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戦い
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また手を上げましたが腫れた顔を見て、もう殴れませんでした。


「それだけは言えません。どのような罰も受けます。許して下さい。彼の事だけは言えません。」


「そうか。それなら どの様な手を使っても必ず調べて、地獄に落としてやる。」


私は、聞きたい事がまだ沢山あったのですが、妻がまた激しく泣き出したので、落ち着くのを待ち、


「相手の事は置いておいて、どうして あの先生と浮気したと嘘をついた?どうしてあのようにスラスラと嘘をつけた?正直に話せ。」


「それは・・・・・・彼が・・・・・・。」


「話を聞いても聞かなくても、もう美鈴とは終わりかもしれない。でも知りたい。」


「別れるのは嫌です。許して下さい。離婚は嫌です。ごめんなさい。ごめんなさい。」


「それなら尚の事、正直に話してくれ。」


「彼は、以前 奥様に浮気された事があって、奥様が相手を愛してしまった事、相手とのセックスが気持ち良かった事、会う度に何度も関係を持った事を聞き出し、凄くショックを受けたそうです。

ですから、あなたが興信所に行っている間、先生のが小さくて感じなかった事や、同情からで相手を愛していない事、会ってもあまり関係を持たなかった事にすれば、あなたは必ず許してくれると言われました。

その上、歳が離れているので、別れて相手と結婚する心配もしないだろうと。」


「相手を庇い、ばれる心配があっても続けていたと言う事は、相手が好きなのか?俺の事を嫌いになったのか?」


「違います。あなたを愛しています。こんな事をしておいて言い難いのですが、家庭も壊したく無かった。あなたに不満はありません。本当です。あなたが好きです。」


「では何故こんな事に?どうして俺を裏切る?」
「ごめんなさい。私にも分かりません。あなたを愛しているのに、どうしてだか分からないです。

あなたを好きなのに、彼の事も・・・・・・・。

ごめんなさい。ごめんなさい。」


彼の事も好きだと言い掛けたと思い、言いようの無い寂しさに襲われました。


この後、何度も妻を問い詰めましたが、結局、相手の事は言わずに朝を迎え、会社に嘘をついて何日か休む事を電話し、少し休もうと横になった時

妻の携帯が鳴り、それは妻の上司からのようで、今日は休む事をお願いしていました。

妻の顔は腫れて少し青あざになってきたので、しばらくは行けないと思います。


横になっていて眠ってしまい、目が覚めたのは夕方でした。

妻は、腫れた顔を冷やしながら泣いていて、寝ていないようです。

先生をしている彼に連絡を取ると、私と会うことを意外とあっさり承諾してくれたので、妻を残して会いに行き、待ち合わせ場所で彼の車に乗り込むと。

「ご主人がまた連絡してくると思っていました。今度会ったら 全て話そうと覚悟していました。」


「そうか。ありがとう。実は今日、脅迫してでも聞き出そうと思っていたのだが・・・・・・・。」


「自分の蒔いた種です。もう逃げない事にしました。奥さんの相手は野田です。たしか奥さんの上司だと思います。

私は、昨年、新任の教師として この学校へ赴任して来ました。

新任なのに すぐにPTAの係りにさせられ、何も分からない私は、お母さん達と上手く付き合う事ができずに悩んでいました。

その時 役員の1人だった野田の奥さんに優しくされ、誘われるままに関係を持ってしまいました。

女の人が初めてだった私は、彼女の身体に溺れてしまい、やがて探偵を付けられて発覚し、慰謝料も分割ですが払い終わりました。

先月初め 野田に呼び出され

“今不倫をしていて、ばれるかもしれない。

俺が不倫したのも お前達のせいだ。ばれないように協力しろ。

もしばれた時は、お前が身代わりになれ。そうしないと学校、教育委員会、PTAに生徒の母親と不倫した教師を処分しろと言いに行く。”

そう脅されました。」


「そうか。妻から聞いた事にして、あんたの名前は出さない。ありがとう。」


急いで家に帰り。


「おい、相手が分かったぞ。課長の野田だそうだな。あんなもっともらしい電話までして来やがって。なんて悪賢いやつだ。分かったからにはキッチリ責任は取ってもらう。」


「いいえ、違います。野田課長ではありません。違います。」


「まだ庇うのか?そんなにあいつが好きか?それなら明日会社に行って確かめてやる。」


「それだけは・・・・・お願い、それだけは止めて下さい。お願いします。お願いします。」


妻の泣き声を聞きながら、どう決着を付けるか考えました。

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5月20日(火)

朝9時に妻の携帯から電話すると。

「美鈴どうした?不都合な事でも起こったのか?」


「美鈴?不都合な事?今から家に来い。話がある。用件は分かっているはずだ。」


「あっ、ご主人。いえ。今から仕事で。今からは無理かと。今からは・・・・・・。」


「仕事?人の家庭を無茶苦茶にしておいて、仕事だと?それならいい、今から俺が そちらに行く。」


誰か近くに来たのか、口調が変わり。

「いいえ。今から御社にお伺い致します。」


「御社?会社ではまずいのなら、すぐに来い。」


野田が来たのは11時を過ぎていました。部屋に入り腫れた妻の顔を見て全て悟り、立ったまま頭を下げて謝罪しています。


「大きな会社の課長までしていて、謝り方も知らんのか?」


野田が慌てて土下座したのを見て近くに行き、蹴り倒して馬乗りになり、妻の時とは違い拳で2発殴りました。

次に拳を振り上げた時、その腕に妻が両手で縋り付き。


「あなた、もう止めて。許して下さい。どんな償いもします。何でもします。お願い、許して。」


野田は私が離れると、ハンカチで鼻血を拭きながら、ゆっくりと起き上がって正座しました。


「どうしてこうなった?妻が好きなのか?遊びか?」


「私の家は家庭内別居しているようなもので、最初は相談に乗って貰っていましたが、その内に。」


「好きになったのか?お互いに好きという訳か。いいぞ、離婚してやる。今から連れて行け。

ただ俺も長年親しんだ身体だ、名残惜しいので最後に1度だけさせろ。」


妻の着衣を荒々しく剥ぎ取ろうとすると、妻は泣きながら抵抗します。

それでも下着だけの格好にして野田を見ると、俯いたまま黙っていて顔を上げません。


「お前も見慣れた裸なので、あまり興奮しないかも知れないが、どうだ?いい身体だろ?

40歳を過ぎているとは思えないだろ?

この身体を譲るのだから安くは無いぞ。美鈴、身体の中まで散々見せた間柄だろ?

恥ずかしがらずに、いくらで買って貰えるか立ってよく見てもらえ。」


妻は、膝を抱えて泣いています。


「申しわけ御座いませんでした。許して下さい。離婚までは望んでいません。もう二度としませんので、許して下さい。」


「あなた、ごめんなさい。もうしません。ごめんなさい。」


野田は、明日また来るので、今日はもう許して欲しいと言いました。


「明日までに考えておくから、お前もよく考えて来い。

それと、離婚するつもりでいるが、もし離婚しない時でも、こいつは もう家政婦としてしか置くつもりは無い。

家政婦を抱く訳にもいかないから、女を抱きたくなったら金が掛かる。慰謝料は多い目に頼むな。」


こんな妻でも今までの生活を考えてしまい、情けない事にまだ未練があって、別れられないと思っていても、汚い言葉で強がりを言ってしまいます。

別れる気は無くても、別れると言って二人に対して強がる事だけが、妻を寝取られた私に残されたプライドでした。


野田が逃げるように帰ってから。

「美鈴、これからどうしたい?俺は別れたいが、お前はどうだ?

お前にお願いがある。もし別れたら子供達には出来るだけ会わないで欲しい。

お前のような人間にはしたく無いからな。」


私は、女々しいと分かっていても、子供の事まで持ち出して繋ぎ止めようとしました。

別れたくないのは未練だけでなく、自分だけが不幸になり、また妻が野田と付き合い、最悪再婚でもして幸せになる事が許せない思いもあります。

本当に女々しい男です。


>>次のページへ続く
 
 


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