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ドッペルゲンガーと人生を交換した話
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32 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 20:37:48.70 ID:jOa4dxbL.net
椿の言う通り、典型的ないい奴って感じだな。

しかし、俺が椿じゃないって全然ばれないな。

まぁ、こんなに似ているんだから当たり前か。


桐島と話しているうちに、学校に着いた。

教室に入ると、何人かから声をかけられた。

内容は桐島と同じで、体調を心配するようなものだ。


授業が始まると、近くの席の人達が、休んでいる間のノートを見せてくれた。

授業は俺が通っていた高校より進んでないみたいだったので、そんなに必要はなかったが、椿の代わりに写しておいた。


33 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 20:38:15.87 ID:EjVEnkhT.net
そんな感じで午前の授業が終わり、昼休みは桐島と学食に行った。

午後の授業も、午前と同じ感じで、ノートを写して大体が過ぎ、とりあえず入れ替わり一日目の学校は終わった。

桐島達に放課後、カラオケに誘われたが、まだ少し調子が悪いと言って帰ってきた。

まだわからないことも多いし、これが得策だったはずだ。




34 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 20:38:57.28 ID:EjVEnkhT.net
家に帰ると、一日気を張って過ごしたせいか、疲れていたみたいで気づくと眠りに落ちていた。

目が覚めたのはもう夜、携帯が鳴る音でだった。

「こんばんは、どうでしたか僕の生活は」

電話に出ると聞こえたのは椿の声だった。

当たり前か。携帯は壊れたことにしているしな。

「ああ、お前の言う通り充実したスクールライフだったな。お前が普段どれだけ学校生活を満喫しているか、よくわかったよ。一体お前はこれの何が不満なんだか、ますますわからないな」

「それはもう言ったじゃないですか。飽きちゃったんですよ。それより、貴方にもわりと親しい人いるじゃないですか。七瀬さん、昨日聞いたよりもずいぶん関係は深いようですが」



35 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 20:39:42.89 ID:EjVEnkhT.net
突然出てきた、七瀬という名前に俺の心はざわついた。

「あいつはそんなんじゃないさ。ただ昔から知っているだけだ」

「とてもそんな風には思えませんでしたけどね」

椿の口調が少し強くなっていた。七瀬のことを黙っていたのを怒っているんだろうか?

「本当に違うんだ。まぁ、黙っていたのは悪かった。言う必要はないと思ってたんだ。最近はそんなに話してなかったしな。それより七瀬の名前が出るってことは、あいつと何かあったのか」

「いえ、別に、特に何かあったわけではないんですが、ただ昨日の貴方の話では、今日僕が学校に行っても、誰にも話しかけられないと思っていたんで、七瀬さんの方から話しかけられて、少しびっくりしただけです」

七瀬から話しかけた、か。一体七瀬はどんな話をしたんだろうか。

すごく気になったが、それを椿に聞くのは少し癪だったので、聞かないことにした。



36 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 20:40:09.76 ID:EjVEnkhT.net
「そうか、悪かったな。詳しく話しておかなくて」

「でも、彼女ってわけではないんですよね?」

「当たり前だ。そんな関係の奴がいたら、入れ替わったりなんかしないさ」

「それもそうですね。それでも、一応聞いておいてもいいですか。七瀬さんのこと。今日もギリギリだったんですよ。バレないように話すの」

「ああ、そうだな、七瀬は……」



37 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 20:42:07.21 ID:EjVEnkhT.net
「それじゃあ、明日も頑張りましょう」

七瀬の話も終わり、椿が電話を切る合図の言葉を発した。

「ああ、じゃあな」

俺もそう言って電話を切った。

それから夕飯を食べて、今はもう寝るところだ。

「七瀬か……」

通話が終わってから、ずっと七瀬のことを考えていたせいか、そんな独り言が自然に口から出ていた。

帰ってきてから少し寝たため、全然眠くないので仕方なく、椿に話したことを思い出しながら、七瀬のことを考えることにした。




38 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 20:42:36.67 ID:EjVEnkhT.net
七瀬を、七瀬 千由を初めて意識したのは、小五の夏、教室でのことだった。


あの日俺は日直で、いつもより早く学校に行った。

誰もいないだろうなと思いながら教室に入ると、そこには七瀬がいた。

七瀬はその一ヶ月くらい前に、アメリカから転校してきたばっかで、俺は話したこともなかった。

ただ、その頃の俺はまだ、今よりはほんの少しだけ社交的だったんだな、教室にいた七瀬におはようと挨拶をしたんだ。今の俺からは考えられないな。

でも、返事は返ってこなかった。椅子に座っていた七瀬は、むすっとした顔で表情を変えずに、黙っていた。



39 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 20:44:08.09 ID:EjVEnkhT.net
あの頃の七瀬は少しクラスで浮いていた。

アメリカから来た帰国子女だ、それは小学生の俺たちには、異質なものだったんだと思う。

それに加えて七瀬には近寄りがたい雰囲気があった。それが一層、七瀬の孤立を深めんだろう。

いじめというわけではなかったが、七瀬 千由はとりあえず浮いていた。それで七瀬がとった行動が、あのむすっとした表情だったんだろう。

他人に弱みを見せないための盾。

そしてその顔に、少しだけ社交的な僕は意地になったんだろうな、その日から俺は七瀬にはしつこく話しかけた。七瀬をクラスに馴染ませようと思ったんだ。重ね重ね今の僕からは考えられないけどね。



40 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 20:44:40.17 ID:EjVEnkhT.net
そしてとある事件があって、俺は初めて七瀬とちゃんとした会話を交わすことに成功した。

それどころかあの時、七瀬は俺に笑いかけたんだ。あの顔は一生忘れないと思う。この世の綺麗を全部集めたような顔だった。

それからは、元々は明るい性格だったんだろうな、七瀬はクラスに馴染んでいった。

聡明で、気が強くて、でも本当は寂しがりやで、七瀬 千由はそんな少女だった。



41 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 20:47:15.84 ID:EjVEnkhT.net
その後小学校を卒業するまで、七瀬と俺はわりとよく一緒に行動したんだ。

でも、中学生になって学校が離れて、最初の頃はたまに会ってたけど、徐々にそれも少なくなって、疎遠になった。



42 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 20:47:45.39 ID:EjVEnkhT.net
それで、社交的な俺が段々消えていって今の俺になった頃、俺は七瀬と再会した。

二ヶ月前のことだ。高校の入学式で七瀬は久しぶりと言って、俺に話しかけてきた。

面食らったよ、もう七瀬には会うことはないと思ってたからね。

正直、嬉しかった。七瀬とまた会えたのが。

だけど同時に俺は怖かったんだ。変わってしまった自分を見られるのが。だから俺は七瀬と距離を置いた。



43 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 20:48:53.92 ID:EjVEnkhT.net
それからはすれ違ったら挨拶をするくらいで、特に話すことはなかった。

それで一ヶ月くらい過ぎた頃かな、下校中同じ制服を着た奴が他校の生徒に絡まれてるなと思ったら、七瀬だった。

いつもの俺なら無視して立ち去るんだけど、何故か俺は、七瀬の手を掴んで走っていた。ヒーローになったつもりだったんだろうか。

違うな、七瀬だけが俺を特別にするんだ。



44 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 20:49:48.34 ID:EjVEnkhT.net
その後、お礼を言われて、また少しだけ話す関係に戻った。

昔みたいにはいかなかったけど、たまに話して、それが俺にとってはとても楽しいことだったんだ。

と、一部分だけを話すと、まるで俺がドラマチックに生きている主人公みたいだが、そんなことはない。椿に話した時も、「十分、主人公みたいなことしてるじゃないですか」と言われたが、全くもって的外れだ。

こんなのは、多かれ少なかれ、誰にだってあるようなことだと思う。みんなそれに気づいてないだけで、同じようなドラマを持っているだろう。

むしろ、俺がみんなと同じように、ドラマチックな経験をしていることが、奇跡なくらいだ。

それに、今の俺の高校生活が、地味で暗いものということには変わりないしな。



45 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 20:50:45.15 ID:EjVEnkhT.net
そんなことを考えていると、もう深夜だった。明日も俺は椿として学校に行く。

本当にこれで良かったのだろうか。考えても仕方がないので俺は寝ることにした。

入れ替わり二日目の学校も特に問題なく終わった。

大体の人間関係がわかったのと、椿が元々良い友人関係を築いていたからだろう。



46 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 20:51:41.80 ID:EjVEnkhT.net
そして、今日は放課後、桐島達とボウリングに行くことになった。俺が桐島達のノリについていけるか不安だったが、心配はいらなかった。

どうやったかは知らないが、本物の椿も、社交的ながら、わりと静かな方だったらしい。

そのおかげであまり喋らなくても、特に怪しまれることはなかった。



47 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 20:52:38.82 ID:EjVEnkhT.net
俺は友人とボウリングに行くなんて初めてのことだったが、桐島達の良い人柄もあって、正直楽しかった。

こんな毎日を過ごしているなんて、椿が本当うらやましいよ。

夜の電話で椿に同じようなことを言ったら、「貴方の生活もじきにそうなりますよ」と言われた。向こうも順調らしいが、本当なのだろうか。

まぁ、椿の今までの人間関係を見るに、本当にうまくいってるんだろうな。

素直に尊敬するよ、俺に対しての好感度を上げるなんて、相当難しいだろうからね。



48 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 20:53:03.56 ID:EjVEnkhT.net
それと、この二日で感じたことなんだけど、俺と椿はどうやら性格も似ているらしい。

表面的には、社交的な椿と内向的な俺は別人に見えるだろう。


ただ根本的なものは同じみたいなんだ。

この二日俺は、椿を演じることに違和感を感じなかった。

これはつまり、俺にも椿みたいに可能性があったってことなのかもしれないな。

だとしたら、俺と椿を決定的に違う存在にしたのは何なのだろう。

一人の少女の顔が浮かんだがそれは忘れることにして、目を閉じた。

入れ替わり二日目はこんな感じで終わった。




49 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 20:53:46.68 ID:EjVEnkhT.net
それから五日間、特に問題は起きなかった。

俺も椿として学校に馴染めていたと思うし、何より桐島達といるのは楽しかった。

椿も話を聞く限りでは、うまくやっているようだ。



そして、入れ替わってから七日目、学校が終わり、今俺は、椿の家からも俺の家からも離れた公園に向かっていた。俺の家と椿の家は三駅離れているが、そこからさらに二駅超えたところにある寂れた公園だ。

ここで椿と会う約束になっている。同じ顔が二人いると目立つので、人気のない公園にしたと椿は言っていた。

まぁ、最悪人がいても、双子ってことにすればいいわけだが。



50 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 20:54:12.07 ID:EjVEnkhT.net
公園に着くと椿はブランコの周りの柵に腰掛けていた。

「こんにちは。久しぶりですね」

俺も隣に腰をかけて返事をした。

「ああ、いつ見てもやっぱりそっくりだな」

「そうですね」

ここ何日かで俺の、椿に対する敵対心はなりを潜めていた。

それは椿になってみて、椿が今までどんな人間関係を築いてきたかで、椿の人柄の良さがわかったからだろうか。

とにかく椿に対する嫌悪感はほぼなくなっていた。



52 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 20:55:28.05 ID:EjVEnkhT.net
「それでどうですか、僕の生活は」

「ああ、電話でも話したと思うが正直、楽しいよ。クラスメイトはいい奴ばっかで、あいつらと遊ぶのも楽しい」

「それは良かった」

「お前の方はどうなんだ」

俺になるのが楽しいとは、とても思えないが。

「僕も楽しいですよ。段々みんなからの好感度も上がってきています。後一週間で必ず成功させてみせますよ」

「それは楽しみだ」



53 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 20:55:55.53 ID:EjVEnkhT.net
俺の心は段々、椿に肯定的になっていた。

こいつにだったら、すべてを任せられるという気持ちがあった。

「それで提案なんですけど、七瀬さんに告白しませんか」

突然でできた名前に、俺の心はまたざわついた。

「どうして」

つい反射的に、強い口調で聞き返す。

「どうしてって、彼女を作っておいた方が、より幸福な人生に近づくのではないかなと思いまして」

「それはダメだ」

「どうしてですか?」

「とにかくダメだ」

「わかりました。不利益になることはしないって約束ですしね」

「ああ、悪いな」



54 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 20:56:17.64 ID:EjVEnkhT.net
それから少し話をして、俺たちは別れた。

帰り道、さっきのことがずっと引っかかっていた。

どうして俺は七瀬のことであんなにムキになったんだ。

入れ替わっているとはいえ、椿に七瀬を取られたくなかったのか。

いや、そんなはずはない。

そもそも、取られるとか、元々俺のものってわけでもないのに。



55 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 20:57:37.62 ID:EjVEnkhT.net
ダメだこれ以上考えても、自分が嫌になるだけだな。

やっぱり七瀬だけが俺を、どうしようもなく特別にさせるんだ。

一度考え出すともう止まらない。

俺は自分の燻んだ感情をおさえることがで

「危ない!」

突然背後から声が聞こえた。立ち止まって振り返ると、今度は前方からとても大きな、ガシャンという音が聞こえた。



56 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 20:57:58.02 ID:EjVEnkhT.net
「大丈夫ですか」

先ほどの声の主が、俺に慌てて話しかけてきた。

ただ俺はその問いに応えることができなかった。

俺のすぐ目の前には、上から落ちてきた看板があった。あと一歩でも前に進んでいたら、俺はこれに潰されていただろう。

「すっ、すみません。ありがとうございます」

俺は、目の前の男性に、震えた声で礼を言った。

この人がいなかったら俺は看板と一体化するとこだった。



57 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 20:59:11.86 ID:EjVEnkhT.net
「いえ、大丈夫ですか。怪我は?」

「大丈夫です。貴方の声で立ち止まったので、潰されずに済みました、本当にありがとうございました」

「良かった。看板、老朽化してたんですかね。それとも…… 何か心当たりありますか」

「いえ、特には」

心当たりなんてあるわけない。

そもそも俺は誰かに恨まれるほど、深く人と関わってないんだ。



58 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 20:59:28.09 ID:EjVEnkhT.net
「そうですか。どうします警察とか呼びますか?」

警察か。もし警察を呼んだら、事情聴取とかがあるだろう。椿と入れ替わっている身としては、それはさけたい。幸いここは人気のない、裏通りだ。この人さえ説得すれば何とかなる。

「いえ、あまり警察とか面倒なのは」

「それもそうですね。じゃあ、看板ははじに避けておきましょうか」

「そうしてもらえると助かります」

物分りのいい人で良かった。



59 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 21:02:12.38 ID:EjVEnkhT.net
看板をはじに避けるとその人は、「じゃあ私はここら辺で」と言って去ろうとした。

「あ、待ってください、何かお礼を」

「そんなの大丈夫ですよ」

「しかし」

俺がそう言うと。その人は、

「そうですね、じゃあ、私の名前は磯崎と言います。

もし貴方が同じ磯崎という名前の人に会ったら、親切にしてあげてください。

その人が、もしかしたら僕の家族かもしれないし、恋人かもしれない。もちろん何の関係もない別人の可能性だってある。

どちらにしろ、これって素敵なことだと思うんです。それでどうですか?」

と言った。




>>次のページへ続く
 
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