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私の「初めて」の話をしようと思う
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98 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/06/20(土) 23:07:06.87 ID:d7vBTGF30.net
「カンオケのお金、どうしたの?」

「麻雀で勝った金貯め込んだ」

「どんだけ巻き上げたのよ……」


「医者って金持ちなんだよ」

「……なんか、やな言い方するね」


「……そうだな」

道の先に大きな橋が見えてくる

トラックが排気ガスを巻き上げながら走り去ってった

病院が遠くに、小さな鉄の塊みたく見えた


99 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/06/20(土) 23:11:24.52 ID:d7vBTGF30.net
「タムラ」

橋の上にさしかかると いきなり風が強くなった

空が青い

下で大きな川がきらきら光ってる


私は風の音に負けないように声を張り上げる

「勝負してないタムラなんて、つまんないよ」

カンオケ一個でケジメだなんて

そんなこと俺が一番よくわかってんだ、というように、タムラは黙りこんでいた


100 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/06/20(土) 23:18:07.95 ID:d7vBTGF30.net
病院の前で、私とタムラは別れる

やつは眩しそうな顔で私を見上げて黙っていた

三年前とびっくりするくらいおんなじ顔だ

「オオシマ」

「?」

「ありがとな」

タムラは険しい顔で言った

私はちょっとほっとした

「お見舞いきていい?」

「やばくなったときだけな」

「じゃあやばくなったら連絡して」


そう言って私は電話番号をわたす

「いつでもかけて、学校の授業中だって駆けつけてくるから」

タムラは黙ってうなずいた


101 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/06/20(土) 23:25:38.36 ID:d7vBTGF30.net
帰り道は拍子抜けするくらい腕が軽かった

私は「ありがとな」と言ったタムラの顔を思い出してみる

三年前のクソナマイキな頃の表情に、少しだけ戻ってた気がした

……まだ大丈夫だよな、あいつ

大丈夫じゃなきゃだめなんだ、しっかりしてくれ頼むから

私は夕方になっていく帰り道を一人で歩きながら、祈るような気持ちでそう思った


102 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/06/20(土) 23:30:25.58 ID:d7vBTGF30.net
私の母さんはカンオケ職人だ

死んだじいちゃんもカンオケを作っていた

だから、たしかに私もいつかはカンオケ作りを継ぐのかなーって常々思っていなくもなかった


でもそれはなんとなく まだまだ先のことで

中学卒業してからかなー、とか

高校出てからかなー、とか

美大とか専門で彫刻の勉強とかしてからかなー、とか

はたまたカンオケ作りなんてやらずに一生終えるかなー、とか

まあ言ってみれば漠然と考えてた


でもそういうのって「いつ始める」とかじゃなくて、勝手にタイミングがきちゃうもんなんだろう

たとえばタムラがあと半年で死ぬとか、タムラがもしかしたらまだちょっとだけ頑張るかもしれない、とか

そういうことで





103 :名もき被検体774号+@\(^o^)/:2015/06/20(土) 23:32:09.97 ID:mtkb1fEV0.net
ほう


105 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/06/20(土) 23:38:03.69 ID:d7vBTGF30.net
家に帰って私は母さんを探す

工房のドアを開けたらデスクに座ってた母さんが振り返ってじっと こっちを見た

初めて見る母さんの表情だった気がする


私は、今までこんな真剣に誰かに頭を下げたことなんてなかったな、と思いながら

「私を弟子にしてください」

と、母さんに言った


106 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/06/20(土) 23:40:02.86 ID:d7vBTGF30.net
パンツを脱いで待ってくれていた人たちへ

これは私が初めて、カンオケを作ったときの話です

まだ脱いでたら どうかそのパンツをお上げくださいまし


107 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/06/20(土) 23:42:08.97 ID:70Tdbpio0.net
てるよー


108 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/06/20(土) 23:48:00.03 ID:d7vBTGF30.net
だいたいの職人芸って そうだと思うんだけど、どう考えても半年そこらで一人前の技なんて身に着くはずがないよね

でも母さんは私を弟子に取ったし、タムラのカンオケ作りを(手伝うとは言ったけど)私にやらせると言った

母さんもじいちゃんに弟子入りしたのは、母さんの母さん、つまり私のばあちゃんが病気に倒れたときだと話してくれた

余命いくばくもないとわかったとき、じいちゃんは ばあちゃんのカンオケを何も言わずに作りはじめた

今の私とそう変わらない歳だった母さんが そのときにじいちゃんに弟子入りした、その気持ちは今の私ときっと同じようだったんだと思う


109 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/06/20(土) 23:51:14.03 ID:d7vBTGF30.net
その翌日からカンオケ作りに取りかかる


大体の工程は、

デザインを考える

それを材木に転写する

線に合わせて絵を浮き彫りにする

やすりをかける

こういう感じだ

「半年しかないから しっかりやりなさいね」と母さんは言った


113 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/06/20(土) 23:56:44.39 ID:d7vBTGF30.net
毎日一日一〇枚、私はデザインの原案を描く

大事なのは頭の中じゃなく描きながら考えることだと母さんも言ったし 私もそうだろうなと思った

学校には当たり前のように行かなくなって、私は朝から日が沈むまでひたすら描いた

絵なんて普段描かないから、写真を見たり人の絵を真似たり

何度も不安になった

「これでいいんだろうか」

「ほんとに ちゃんとよくなってるんだろうか」

「そもそもタムラに合うデザインをきちんと選べてるんだろうか」

「三年も会うどころか連絡さえ取ってなかった私なんかが」


114 :名も無き被検体774号+@(^o^)/:2015/06/21(日) 00:00:17.43 ID:B9W0hmlt0.net
さんは「不安になるのも仕事のう」とった

余命いくばくもない人の、その余命と同じ時間で、ばんいい仕事すること

ない時間のなかでや限りのこやる

命半年なん言われて人は、明日死んじゃったっておしくないから

完成までの時退が限られ私た仕事誠実にやるなら不安なるらいがちょうどいんだっ





115 :名も無き被検体774号+@(^o^)/:2015/06/21(日) 00:06:38.84 ID:B9W0hmlt0.net
デザインを描きはじめて2週くらいし宿ようやく向性が始めた

根詰めっったからがにもくくたでさびさに息抜きでに近所のコンビニに行くことにする

時計は22時回っくらいだ

の散歩っかわくわくすのだ


117 :名き被検体774号+@\(^o^)/:2015/06/21(日) 00:10:07.23 ID:B9W0hmlt0.net
五分のコンは がらに空いてて、駐車場にも一台も車がなか

が一でゆっとレジに立ってい

私の かにはいかった

トルコアイスパックのジャスミンから、私雑誌コーナーをぶっと

○○ 集 ちの系譜』

タイトルが目に入


119 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/06/21(日) 00:14:42.00 ID:B9W0hmlt0.net
将棋とチェスって全然違うんだって羽生善治が言ってたってタムラが言ってたのを思い出しながら私は その特集のページをめくる

特集のメインは50年前くらいのとあるタイトル保持者と挑戦者の対談だった

もうどっちも80歳に近い人たちだ

若いときの写真なんかも載っていた

どうしてああいう人たちの若い頃の写真っていうとだいたいイケメンなんだろうか


121 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/06/21(日) 00:19:12.71 ID:B9W0hmlt0.net
でも若いって言っても その人たちの「若い頃」ってだいたい25歳とか30歳の話で 私はなんとなく それを思うと胸がちくりとした

「若い頃は勢いばっかりで どうも深みのない将棋ばかりしていましたね」

「不思議なもので歳を追うにつれて理屈で考える場面が どんどん減っていった」

なんて

タムラはもうあと少しで死んじまうのに

タムラが深みも熟練の勘もないチェスしかできずに死んでいかなきゃいけないんだとしたら、それはどうしようもなく不公平なことに思えた

タムラが どこかの試合でぱっとした成績を残した、みたいな話も、その頃私の耳にはまだ届いていなかった


122 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/06/21(日) 00:24:15.99 ID:B9W0hmlt0.net
翌日から彫りの作業に入る

デザインの原画を拡大して、それを木材の上にトレースしていく

その作業を半日がかりでやってから、いよいよ彫刻刀を握ることになった

手本として まず簡単なところを母さんが彫った


そもそも小学生が持っているようなゴムのグリップのやつとはわけの違う彫刻刀で、母さんは氷の上を滑るみたいな滑らかさで、鉛筆の線の上をなぞった

私はもはや ぽかんとしてた

「いきなりこうはできないけど、まあはみ出しちゃっていいところもあるから、そういうところからやんなさい」

あっさりと簡単に言う母さん

やはり親でもなんでも職人は職人、厳しい……


123 :名無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/06/21(日) 00:29:11.53 ID:B9W0hmlt0.net
それからというも毎日さん助言を仰ながら、私たすら彫りった

りの業にてから、何つらかったって言えば肉体的疲労一気にたこと

もちろん手にマができるとか彫刻なし手がとか、そういうレベルのこともあるけれど、第一に立ち仕事だから足腰は疲れるし、先だけでなく腕や肩まで きっちり肉痛にな

学生図工とかて人体の大のものを扱うから、結構単純作業多いのもドだ

音をあげもりはかったけ毎日風入ってべたら一瞬で寝られるらいにはへへとった


124 :無き被検体774号+@(^o^)/:2015/06/21(日) 00:36:31.54 ID:B9W0hmlt0.net
それ2週間くらい経った頃、私はらかした

左手の親使指の付け根をザックリとやってし

慣れた頃が一番怖なんてど、れたつもりもなうちに事故っは正つらかった

は なにも言わずに傷にタオを当て、ままシーに乗っ病院までていってくれた

しいくらいに傷口に包帯を巻かれてしった

数日くり休みなさい」

クシーの窓に おでこをつけを眺めてた私に、母さんは言っ

ゆっくり休んで、一回なんないで、頭をきりさせなさい

休んでる間のとは、私に任せていいから


言われるまなく疲れ果てていただっ

に帰るときてるのさえって、私は自分の部のベッドったりと眠


125 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/06/21(日) 00:39:28.52 ID:B9W0hmlt0.net
携帯の音で目が覚めた

起きたら部屋は まっくらで、枕元の時計が蛍光グリーンの針で21時を指してた

6時間も昼寝するなんてびっくりだ

出血したせいか寝すぎたせいかぼんやりしながら起きて、携帯を開く

「新着メール:2通」

部屋を出ながら私はボタンを押す




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