戦い
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「同罪だから あいつと同じ様に俺と別れたいという事か? 慰謝料を取るなという事か?」
「違います。あなたとは別れたくないし、何も悪く無いあなたを、私が傷付けてしまったから、あなたの気が済むようにして欲しいです。
何が言いたいのか、自分でもよく分からないです。何がしたいのか分からないです。
ごめんなさい。ごめんなさい。」
妻は、焦点が合わない目でじっと壁を見詰めています。
妻自身気付いているかどうか分かりませんが、以前、野田の事を彼と呼んでいたのが、課長と呼ぶようになっているので、妻の告白は本当だと思います。
しかし、妻が見詰める先に何が見えているのか分からず、困惑してしまいました。
離婚すると聞いて最初は不幸を喜びましたが、愛する人と別れた野田に何か不安も感じます。
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7月3日(木)
会社の帰り道、携帯が鳴りました。
「あなた。今日課長から
“この日曜日はどうしても抜けられない用が出来たので、今月は振込みにさせて欲しい。明日振り込みたいので、口座を教えて欲しい。”
と言われたので、あなたに聞いてからでないと分からないと答えておきました。」
頭に来た私は、野田の携帯に電話して抗議すると。
「もう殴られるのは嫌だ。もう充分だろ?遠い所までわざわざ持って行くのも嫌になった。今月から振込みにさせてもらう。
振込みが駄目なら、月に一度どこかで美鈴さんに渡してもいいぞ。」
今まで誠実に対応していた野田の変わり様に驚きましたが。
「約束が違うだろ。約束を破るつもりか?」
「約束?誓約書に書いた事は守る。
月に一度支払うとは書いたが、持って行くと書いてあるか?
それに暴力は犯罪だ。不法行為を正式な文章に書ける訳が無い。
殴られてもいいと書いてあるか?今度からその様な事があれば、きちんと対処させてもらう。」
そう言うと一方的に切られてしまいました。
私は、急いでマンションに戻り、妻に電話すると。
「あれから電話があって、あなたによく謝ったら、許してくれたので教えて欲しいと言われ、口座を教えました。
今後は、もう振込みでいいと言ってくれたと、凄く喜んでいて、あなたは寛大な人だと、自分にはとても出来ないと褒めていました。
あなた、すみませんでした。」
私は、妻に何も言えなくなり、もう一度野田に電話すると。
「いい人になれて良かったじゃないか。
今回の事を会社に言ってもいいぞ。
就業中に不倫していれば別だが、うちの会社は、個人の問題だと言って注意で済む。
結局 利益優先で無理な配置換えもしない。
昇進には影響するだろうが、もうどうでもいい。
聞いていると思うが、俺は離婚した。
何のために偉くなって、誰のために金儲けするのか分からなくなった。
どうして離婚を承諾したのか教えようか?
それは他にも好きな人がいるからだ。
別れた妻との関係に疲れた。
俺を裏切った女は忘れて、次の恋愛に進もうと思ったからだ。」
野田は言葉使いも変わっていました。
これは私への挑戦状だと思い。
「お前が離婚しようと不幸になろうと俺には関係ない。ただ妻にはちょっかいを出すな。」
「勿論、誓約書に書いた事は守る。
俺も裁判沙汰は嫌だし、いい加減な男と思われて、あの人に嫌われたく無いからな。
仕事以外では2人で会わないし、仕事以外の連絡もしない。
ただ部下と多少のコミュニケーションをとるのは、仕事の内だと思っている。上司にそう教えられてきた。
それと、駅で話した時のように美鈴さんの方から来た時は、俺に言われても どうしようもない。」
「勝手にしろ。妻には会社を辞めるように言う。」
「その方がいい。自信が無いのだろ?信用出来ないのだろ?俺達夫婦もそうだった。
俺は、妻をずっと疑って暮らしてきた。妻は、過ちを悔い改めたのに信用出来なかった。
妻も今回の事で俺が信用出来なくなった。そんな夫婦が上手く行くはずが無い。
あんた達も別れた方がいいぞ。
会社を辞めて何処に行っても同じだ。その内、男に道を尋ねられたのを見掛けただけでも疑うようになる。
俺は、誓約書どおり誘ったりはしない。ましてや無理やり関係を持とうなんて思ってもいない。
ただ、美鈴さんが自分から来てくれた時は、全てを投げ出す覚悟で受け入れる。
また固い絆で結ばれたのだろ?違うのか?
自信が無いなら辞めさせろ。そうやって疑いながら暮らせ。
その内 俺達みたいになるから。その方が好都合だ。
離婚してくれれば堂々と付き合える。」
月に一度支払うとは書いたが、持って行くと書いてあるか?
それに暴力は犯罪だ。不法行為を正式な文章に書ける訳が無い。
殴られてもいいと書いてあるか?今度からその様な事があれば、きちんと対処させてもらう。」
そう言うと一方的に切られてしまいました。
私は、急いでマンションに戻り、妻に電話すると。
「あれから電話があって、あなたによく謝ったら、許してくれたので教えて欲しいと言われ、口座を教えました。
今後は、もう振込みでいいと言ってくれたと、凄く喜んでいて、あなたは寛大な人だと、自分にはとても出来ないと褒めていました。
あなた、すみませんでした。」
私は、妻に何も言えなくなり、もう一度野田に電話すると。
「いい人になれて良かったじゃないか。
今回の事を会社に言ってもいいぞ。
就業中に不倫していれば別だが、うちの会社は、個人の問題だと言って注意で済む。
結局 利益優先で無理な配置換えもしない。
昇進には影響するだろうが、もうどうでもいい。
聞いていると思うが、俺は離婚した。
何のために偉くなって、誰のために金儲けするのか分からなくなった。
どうして離婚を承諾したのか教えようか?
それは他にも好きな人がいるからだ。
別れた妻との関係に疲れた。
俺を裏切った女は忘れて、次の恋愛に進もうと思ったからだ。」
野田は言葉使いも変わっていました。
これは私への挑戦状だと思い。
「お前が離婚しようと不幸になろうと俺には関係ない。ただ妻にはちょっかいを出すな。」
「勿論、誓約書に書いた事は守る。
俺も裁判沙汰は嫌だし、いい加減な男と思われて、あの人に嫌われたく無いからな。
仕事以外では2人で会わないし、仕事以外の連絡もしない。
ただ部下と多少のコミュニケーションをとるのは、仕事の内だと思っている。上司にそう教えられてきた。
それと、駅で話した時のように美鈴さんの方から来た時は、俺に言われても どうしようもない。」
「勝手にしろ。妻には会社を辞めるように言う。」
「その方がいい。自信が無いのだろ?信用出来ないのだろ?俺達夫婦もそうだった。
俺は、妻をずっと疑って暮らしてきた。妻は、過ちを悔い改めたのに信用出来なかった。
妻も今回の事で俺が信用出来なくなった。そんな夫婦が上手く行くはずが無い。
あんた達も別れた方がいいぞ。
会社を辞めて何処に行っても同じだ。その内、男に道を尋ねられたのを見掛けただけでも疑うようになる。
俺は、誓約書どおり誘ったりはしない。ましてや無理やり関係を持とうなんて思ってもいない。
ただ、美鈴さんが自分から来てくれた時は、全てを投げ出す覚悟で受け入れる。
また固い絆で結ばれたのだろ?違うのか?
自信が無いなら辞めさせろ。そうやって疑いながら暮らせ。
その内 俺達みたいになるから。その方が好都合だ。
離婚してくれれば堂々と付き合える。」
これは、妻を辞めさせない為の、心理作戦だという事は分かっていました。
しかし、野田の言っている事は、全て間違いではありません。
これから妻と夫婦を続けていく為の良い試練で、これで妻に何も無ければ、また元の関係に戻れる気がします。
それに、関わらない方が良いと思っていても、これだけ言われて逃げる事は負け犬のような気がし、
婚姻届1枚だけで繋がっていると思われる事にも我慢出来なかったので、彼の作戦にあえて乗る事にしました。
「お前の言う通りかも知れないな。もう妻は、お前と付き合う事は無いから、会社を辞めさせる事は無いな。目の前にいながら、どうにも成らない苦しみを精々味わえ。」
野田に対して強がりを言いましたが、今回の件で、私に見せた顔と妻に見せた顔が違う事が、少し気掛かりです。
「どうかな?あっ、それと、以前 犯罪行為をして捕まってもいいような事を言っていただろ?俺は別に構わないぞ。
その方が美鈴さんに哀訴を付かされ、俺には好都合だ。」
もう野田に関わらず、会社を辞めさせて逃げれば良いのに、自分で自分が嫌になるほど 負けず嫌いな、くだらないプライドの為に逃げる事が出来ないのです。
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7月6日(日)
一昨日の夜から妻が来てくれて、午後2時ごろ帰って行きました。
野田の事が刺激になり、妻への怒りを抑えて出来るだけ会話をしようと努力したのですが、話が続きませんでした。
まるで初めて会った者同士のような会話です。
妻が帰ってから、何故この様な苦しい思いをしながら、離婚したくないのか考えました。
離婚すれば野田と付き合う可能性もあるので、それが許せない思いも有ります。
しかし、それよりも妻の事を愛しています。
裏切られた悔しさは、勿論あり、復讐心もあるのですが、それでも 妻のいない人生は考えられないのです。妻と別れた後の事を考えると、今以上に苦しいのです。
それなら、もう許せばいいと分かっていても、素直に許せないのです。
妻を見る度に、この身体を好きにさせたのかと思うと許せないのです。
今日も昼食の準備をする妻を目で追っていました。
もう野田とは何も無いと思っていても、私の視線に気が付く度に目を逸らす妻に、疑いを持ってしまいます。
私が全てを過去の物として、新しくスタートを切れば、妻が付いて来てくれる自信はあるのですが、それが出来ないでいます。
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7月10日(木)
今日は、早く帰れたので自分で夕食を作っていると、野田から電話があり、
「一応、美鈴さんに関した事は、報告させてもらおうと思って電話したのだが。
昨夜は悪い事をしてしまった。すまん。
美鈴さんとも妻とも別れてから溜まっていてな。
久し振りに美鈴さんでスッキリさせてもらったよ。彼女の身体は堪らんな。ご主人には悪い事をした。
あれから美鈴さんと身体の関係は持っていないのだろ?美鈴さんも寂しいんだ。」
それだけ言うと一方的に切ってしまいました。
動揺した私は すぐに妻に電話して。
「昨日は何処に行っていた?何時に帰って来た?今、野田から電話があった。」
「えっ、課長から?いつもどおり会社を出て、近くのスーパーには寄りましたが、家に着いたのは いつもより20分ほど遅かっただけです。課長が何か?」
「本当か?野田と一緒じゃ無かったか?あれからお前と、夫婦の関係を持っていない事も知っていたぞ。」
「本当です。スーパーでお向かいの奥さんと会いました。奥さんに聞いてください。本当です。」
「それならいい。」
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