戦い
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「どうした?正直に話してくれ。何を聞いても怒らない。嘘をつかれるよりいい。」
「私が、あなたを裏切る前は、休日が楽しみでした。
仕事は好きでしたが、あなたといると仕事での嫌な事を、忘れる事が出来ました。
それが今は、仕事している時だけが私の気が休まる時です。
自分の蒔いた種で勝手だと分かっていても・・・・・・・。
ごめんなさい。どうしたら償えるのだろうとか、謝る事しか出来ない自分に苛立つ事があります。
こんな生活から抜け出したいと思ってしまう事も有ります。
あなたに反省が足りないと言われても仕方が無い事を、思ってしまう時が有ります。ごめんなさい。」
「こんな生活から抜け出したいと思ってしまう?俺と別れて楽になりたいと思う事が有ると言う意味か?」
「違います。あなたと別れれば、今以上に苦しくなるのは分かっています。
どうしたいのか分かりませんが、そう思ってしまうことが有るのです。
ごめんなさい。・・・・・ごめんなさい。」
「あいつとの事はどうなんだ?」
「恋愛感情は有りません。
ただ・・・・・正直に言います。まだ嫌いにはなれません。
でもまた付き合いたいとか、未練が有ると言う事は有りません。
ただ、あなたに隠れて、半年も付き合ってしまったから、他の人と同じかと言えば少し違います。
上手く言えないですが、恋愛感情や、未練は有りません。本当です。」
妻が言う様に、この間まで好きだった男を、すぐに嫌いに成る事は無いと思います。
また半年も身体の関係があった男を、他の者と同じ感覚になるのも難しいと思います。
正直に言えと言っておきながら、嘘でも嫌いになったと言って欲しかったです。
嫌いになったと言えば、それはそれで、嘘をつくなと問い詰めるのでしょうが。
--------------------
7月21日(月)
今日は、祭日で休みなのですが、片付けておかなければならない仕事が有ったので、朝の新幹線で戻り、4時間ほど会社に行って マンションに帰ると、野田から また電話が掛かってきました。
あのままでは終わるはずが無いと思っていましたが、やはり野田は悔しかったようで。
「美鈴さんに電話して、一昨日の事は、ご主人に言われてそう言っただけで、本意では無い事ぐらい分かっているから、気にせずに明日からまた一緒に仕事しようと言ったら、泣いて喜んでいた。
その時、ご主人はもう帰ったと聞いたので、電話させてもらった。」
「わざわざご丁寧に、ご苦労な事だな。もう切ってもいいか?」
「いや、今日はご主人に忠告したい事があってな。
あんた、最後に行った旅行の事が気になるだろ?
俺の妻も浮気していた時に1度だけ旅行に行った。やはり、その事が1番気になったが聞けなかった。
だから あんたも気になっているだろうと思って電話した。
聞いても、たぶん美鈴さんは言わない。あんな事言えるはずが無い。
俺も あんな凄い美鈴さんを見られるとは思わなかった。旅の恥は掻き捨てとはよく言ったものだ。」
勿論知りたかったのですが、野田から聞かされるのは我慢出来ませんでした。
「誰でもお前と同じだと思うなよ。俺は、もう全然気にしていない。相手が まともな奴なら気になるかも知れないが、お前ではな。」
「本当か?全て知ってスッキリさせないと、俺の所みたいになるぞ。いいのか?俺はその方がいいが、あんたが可哀想になってな。」
「お前の所と言えば、昨日お前の別れた奥さんに会って来た。かわいい人じゃないか。
俺は、玄関で失礼しようと思っていたが、強引に部屋に通されてな。
何か償いをしたいと言うもので、とんだ長居をしてしまった。
帰りに また会って欲しいと言われたので、いつにするか考えていたところだ。
別れたのだから、お前には関係の無い事なので、黙っていようと思っていたが、丁度良かった。
今度いつ子供達を連れ出す?
子供達がいると都合悪いので、予定が有ったら教えてくれよ。」
「妻に何をした?何かしたのか?」
「俺は ほとんど何もしていないが、あの人は・・・・・・・。それより妻じゃ無いだろ?美鈴と違ってあの人はフリーだ。お前に何か言われる筋合いは無い。」
野田は電話を切ってしまいました。お互いにまるで子供の言い合いです。幼稚な喧嘩です。
しかし、奥さんの言っていた事と今の野田の慌てようから、まだ別れた奥さんに未練が有ることが分かりました。
--------------------
8月23日(土)
あれから1か月ほど経ちましたが、その間 変わった事は有りませんでした。
野田からの電話も、あれ以来無く、私が妻を責める事もしませんでした。
変わった事と言えば、アルバイトで帰って来なかった子供達が、お盆には帰って来たので、久し振りに妻の笑顔を見た事ぐらいです。
その後は、お盆前と変わらず、妻は笑顔を見せませんし、私も 笑う事は有りません。
ただ来月からは生活が大きく変わりそうです。
来月初めに挨拶を済ませて、その後 本社に帰れる事になりました。もうそろそろだとは思っていましたが、私の会社は、4月の移動が多く、今回は、寝耳に水の人事異動でした。
また半年も身体の関係があった男を、他の者と同じ感覚になるのも難しいと思います。
正直に言えと言っておきながら、嘘でも嫌いになったと言って欲しかったです。
嫌いになったと言えば、それはそれで、嘘をつくなと問い詰めるのでしょうが。
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7月21日(月)
今日は、祭日で休みなのですが、片付けておかなければならない仕事が有ったので、朝の新幹線で戻り、4時間ほど会社に行って マンションに帰ると、野田から また電話が掛かってきました。
あのままでは終わるはずが無いと思っていましたが、やはり野田は悔しかったようで。
「美鈴さんに電話して、一昨日の事は、ご主人に言われてそう言っただけで、本意では無い事ぐらい分かっているから、気にせずに明日からまた一緒に仕事しようと言ったら、泣いて喜んでいた。
その時、ご主人はもう帰ったと聞いたので、電話させてもらった。」
「わざわざご丁寧に、ご苦労な事だな。もう切ってもいいか?」
「いや、今日はご主人に忠告したい事があってな。
あんた、最後に行った旅行の事が気になるだろ?
俺の妻も浮気していた時に1度だけ旅行に行った。やはり、その事が1番気になったが聞けなかった。
だから あんたも気になっているだろうと思って電話した。
聞いても、たぶん美鈴さんは言わない。あんな事言えるはずが無い。
俺も あんな凄い美鈴さんを見られるとは思わなかった。旅の恥は掻き捨てとはよく言ったものだ。」
勿論知りたかったのですが、野田から聞かされるのは我慢出来ませんでした。
「誰でもお前と同じだと思うなよ。俺は、もう全然気にしていない。相手が まともな奴なら気になるかも知れないが、お前ではな。」
「本当か?全て知ってスッキリさせないと、俺の所みたいになるぞ。いいのか?俺はその方がいいが、あんたが可哀想になってな。」
「お前の所と言えば、昨日お前の別れた奥さんに会って来た。かわいい人じゃないか。
俺は、玄関で失礼しようと思っていたが、強引に部屋に通されてな。
何か償いをしたいと言うもので、とんだ長居をしてしまった。
帰りに また会って欲しいと言われたので、いつにするか考えていたところだ。
別れたのだから、お前には関係の無い事なので、黙っていようと思っていたが、丁度良かった。
今度いつ子供達を連れ出す?
子供達がいると都合悪いので、予定が有ったら教えてくれよ。」
「妻に何をした?何かしたのか?」
「俺は ほとんど何もしていないが、あの人は・・・・・・・。それより妻じゃ無いだろ?美鈴と違ってあの人はフリーだ。お前に何か言われる筋合いは無い。」
野田は電話を切ってしまいました。お互いにまるで子供の言い合いです。幼稚な喧嘩です。
しかし、奥さんの言っていた事と今の野田の慌てようから、まだ別れた奥さんに未練が有ることが分かりました。
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8月23日(土)
あれから1か月ほど経ちましたが、その間 変わった事は有りませんでした。
野田からの電話も、あれ以来無く、私が妻を責める事もしませんでした。
変わった事と言えば、アルバイトで帰って来なかった子供達が、お盆には帰って来たので、久し振りに妻の笑顔を見た事ぐらいです。
その後は、お盆前と変わらず、妻は笑顔を見せませんし、私も 笑う事は有りません。
ただ来月からは生活が大きく変わりそうです。
来月初めに挨拶を済ませて、その後 本社に帰れる事になりました。もうそろそろだとは思っていましたが、私の会社は、4月の移動が多く、今回は、寝耳に水の人事異動でした。
最初は喜びましたが、よく考えてみると手放しでは喜べません。
依然 妻と2人でいても、会話らしい会話も無く、妻もそうでしょうが、私も息が詰まりそうでした。
来月から毎日その状態が続くのです。
ここで何とかしたいと思った私は、あれからも忘れる事無く、気になっていた事を知る為に、強硬手段に出る事にしました。
「美鈴、久し振りに来週は2人で旅行に行こう。」
妻は、急に顔が明るくなり、嬉しそうに頷きましたが、私の その後の言葉を聞くと、今度は顔が今まで以上に曇りました。
「前に美鈴があいつと泊まった旅館に行きたい。部屋も同じ部屋にしたいから教えてくれ。他の日程も同じにしたい。」
部屋の名前か部屋番号を聞いても、本当なのかどうか分かりませんが、忘れたと言って言いたがりません。
どうにか、2階の1番奥の部屋である事を聞き出し、予約を取る為に電話すると、夏休み最後の土日なので、無理かもしれないと思っていましたが、すんなりと予約を取る事が出来ました。
妻は、何が起きるのか不安そうな顔をしていたので。
「来月から毎日顔を合わす事になる。
美鈴は嬉しいか?今のままで耐えられるか?
俺は、もう嫌だ。早く忘れてしまいたい。
でも、やはりこの事が気になって吹っ切れない。
美鈴は、辛いだろうが協力してくれ。
美鈴があいつと廻ったコースを辿り、何を見て何をしたのか知りたい。
このままでは、一生嫌な想像をして暮らす事になる。
毎日とは言わないが、以前の様に2人でいても、たまには笑って過ごしたい。
こんな事をして吹っ切れるのかどうかも分からないが、このままでは駄目になる。いずれ別れる事になる様な気がする。
協力してくれるな?」
「私は、いつ離婚を切り出されるのか、毎日ビクビクしていました。
明るく振舞おうと思っても、明るく振る舞えば、もう私だけ あの事を忘れて、反省も止めたと思われないか、不安で出来ませんでした。
私もこのままだと、いつか離婚を言われそうな気がします。もしあなたが離婚したいと言えば、私は何も言えません。
今聞いた瞬間、私は行きたくない、そんな事は止めて欲しいと思いました。今でも怖いです。
私があなたに隠れて何をしていたのか知られるのが怖いです。
私は、あなたの事も忘れて、言えない様な恥ずかしい事をしました。
知られれば逆に、もう終わってしまうかも知れません。
でも最後のチャンスだと思って、出来る限りあなたの言う通りにします。お願いします。」
--------------------
8月30日(土)
昨夜、家に帰ってきて、朝、妻達が行った時と同じ様な時刻に出発しました。
車の中で何を話したのか、何処に寄ったのか、その時は腕を組んだのか、あるいは肩を抱かれて歩いたのかなど、詳しく聞きながら同じ事をしました。
最初、言い難そうにしていた妻も 決心を固めたのか、自分から話したり、行動で示したりしてくれる様になりましたが、温泉街が近付くに連れて話さなくなったので、そのまま旅館に行き、駐車場に入ったのは、まだ午後3時でした。
この温泉街には 大きな旅館がいくつも有るのに、私達の旅館は、中心から少し離れた所に有る、小さな寂れた旅館でした。
部屋数も少なそうで、まだ時間が早い事も有るのでしょうが、私達の他には、お客のか従業員のか分からない車が1台止まっているだけです。
「あの男は どうしてここを?」
「急に決まったので、ここなら、いつも空いているらしくて・・・・・。
それと ここには小さな混浴の露天風呂が有って、少しお金を出せば、家族風呂のように貸し切りに出来ると言って・・・・・・。」
なかなか足が進まない妻の背中を押しながら玄関を入り、フロントらしき所でチェックインを済ませましたが、妻はずっと下を向いていて顔を上げません。
その内に私よりも年上らしい、やけに化粧の濃い仲居さんが、鞄を持ってくれようとしました。
>>次のページへ続く
依然 妻と2人でいても、会話らしい会話も無く、妻もそうでしょうが、私も息が詰まりそうでした。
来月から毎日その状態が続くのです。
ここで何とかしたいと思った私は、あれからも忘れる事無く、気になっていた事を知る為に、強硬手段に出る事にしました。
「美鈴、久し振りに来週は2人で旅行に行こう。」
妻は、急に顔が明るくなり、嬉しそうに頷きましたが、私の その後の言葉を聞くと、今度は顔が今まで以上に曇りました。
「前に美鈴があいつと泊まった旅館に行きたい。部屋も同じ部屋にしたいから教えてくれ。他の日程も同じにしたい。」
部屋の名前か部屋番号を聞いても、本当なのかどうか分かりませんが、忘れたと言って言いたがりません。
どうにか、2階の1番奥の部屋である事を聞き出し、予約を取る為に電話すると、夏休み最後の土日なので、無理かもしれないと思っていましたが、すんなりと予約を取る事が出来ました。
妻は、何が起きるのか不安そうな顔をしていたので。
「来月から毎日顔を合わす事になる。
美鈴は嬉しいか?今のままで耐えられるか?
俺は、もう嫌だ。早く忘れてしまいたい。
でも、やはりこの事が気になって吹っ切れない。
美鈴は、辛いだろうが協力してくれ。
美鈴があいつと廻ったコースを辿り、何を見て何をしたのか知りたい。
このままでは、一生嫌な想像をして暮らす事になる。
毎日とは言わないが、以前の様に2人でいても、たまには笑って過ごしたい。
こんな事をして吹っ切れるのかどうかも分からないが、このままでは駄目になる。いずれ別れる事になる様な気がする。
協力してくれるな?」
「私は、いつ離婚を切り出されるのか、毎日ビクビクしていました。
明るく振舞おうと思っても、明るく振る舞えば、もう私だけ あの事を忘れて、反省も止めたと思われないか、不安で出来ませんでした。
私もこのままだと、いつか離婚を言われそうな気がします。もしあなたが離婚したいと言えば、私は何も言えません。
今聞いた瞬間、私は行きたくない、そんな事は止めて欲しいと思いました。今でも怖いです。
私があなたに隠れて何をしていたのか知られるのが怖いです。
私は、あなたの事も忘れて、言えない様な恥ずかしい事をしました。
知られれば逆に、もう終わってしまうかも知れません。
でも最後のチャンスだと思って、出来る限りあなたの言う通りにします。お願いします。」
--------------------
8月30日(土)
昨夜、家に帰ってきて、朝、妻達が行った時と同じ様な時刻に出発しました。
車の中で何を話したのか、何処に寄ったのか、その時は腕を組んだのか、あるいは肩を抱かれて歩いたのかなど、詳しく聞きながら同じ事をしました。
最初、言い難そうにしていた妻も 決心を固めたのか、自分から話したり、行動で示したりしてくれる様になりましたが、温泉街が近付くに連れて話さなくなったので、そのまま旅館に行き、駐車場に入ったのは、まだ午後3時でした。
この温泉街には 大きな旅館がいくつも有るのに、私達の旅館は、中心から少し離れた所に有る、小さな寂れた旅館でした。
部屋数も少なそうで、まだ時間が早い事も有るのでしょうが、私達の他には、お客のか従業員のか分からない車が1台止まっているだけです。
「あの男は どうしてここを?」
「急に決まったので、ここなら、いつも空いているらしくて・・・・・。
それと ここには小さな混浴の露天風呂が有って、少しお金を出せば、家族風呂のように貸し切りに出来ると言って・・・・・・。」
なかなか足が進まない妻の背中を押しながら玄関を入り、フロントらしき所でチェックインを済ませましたが、妻はずっと下を向いていて顔を上げません。
その内に私よりも年上らしい、やけに化粧の濃い仲居さんが、鞄を持ってくれようとしました。
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