逆転
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そんな時、岸部の携帯が鳴りました。その着信音は妻のものと同じです。
男が何気なく出したタバコも妻のと同じです。
この馬鹿嫁は、岸部にどれほど感化されてしまったのか?私も疲れてしまいます。
「・・・・分かった・・・帰ってから話し合おう・・・」
相手は奥さんなのだと思います。何を話し合うのかは分かりませんが関係ないのです。
私はこの状況を早く終わらせて、さっさと眠りたいと思っています。
うつむきながらも深刻な表情で話し出さない男に焦れてしまいました。
「岸部さん、用事があって来たのでしょう?
まさか私の顔を見たかったなんて言わないでしょうね?
黙っていたってしょうがないでしょうが。
せめて貴方を好きになった家内の前では男らしく行きましょうや」
私の言葉に岸部は視線を上げました。
しかし、何か言うかと思っても言葉を発しません。
自分に都合のよい言い訳を考えているのか、男の妻に話した私に恨み事でも言い出そうとしているのか?
「・・・妻は離婚も視野に入れると言われました。
私もこの年まで女性関係が何もなかったとは言いませんが、妻に知られたのは今回が初めてです・・・・
信じていた分ショックが大きかったのだと・・・・」
重い口を開き始めましたが、また黙ってしまいました。
今の電話は、最後通達を突きつけられたものだったのでしょうか?この男の家庭の内情に興味なんてありません。
「相当うまく遊んでいたんでしょうな。羨ましいかぎりです。
私は、妻と一緒になってから一度もそんないい思いはしてないな。
そりゃぁ奥さんショックだったでしょう。
それでも冷静になれば許してくれるかもしれないですよ。
何せ、貴方は、人の妻をその気に出来るくらいに魅力がある人だ。奥さんも貴方には惚れているんでしょう。
子供さんもまだ小さいし、離婚はないと思いますよ。
でもね、ばれたのが今回でよかったと思うよ。俺はさぁ、あんたから慰謝料を貰おうなんて思ってないですし。
そんなもの日本じゃ幾らにもならないのは知っていますよ。
それに会社での立場も大した事ないって、こいつから聞いてるしね。本当にうまくやってるよな。
痛かったのは奥さんに知れてしまったくらいか。俺も世渡り上手になりたいな。
まぁ、岸部さんも少しは困ってるようだから、一矢は報いたか」
私の妻も俯いて座っていますが、ときどき男に視線を送っています。
会社での雰囲気と違い情けない男に、母性本能をくすぐられ守ってやりたくなったのか、女の複雑な感情は分かりかねます。
この二人を見ていると、私が岸部の立場なら何を思っているのだろうかと考えてしまします。
妻に密告されて来るつもりもなかった家に来たのは何故でしょう?
会社での立場は もう決まっているのですから、この場合は、男の妻との関係修復に少しでも有利な事柄がないかと思って来たのではないでしょうか?
私は鎌を掛けてみました。
「俺に金を払わなくてもいいが、責任は取ってもらよ。
あんたの家庭がどうなろうと知った事じゃないが、雅子は引き取ってもらう。
離婚になれば本妻にすればいいし、そうじゃなかったら二号さんにでもしたらいい。
あんたの責任は、こいつをちゃんと食わせて行く事だ。それも今日からね。
俺の言いたいのはそれだけかな。
雅子、支度をして来い。
岸部さん、後は任せたよ」
これは思いのほか効いたようで、黙りこくっていた岸部が慌て始めました。
「そっそんな事は出来ない!私にも生活がある!貴方は無責任じゃないのかっ!」
「そうだよ。無責任さ。
俺は高級車には乗れないが、それでも中古車を買った事がないよ。他人の手垢の付いた物は嫌なんだ。
こいつは、初めから中古みたいな物だったが、俺には新車だったよ。
だけど、あんたが手垢を付けたんだ。それだけで俺は嫌なんだよな。
下取りに出すよ。大切に乗ってやってくれや。
中古だが只で手に入るんだ。文句を言われる筋合いはないと思うがな」
岸部と妻の顔色が変わっています。
「あんたっ!人間を車には例えれないでしょう!
雅子さんを、そんなふうに扱っているから浮気をされたんじゃないですか?
雅子はいつも、あんたの事をつまらない男だと言っていた。
女房に そんなふうに思われて悔しくないのか?私なら耐えられない。
だけど、そんな事を言う旦那なら しょうがないと思いますよ」
慌てる慌てる。男の慌てぶりが面白くてしかたがありません。
「おい雅子。お前そんな事を言っていたのか?
俺を馬鹿にしながら乳繰り合うのは楽しかっただろうな。好き放題言っていたんだろう?
そんな時はベッドの上でだろうな。楽しそうだな。
私は、妻と一緒になってから一度もそんないい思いはしてないな。
そりゃぁ奥さんショックだったでしょう。
それでも冷静になれば許してくれるかもしれないですよ。
何せ、貴方は、人の妻をその気に出来るくらいに魅力がある人だ。奥さんも貴方には惚れているんでしょう。
子供さんもまだ小さいし、離婚はないと思いますよ。
でもね、ばれたのが今回でよかったと思うよ。俺はさぁ、あんたから慰謝料を貰おうなんて思ってないですし。
そんなもの日本じゃ幾らにもならないのは知っていますよ。
それに会社での立場も大した事ないって、こいつから聞いてるしね。本当にうまくやってるよな。
痛かったのは奥さんに知れてしまったくらいか。俺も世渡り上手になりたいな。
まぁ、岸部さんも少しは困ってるようだから、一矢は報いたか」
私の妻も俯いて座っていますが、ときどき男に視線を送っています。
会社での雰囲気と違い情けない男に、母性本能をくすぐられ守ってやりたくなったのか、女の複雑な感情は分かりかねます。
この二人を見ていると、私が岸部の立場なら何を思っているのだろうかと考えてしまします。
妻に密告されて来るつもりもなかった家に来たのは何故でしょう?
会社での立場は もう決まっているのですから、この場合は、男の妻との関係修復に少しでも有利な事柄がないかと思って来たのではないでしょうか?
私は鎌を掛けてみました。
「俺に金を払わなくてもいいが、責任は取ってもらよ。
あんたの家庭がどうなろうと知った事じゃないが、雅子は引き取ってもらう。
離婚になれば本妻にすればいいし、そうじゃなかったら二号さんにでもしたらいい。
あんたの責任は、こいつをちゃんと食わせて行く事だ。それも今日からね。
俺の言いたいのはそれだけかな。
雅子、支度をして来い。
岸部さん、後は任せたよ」
これは思いのほか効いたようで、黙りこくっていた岸部が慌て始めました。
「そっそんな事は出来ない!私にも生活がある!貴方は無責任じゃないのかっ!」
「そうだよ。無責任さ。
俺は高級車には乗れないが、それでも中古車を買った事がないよ。他人の手垢の付いた物は嫌なんだ。
こいつは、初めから中古みたいな物だったが、俺には新車だったよ。
だけど、あんたが手垢を付けたんだ。それだけで俺は嫌なんだよな。
下取りに出すよ。大切に乗ってやってくれや。
中古だが只で手に入るんだ。文句を言われる筋合いはないと思うがな」
岸部と妻の顔色が変わっています。
「あんたっ!人間を車には例えれないでしょう!
雅子さんを、そんなふうに扱っているから浮気をされたんじゃないですか?
雅子はいつも、あんたの事をつまらない男だと言っていた。
女房に そんなふうに思われて悔しくないのか?私なら耐えられない。
だけど、そんな事を言う旦那なら しょうがないと思いますよ」
慌てる慌てる。男の慌てぶりが面白くてしかたがありません。
「おい雅子。お前そんな事を言っていたのか?
俺を馬鹿にしながら乳繰り合うのは楽しかっただろうな。好き放題言っていたんだろう?
そんな時はベッドの上でだろうな。楽しそうだな。
二人の幸せそうな風景が目に浮かぶな。
あっ、そんな二人の間に俺は お呼びじゃないか。これは失礼しましただ。退散するよ。
子供達も上にいるし、ここでこれ以上話をするのは、勘弁して欲しいだけど俺が言った責任は取ってもらうよ」
私が席を立とうとすると、妻が叫ぶような声を上げました。
「貴方っ!貴方待ってっ!私が悪かったのっ!」
その悲痛な声を背中に、寝室へと向かいました。
さぁ、この二人はどう出てくるか?
私は せせら笑っているのです。
寝室に入り何分も経っていませんが、ドアが叩かれます。
私はテレビにスイッチを入れてはいましたが、上の空で眺めていただけです。
そんなに大きな家じゃないので居間の気配は分かってしまうのです。
妻と夜の夫婦生活があった時代には、子供達が居間に降りてこないかと気を使わなければならかったくらいの家ですから。
それにしても、こんなに早く男を帰し此処に来るとは思ってはいませんでした。
男を帰す時には、妻が何か怒っていたようです。何を言っていたのかは分かりませんが。
私は妻があのまま家を出て行くとは思っていませんでしたが、出て行ってくれても構わないと思ってもいます。
それが無理なら、せめて今夜は面倒な事は避けたいのです。きっと明日も避けたいと思うのでしょうが・・・・
「貴方、少し話がしたいの。入ってもいいかしら?
私が悪かったのは認めています。貴方の気持ちは痛いほど分かっているわ。
お願いだから話し合う時間を頂だい」
今日、出来る事は今日済ます。決して明日には延ばさない。そんな生き方をしてこれたなら、こんな厄介な日を迎えなくてもよかっただろうに・・・
それを避けていると何時か付けが回るのは分かっていても、日頃は流れに任せて生きてしまいました。
だけど、こんな日は自分の甘さが身に堪えます。自業自得と思っても、全て人のせいにしてしまいたい。
「何だ。まだいたのか。あいつと一緒に行けと言っただろう。もう話す元気もないよ。悪いけど明日にしてくれないか。今日は疲れた」
また明日に延ばしてしまいます。何才にになっても性格は直らないものですね。
「私達の人生に関わる事よ。そんな話ってないんじゃないっ!こんな時くらい男らしく向き合って欲しいの」
間男に男らしくと言った私が、尻軽女に男らしくなんて言われるのは・・・あ〜〜〜情けない。
私は腹が立ってしょうがありません。
別れたいと思っている妻が不倫を働きました。勝手な思い込みなのでしょうが、その相手も、私よりも勝った男だとは思えないのです。
別れたいと思っているのですから、どんな相手と何をしようが、どうでもいいはずなのに腹が立ちます。
頭の中は冷静なつもりでいるので、腹が立つ自分に釈然としないのです。
自分の心理を分析してみます。
その感情は、単に私のプライドを傷つけたからなのだと、結論に至るしかないでしょう。くだらない事ですね。
知らないうちに私だって妻のプライドをどれだけ傷つけて来た事やら。
妻が男と逢瀬を繰り返していたのは、何も興信所に依頼する前から何気に気づいていたはずです。
ですから、愛情を持てない相手が私に牙を剥いたからと言って、気にしなければいいのです。それだけでのはずです。
でも腹が立ちます。人間の深層心理は複雑です。自分の事すら分かりません。
今ドアの向こうで、私に問い掛ける妻と向き合う気持ちになれないのは、こんな時は、どんな対処方法がベストなのか、気持ちの整理が出来ていないからだと思い知らされます。
こんな時にも危機管理がなっていないのは日本人のDNAなのでしょうか?
妻は昨夜、私に『私達の人生に関わる事よ』と寝室の前でほざいていましたが、結局ドアを開けずじまいで眠りに就いてしまったのです。
>>次のページへ続く
あっ、そんな二人の間に俺は お呼びじゃないか。これは失礼しましただ。退散するよ。
子供達も上にいるし、ここでこれ以上話をするのは、勘弁して欲しいだけど俺が言った責任は取ってもらうよ」
私が席を立とうとすると、妻が叫ぶような声を上げました。
「貴方っ!貴方待ってっ!私が悪かったのっ!」
その悲痛な声を背中に、寝室へと向かいました。
さぁ、この二人はどう出てくるか?
私は せせら笑っているのです。
寝室に入り何分も経っていませんが、ドアが叩かれます。
私はテレビにスイッチを入れてはいましたが、上の空で眺めていただけです。
そんなに大きな家じゃないので居間の気配は分かってしまうのです。
妻と夜の夫婦生活があった時代には、子供達が居間に降りてこないかと気を使わなければならかったくらいの家ですから。
それにしても、こんなに早く男を帰し此処に来るとは思ってはいませんでした。
男を帰す時には、妻が何か怒っていたようです。何を言っていたのかは分かりませんが。
私は妻があのまま家を出て行くとは思っていませんでしたが、出て行ってくれても構わないと思ってもいます。
それが無理なら、せめて今夜は面倒な事は避けたいのです。きっと明日も避けたいと思うのでしょうが・・・・
「貴方、少し話がしたいの。入ってもいいかしら?
私が悪かったのは認めています。貴方の気持ちは痛いほど分かっているわ。
お願いだから話し合う時間を頂だい」
今日、出来る事は今日済ます。決して明日には延ばさない。そんな生き方をしてこれたなら、こんな厄介な日を迎えなくてもよかっただろうに・・・
それを避けていると何時か付けが回るのは分かっていても、日頃は流れに任せて生きてしまいました。
だけど、こんな日は自分の甘さが身に堪えます。自業自得と思っても、全て人のせいにしてしまいたい。
「何だ。まだいたのか。あいつと一緒に行けと言っただろう。もう話す元気もないよ。悪いけど明日にしてくれないか。今日は疲れた」
また明日に延ばしてしまいます。何才にになっても性格は直らないものですね。
「私達の人生に関わる事よ。そんな話ってないんじゃないっ!こんな時くらい男らしく向き合って欲しいの」
間男に男らしくと言った私が、尻軽女に男らしくなんて言われるのは・・・あ〜〜〜情けない。
私は腹が立ってしょうがありません。
別れたいと思っている妻が不倫を働きました。勝手な思い込みなのでしょうが、その相手も、私よりも勝った男だとは思えないのです。
別れたいと思っているのですから、どんな相手と何をしようが、どうでもいいはずなのに腹が立ちます。
頭の中は冷静なつもりでいるので、腹が立つ自分に釈然としないのです。
自分の心理を分析してみます。
その感情は、単に私のプライドを傷つけたからなのだと、結論に至るしかないでしょう。くだらない事ですね。
知らないうちに私だって妻のプライドをどれだけ傷つけて来た事やら。
妻が男と逢瀬を繰り返していたのは、何も興信所に依頼する前から何気に気づいていたはずです。
ですから、愛情を持てない相手が私に牙を剥いたからと言って、気にしなければいいのです。それだけでのはずです。
でも腹が立ちます。人間の深層心理は複雑です。自分の事すら分かりません。
今ドアの向こうで、私に問い掛ける妻と向き合う気持ちになれないのは、こんな時は、どんな対処方法がベストなのか、気持ちの整理が出来ていないからだと思い知らされます。
こんな時にも危機管理がなっていないのは日本人のDNAなのでしょうか?
妻は昨夜、私に『私達の人生に関わる事よ』と寝室の前でほざいていましたが、結局ドアを開けずじまいで眠りに就いてしまったのです。
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