死の淵から
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例え諒子さんを許せなくて、離婚になったとしても、このままじゃ お互い後悔するだけだよ。
そんなの・・・悲しいじゃない」
「そうかも知れないな・・・」
と俺は最後に空になるまでビールを飲んだ。
「あなた それでどうするつもりなの?中途半端に足突っ込んでも余計に話がややこしくなるだけよ。本気で関わるつもりなの?」
「このまま放っては置けない」
「そう、なら止めないわ・・・でも離婚するかどうかってのは本人達の問題よ。
私たちが出来るのは冷静になる時間を与えることぐらいよ。
後は貴方が桂木さんのお尻を引っぱたくことぐらいね」
「まったく・・・頼もしいことで」
俺は笑いながら言ったが、確かに このままやり直しても、上手くいかないだろうと思っていた。
妻は ほぼ毎日諒子さんの所へ行っていた。
諒子さんは子供のことが気がかりでありながらも、今のまま桂木と暮らすことは逆効果であると決意を曲げなかった。
しかし、子供には母親も必要であると俺たちが言うと、やはりそこが一番の問題であり、夫と同じぐらい子供を愛している諒子さんにとって両方と離れて暮らすのは やはり耐え難い思いでしょう。
このまま姿を隠し続けることが解決の道ではないことは、諒子さんも分かている。
しかし桂木の体のことを考えると、それほど迷ってる時間は無い。
結局 諒子さんのご両親と俺たちは取り合えず1年間協力して諒子さんの居場所を桂木に教えないことを確認した。
諒子さんは始終頭を下げたまま、自分のしたことの愚かさを全身で感じているように肩を震わせうつむいていた。
この間 例のあの男から連絡があったのか分からないが、諒子さんは自分で何とかするといって聞かないので、俺たちからは何も出来ないでいた。
とうとう退院の日が決まって、諒子さんは子供達に
「しばらく会えないけどパパと元気で暮らしてね・・・ごめんね、ごめんね」
と別れを惜しみ退院前日夜に出て行った。
出て行くとき私達に礼をし
「ご迷惑かけて申し訳ございません、今までありがとうございましたご恩は必ず返します」
と言って去って行った。
俺が桂木を迎えにいき、このことを伝えると桂木は酷く動揺し俺を責めた。
俺と妻は諒子さんのご両親とともに諒子さんの決意を伝えた。
しばらくは落ち込んでいた桂木も徐々に落ち着きを取り戻し、当初ほど諒子さんの居場所について聞くこともなくなってきた。
妻は諒子さんと時々連絡を取っていたようだが、俺は あれ以来一度も話すことも無く、妻から近況を聞く程度で詳しくは聞けないでいた。
変に聞いてしまうと ぼろが出てしまいそうであえて聞かなかった。
しかし半年を過ぎて 正月に桂木と話をし、桂木の思いを聞くと、心が揺れ 今の状態であれば少しずつ話しても大丈夫だろうと思い俺は桂木に知っていることを話すことにした。
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田中や美鈴さんの話を聞きながら、私は妻の心境を思い。
また私自身の甘えや不甲斐なさを感じ、私自身も変わらねばと思うのです。
私は妻にいつも変わらぬ愛情で私を守ってくれる母親を求めていて桂木諒子という一人の女性を求めてはいなかったのかもしれません。
妻も間違いを犯す平凡な人間であることを許さなかったのは、他でもない私自身なのでしょう。
今、妻を一人の女性 桂木諒子として愛せるのか、私には分かりません。
しかし、私の中には いつも諒子がいて、このまま諒子のことを何も知らないで諦めることは どうしても出来なかったのです。
私は、田中に今の私の気持ちを綴った手紙を渡し諒子に渡して欲しいと頼みました。
私は返事が来るまで何回も手紙を書きました。
どんな事実があろうと これから2人で乗り越えていきたいと。どれほど苦しくても絶対諦めないと。
妻からの返事が初めてきたのは、妻が出て行ってから、もうすぐ1年経とうするころでした。
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---最初の手紙---
まず最初に貴方にあのようなことをしてしまい、本当に申し訳ありません。
そして、あなたに謝ることも出来ないまま、あなたの前から姿を消してしまったことを私は悔やんでも悔やみきれず、いつか誠心誠意謝りたいと思いつつも弱い私は あなたに手紙を書くことも出来ませんでした。
そして日が経つにつれ、美鈴さんから立ち直って行くあなたのことを聞き、嬉しく思うとともに、私がいなくても大丈夫だと言う事実に、自分勝手ながらひどく打ちのめされていました。
今更だと思われるかもしれませんが、本当にごめんなさい。
あなたの手紙にお返事を書くことを今まで躊躇っていたのは、私自身あのことを貴方に知られるのが怖かったという思いもありますが、
貴方が、私を過去のこととして乗り越えるために、真実を知りたいと思っているのなら、私には どうしても教えることが出来なかったからです。
最後まで自分勝手な女と笑ってください。
それでも私は せめて貴方の記憶の中では今までの良かった私のままでいたく、あのようなことをしてしまった女だと思われるのが本当に怖かったのです。
しかし貴方の手紙を読むにつれ、貴方も私も真実を知って乗り越え無ければ、過去にとらわれたままで未来を見られないと感じました。
私は、あのことを知られるのが本当に怖い。
真実を全て語り終える頃には貴方はきっと私を軽蔑するでしょう。
それでも、真実を語るのが貴方に出来るせめてもの償いと思い、貴方の望むように私が犯した罪を告白したいと思います。
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妻の最初の手紙は短いものでした。
しかし次から送られてくる内容は非常に驚くべきものでした。
私は男との関係を知る段階になり、妻の告白を読んで行くと、もっと詳しく男と どういう行為をしたのか知りたい欲求を抑えられません。
妻は詳細な描写は出来るだけ省いていましたが、私は、妻が どういうことをされ どういう風に男の手に落ちたのか どうしても知りたかった。
そして妻のされた行為を想像すると、嫉妬で胸が苦しく 妻がされたことを知らなければ先に進めないと思っていました。
私は卑怯にも妻の私への負い目を利用し、妻に行為の部分の告白も要求しました。
しばらく返事が滞りましたが、妻も決心したのか、かなり詳細に妻と男の行為の内容から そのときの心境まで生生しく書かれていました。
私はその告白を読み、辛かった妻の心境と卑怯な男の行動に怒り、そしてやはり妻を取り戻したいと心から思うのです。
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---妻の告白----
ことの始まりは、私が準社員扱いのリーダーになったことから始まります。
ちょうど仕事初めてから半年ほど経って、働きが認められ 私は店長から準社員にならないかと誘われました。
子供も少しずつ手が離れたこともありましたが元来、外へ出る欲求が強く人に認められた嬉しさから、
私は貴方に家のことをちゃんとするからと言う条件で準社員になっても良いかとお願いしましたね。
しかし、貴方は家のことなら子供たちと俺でも出来るから諒子がしたいなら応援するよと言ってくれたこと、私は本当に嬉しかった。
準社員になって仕事が忙しくなると、心も充実したかのように思い 毎日が楽しくて仕事も家庭も上手く回っていると思っていました。
しかし責任ある立場と言うのは知らずにストレスが溜まるのでしょうか、私はこの頃、貴方に抱きしめられることが何より安心でき、本当はもっと愛し合いたいと思っていました。
しかし、貴方の体のことを考えると、私から求めることはやはり躊躇われるのです。
貴方は お気づきだったかも知れませんが、私は時々一人慰めていたのです。
私は貴方に女としての喜びを与えてもらってから、もっとしたいという欲求を潜在的に持っていたのかも知れません。
もちろん貴方以外から与えられたいと思ったことはありませんでした。
今考えると、あれほど仕事にのめり込んだのも、代償行為だったのかも知れません。
ですが、私はあの時ほど充実した毎日を送ったことは かつてありませんでした。
覚えているでしょうか?
準社員になって半年経ったとき、研修旅行がありました。参加したいと私が言うと貴方は二つ返事でいいよと言ってくれましたね。
思えばあの研修旅行が全ての悪夢の始まりであったのです。
あの旅行は研修とは名ばかりのただの社員旅行でした。ほんの少しの研修を終えると、観光地に乗り出し それなりに楽しいものでした。
夜になると やはり宴会状態になり皆楽しそうに飲んでいて、私も それなりに飲んでいたのですが、やはり元来酒に強いわけでもありません。
少しほろ酔い気分で夜風に当たっていると会場から何組か男女が抜け出すのが、分かりました。
すると いつの間にか近くに来ていた店長が、
「この会社不倫多いんだよね、あの人たちは ここに口実で来てるようなもんだから」
と私に教えてくれました。
私は不倫という言葉に嫌悪感を抱き、段々酔いが覚めていくのを感じました。
なんだか精神的に疲れた私は、部屋に戻りましたが何か部屋から音がするのです。
よく聞いてみると私と相部屋になっていた女性が どうやら行為に励んでいるようです。
私はあまりのことに怒りを感じましたが、まさか踏み込む気にもなれず、結局 ロビーでしばらく時間をつぶして、しばらくすると疲れからか うとうとしてしましました。
誰かが私の肩を叩き私ははっと目が覚めました。
ふと横を見ると店長が「大丈夫と?」と心配そうに声を掛けてきました。
店長は「俺もあの雰囲気に耐えられなくてさ」と笑いながら、「部屋には戻らないの?」と聞かれ、私が事情を話すと、「僕も似たようなもんさ」と苦笑いをするのです。
しばらくロビーで談笑していましたが、もう12時も周り さすがに眠くなってきて店長も
「ん〜多分どこか別の部屋が空いてると思うんだ。探してくるから待ってて」
とどこかへ行くと20分ぐらいして戻ってくると「お待たせ一部屋空いてるから案内するよ」と言いました。
>>次のページへ続く
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