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死の淵から
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妻が俺に席をはずすように合図すると、俺は子供達の寝顔を確認し一人寝室でこれからのことを考えていた。



諒子さんは次の日、子供達をつれて自宅へと帰っていった。

「大丈夫、いきなり消えたりしないわ。ただ かなり思いつめてるだけに諒子さんの体のことが心配ね」 

妻は諒子さんを見送りながら俺にそういった。


昨日の晩、諒子さんを落ち着かせ寝たのを見届けると、妻は俺に。

「諒子さんずっと自分を責めてたのね・・・自分が許せないみたいだわ」

「そうか・・・なんでこうなってしまったんだろうな」


「私には お互いを縛ってるように思うわね。

諒子さんは自分が夫に対して一切曇ること無い愛情を持ち続けなければ、夫がいなくなると感じてるんじゃないかな?

桂木さんも同じかもね・・・

お互いが相手のことを受け入れようとして無理して、相手に受け入れられる形になろうとしているようなそんな気がするわ」


妻はいつの間にか持っていたビールをぐいと飲むと、

「人間なんてちょっと他所向いたり、寄り道したりしながら生きていくもんだと思うんだけどね。」


「おいおい・・・怖い事言うな〜」


「あら?あなた心当たり無いの?」


「いや・・・・どうかな」

と俺は苦笑いをしてしまった。
「ま〜どっちでも良いわ、それでも貴方と私は一緒にいる。

頑張って一緒にいたいと思うこともあれば、鬱陶しいなと思うこともあるわ。

私、桂木さんたちって お互い求めすぎて、揺らぎがないと思うの。

お互い堅物同士じゃない?私だって貴方に隠してることの一つや二つあるわよ、でも知られたって離婚になるとは思えない。

そういうルーズさって結婚に必要だと思うの」


「お前さ・・・・こんなときに そんな告白しないでくれよ。気になるじゃないか」


「へ〜まだそういう気持ちあったんだ」


「なんだよ、そりゃ」と俺もビールを煽ると妻が続けて、

「桂木さんも桂木さんよ、奥さんが怪しい行動してるのに見てみぬ振りなんてさ、おかしいわよ。

妻を信じるって言えば聞こえがいいのかもしれないけど、馬鹿なことやってそうなら ひっぱたいても連れ戻すもんでしょ?

許す許さないは後の話しじゃない、本気で愛してるなら、ぐちゃぐちゃになるまで もがくべきよ、私ならそうするわ」


「でもさ、桂木は病気もちなんだし・・・」


「それよ!それが逃げ口上なのよ、そりゃ私は幸い健康だから彼の気持ちは分からないかもしれないわよ?

だからって それに逃げて真実を知るのが怖いって言う訳?

それじゃ諒子さんが可愛そうじゃない、諒子さんは諒子さんであって彼のお母さんでも保護者でもないのよ。

愛する男に母親を求められるなんて冗談じゃないわよ

男ならさ大事なものの為に戦って欲しいじゃない、

例え諒子さんを許せなくて、離婚になったとしても、このままじゃお互い後悔するだけだよ。

そんなの・・・悲しいじゃない」


「そうかも知れないな・・・」

と俺は最後に空になるまでビールを飲んだ。


「あなた それでどうするつもりなの?

中途半端に足突っ込んでも余計に話がややこしくなるだけよ。

本気で関わるつもりなの?」


「このまま放っては置けない」


「そう、なら止めないわ・・・でも離婚するかどうかってのは本人達の問題よ。

私たちが出来るのは冷静になる時間を与えることぐらいよ。

後は貴方が桂木さんのお尻を引っぱたくことぐらいね」


「まったく・・・頼もしいことで」

俺は笑いながら言ったが、確かに このままやり直しても、上手くいかないだろうと思っていた。


妻は ほぼ毎日諒子さんの所へ行っていた。

諒子さんは子供のことが気がかりでありながらも、今のまま桂木と暮らすことは逆効果であると決意を曲げなかった。

しかし、子供には母親も必要であると俺たちが言うと、やはりそこが一番の問題であり、夫と同じぐらい子供を愛している諒子さんにとって両方と離れて暮らすのは やはり耐え難い思いでしょう。

このまま姿を隠し続けることが解決の道ではないことは、諒子さんも分かている。

しかし桂木の体のことを考えると、それほど迷ってる時間は無い。

結局 諒子さんのご両親と俺たちは取り合えず1年間協力して諒子さんの居場所を桂木に教えないことを確認した。

諒子さんは始終頭を下げたまま、自分のしたことの愚かさを全身で感じているように肩を震わせうつむいていた。

この間 例のあの男から連絡があったのか分からないが、諒子さんは自分で何とかするといって聞かないので、俺たちからは何も出来ないでいた。


とうとう退院の日が決まって、諒子さんは子供達に
「しばらく会えないけどパパと元気で暮らしてね・・・ごめんね、ごめんね」

と別れを惜しみ退院前日夜に出て行った。


出て行くとき私達に礼をし

「ご迷惑かけて申し訳ございません、今までありがとうございましたご恩は必ず返します」

と言って去って行った。


俺が桂木を迎えにいき、このことを伝えると桂木は酷く動揺し俺を責めた。

俺と妻は諒子さんのご両親とともに諒子さんの決意を伝えた。

しばらくは落ち込んでいた桂木も徐々に落ち着きを取り戻し、当初ほど諒子さんの居場所について聞くこともなくなってきた。



妻は諒子さんと時々連絡を取っていたようだが、俺は あれ以来一度も話すことも無く、妻から近況を聞く程度で詳しくは聞けないでいた。

変に聞いてしまうとぼろが出てしまいそうであえて聞かなかった。


しかし半年を過ぎて正月に桂木と話をし、桂木の思いを聞くと、心が揺れ 今の状態であれば少しずつ話しても大丈夫だろうと思い俺は桂木に知っていることを話すことにした。

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田中や美鈴さんの話を聞きながら、私は妻の心境を思い。

また私自身の甘えや不甲斐なさを感じ、私自身も変わらねばと思うのです。

私は妻にいつも変わらぬ愛情で私を守ってくれる母親を求めていて桂木諒子という一人の女性を求めてはいなかったのかもしれません。


妻も間違いを犯す平凡な人間であることを許さなかったのは、他でもない私自身なのでしょう。

今、妻を一人の女性 桂木諒子として愛せるのか、私には分かりません。

しかし、私の中には いつも諒子がいて、このまま諒子のことを何も知らないで諦めることは どうしても出来なかったのです。

私は、田中に今の私の気持ちを綴った手紙を渡し諒子に渡して欲しいと頼みました。

私は返事が来るまで何回も手紙を書きました。

どんな事実があろうと これから2人で乗り越えていきたいと。どれほど苦しくても絶対諦めないと。


妻からの返事が初めてきたのは、妻が出て行ってから、もうすぐ1年経とうするころでした。

--------------------

---最初の手紙---

まず最初に貴方にあのようなことをしてしまい、本当に申し訳ありません。

そして、あなたに謝ることも出来ないまま、あなたの前から姿を消してしまったことを私は悔やんでも悔やみきれず、いつか誠心誠意謝りたいと思いつつも弱い私は あなたに手紙を書くことも出来ませんでした。


そして日が経つにつれ、美鈴さんから立ち直って行くあなたのことを聞き、嬉しく思うとともに、私がいなくても大丈夫だと言う事実に、自分勝手ながらひどく打ちのめされていました。

今更だと思われるかもしれませんが、本当にごめんなさい。

あなたの手紙にお返事を書くことを今まで躊躇っていたのは、私自身あのことを貴方に知られるのが怖かったという思いもありますが、

貴方が、私を過去のこととして乗り越えるために、真実を知りたいと思っているのなら、私には どうしても教えることが出来なかったからです。


最後まで自分勝手な女と笑ってください。

それでも私は せめて貴方の記憶の中では今までの良かった私のままでいたく、あのようなことをしてしまった女だと思われるのが本当に怖かったのです。

しかし貴方の手紙を読むにつれ、貴方も私も真実を知って乗り越え無ければ、過去にとらわれたままで未来を見られないと感じました。


私は、あのことを知られるのが本当に怖い。

真実を全て語り終える頃には貴方はきっと私を軽蔑するでしょう。

それでも、真実を語るのが貴方に出来るせめてもの償いと思い、貴方の望むように私が犯した罪を告白したいと思います。

--------------------

妻の最初の手紙は短いものでした。

しかし次から送られてくる内容は非常に驚くべきものでした。


>>次のページへ続く
 
カテゴリー:読み物  |  タグ:浮気・不倫, 寝取られ, SM_調教,
 


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