誤解の代償
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「向こうの家庭を壊しておいて、余りにも勝手過ぎないか?男よりも女の方が、ドライなのは分かるけれど、人間として許される事では無いと思う。奥さんから、何か言って来ていないのか?かなり恨んでいると思う。」
奥さんは、別居から、やがて離婚になってしまう原因が、妻である事を知っていました。
「ええ、何も言って来ない。本当に悪い事をしてしまった。貴方の言う通り、許される事では無いわね。どうすれば良いのかしら?」
「それは、自分で決める事だ。どうすれば、大人としてのけじめを付けられるのか、良く考えるべきだな。」
「随分と冷静なのね。もう、私には何も気持ちが無いと言う事なのかしら?」
「長い間暮らして来たんだから、何も思っていない事は無いさ。だけど、どんな夫婦も別れる時は、感傷的になるものなんだろう。しょうが無い事だと思っている。」
「・・・・ねえ、帰って来て。貴方を裏切った分の何倍も尽くすわ。お願い。」
「一時の感情に流されて、後悔したく無いんだ。戻らないのが後悔する事になるのかも知れないが、今はそうは思え無い。」
「あの人を、愛しているの?」
「こんな時に、本当の恋愛を出来るほど、器用じゃ無い様だ。それでも、気持ちは動いている。」
「許せない。でも、どうしようも無いのね? 馬鹿だった。こんな事になるなら、あんな事するんじゃなかった。」
「そうだな。この家で逢っていれば、何時でも電話に出られるし、ばれない様に気を付けたつもりが、裏目に出てしまったしな。そう言う運命だったのかもな。
俺に対する慰謝料は要らないぞ。この家に住むのも良し、出るも良し、お金の事は蓄えも有るだろうから、何とかしてくれ。
娘の学費なんかは俺が払う。
それから、離婚の理由は俺の浮気にしておけ。その方が、あいつのショックが少しは小さくなる様に思う。」
その後、妻は『今日だけは泊まって行って。』等と、すんなりと離婚届に判を押してはくれませんでしたが、最後には諦めた様で、何とか押してくれました。
判を押す時は、私の感情も複雑でした。
妻との今までの幸せな時の事が蘇り、またやり直せないものかとも思いましたが、何とか思い留まりました。
ただ、この時に彼女の事が思い浮ばなかったのは、妻の代役としか思っていないからなのでしょうか?
そうならば、私も罪深い人間です。
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妻と別れてからも、浮気の現場を見た時の事が蘇り苦しめますが、不思議と恨む事が出来ません。
考えて見れば、私は女と言うものをどれ程理解していたのでしょう。
妻だけでは無く彼女に対しても自分の気持ちだけを押し付けて、相手の気持ちは何も思っていなかった事に気付きます。
ややもすると、自分中心に女性を動かし、満足してしまっていたのです。
当然の様に、反乱が起きる事等、考えてもいませんでした。
もっと私に、女性に対する尊敬の念が有れば、今回の事も防げたのかもしれません。
女は男に黙って従うもの、そんな今の時代にそぐわない自分勝手な誤解が、大きな代償を私に払わせる事になったのだと思っています。
あくまでも私の考え方ですが。
それから彼女には、私の正直な気持ちを話し、妻への思いが完全に整理出来る迄は、逢わない事になりました。
それで別れる事になったとしても、仕方が無いことだと思います。
彼女をこれ以上傷付ける事は出来ません。
妻からは、今も時々連絡が有りますが、会う事は有りません。
会ってしまうと自分の気持ちがどうなるか自信が無いからなのかもしれません。
どうしても断ち切る事の出来無い部分が有ります。
情け無い男だと思われるでしょうが、自分でもどうしようも有りません。
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