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山でありえない体験をした話
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112 :名無しさん@おーぷん :2015/06/05(金)09:04:32 ID:eGz(主)
俺も訳がわからなくなったけど、近くにあった水筒を持って飛び出した。

会長も理由は分からないけど、俺と一緒に小さめのリュックを持って飛び出す。

多分俺らは、山岳姫や女子たちを助けなきゃと思って行動したんだと思う。


外に出て分かったが生乾きした雨の匂いと、それ以上に濃い獣の生臭い匂いが充満していた。

黒い影の目が細めたように白い線になりニヤニヤと笑っていた。


水筒を振り回すと黒い影をすり抜けた。ただ黒い影は俺の方へ手を伸ばしてきた。

触れると羽毛の様な感触と冷たすぎる感覚がして、背筋がゾゾッとした。

身の毛もよだつとはこのことかと思った。


霧を吹きかけられたといえばいいのかな。そんな感じで冷たい感覚がズーッと全身に広がっていく感じ。

今やって分かったけど、自分の手をブワッと広げるのを腕にやるとその感覚に近い

あと無数の蜘蛛が腕を這って来ている感覚かな。


あっという間に俺らは無数の黒い影に取り憑かれてしまっていた。

冷たいような熱いような、とにかく獣臭さすぎてクラクラするかと思った。


それでも重くはなかった。

筋肉痛のような痛さはあったけど動けた。指先はしびれていたけど力は入った。


会長「俺君、D男!普通に走れる!ガンバれ!」


顔に黒い小人のような影が張り付いた会長が叫んだ。

小人はクビの部分をヘニャリと曲げて俺を見ていたので少し怖かった。



113 :名無しさん@おーぷん :2015/06/05(金)09:13:58 ID:eGz(主)
人の塊に到着すると、本当に大勢の人がくっついているのだと悟った。

白目を向いていて口をダランっとだらしなく開けている人たちがほとんどだったが、

中には「うー!うー!」と唸りながら塊の隙間からコッチに助けを求めている正気がある人も居た。


近づくと無数の手が助けを求めるように俺や会長、D男へバッと伸びて、ウネウネとしている。


「助けて!」「痛い!」「苦しい!」「気持ち悪い!」

「嫌だ!」「ああ!」「コッチです!」「コッチだ!」


自分の状態を告げる声や助けを求める声が大勢聞こえたが、俺らは一心不乱に二人を助けようとした。

二人は球体の人に手や腕、お腹を抱きつかれている形で捕まっていた。

手を叩き、時には多分指を折ったり、多分水筒や日本刀で周囲の人や女子の影にいた人の顔を殴ったりもしていたと思う。


何度も俺らも足や腕を掴まれ転びはしたが、すぐに会長やD男やら、自力でだったりして抜け出し、再び突撃して助け出すのを繰り返して、ようやく女子を剥がすことに成功した。





114 :名無しさん@おーぷん :2015/06/05(金)09:18:59 ID:7xP
すごすぎる…


115 :名無しさん@おーぷん :2015/06/05(金)09:24:03 ID:eGz(主)
C男は女子より酷かった。

顔や腕や胴体など、急に「コイツだけは!」と言わんばかりに腕に掴まれた。

何度叩いても切りがなく、コッチの方が捕まりかけるほうが多くなってくる。


俺らは一度、女子を家の方へと連れて戻ることにした。

両腕を掴んで引きずりながら家でダッシュした。


ただ体に影が付いているのを悟って「ここにおいておくから!」と誰かが叫ぶと、C男の元へ戻った。


その時、人の塊はゴトゴトと動き始めてしまった。

C男の「嫌だああああ!嫌だぁあああ〜!ああああ助けて助けて!助けて下さい!」と言う声だけが聞こえてくる。


俺らは迷った。あのままC男を助けるべきか。


そんな時だった。地鳴りのような声で言われた。


「おしい、もう少しだったのに」


複数の低い声をした男が発した声と言えばいいのかな。

その重低音がゴゴゴッと山から響いてきた。


途端、ゴトゴトと何十もの黒い塊が目の前を遮っていった。

それは黒い影に取り憑かれて人が何人も転がって来ていた。

その人達は互いにぶつかると狂った様にお互いを掴み合っていた。

そして狂った声をあげて互いに噛みつき合いながら転がっていく。


もしもC男を追っていたら、あの人たちに体を掴まれていただろうと察した。

腕だけならまだ何とかなるかもしれないが、あんな体全体で飛びつかれ、噛み付かれたら、どうなったか分からない



116 :名無しさん@おーぷん :2015/06/05(金)09:33:36 ID:eGz(主)
C男の悲鳴と絶叫が段々と遠くなっていくのを俺たちは聞くことしかできなかった。

巨大な人の塊も、目の前を横ぎった人たちも、姿が見えなくなる。

いつの間にか俺らの体の取り憑いていた黒い影たちも姿を消していた。

雨も止んでいた。


俺らは漠然とした状態でありながらも、家の方へと戻るしかなかった。

C男の悲鳴は聞こえていたが、どうすることもできなかった。


家に入ると山岳姫が「大丈夫?」と声をかけてきた。

俺らは何も答える事ができないまま、黙って座り込んだ。酷く疲れたし全身が痛かった。


会長「あれ、あの子は?」


助けだしたはずの女子が家の中に居なかった。


山岳姫「えっと……三人が連れ戻したあと姿が消えちゃって……」


他の女子二人も見ていたようで怯えた顔で頷いていたが、俺らはもう驚くことができなくなり静かに「そうなの」としか言えなかった。


俺「B子さんたちは?」


山岳姫「暴れるの大変だったけど、なんとか……」


B子たちはデタラメな格好で横にされていた。

止めるのが大変だったと乱れたブルーシートとかを見て、確かに暴れたのだろうと感じた。

床のほうも幾つかの場所が抜けていた。





117 :名無しさん@おーぷん :2015/06/05(金)09:43:12 ID:eGz(主)
女子達(F美たち)に「何があったの!?」「アレはなんなの!?」と責め寄られたが俺らは何も答える事できず「うるせー」としか返事しなかった。

被害者面と言うか、助けて助けてアピールする女子に少しイラついていたのかもしれない。

今考えると、それは普通だし仕方がないことなんだが。


またひとりの女子は何も見えていなかったような事を全員に話していた。

その子が言うには突然俺らが騒ぎ始め、B子たちが騒ぎ始め、外で俺らが暴れ始め

いつの間にか助けた女子がいて、でも急に姿が消えて、なんなのと。

確かになんなのと、俺も感じた。


そんな時だった「おーい!みんな!」と外からC男の声が聞こえた。

慌てて俺らは立ち上がり、山岳姫も他の子たちも、窓から外を見た。


そこには救援に向かった時の格好をしたC男と、「○○山岳会」と墨で書いたはっぴを着る人たちが4人居た。

疑心暗鬼じゃないけど、俺らはC男のことを疑った。



118 :名無しさん@おーぷん :2015/06/05(金)09:47:18 ID:eGz(主)
C男「どうしたんだよ?」


救援隊「うん、どうしたんですかー?」


C男「救助隊呼んできたよ!」


会長「お前本当にC男か?さっきお前が変なバケモノに取り憑かれているの見たんだぞ!!」


正確には掴まれていたか呑み込まれていただけど、会長はそう叫んでいた。


C男「なに言っているんだよwお前ら場所移ってたんだな!w」


そう言いながらC男達はドンドン家に近づいてきた。


D男「まて!」


救助隊「ん、なんですか?」


D男「そこで待ってろ。すぐに行くから」


C男「すみません、なんか混乱しているみたいで」と言いながら歩こうとしたら、


D男「だから来るなっつてんだろ!!」とものすごい声で怒鳴り返した。




>>次のページへ続く
 
 


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