その瞬間に好きになった
まだ彼女の声も聞いていないのに
俺がきもいのは本当にわかってる
人付き合いも苦手だし、何より普段からぼっちだ
笑い飛ばしてくれよ
話を戻すけど、出会いは入学式の日
俺が惚れたのも同じ日
まだ7歳のくせに妙にませてた俺は、この想いが友達の好きとは違うことに気が付いていた
翼が恥ずかしそうに俺を見て、俺もうまく話しかけることなんてできないし、お互い何も話さずにその日は終わった
担任に名前を呼ばれて返事をする出欠確認で聞いた翼の声は、びっくりするほど綺麗だった
小学校1年生で、黒板に書かれた席順と並んだ机を対応させられるの凄い
うちの方は机にでっかい名札が貼ってある
>>25
当然机にもあったよ
でかい名前が書かれたシール
たぶん親も教室行くから担任が書いたんだろうね
入学おめでとうとも書いてあったな
翼と初めて言葉を交わしたのは、次の日だった
俺が通ってた頃の小学校では、各地域で1年生から6年生がひとつのグループで登校してた
朝、グループの集合場所に出向いて俺はびびった
教室で会うつもりだった彼女が、目の前にいたからだ
俺と翼は同じ登校の班だった
彼女は、俺の家からそんなに遠くないところに住んでいた
まあ同じ小学校だし、そもそもがそんなに離れてないんだけどな
「おはよう」
初めて会話をしたきっかけは、彼女からの挨拶だった
昨日の出欠確認で声を聞いてたとはいえ、俺に向けて言葉を発してくれたのが嬉しかった
「おはよう」
俺もたどたどしく返事をした
でもそれから教室に着くまで、それ以上お互い会話をすることはなかった
今ごろ彼女もきもいって笑ってると思うよ
翼とは同じクラスだから、当然登校班が解散した後もふたりで教室に向かう
お互い何を話していいかもわからずに、昨日教わった下駄箱にくつを入れて、上履きに履き替えた
なんとなく、俺が上履きを履き終えるのを翼は待ってくれていた
そうしてふたりで教室に入った
「名前なんだっけ?」
またもや彼女から話しかけてくれた
沈黙に耐えきれなかったのか、ただの好奇心かは今になってはわからないけど
オリラジの藤森似の俺は内心ドキドキしながら言った
「藤森だよ、よろしく」
それを聞いた翼は可愛らしい顔で
「藤森くん!」
とだけ答えた
他愛もないただのやりとりだけど、彼女が初めて俺の名前を読んでくれたから、これもよく覚えてる