運転手はよく見たら普通の運転手って感じではなくて、身なりが良かった。
パッと見でお金には不自由していないタイプの人間だと感じていた。
実際に、彼は経営者で、乗っている女の子達(20〜30代)は従業員だと言っていた。
自分は警察署か病院に連れて行ってもらいたかったけど、今お金がないって事に気付いた。
社長さんもその点に気付いて、保険なしだと高いから、まずは大使館に行くべきとか話していた。
色々冷静に物事を考え始めたら、気が緩んだのか発熱しだしてぐったりしてきた。
バスのシートを倒して女の子達に看病してもらっていたと思うけど眠ってしまっていた。
そして起きたら、マレーシアに来た頃にみたようなボロボロのアパートよりもボロボロなアパートで寝ていた。
女の子達がまとまってここに住んでいるらしかった。
すぐにでも自分はお邪魔するべきだったんだけど、本格的に発熱が酷くなって全く動けなくなってしまっていた。
バスに乗っていた子達に看病されながらほぼ水だけ飲んで寝てを繰り返していた。
何日経ったか分からないけど、社長さんがそのボロいアパートにやってきた時、自分がいる事に驚いていたようだった。
社長さんはとっくの昔に大使館にいって御金の工面をして警察なり病院なり行っているのだと思っていたらしい。
今すぐ出て行けと言われたのだが、発熱が酷くて意識が朦朧としておりまともに動ける状態ではなかったので流石に非情すぎると思ったのか、「では動けるようになったら出て行ってくれ」と言われた。
目が覚めている時に聞いた会話などで感じていたが、女の子達はマレーシア人ではなくて、全員ベトナム人だった。
ベトナム人と聞いて、色々とピンとくることがあった。
ベトナム人の女性が集団でボロいアパートに住んでいるというのは、マレーシアではほぼ間違いなく売春をやってるベトナム人で、実際にこの人達はそういう人達だった。(ちなみにソースはブラジル人の友人)
あの社長さんは、ベトナムから斡旋されたこの子達に住居なんかを提供する代わりに売春させて毎月いくらか徴収するという商売をしているんだと理解した。(ソースはブラジル人の友人)
部屋の片隅にはボロいアパートなのにすごく派手な服がかかっていたりヒールの高い靴がたくさん積んであった。
多分自分はパームヤシで何かの感染症にかかったのかもしれなくて、少なくとも普通の風邪ではなかった。
ベトナム人の子達が持ってきてくれる謎の薬はあまり効かなくて、飲んだ瞬間に吐いてしまうのもあった。
それでも段々と治っていくのは実感としてあって、段々と物を考える余裕が出てきた。
それからそれから?
その状態になるまでハッキリと頭でカウントできていた日数だけでも2週間はこのアパートにお世話になっており、恐らく学生ビザも既に切れているのではないかという予感がしていた。
それに借りていたコンドミニアムに置いてある荷物はどうなったかとか、電話やカードを止めていないけどどうなってしまっているのかとか、頭が痛くなる事だらけだった。
そういうタイミングで社長さんがまたアパートにやってきた。
以前より明らかに意識がはっきりしている自分を見て、「明日大使館に連絡して、出て行ってくれ」と告げられた。
そしてこれまでの宿泊代として3000リンギット(80000円位)ほど借りた中からよこせと言われた。
確かに超正論なのだが、大使館がそんなに貸してくれるわけないと思った。
それに3000リンギットっていうのは無茶苦茶な値段だった。
それで次の日に、社長が電話を貸してくれて、大使館に電話をしろって事になった。
素直に電話をすればよかったんだろうけど、オーバーステイ確実な上に3000リンギットも貸してほしいと大使館の人に言う勇気がなくて、電話した振りをしてその場をやり過ごしてしまった。
社長さんは「それで、いつ貸してくれるんだって?」と聞かれたので、「来週持ってきてくれる」と咄嗟に言ってしまった。
「ここに?それはちょっとまずいから他の場所を指定しろ」と言われたのでもう一度かけて(ワン切り)、俺が元々住んでいた地域の近くにあるジャスコにしたと伝えた。
そして自分は3000リンギットなんて払えないから、不義理ではあると思うけど一週間以内にここから脱出して大使館に駆け込もうと決意した。
遅くてすみません、もうちょっとです。