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思い出の懐中時計
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電話を切ると、俺は大きく息を吐いた。
「兄さん。なんで雪村さん休ませるの?」
「今日のことで北村には確実にある種の恐怖が芽生えたはずだ。北村がイジメにそのストレスをぶつける可能性がある。葬式で休むという理由も、雪村がやってるのかもしれないという疑いを薄めるためだ。熱が出たとかじゃ、突発的な感じがする」
「色々考えてるんだ兄さん」
「まあ電話で『俺』という男を印象付ける言葉で話してるから雪村が疑われる事はまずない。だが、念のためだ」
翌日、俺は雫と小林にクラスでの北村の様子を観察するように言った。
突然の謎の人物からの電話。自分がイジメをしてることをネタに脅しに来ている。北村にとっては予想外の出来事だろう。
担任にイジメがバレてないと言う事は他のクラスにも知れ渡っていない可能性が高い。
当然北村はクラスメイトの誰かが裏切ったと感じたはずだ。
学校に登校すると思いがけない事が起こった。
校舎の窓ガラスが何者かによって割られていたのだ。
俺のクラスで担任から連絡があった。恐らく全てのクラスでこの事は伝えられているだろう。
偶然の産物だが、これで昨日撮った北村の校舎への侵入写真が役に立つ。
俺メール:雫。北村の様子は?
雫メール:大事。「誰がやったんだよ!!」と問い詰めてる。
俺メール:ある程度予想の範囲内。もし話が今日休んでる雪村の仕業じゃないかという方向に進んだら、雫がさりげなく「でも、1週間前くらいから今日は休むって担任に言ってたの聞いたよ」と言え。
小林に「あ、私も一緒にいたから聞いた。雪村には無理だよあの子バカだし。北村さんに逆らう勇気そもそもないよ」と誘導。
あくまでクラスのイジメやってる仲間として接しろ。雪村が疑われる事は絶対避けろ。
雫メール:了解。
小林メール:先輩了解です!!
放課後俺達3人は俺の家に集まった。報告を聞くためだ。
「雫。どうだった今日の北村」
「北村切れてた。でも校舎に侵入したことは言いたくなかったみたいで、朝クラスの黒板に貼ってあったと嘘いってた」
「先輩。そして案の定 先輩が予想してた通り雪村がやったんじゃないかって話になってね、
先輩の指示通りやって話をうまくそらした。
北村は納得してるかわからないけど疑ってはいない感じです」
「なるほど。明日例の写真を使って北村を追い詰める。タイミングが大切だ。今から俺の言う通りに動け。いいな」
「兄さん顔怖い」
「先輩 でもたくらんでる顔 素敵です」
「千春 悪趣味」
「そんな事ないよ雫ちゃん」
「おい。俺は元からこんな顔だ」
「私が兄さんを好きなのは兄さんの心」
「おい。愛の告白をするな」
「先輩本当に近親相姦じゃないんですよね・・・・・?」
「違うといっただろう。そんなことより作戦だ。北村は弁当派か?学食派か?」
「兄さん、北村弁当持参。いつも4,5人で教室で食べてる」
「よし。明日クラスの掃除用具入れの棚の中に北村の侵入写真と雪村のリストカット写真を入れる。
お昼のタイミングでなるべく人が多い時間に俺にメールで連絡しろ。北村に電話かける。
お前達は北村が写真を見たら、さりげなく「あ、北村さん何の写真?見せて見せて」と声をかけろ」
「兄さん孔明」
「タイミングが大事だ。絶対 北村は他人には見せない。だから北村が写真を隠せるタイミング、もしくはごまかせるタイミングで声をかけるんだ」
「分かった兄さん」
「先輩わかりました!!」
作戦を伝えると俺は近くの公園に出たけた。
こう言う事は北村も怖いだろうが、俺も正直やってる事が怖い。
でも一番大切なことが何なのか俺には分かってるから俺はやめない。雪村の命。
自殺は多くの悲しみを残す。
残された両親はどんなに悲しむだろう。
そして北村の仕業と知った時、どれだけの恨みを北村にぶつけるだろう。絶え間ない負の感情の連鎖がそこには待っている。
そんなの悲しすぎる。
見上げた空に綺麗な星が出ていた。ボーっと眺める。ポケットから懐中時計を取り出す。
「北村の親父が作ったんだよな多分これ。すげえなあ・・・・・・・・」
ずっと大切にしてきた俺の宝物。北村は親父の仕事振りを見て育ったんだろうか。
離婚したと雫が言ってたな。店長さんは親父さんじゃなくて北村のお姉さんだったし。
「兄さん」
振り返ると雫が立っていた。
「何だどうした」
「兄さんこそ」
「うん・・・・・・」
「兄さんは決して北村をさらし者にはしない。逃げ道用意してる。なぜ?」
「北村にはイジメの復讐という形はとりたくない。あいつさ・・・・・・・・」
「兄さん言って」
「見ろよ雫この懐中時計。俺本当に嬉しかったんだ。美原時計店でこれを貰った時。少年探偵団の一員にでもなったような気がしてさ。よく考えたら懐中時計なんか少年探偵団とは何の関係もないのにな」
「兄さん」
「あいつ、あの懐中時計をくれた姉さんの妹なんだろ」
「調査ではそう」
「あいつには心から反省してやり直してもらいたい」
「兄さん一つ情報」
「何だ?」
「北村と姉は10歳違いで、北村が小学生の頃両親が離婚。姉とは離れ離れで暮らしてる。
その後母親と暮らし始めるも、母親の暴力行為で精神的ダメージ。今は祖母の家から学校通ってる」
「なんだって・・・・!!母親に暴力受けてたのか」
「そう。北村は恐らく姉に会いたい気持ちが強い。でも離婚後消息不明」
「そうか・・・・・・・・・」
「でもやっと調査終わった」
「は?」
「兄さんがいつも話してくれた美原時計店の事。店内の全ての時計の秒針がピッタリと狂うことなく動いてる奇妙な空間」
「ああ。忘れられないよ」
「これ。今のお姉さんの住所」
「お前、これ本当に?」
「ええ。調査苦労した」
「ほんとにお前は凄いな・・・・・・・何者だよ」
「兄さんの妹」
そういって雫は笑った。
千葉県の住所がその紙には書いてあった。そんなに遠距離ではない。
最後の仕上に使える。何より俺もまたあのお姉さんに会ってお礼言いたい。
懐中時計を俺は眺めていた。不思議な縁だ。
翌日学校の昼休みになると俺は屋上に向かった。
予想通り誰もいない。好都合だ。
まずは雪村に電話をかける。
「・・・・・はい」
「雪村だな」
「ええ」
「今日はどうだ。何かされたか?」
「今日はまだ何も・・・・・・こんなのって珍しいです。いつも何かしてくるのに・・・・・・」
北村、だいぶ警戒してるな。精神的にも多少追い詰められてると考えていいかもしれない。
「お前今から北村の様子をよく観察しておけ。いいな」
「観察ですか?」
「ああ。今から北村に脅迫電話かける。お前は電話が終わった後、北村に「どうしたの?北村さん大丈夫?」と声をかけろ」
「北村さんをあたしが心配しなくちゃいけないんですか!嫌です!!」
「おい。最初の約束を忘れるな。俺が手を引いてもいいのか?」
>>次のページへ続く
「兄さん言って」
「見ろよ雫この懐中時計。俺本当に嬉しかったんだ。美原時計店でこれを貰った時。少年探偵団の一員にでもなったような気がしてさ。よく考えたら懐中時計なんか少年探偵団とは何の関係もないのにな」
「兄さん」
「あいつ、あの懐中時計をくれた姉さんの妹なんだろ」
「調査ではそう」
「あいつには心から反省してやり直してもらいたい」
「兄さん一つ情報」
「何だ?」
「北村と姉は10歳違いで、北村が小学生の頃両親が離婚。姉とは離れ離れで暮らしてる。
その後母親と暮らし始めるも、母親の暴力行為で精神的ダメージ。今は祖母の家から学校通ってる」
「なんだって・・・・!!母親に暴力受けてたのか」
「そう。北村は恐らく姉に会いたい気持ちが強い。でも離婚後消息不明」
「そうか・・・・・・・・・」
「でもやっと調査終わった」
「は?」
「兄さんがいつも話してくれた美原時計店の事。店内の全ての時計の秒針がピッタリと狂うことなく動いてる奇妙な空間」
「ああ。忘れられないよ」
「これ。今のお姉さんの住所」
「お前、これ本当に?」
「ええ。調査苦労した」
「ほんとにお前は凄いな・・・・・・・何者だよ」
「兄さんの妹」
そういって雫は笑った。
千葉県の住所がその紙には書いてあった。そんなに遠距離ではない。
最後の仕上に使える。何より俺もまたあのお姉さんに会ってお礼言いたい。
懐中時計を俺は眺めていた。不思議な縁だ。
翌日学校の昼休みになると俺は屋上に向かった。
予想通り誰もいない。好都合だ。
まずは雪村に電話をかける。
「・・・・・はい」
「雪村だな」
「ええ」
「今日はどうだ。何かされたか?」
「今日はまだ何も・・・・・・こんなのって珍しいです。いつも何かしてくるのに・・・・・・」
北村、だいぶ警戒してるな。精神的にも多少追い詰められてると考えていいかもしれない。
「お前今から北村の様子をよく観察しておけ。いいな」
「観察ですか?」
「ああ。今から北村に脅迫電話かける。お前は電話が終わった後、北村に「どうしたの?北村さん大丈夫?」と声をかけろ」
「北村さんをあたしが心配しなくちゃいけないんですか!嫌です!!」
「おい。最初の約束を忘れるな。俺が手を引いてもいいのか?」
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