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変わり果ててしまった妻
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「離婚しない場合、100万取れれば良いところです。これではダメージも少ないので、奥様と離婚して500万請求しましょう」
「妻と離婚する?」
私は離婚だけは避けたかった。
私を裏切り、他の男を体内に受け入れた妻でも、正直まだ未練があった。
結婚して18年、付き合いを入れると20年の重みを、この一ヶ月あまりの出来事で捨て去る事は出来ない。
何より500万取れたとしても、そのぐらいのお金は青山にとって、痛くも痒くもないと思っていたのだ。
返事をしない私に対して、所長の方が熱くなっていた。
「離婚すると言っても、なにも永久に別れる訳ではありません。
誤解を解いて、奥様に協力してもらって一旦離婚するのです。
いずれまた復縁すればいい。日本では復讐は認められていません。
出来る事は、慰謝料を請求するぐらいしか無いのです」
「でも・・お金なんか青山にとっては・・・・・・」
「それがそうでも無いようですよ」
調べたところ、青山が社長を引き継いだ一年ぐらいは良かったが、怠慢経営と女遊びを含めた道楽で、経営状態は急速に悪化していると言う。
それでも青山は仕事に身を入れず、いつ倒産しても不思議ではないと言う人も。
奥さんが出て行ったのも青山の浮気が原因だという事になっているが、青山の女癖が悪いのは今に始まった事では無い。
おそらく贅沢な暮らしが出来た内は我慢出来ても、金の切れ目が縁の切れ目で我慢出来なくなったのだ。
「銀行は既に見限っていて、今まで貸していたお金の回収に回っているので、今後も融資する事は考えられません。
それでも怠慢経営と遊びをやめない青山は、他からも借りていると思われます」
その時、警察で付き添っていてくれた調査員が帰って来た。
「丁度良かった。あの男の身元が分かりました」
そう言って調査員は手帳を広げる。
--------------------
今中茂樹、54歳。
精密機器の会社の副社長で、社長は実の父親。
青山とはJC時代からの遊び仲間で、青山に泣きつかれてかなりの額を融資している。
「不況が原因なだけで、景気が回復すれば、自然と会社は持ち直すと甘く考えているようで、青山は借り入れを繰り返しています。
しかし、一代で今の会社を築いた今中の父親も馬鹿ではないので、噂では老舗で名前だけは通っている青山の会社が吸収されるのも時間の問題だと。
そうなれば経営に厳しい今中の父親は、女遊びだけが上手く、役に立たない青山は当然放り出すでしょう。
彼は個人名義の借金だけを抱えることに」
早い方が良いと言う事で、その夜、所長と調査員が来てくれることになった。
--------------------
妻は青山と会って話していたのか、定時に終わって帰って来たにしては遅かったが、それでも比較的早くに帰って来た。
「ここに座れ」
「この方達は?」
「一人は世話になったから知っているだろ」
「あなたは確か・・・・事故の時に・・・・」
「興信所の人達だ」
それを聞いた妻は顔色が変わり、立ち上がって逃げるように部屋を出て行こうとする。
「みんなで奥様を責めに来たのではありません。話だけでも聞いて下さい」
所長がそう言って青山についての資料や写真を並べると、妻は座り直して目を通す。
「嘘です!こんなの出鱈目です。社長はこのような人間ではありません」
「目を覚まして下さい。青山が誠実な人間で無い事は、昨夜の事で奥様も分かったはずだ」
そう言って所長は、青山と今中が笑いながらラブホテルから出て来る写真を見せた。
「違う・・・・私はそんな事はされていない!」
誰も何も言っていないのに、妻は今中の写真を見せられただけでそう言って、狂ったように頭を振る。
「落ち着いて下さい。それとご主人の浮気の件ですが、奥様は私どもの報告書も見せてもらいましたか?」
「いいえ・・・・・」
「ご主人は浮気などしていません」
「嘘です!」
「本当です。これは全て青山が仕組んだ事で、彼女は確かにゴミを出しに来ていて、どうみても、ご主人はその時、始めて彼女と会ったように見えました。
出張に行った時も、ロビーでの会話からも ご主人にとっては偶然だった事は明らかですし、
一緒に食事に行き、その後、彼女の部屋に行ったのは事実ですが、
ご主人は15分ほどで彼女の部屋を出て、ご自分の部屋に戻られました」
「嘘です!ホテルは一部屋しかとってなくて、二人は朝まで出てこなかったと」
「丁度良かった。あの男の身元が分かりました」
そう言って調査員は手帳を広げる。
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今中茂樹、54歳。
精密機器の会社の副社長で、社長は実の父親。
青山とはJC時代からの遊び仲間で、青山に泣きつかれてかなりの額を融資している。
「不況が原因なだけで、景気が回復すれば、自然と会社は持ち直すと甘く考えているようで、青山は借り入れを繰り返しています。
しかし、一代で今の会社を築いた今中の父親も馬鹿ではないので、噂では老舗で名前だけは通っている青山の会社が吸収されるのも時間の問題だと。
そうなれば経営に厳しい今中の父親は、女遊びだけが上手く、役に立たない青山は当然放り出すでしょう。
彼は個人名義の借金だけを抱えることに」
早い方が良いと言う事で、その夜、所長と調査員が来てくれることになった。
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妻は青山と会って話していたのか、定時に終わって帰って来たにしては遅かったが、それでも比較的早くに帰って来た。
「ここに座れ」
「この方達は?」
「一人は世話になったから知っているだろ」
「あなたは確か・・・・事故の時に・・・・」
「興信所の人達だ」
それを聞いた妻は顔色が変わり、立ち上がって逃げるように部屋を出て行こうとする。
「みんなで奥様を責めに来たのではありません。話だけでも聞いて下さい」
所長がそう言って青山についての資料や写真を並べると、妻は座り直して目を通す。
「嘘です!こんなの出鱈目です。社長はこのような人間ではありません」
「目を覚まして下さい。青山が誠実な人間で無い事は、昨夜の事で奥様も分かったはずだ」
そう言って所長は、青山と今中が笑いながらラブホテルから出て来る写真を見せた。
「違う・・・・私はそんな事はされていない!」
誰も何も言っていないのに、妻は今中の写真を見せられただけでそう言って、狂ったように頭を振る。
「落ち着いて下さい。それとご主人の浮気の件ですが、奥様は私どもの報告書も見せてもらいましたか?」
「いいえ・・・・・」
「ご主人は浮気などしていません」
「嘘です!」
「本当です。これは全て青山が仕組んだ事で、彼女は確かにゴミを出しに来ていて、どうみても、ご主人はその時、始めて彼女と会ったように見えました。
出張に行った時も、ロビーでの会話からも ご主人にとっては偶然だった事は明らかですし、
一緒に食事に行き、その後、彼女の部屋に行ったのは事実ですが、
ご主人は15分ほどで彼女の部屋を出て、ご自分の部屋に戻られました」
「嘘です!ホテルは一部屋しかとってなくて、二人は朝まで出てこなかったと」
「お尋ねしたい事があるのですが、
ゴミを出しに行くのは、いつもご主人の役目だと、青山に話した事はありませんか?それとゴミを出せる曜日なんかも。
あの日、ご主人が出張に行く事や、出張に行った時には、いつもあのホテルに泊まる事など、青山に話した事は無いですか?」
妻は黙っていたが、俯いてしまった事から思い当たる事があるようだった。
「私どもも、不思議に思ったのですが、青山は調査費用の節約だと言って、日時や張り込む場所までをも、事細かに指定して来ました。
ご主人がゴミを出しに行って、初めて彼女と会った日の朝の一時間。一時間だけですよ。
まるであの日、あの時間に、あの場所で彼女と会う事を知っていたかのように」
妻は顔を上げて、不安そうな顔で所長を見た。
「出張に行った日も、張り込むホテルを指定されて、夕方から その日の夜までで良いと言われました。
浮気するなら、会社指定のホテルを使うかどうか分からないので、通常は、その前からご主人を尾行するのですが、あのホテルで二人が会う事を確信しているかのように。
一番不思議に思ったのは、彼女の部屋に入るところが撮れれば そこで打ち切ってくれと言うのです。
それ以降の調査費用は払わないと。
不貞を証明するには部屋に入って行った事だけではなくて、そのくらいの時間二人きりでいたかも重要なので、普通は部屋から出て来た写真も撮るのですが、青山は入っていく姿だけで良いと。
後でクレームをつけられると嫌なので、出てきたところも撮りましたが」
所長は彼女の部屋から出て来る私の姿が写った写真を置いた。
「これはご主人が彼女の部屋に入ってから、15分後に出て来たところの写真です。
私の言っている意味は分かりますよね?」
まだ起きている娘達を気にしてか、妻は声を殺して泣いていた。
妻には羽振りの良いところを見せていたが、やはり内状は苦しいようで、青山は細かく時間を指定して調査費用を値切ってきたという。
「離婚しよう」
妻が一瞬驚いた顔をしたところを見ると、自分にも疚しい事があったので、強気に振る舞って自分を誤魔化していただけで、真剣に離婚までは考えていなかったようだ。
しかし、自分から離婚を切り出していて、青山に抱かれていた証拠も押さえられた妻は、今更、離婚したくないとは言えずに俯いてしまう。
「ご主人、待って下さい。奥様にきちんと説明してからでないと」
「いや。この期に及んでも一言も謝罪のない妻に対して、今は本当に離婚したいと思っている」
これは私の本心でもあった。
あの優しく素直だった妻が自分の非を認める事も無く、私に対して謝ろうともしない事で、今後も今のような愛情が持てるのかどうか疑問に思えてきていた。
子供達のためにも離婚だけは避けたいと思っているが、それは自分を偽っているだけで、本当は独占欲だけで離婚を躊躇っているのかも知れないと。
他の男に、妻を盗られたくない。
他の男に、これ以上妻の身体を使わせたくない。
離婚してしまって、他の男と妻が幸せそうに暮らすのが我慢出来ない。
裏を返せば、このような気持ちが、まだ妻を愛している証拠なのかも知れないが。
--------------------
二人が帰ると、私は妻を残して家を飛び出した。
妻は このような女ではなかった。このような妻を見ているのが辛かった。
そして、私の足は、知らぬ内にあの小料理屋に向かっていた。
店は相変わらず繁盛していて、恵理は私に軽く会釈をしただけで、意識的に私には近付かない。
「お客さん、二度目ですよね?」
着物を着た艶っぽい女将にお酌をしてもらい、何もかも忘れてしまいたい私は限界を超えて飲んでしまって、酔い潰れてそのままカウンターで眠ってしまった。
>>次のページへ続く
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