次に佐藤と接点ができたのは修学旅行が終わって1週間、俺の粗チン騒ぎにもみんなが飽きたあとだった
定期テストで、俺は数学の成績が悪かったので補修を受けるはめになってしまった
そしてその補修を受けるメンバーの中に佐藤もいた。
俺はなんとなく居心地が悪いような、嬉しいような、なんともいえない気持ちになった
そしてその補修の後。
帰ろうとした俺はばったりと佐藤とでくわした。
俺は最初、世間話でごまかそうとして、でも結局、世話になったくせになかったことにしようとしている情けなさに気がついて、改めて佐藤に感謝と、ひどいことを言ったことを謝った。
佐藤は別にいいよ、と言った。
笑った顔がかわいいことにその時気がついた
佐藤はなんで俺のことをわざわざ気にかけてくれたんだ?と俺は聞いた
佐藤は俺の質問に、ちょっと下を向いてだまった。
俺はなにか不味いことを言ったか、と小心者の病気が出て、訳もわからず謝った。
佐藤は違うの、と俺を遮って、長くなるけどいい?と俺に言った。俺は頷いた。
はよ
佐藤は何から話すかちょっと迷ったような顔をして、それから、宮原くん、私のお兄ちゃんに似てるの。と言った
俺はなんでお兄ちゃんの話が出てくるのかわからなくなって、黙ったままでいた。
佐藤は小学生のころお兄ちゃん大好きっ子だったんだそうだ。
大人で、口数は多くなかったけどそこがいいところだったんだと佐藤は言った。
俺は佐藤が期待するほど大層な奴じゃないと思ったけれど、一応頷いた
佐藤はその先を言いづらそうにしていた
俺は辛抱できない奴だったので、その先を促した。
お兄ちゃん、自殺しようとしたの。
佐藤がようやく言った言葉に、俺は頭のなかが真っ白になった
佐藤のお兄さんは、佐藤が小学校4年のとき自殺未遂を起こしていた。突然だったらしい。
寝る前にアルコールと睡眠薬を飲んだのだと。
朝、いつまでも起きてこないお兄さんを佐藤のお母さんが不審に思って起こしに行き、発見されたのだと佐藤が言った。
原因はいじめだったそうだ
怪我もしなければ持ち物をどうされるということもなかったが
クラスのいじめっ子からおもしろ半分でカツアゲされ、万引きを強要されていたと佐藤が言った
好きな女子とのありもしない噂を流され、その女子にクラスの前で断らせてビンタさせるということまでされたという。
俺は言葉が出なかった。
もう俺の粗チンの話なんかどうでもよくなっていた