「隣り、空いてますか?」
学食で昼食を摂る俺に、声をかけて来た女。
見上げると・・・
「彼女、出来た?」
「いや・・・」
「優しいから、もてるでしょ?」
「いや・・・」
「うそ〜っ!絶対もてるって!」
「そんな事ねぇよ!」
「ごめん・・・怒った?」
「いや・・・」
「怒ってるでしょ?」
「いや・・・」
「あたし・・・迷惑かな?」
「いや・・・」
「静かにしてた方がいいなら・・・黙ってようか?」
「うるさくてもいいから・・・俺の彼女になってほしい。好きだよ。ずっと好きだった。香織・・・」
「あたしだって・・・ずっと俊ちゃんの事・・・好きだったんだよ」
「そうなの?」
「そうだよ。子供の時から好きだったんだからね。」
「えっ?」
「あたしのアルバムね〜・・・俊ちゃんがいっぱい写ってんの!」
「それはそれは・・・奇特な方で・・・」
「『蓼喰う虫も好き好き』って事!」
ヴァージンロードをゆっくりと進む香織。
そしてそれを待つ俺。
「大学だけは、きちんと卒業します。」
香織の家に挨拶に行った19歳の正月に、香織の父親とした約束。
俺たちはきちんと4年で卒業し、香織はOLになり、俺は都内の商社に勤め、2年後にこの日を迎えた。
香織を待つ間、俺は昔の事を思い出してた。