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思い出の懐中時計
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「いい加減な事言わないで下さい・・・・・・私がどれだけ辛い目にあってるか・・・・・・・・」

「君は正直、自殺を考えたか」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「正直に言ってくれ。自殺を考えたか」

「・・・・・・・・・・・ええ。リストカットしましたこの間」

「痕は残ったのか」

「しっかりとのこりました。怖くて本気で切れなかった私・・・・」

これは使える。

「君に選択肢が今二つある。選ぶのは君だ」

「なんですか・・・・・・・・・」

「このままクラスからいじめられ続けるか。俺に協力してイジメから脱出するか」

「・・・・・・・・本当に脱出できるんですか?」

「約束する。協力してくれたらな」

「何をすればいいんですか・・・・・・・・」

「その前に俺がやる事には一切口出ししない事。いいな」

「はい・・・・・」

「口出ししたら、その時俺は手を引く。好きなだけいじめられればいい」

「約束します」

「よし。じゃあまずは手首の痕を写真に撮って封筒に入れ駅のコインロッカー100番に入れろ。時間を指定する。明日の夕方5時に入れて、お前はすぐ帰れ。絶対に俺を探そうとはするな。見張ってるからな」

「・・・・・・・・・・・分かりました」

「じゃ、また連絡する」

すかさず小林にメールを打つ。
「明日の夕方5:10分に駅のコインロッカー100番から封筒を一つ取り、雫に渡せ」

すぐに返信が来る

「何が入ってるんですか!」

余計な返信はいらんのになあ・・・・・

「中は見ないほうがいい。あと、このメール削除忘れるなよ小林君」

「了解です」

翌日、学校から帰った雫から封筒を受け取った。

「兄さん中身何?」

「見ないほうがいいぞ」

「私達作戦の仲間」

「雪村のリストカットの写真だ」

「雪村さん電話した時どうだった?」

「正直ワラにもすがりたいって感じだった。俺の事は多少怪しんでるだろうが、それよりもイジメから救ってやるという一言が効いたな」

「兄さん。あたし複雑な心境」

「雫。こういう時に本当に大切なものを間違ったらいけない」

「何」

「雪村の命だろう」

「!!」

「死んだらおしまいだ。生きてるからこそ感動や希望を感じられる。そうだろう雫」

「兄さんの言うとおり」

「絶対雪村を助けよう」

「ええ。兄さん」

「今から高校行く。作戦スタートだ。北村の腐った心に風穴開けてやる」

「何するの。学校今しまってて入れない」

「まずは小手調べだ」



高校の正門前に着いた。本当は一人で来る予定だったんだが雫が一緒に行くときかなかった。

みんなが通る校庭の脇に良く人目に付く掲示板がある。

俺はカバンから、持ってきた紙を取り出した。


『2年1組の北村はクラスのイジメの主犯格である。同じクラスの雪村を自殺に追い込んでいる』


パソコンで作成したものだ。筆跡ではバレない。

俺は掲示板いっぱいにそれを張り出した。朝絶対に全校生徒の目に付く。

これが見つかれば北村は終わりだ。全校生徒から白い目で見られるだろう。

「兄さんこれ目立つ」

「ああ。これはな別に全校生徒に見せるために貼ったんじゃない。北村に異変をしらせるためだ。雫、移動だ。雑居ビルが見えるだろう」

「ええ兄さん」

「あそこの屋上に行く。あそこからなら、ここの様子が丸分かりだ」

「いいけど何するの?」

「北村の脅迫と動向チェックだ」


ビルの屋上に来ると強い風が吹いていた。

ポケットから懐中時計を取り出し、携帯の電話口に近付ける。

カテッカチッという音が聞こえる。

「兄さん何してんの」

「これはサブリミナル効果だな。喋ってる時にバックにこの懐中時計の音を流す。今後何度か北村には電話する事になる。そのうちこの音に恐怖を感じるようになる」


大きく深呼吸する。変声機を電話口にあて、電話をかける。


「もしもし誰ー?」

「北村だな」

「ちょっと、何なのあんた気持ち悪い!変な声出して切るからね!」

「イジメのリーダーがよく言うよ」

「・・・・・・・・誰よ」

「俺は親切で電話したんだぞ?

くっくっく・・・・・・・今お前の通ってる高校の校庭の掲示板に告発文が貼られてるぞ?

いいのかなあ?あのままで。お前あれが明日みんなの目に触れたら学校中に知れ渡るぞ?

お前がイジメのリーダーだってな。明日がたのしみだなあ・・・・おい」

「ちょっとあんた・・・・」

プツ

電話を切る。非通知でかけてるから俺からしか電話はかけられない。

「兄さん名役者」

「いや、正直本気だ。北村許せねえ」

「あたしも同意見。で?」

「恐らく北村は学校に来るはず。それを待つ」

「なるほど」

「ほれ望遠鏡」

「用意良いね」

「そして親父の望遠カメラ」

「なるほど」


30分くらい経った頃だろうか。懐中時計を開くと21:00をさしていた。

「兄さん北村登場」

「よし。計算通り」


正門を登り、校庭に入った北村は真っ先に掲示板に向かった。

掲示板の前でボーゼンとしている。そしてハッと気付いたように先ほど貼った紙をビリビリ剥がし始めた。

「兄さん剥がしてるけど」

「いいの。剥がさせるために貼ったんだし。今回は宣戦布告。まあ写真撮っとくか」


パシャ

北村が夜中に学校に忍び込んでる証拠写真だ。何かに使えるだろ。


作業を終えると今度は雪村にかける。

「はい・・・・雪村です・・・・・」

「こんばんわ。言う事よく聞いてくれた」

「あ、あなたは・・・・・・・私言われた通り写真ロッカーに入れてすぐ帰りました」

「君を必ず救ってやる。だから俺の計画が終わるまでは自殺はするな。いいな」

「はい・・・・・・」

「それと今日俺は少し動いた。君にもしかしたら影響が出るかもしれない。明日は親戚の葬式という理由で休め」

「わかりました・・・・・・言うとおりにします」


>>次のページへ続く
 
カテゴリー:読み物  |  タグ:青春,
 


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