妻が隠れて喫煙するようになった理由
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彼女は同じ系列の販売店に勤める、いわば私の同業者でした。
その後もう一人女性が入って来ましたが、妹さんの連れでした。
二人は、ちょうど開いていた席に私たちを両脇から挟むように座ろうとしたため、私が席を移動しようとしたとき、彼女達に肩を抑え
られ、上げた腰を同じ席に沈めました。
「そのままで良いですよ。」
「特に積もる話も無いですから、○○さんさえ良ければ、ここに座って良いですか。」
「私は良いですけど。」
連れの女性は、佐藤さんとはかなり親しいようで、座った瞬間から何の抵抗も無く会話をしていて、私は必然的に妹の由香里さんと話
をするしかなかった。
元々、今日の目的は済んでおり、由香里さんとの会話は新鮮味を感じることが出来たのも事実である。
彼女とは、店舗も近いと言うことからメーカーのイベントなどでも度々話す機会があったため、飲みながら話をしていると、杓子定規な話からプライベートの話に移行するには、時間を必要とはしなかった。
この女性「由香里さん」が妻と私の関係に微妙な役割を持ってくるのは、それから間もなくの事でした。
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時間を忘れて、辛さから逃れるように由香里さんと飲み続けていたのでしょう。
「○○さん、そろそろ、明日もあるし?(佐藤さん)。」
私もかなり飲みすぎたようで、時計の針もろくに読めない程でしたが、佐藤さんの問いかけに返事をして、マスターに会計を済ませ店を出ました、
皆に挨拶をして少し歩き始めた時、不覚にも吐き気を覚え道路脇で戻してしまいました。
吐き気も治まったころ、背中を摩る手に気づき、すみませんと言いながら振り返るとそこには、今別れたばかりの由香里さんが、中腰の彼女は眉尻を下げて私の顔を覗き込んでいました。
由香里さんは、後ろから私の肘を掴むように支えてくれて、深夜喫茶に連れて行ってくれました。
「少し酔いを覚まして。」
「すみません、少し楽になりました、すみません。」
「そんな姿を、可愛い娘さんが見たら心配しますよ。」
「もう寝てます。」
時計を見ながら答える私、由香里さんが頼んでくれたらしいコーヒーがテーブルの上に差し出されました。
私はまた、すみませんを連呼していました。かなりの醜態を見せてしまっていた筈です。
水を一気に飲み干し、コーヒーに手を伸ばし一口啜ると、すぐに皿にカップを戻しました。
元々とコーヒーは好んで飲む方で無かった私は、コーヒーの熱さも手伝って、そのカップをまた手にすることは無かった。
タイミングを見ては由香里さんが頼んでくれた、水を3杯程飲んだころには、多少酔いも冷めて来た。
「さっき戻したのが良かったんですね、顔色が大分良いですね。」
「助かりました、すみません。」
「そろそろ帰りましょうか。」
その時の私には、一回り近く年の違う由香里さんに醜態をさらしたという思いから、まともに顔を上げることが出来ませんでした。
通りに出てタクシーを待つ間、正気を取り戻し始めた私は、由香里さんに丁寧に感謝の意を伝えると。
「○○さん、気にしないで下さい、詳しいことは知りませんが、辛い気持ちは良くわかります。」
由香里さんと飲んでいる間、妻の不貞に関する事を知らず知らずに話していたのかも知れません、いや誰かに聞いてもらいたく、間接的に伝えていたのかも知れません。
空車が一台、由香里さんが止めてくれ私を乗せてくれました。
別れ際、タクシーのウインドー越しに由香里さんが言葉を掛けてくれました。
「頑張ってください、私で良ければまたお付き合いしますから。」
「ありがとう。」
深々と頭を下げた私を乗せて、タクシーは走り始めました。
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家に着くと、さすがに風呂に入る気にもなれない私は、寝室に直行しました。
寝室のドアを開けた私は驚きました、妻がベッドに腰を掛けて起きているでは有りませんか。
「こんな遅くまでどうした?」
「あなたこそ、どうしたの?、2時過ぎてるよ。」
「会社の連中と、ちょっと飲みすぎた。」
スーツをクローゼットの中に脱ぎ捨てるように、下着のままベッドに滑り込んだ。
私のスーツを片付けると、部屋の明かりを落とし、妻もベッドの中に入ってきて、私がまだ眠りについていないのを確認すると、話しかけてきた。
「あなた、何か有った?」
「何でだ?」
「お姉ちゃんから聞いたんだけど!」
「あぁ、なんでもない。」
「でも、あなたが子供に涙見せるなんて!」
「何でもない!・・・・」
「私には、話せない?」
お前が原因だ、などと言えるはずも無く、暫し沈黙が続いた。
妻も、何か感ずるものがあるのか、それ以上の追求は無かった。
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いつの間にか寝てしまったようで、体に違和感を覚えた私は少し朦朧とするなか少し目を開けた。
何時もは背を向けて寝ている筈の妻が、私の足に自分の足を絡め、右手は私の胸をまさぐっているではないか、
恐らく私の意識が戻る直前には、股間をまさぐっていたのであろう、下着姿をつけて寝ていた筈の私のトランクスは、そこには無かった。
私の下半身は確かに今まで妻のしていたであろう行為に、明らかに反応していた。
しかし、意識がハッキリするにつれて、これは瞬く間に萎えていった。
「どうしたの?」
「疲れてるんだ、勘弁してくれ。」
吐き捨てるように言うと、妻を押しのけ足元にあったトランクスを手早く身につけると、妻に背を向けて寝てしまいました。いや正確には寝たふりをしました。
背中の向こうでは、妻が下着をやパジャマを直す衣擦れの音が聞こえていました。
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翌朝少し頭の痛さを覚えながらも、リビングに降りて行くと、何時もと変わりないように妻が話しかけてきた。
「ご飯食べれますか?」
「いらない、シャワーを浴びたら直ぐ出る。
」
「冷たいものでも?」
「いらない!」
飲み物は欲しかった、でも妻に言われた瞬間、お前に出してもらいたくない、というのが本当の気持ちだった。
なぜか妻は腫れ物にでも触るかのような、口調だったように感じました。
脱衣所の洗面台の前に立った私は自分の険しい顔をみて驚きました。
この日を境に妻の言動に変化が現れ始めました、言葉使いにいたるまで。
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その後も、妻のバックからタバコ,ライター,ポケベルの3点セットがなくなる事はありませんでした。
妻の不貞が確実になる前は、私達夫婦の間にはそれなりの夫婦の営みはありました。
週に1度程度はあったと思いますが、妻の日帰り添乗の日から営みは、皆無となりました。
たまに妻から求めてくることはありますが、私の体がそれを受け付けません。
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そんなある日、私はメーカーの新車発表会の為、1泊の予定で東京に出張することになりました。
各販売会社から数名が代表で主席して、一般発表する前の新車を内覧するという内容のものです。
会場には千人を超える販売店の人間にメーカーの職員、それは盛大なものでした。
一次会が終わり、地域別の分化会が開かれました。一次会とは一転して、分化会はこじんまりした感じでした。
人数も百人足らず、当然地域別ですから知った顔も多く、その中には由香里さんもいたのです。
メーカーの職員と私が会話をしているところに、一人の女性が割り込んできました、由香里さんです。
「お久しぶりです。」
「お久しぶり。」
前回のことがあるので、少し躊躇している私に由香里さんは、屈託の無い表情でひたしげに会話を進めてくれます。
今日の新車のことや、営業に関する話など、さすがにお互い営業の仕事柄、仕事の話にはこと欠きません。
そのうちメーカーの人間が中座すると、由香里さんが切り出しました。
「この間は、大丈夫でしたか?」
「本当に失礼しました、醜態を見せてしまって。」
「そんな事ないです、辛いときはお互い様です。」
「そういって貰えると、少し気が楽になります。」
そうこうするうちに、文化会もおひらきとなり、人も減り始め由香里さんと二人ホテルのラウンジで、コーヒーでもと言うことになり二人で、ラウンジに向かいました。
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内覧会は、東京のベイサイドの大型ホテルを借り切り行われたため、同じホテル内の移動で済すむのです。
ラウンジは、同じような考えの人間で満席状態でした。
それではと、最上階のレストラン,バーと行ってはみたものの、ことごとく満席。
その時由香里さんから提案が。
「しょうがないから、部屋で飲みなおししませんか?、今日はお互い個室ですし、気兼ねなくお話が出来ますよ!」
「独身女性と二人は、不味くないですか?」
「何かまずい事でも?下心有りですか?」
「そうではないですが、それじゃどっちの部屋にしますか?」
さすがに二十歳の女性、じゃんけんで負けた方の部屋、冷蔵庫とルームサービスは、負けた方が持つという提案です。その場でじゃんけんです、負けたのは私でした。
クロークから荷物を受け取ると、各自の部屋の鍵を受け取り私の部屋へ向かいました。
その日、初めて入った部屋は、10階に有るオーシャンビューの部屋でした。
由香里さんは、窓際に駆け寄り海に漂う船の明かりを見て感激していました。
その場の雰囲気に照れた私は、由香里さんを茶化します。
「夜の海なんてね田舎で見慣れてるでしょ。」
「こんな見晴らしのいいところ無いもん。」
そういえば、岸壁から見る漁火とは大分雰囲気は違うのは事実です。
「由香里さん、なんにする?ビール,ウイスキー?ワインも有るけど。」
「何でも、○○さんは?」
「ビールかな。」
「私も同じでいい!」
缶ビールを二つ持って窓際の応接セットに近付き、1つを由香里さんに渡すと、籐性の椅子に腰を下ろしました。
何を話するでもなく、由香里さんは海を見ているだけでした。
私は田舎に居る妻のことを考えて、視点の定まらない目で由香里さんの方を見ていました。
今思えば、メロドラマの世界です。
妻帯者の私が、心に傷を負い自暴自棄の状態で、家を離れ偶然とはいえ高級ホテルの一室で二十歳の女性と二人きり。
何も無い方がおかしい状態です。
「○○さん、聞いてもいい?」
「何?」
「嫌なら答えなくても良いですよ。」
その瞬間、彼女の質問はおおよそ察しがつきました。
「奥さん浮気してるんでしょ?」
「多分。」
「多分って!」
雰囲気がそうさせたのでしょう、私は今までの経緯を詳細に話しました。
一通り話し終えると、由香里さんは私の向かい側に座りため息を1つつきました。
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