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数年前、自殺しようとしてた俺が未だに生きてる話
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159 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/07(月) 06:19:59.37 ID:muQilJab.net
「言ったでしょう、命は平等よ」

レイは言った。

「あなたも、いじめっ子も、あなたを見捨てた友達も」

「みんなそれぞれ、一つの命がある」

「一回きりの人生」

「一度きりのゲームオーバー」

「誰も蘇ることはできない」

「不死身でもいられない」

「その命をどう使うのか、制限されることはない」

「戦争の最中でもない、少なくともこの日本においては」



160 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/07(月) 06:32:31.67 ID:muQilJab.net
「あなたはあなたの〈現実〉の範囲で、何でもできる」

「現にあなたはいま、ある選択をしている」

「いじめっ子から逃げるため、学校に行かないという選択」

「そして、それは引きこもりという現状につながった」

「でも、あなたは初めから一生引きこもる覚悟があったわけじゃない」

「それはとりあえずの、一時避難だったはず」

「けれど、あなたも うすうす気づいているはず」

「一度引きこもると、もう元には戻れない」

「その部屋は呪いがかかったようにあなたを閉じ込める」

「あなたは自分が望んでも、そこからでることができなくなる」



162 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/07(月) 14:03:00.39 ID:muQilJab.net
「呪いを破るためには、相応の代償が必要となる」

「けど、呪いが強まれば強まるほど、その代償は大きくなる」

「だから、いまのうちに、払うべき」

レイは息継ぎをするように黙ってから、言った。

「あなたをいじめた人間の命をもって」



163 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/07(月) 14:13:25.76 ID:muQilJab.net
これは何かの冗談だろうか。

そう思って、俺は現れた文字列を何度か読み返した。

慌てて読んだ俺が、文字の意味を飛ばしてるだけで、よく読めば全然別の意味だったなんてことはよくある。(俺だけ?)

それに、レイの言い回しは なんとなく難しげなことがよくある。だから、馬鹿な俺はそれを理解できずに・・・・・・

けど、どう考えてみても、それは文字通りの意味に思えた。



164 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/07(月) 14:18:06.97 ID:muQilJab.net
「えっと」「どういう意味?」

そうする以外、どうしたらいいのかわからず、俺は聞き返した。

そうして打ち込まれた二行は、レイの言葉に比べるとものすごく間抜けだったが、それはこの際、仕方なかった。

「わかるはずよ」

しかし、レイはあっさりと言い切った。

「あなたの問題を解決するには、その根本を断つ必要があるわ」

その根本を断つって、それってやっぱり・・・・・・



165 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/07(月) 14:29:53.64 ID:muQilJab.net
「簡単なことよ」

「あなたの命は一つ。彼らの命も一つずつ」

「あなたを自殺に追い込み、先に命を奪おうとしたのは、彼ら」

「ゲームはもう始まっている」

「でも、でもさ・・・・・・」

俺は反論を試みた。けど、何にも言葉は出てこなかった。

それどころか、俺は・・・・・・認めたくないけれど、認めちゃいけないんだけど、レイの言葉は俺の心に突き刺さっていた。

それを見透かしたようにレイは言った。

「あなたはこの問題を解決する必要がある」

「あなたの命を守るために」

「呪いがこれ以上強まる前に」



166 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/07(月) 14:38:56.60 ID:muQilJab.net
なぜ、このときレイの言葉は、あんなにも強く俺の心をとらえたんだろう。

いまでも俺はそう考えることがある。

初めてレイと話したとき、レイはそのときも俺にそんなことを言ったはずだ。

いじめっ子たちが消えることが正しい、そんなことを、犯罪めいた言い方で。

そして、俺はそれに反発したはずだった。

だって常識的に考えて、そんなの普通じゃない。俺と、いじめっ子、どちらが消えるのが正しいか、なんて。

〈生きる価値のない人間なんていない〉

そう言ったのは、レイだったはずなのに。



167 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/07(月) 14:47:37.76 ID:muQilJab.net
そうだ、〈生きる価値のない人間なんていない〉んじゃなかったか?

そのときの俺も、レイの矛盾に気がついた。

ただ、それはいまの俺のように「だからそんなことしちゃだめだ」って思考には続かず、単純な疑問として思い浮かべただけだった。

「でも、あいつらにも生きる価値があるんだろ?」

俺は聞いた。

「そうね」

すると、こともなげにレイは答えた。


「その質問には こう答えるわ」

「あなたは船上にいて、いまにも溺れそうな二人を見下ろしている」

「一人は見知らぬ人。そして、もう一人は・・・・・・そうね、私」

「あなたの手には浮き輪が一つ」

「さあ、どちらを助ける?」



168 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/07(月) 14:52:13.76 ID:muQilJab.net
「それは・・・・・・」

「架空の話だから、お礼は言わないでおくわね」

答えも待たずにレイは言った。

「でも、そういうこと」

「生きる価値は同じでも、そこに差別は存在する」

「私は あなたを手伝いたい」

「・・・・・・それが正しいことだと思うから?」

「覚えていたのね」

レイの微笑む顔を、俺は久しぶりに想像することができた。



171 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/08(火) 03:25:56.53 ID:diu5J1c8.net
「あいつらを、殺す、、、、、、ってこと?」

俺はつぶやくように言った。

殺す。

実は、チャットにこの二文字を打ち込んだのは、俺が最初だった。

レイはいままで、それをはっきりと口には出してなかったんだ。ほのめかすことはあったにしろ。



172 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/08(火) 03:31:52.85 ID:diu5J1c8.net
「でも・・・・・・どうやって?」

俺は手段を問いにした。

「どうやったら・・・・・・」

そうつぶやいた。



173 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/08(火) 03:39:55.32 ID:diu5J1c8.net
・・・・・・と、ここまでログを読み返すたび、俺は自分の言葉に毎度ぞっとさせられる。

だってこれは、このとき俺が口にしたのは、恐怖や不可能を表す言葉じゃない。

「どうやったら」

どうやったら、あいつらを殺せるだろうか。

どうやったら、それをやり遂げることができるだろうか。

それは人殺しを前提にした言葉だった。


わかってもらえるだろうか。

俺はこのとき越えちゃいけないハードルを無意識に飛び越えてしまったんだ。



>>次のページへ続く
 
カテゴリー:人生・生活  |  タグ:すっきりした話, 修羅場・人間関係, ためになる話, これはすごい, ためになる話, ちょっといい話,
 


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