不思議な友人と暮らしたひと夏の想い出をぽつぽつ語る
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203 :M子 :2018/08/24(金) 18:47:42.78 ID:SY+9SeAEp.net
ドラ子「夢だった仕事も、結局辛くてしんどくて。もう何が目標で何を目指したら良いのか、わからんっちゃ。」
M子「うん、それは見ててわかるよ。」
ドラ子「恋人に前より頻繁に会えるようになったのは嬉しいけど、それよりわたしは故郷に帰りたいって思っとる。…連休貰ったから、一度帰るけん。」
M子「そうしなさいよ、そしたらもしかしたら何か変わるかも知れないし。ちゃんとリフレッシュして来なよ?」
ドラ子「ありがとうM子ちゃん。でもな、わたしこの時期にここに来たことは後悔しとらんと。今ここに来んかったら、きっとM子ちゃんとこうして過ごせんかったやろ?だから、よかっただん。」
M子「…………ありがとう。」
いつものくしゃくしゃってした可愛い笑顔のドラ子を思い切り抱き締めた。本当に、わたしの方こそ何度救われたかわからない。
薄々、彼女の異変も感じてはいた。家族への気持ち、故郷への気持ち。きっとわたしじゃ埋め切れない何かがあるんだろうなって。
少しずつそれぞれの道に、何かが動き出している。
204 :M子 :2018/08/24(金) 19:29:51.50 ID:SY+9SeAEp.net
ドラ子が実家に帰るのに合わせて、わたしも実家に帰る事にした。暫くは彼女のいない日々が続く。
理由の一つに、わたしの仕事が激務に変わったことがある。とある業務のリーダーが突然離席。引き継ぐ事になってしまった。
精神的なプレッシャー、肉体的な疲労。
めげてもいられないと自分に鞭を打ってなんとか走っていたが、これまでの無理も祟ったらしい。
ついに帰宅途中駅、動けなくなってしまった。
息苦しさ、激しい動悸。吐き気。震え。気が遠くなる。
幸いにも倒れる程ではなかった。と言うより、その一歩手前で家族が迎えに来てくれて事なきを得た。
一日休んで、色々な病院を回って、ようやく出た診断結果は『過労』。
そりゃそうだよなぁ、と思いつつ、翌日出社した。
205 :M子 :2018/08/24(金) 19:30:53.19 ID:SY+9SeAEp.net
あの日、家族を待つ間、自分の体はどうしてしまったんだと狼狽しながら、彼氏に連絡を取った。異常に具合が悪く、声が聞きたいと。
彼氏「ごめん、今バンドの打ち合わせ中だから…。」
…正直、絶望した。後から聞けばこんなに病状が悪いとも思わず、険悪な打ち合わせだったせいでうまく抜けられなかった。
って謝られたけれど。わたしと趣味のバンドどっちが大事なの?なんて聞いてみたくなる。
気付いたらその手で、ドラ子に電話を掛けていた。
ドラ子「どーしよったとM子ちゃん。…そっか、具合悪いかぁ。頑張っとったもんなぁ。大丈夫。ちょっと疲れちゃっただけだん。よーしよし。ちゃんとゆっくり休もうでー。」
声を聞いただけで、ふっと張り詰めた気持ちが解ける。具合の悪さでうまく喋れないけれど、彼女の声が聞こえるだけで安心できた。
今までだってそう、苦しい時、辛い時、わたしを救ってくれるのは、抱き締めてくれるのは、いつも彼氏じゃなかった。ツチノコで、ドラ子で…。
それ以上考えることは、やめた。
206 :M子 :2018/08/24(金) 19:41:15.40 ID:SY+9SeAEp.net
その日を境に、わたしが彼女の家を訪れる事はなくなった。
体調不良を心配する家族を無視して、家を出る訳にはいかない。会社にも話をして負担を軽くしつつ療養に努めていた。
その代わりに、寝る前にドラ子から電話が来るようになる。どうでもいい事を話して、適当に笑いあってすぐに眠りにつく。不思議と彼女の声を聞くとゆっくり眠れた。
ツチノコの姿は暫く見ていない。
イチの悲しみに溢れた呟きを見る限り、相変わらずドラ子に体を渡して眠り続けてるんだろう。気紛れな人だ。
わたしの夏ももうすぐ終わりを告げようとしていた。過労で倒れた原因に、通勤の長さがあるのではと忠告を受けた。
いざそうなると、話はトントン拍子で進むもので、彼と2人で過ごす明確な日にちが決まった。
―しあわせな夏が、あと2週間で終わる。
ドラ子「夢だった仕事も、結局辛くてしんどくて。もう何が目標で何を目指したら良いのか、わからんっちゃ。」
M子「うん、それは見ててわかるよ。」
ドラ子「恋人に前より頻繁に会えるようになったのは嬉しいけど、それよりわたしは故郷に帰りたいって思っとる。…連休貰ったから、一度帰るけん。」
M子「そうしなさいよ、そしたらもしかしたら何か変わるかも知れないし。ちゃんとリフレッシュして来なよ?」
ドラ子「ありがとうM子ちゃん。でもな、わたしこの時期にここに来たことは後悔しとらんと。今ここに来んかったら、きっとM子ちゃんとこうして過ごせんかったやろ?だから、よかっただん。」
M子「…………ありがとう。」
いつものくしゃくしゃってした可愛い笑顔のドラ子を思い切り抱き締めた。本当に、わたしの方こそ何度救われたかわからない。
薄々、彼女の異変も感じてはいた。家族への気持ち、故郷への気持ち。きっとわたしじゃ埋め切れない何かがあるんだろうなって。
少しずつそれぞれの道に、何かが動き出している。
204 :M子 :2018/08/24(金) 19:29:51.50 ID:SY+9SeAEp.net
ドラ子が実家に帰るのに合わせて、わたしも実家に帰る事にした。暫くは彼女のいない日々が続く。
理由の一つに、わたしの仕事が激務に変わったことがある。とある業務のリーダーが突然離席。引き継ぐ事になってしまった。
精神的なプレッシャー、肉体的な疲労。
めげてもいられないと自分に鞭を打ってなんとか走っていたが、これまでの無理も祟ったらしい。
ついに帰宅途中駅、動けなくなってしまった。
息苦しさ、激しい動悸。吐き気。震え。気が遠くなる。
幸いにも倒れる程ではなかった。と言うより、その一歩手前で家族が迎えに来てくれて事なきを得た。
一日休んで、色々な病院を回って、ようやく出た診断結果は『過労』。
そりゃそうだよなぁ、と思いつつ、翌日出社した。
205 :M子 :2018/08/24(金) 19:30:53.19 ID:SY+9SeAEp.net
あの日、家族を待つ間、自分の体はどうしてしまったんだと狼狽しながら、彼氏に連絡を取った。異常に具合が悪く、声が聞きたいと。
彼氏「ごめん、今バンドの打ち合わせ中だから…。」
…正直、絶望した。後から聞けばこんなに病状が悪いとも思わず、険悪な打ち合わせだったせいでうまく抜けられなかった。
って謝られたけれど。わたしと趣味のバンドどっちが大事なの?なんて聞いてみたくなる。
気付いたらその手で、ドラ子に電話を掛けていた。
ドラ子「どーしよったとM子ちゃん。…そっか、具合悪いかぁ。頑張っとったもんなぁ。大丈夫。ちょっと疲れちゃっただけだん。よーしよし。ちゃんとゆっくり休もうでー。」
声を聞いただけで、ふっと張り詰めた気持ちが解ける。具合の悪さでうまく喋れないけれど、彼女の声が聞こえるだけで安心できた。
今までだってそう、苦しい時、辛い時、わたしを救ってくれるのは、抱き締めてくれるのは、いつも彼氏じゃなかった。ツチノコで、ドラ子で…。
それ以上考えることは、やめた。
206 :M子 :2018/08/24(金) 19:41:15.40 ID:SY+9SeAEp.net
その日を境に、わたしが彼女の家を訪れる事はなくなった。
体調不良を心配する家族を無視して、家を出る訳にはいかない。会社にも話をして負担を軽くしつつ療養に努めていた。
その代わりに、寝る前にドラ子から電話が来るようになる。どうでもいい事を話して、適当に笑いあってすぐに眠りにつく。不思議と彼女の声を聞くとゆっくり眠れた。
ツチノコの姿は暫く見ていない。
イチの悲しみに溢れた呟きを見る限り、相変わらずドラ子に体を渡して眠り続けてるんだろう。気紛れな人だ。
わたしの夏ももうすぐ終わりを告げようとしていた。過労で倒れた原因に、通勤の長さがあるのではと忠告を受けた。
いざそうなると、話はトントン拍子で進むもので、彼と2人で過ごす明確な日にちが決まった。
―しあわせな夏が、あと2週間で終わる。
207 :M子 :2018/08/24(金) 19:49:01.73 ID:SY+9SeAEp.net
M子「わたしね、同棲する日が決まったんだ。」
ドラ子「おおお、良かったなぁ。でもそしたらもうM子ちゃんに会えないんやろ?寂しくなるなぁ。」
M子「一生の別れって訳じゃないからさ。それに、同棲する前に一日泊まらせてよ。最後の思い出。」
ドラ子「今一生の別れじゃないって言っただん!?なして最後の思い出になると!?やだやだ。」
M子「あはは、ごめんごめん。でも近いうちに会いに行くから。待ってて。」
……ごめんね。なんて心の中で呟く。
本当は、もう会うつもりはなかった。これ以上彼女の存在にのめり込む訳にはいかない。
ありもしない未来を、願ってしまうから。ちゃんと思い出にしたかった。終わりにしたかった。全部、わたしのワガママ。
208 :名も無き被検体774号+ :2018/08/24(金) 19:56:43.31 ID:Th51S69pH.net
切ない・・・
211 :名も無き被検体774号+ :2018/08/24(金) 20:22:47.40 ID:SY+9SeAEp.net
>>208
わたしも悲しくなってきた(´・ω・`)
元気ください。
209 :M子 :2018/08/24(金) 20:21:07.29 ID:SY+9SeAEp.net
一緒に過ごす最後の日。
何も特別な事のない、わたしとドラ子らしい日だった。無理矢理に予定を詰めたから、結局仕事終わりに立ち寄って一緒に寝て仕事に行くだけの日。
一緒にお風呂に入る。
わたしは顔に水が掛かるのが嫌いなのに、わざと水を掛けてくるドラ子。
いやいやと首を振るわたしを見て、楽しそうに笑う。今日だけは許…すわけないので顔面にシャワーを浴びせておいた。
お風呂から上がったら、ツチノコに変わってた。
彼もいつも通り、わたしの髪を乾かしてくれる。丁寧にオイルをつけて、優しく触れる手付きが心地良い。
ツチノコ「……綺麗だな。」
M子「ボロボロのわたしを、君が綺麗にしてくれてたんだよ。」
ツチノコ「手の掛かるお嬢さんだよほんと。」
でも、触るの好きでしょ?と笑うと、そうだと言わんばかりに小さく笑い返してくる。
このまま、時が止まってしまっても良かった。
210 :M子 :2018/08/24(金) 20:22:26.18 ID:SY+9SeAEp.net
2人並んで横になって、いつもみたいに向かい合う。
ツチノコ「そういや、あのコミュニティ抜けるんだって?」
M子「あれ、聞いてた?そうなんだよね。同棲始める前日には全部消す予定。今までお世話になりました。」
ツチノコ「あーあ…M子って呼び方、結構気に入ってたんだけどな。」
そう。その日を境に、コミュニティに関する連絡手段を全て消すつもりだった。コミュニティを抜けることは、ツチノコとの直接的な繋がりを失う事を意味する。
ドラ子とは話せても、ツチノコに話し掛けるツールがなくなる。
――これが、わたしが選んださようならの形だった。
M子「もうそのあだ名で呼ばれることもなくなるね、呼んでたのツチノコだけだし。」
ツチノコはずっと、わたしの事を独特なあだ名で呼んでた。彼がわたしに初めて会った時につけてくれた名前。ややこしくなるからここまでM子で統一したけど。
ツチノコ「なんだっけ、前言ってたよな。呼ばれるといやだって名前。」
M子「あー、Mちゃん?なんかすごいちゃらーい感じに聞こえるから、そうやって寄ってきた人は基本警戒してるwww」
ツチノコ「えーむーちゃーんえむちゃーん。」
M子「やめて気持ち悪いwww」
ツチノコ「コミュニティで前付き合ってた子がいた時は、なんだっけ、なんて呼ばせてたんだっけ。」
M子「あー…舞?特別な人にしか呼ばせてないね、これは。でもツチノコには呼ばれたくないから結構です、気持ち悪いです。」
ツチノコ「なんでだよおいwwwwいいだろwww」
M子「嫌だ、ぜーったいやだwwwww」
けらけらと2人で笑い出す。ふと、腕の中に抱き寄せられる、額が触れる距離。馬鹿みたいに緩んだ顔が目の前にあった。
「舞。」
時間が、止まる。理解が出来ない。
今なんて……?
M子「だ、からやめてって言ったじゃんwww気持ち悪いってwwww」
ツチノコ「ええー、減るもんじゃねぇしいいだろ。」
止まった時間は、幻だったのかもしれない。でも、今でもちゃんとわたしの中に刻まれてる。君が呼んでくれたこと。その名前。
するりとツチノコの手が前髪を撫でる。額に、頬に、唇が触れて、絡まる指先。
この日、彼がわたしに痛みを与えることは無かった。ただひたすら、甘くて、消えてしまいそうな時が流れていった。狡い人だよ、本当に。
吐息に混ぜた″好き″が、どうか君に聞こえていませんように。
212 :M子 :2018/08/24(金) 20:44:33.41 ID:SY+9SeAEp.net
翌日の朝。
わたしはオフ、ドラ子は仕事。慌ただしく準備する彼女を、寝起きでぼやけた視界で見つめていた。
ドラ子「仕事、行きたくねえ。」
思い詰めた顔で割れたファンデーションを見詰める彼女の頭を、ベッドから手を伸ばして撫でてやる。ここからでも、泣いてるのがわかった。
ドラ子は時々、こうして朝に泣く。出会った頃から変わらない彼女の癖。
申し訳ないことに、仕事と昨夜の情事とでわたしの体は満身創痍だった。彼女を撫でながら二度寝してしまった。
次に目を開けると、出掛ける支度のできたドラ子がいた。相変わらず浮かない顔をしている。
M子「行ってらっしゃい。無理しちゃだめだからね。」
ドラ子「ん。もっとちゃんと過ごしたかったんに、これが最後なんかぁ。」
M子「……最後にひとつ、お願いしていい?」
どうしても、欲しかったもの。彼女といた証。
わたしのプライドが傷付こうが何しようが、言わないと後悔すると思った。
M子「肩を、噛んで欲しい。」
驚いた表情を見せたのは一瞬、すぐに体が引き寄せられる。肩口に痛みが走る。思わず漏れる声。ギリギリと食い込む痛みを、二度と忘れないように自分の中に刻み込む。
「足りねぇだろ、それじゃ。時間なくてごめん。」
ああ、ツチノコだ。そう思った。口調、声のトーン。雰囲気。全部あの人だった。
そのまま背を向けて、出て行った。
ベッドに身を沈めて、ぼんやり天井を眺める。
と、慌ただしい音と共にもう一度彼女の姿が。忘れ物……?
ドラ子「…………っ、行ってきます!」
突然抱き着かれて思い切り抱き締められた。その後向けられた、弾けるような笑顔。わたしが大好きな彼女の笑顔。
M子「行ってらっしゃい。ドラ子。」
しっかり抱き締め返して、今度こそ彼女を見送った。
213 :M子 :2018/08/24(金) 20:45:35.85 ID:SY+9SeAEp.net
ご飯の時間だよ(´・ω・`)
今日は鮭だよ(´・ω・`)
214 :名も無き被検体774号+ :2018/08/24(金) 20:49:41.16 ID:NCvKq7i70.net
せ、せつねーーーーっ!
215 :名も無き被検体774号+ :2018/08/24(金) 20:52:02.65 ID:52Oj2jYEd.net
やだもう切なすぎるわー(´;ω;`)
色々思い出して辛いでござる
216 :ムッシュ【】 :2018/08/24(金) 21:06:26.22 ID:Lp4sFCLcM.net
今は吐き出すだけ吐き出して!!
そしたら、少しは楽になるのでは?
217 :M子 :2018/08/24(金) 21:13:40.98 ID:SY+9SeAEp.net
――ああ、この部屋、こんなに静かだっけ。
ベッドに寝転がって、辺りを見渡すと、過ごした時間が巻き戻るような気がした。
『肉じゃが作ったでー!一緒に食べようなぁー。』
『お前、バカ何お茶こぼしてんだよちょ、びしょびしょじゃねーかwww』
『ん?ノート書いたら寝るけん、M子ちゃん先寝とってええよ?』
『他の奴に傷付けさせんのは、あんま、いい気しねぇんだよな。」
『ここにきて、M子ちゃんに会えて、良かった。」
2人の姿が鮮明に浮かんで、滲む。
この部屋は。想い出が余りに多過ぎる。
彼のいない部屋で、彼女のいない部屋で、ひとり声を上げて泣いた。
218 :M子 :2018/08/24(金) 21:14:43.22 ID:SY+9SeAEp.net
みんなが優しいから、ほろほろしてきた(´;ω;`)
もう少しだけ、がんばる。
219 :M子 :2018/08/24(金) 21:23:19.45 ID:SY+9SeAEp.net
鍵はちゃんと、ポストに返した。
これでこの家ともお別れ。すごく近くにいるのに、こんなにも遠い。たった一駅なのにこんなに距離があるんだなぁ、なんて他人事みたいに思ってた。
それから、彼女の家には行ってない。
相変わらずドラ子からは電話がくる日々。お互いに仕事のことやくだらない事を話して眠りに着くのは変わらなかった。
わたしがコミュニティを去る前日。同棲直前。
M子「そう言えばあの時急に肩噛んで、なんて言ったからあの人びっくりしたんじゃないかな。」
ドラ子「……ん?それ、わたしやったで。わたしでええんかなぁって思いながら、噛ませて貰ったけど。痛くなかったと?あ、えと、痛くないと意味ないんやっけ…」
M子「え?……でも雰囲気はツチノコだった、よ?」
ドラ子「うーん、なんか、混ざっとったかもしれん。最近、ツチノコ出て来んのよな。もうずっとみてない。気配がせんのよ。」
……気配が…しない?
>>次のページへ続く
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