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数年前、自殺しようとしてた俺が未だに生きてる話
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257 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/10(木) 11:59:54.47 ID:s7iJPSG6.net
「それで、あなたの質問だけど」

レイはすぐに話を戻した。

「結果がすべてだとは思わない」

「努力しても報われないことは多い」

「けど、その努力は認められるべき」


「さっきと言ってることが違うだろ」

俺は顔をしかめた。

「さっきは、結果=努力が可視化した状態って言っただろ。結果が出ない努力は計れないって。その計れない努力を、どうやって認めるんだよ」

「〈自己申告制〉の努力をさ」



258 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/10(木) 12:15:35.61 ID:s7iJPSG6.net
「努力を計る術はない」「正確には」「それは本人にしかわからないこと」


「じゃ、やっぱり・・・・・・」


「けど、努力には見えるものもある」「他人は、そういうものを指標にするしかない」「受験勉強なら、解き終えた参考書の数」「スポーツなら、練習量」「それが他人に見える努力」「本当に努力をしているなら、必ず記録としてあとに残るもの」



259 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/10(木) 12:25:07.57 ID:s7iJPSG6.net
「でも、じゃあ俺の努力はどうなるんだよ」

俺は今朝の自分を思い浮かべた。

確かに、約束の時間には間に合わなかった。けど、俺は努力した。

引きこもってた部屋を飛び出して、ほとんどパニックになりながら公園に行った。

「その俺の努力はどうなるんだよ。何の記録も残らないし、結果も出せなかった。なら、俺はなにもしてないってことになるのか? 俺の努力は全部無駄だったのか?」



260 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/10(木) 12:30:51.82 ID:s7iJPSG6.net
「無駄なはずがないわ」

レイは言った。それは いつになく優しい言い方だった。

でも、俺はそれに反発した。

「何でだよ。君は俺の努力を認めてくれないんだろ? 見えないから」


「ええ」「私はあなたが努力したことを知らない」「あなたは現れなかったから」


「じゃ、やっぱり無駄・・・・・・」


「無駄じゃない」「そう言ってるでしょう」

レイは続けた。


「確かに、私はあなたの努力を知らないかもしれない」


「けど、あなた自身は?」「あなたは誰よりも知っているはず」「自分が努力して、その結果行動が起こせたことを」「その部屋から出たことを」



261 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/10(木) 12:36:51.75 ID:s7iJPSG6.net
「他人に認められない努力もある」

「他人は所詮他人。あなたじゃないから」

「だから、それは仕方がないこと」

「あなたの努力は、あなた自身が一番認めてあげるべき」

「その努力は あなたを裏切らない」

「あなたの中で着実に積み上がっていく」

「例え、誰もそれに気づかなくても」


珍しく、レイの言葉からは熱のようなものが感じられた。だから、俺は言い出すことができないでいた。

でも、俺は認めて欲しい。俺じゃなく、他人に。・・・・・・というよりも、君に。

そんなことを言ったら、甘えてるみたいでかっこわるいと思った。



262 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/10(木) 12:44:13.64 ID:s7iJPSG6.net
でも、そんな俺の気持ちを察してくれたのはレイだった。黙ってる俺に、レイはこう言った。

「あなたの努力を認めない、そう言ったけれど」

「私は あなたのことを信じてる」

「あなたは努力して部屋から出た」

「そして、公園に来てくれた」

「会えなかったけど、私はそう信じてる」


「だから」

「私も証拠を残してきた」

「ブランコから見て右の植木の根元」

「土に埋まった青い小瓶」

「探してみて」


それだけ言うと、レイはチャットから消えた。



263 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/10(木) 14:21:50.75 ID:s7iJPSG6.net
レイは本当に来てくれたんだ。


俺は驚いて、何度もその言葉を読み返した。

信じてなかったわけじゃない。

でも、まさか、本当に・・・・・・・・・・・


「それから」

そのとき、突然文字が現れて、俺は覗き見されたようにびくりとした。

もちろん、言葉の主はレイだ。


「忘れないで」

「今回の外出は目標への第一歩」

「あなたがしなければならないのは、彼の観察」

「記録をつけて」

「その記録が、あなたの努力を可視化する」

「それじゃ」


一方的に言うと、今度こそレイは画面から消えた。

俺が口を挟む暇なんて、少しもなかった。



265 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/11(金) 03:30:58.18 ID:cSmjjL1b.net
その言葉で、レイの優しさ?に浮かれてた俺の気持ちは、途端に引き締まった。

俺は目先のことに一喜一憂して、すぐに目標を忘れてしまうところがあって、このときも その状態だった。

そうだった。

とりあえず、レイの〈証拠〉は置いておいて、俺はごくりと唾を飲み込んだ。

俺は、Aを殺すために行動を起こしたんだ。



266 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/11(金) 03:35:06.83 ID:cSmjjL1b.net
そう考えると、何だか不思議な気分だった。


俺は部屋をゆっくりと見回した。

そして、思った。

俺は、ここから出たんだ。


それは俺にとって本当に不思議なことだった。

だって、俺はここから出られないと思ってたんだ。

出られるわけがないと、出たら死ぬってくらいの勢いで。


けど、俺は出た。ここから出たんだ。



267 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/11(金) 03:39:50.28 ID:cSmjjL1b.net
〈あなたの努力は、あなた自身が一番認めてあげるべき〉

レイの言葉が、いまさら胸を熱くした。


俺、できたんだよな。

やり遂げたんだよな。


大げさかもしれないけど、ガッツポーズしたいような気分がこみ上げた。

けど、そのときだった。


「ホント、大げさね」

誰かが俺の中でくすりと笑った。

俺が勝手に創り上げた、頭の中のレイだった。



268 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/11(金) 03:47:51.92 ID:cSmjjL1b.net
「部屋から出たくらいで、なにそんなに喜んでるわけ?」

頭の中のレイは嘲笑した。

「引きこもりが部屋から出て、醜態さらして、それの一体どこが偉いわけ? 努力なわけ?」

「あなたの姿なんて誰も見たくないのよ」

「気持ち悪いったらありゃしない」

「ああ、ホント気持ち悪い」


頭の中のレイは俺を見下すように嫌な目で見た。彼女の目論み通り、身体を強ばらせた俺を。



269 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/11(金) 03:54:03.71 ID:cSmjjL1b.net
〈気持ち悪い〉

その台詞は容易に俺を麻痺させた。

レイのおかげで暖かくなった胸は、すぐに熱を失い、俺は光じゃなくて暗闇に目を向けた。

こそこそ、ひそひそと囁き合う他人でひしめいた、暗闇を。

「みんなそう思ってるわよ」

頭の中のレイはそうささやいた。

「みんな、みんなそう思ってる」

「みんな、世界中の人たちが、あなたのことをそう思ってる」



270 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/11(金) 04:00:19.38 ID:cSmjjL1b.net
「みんな、すべての人が、よ」

暗闇の他人がわらう。俺のことを指さして、わらっている。

「みんな・・・・・・」

俺はつぶやいた。足はもう膝まで暗闇に飲み込まれていて、それはすぐに全身を覆うだろうと思われた。それが常だった。

そうして、前向きになろうとする俺は、いつも暗闇に消えてしまうんだ。

そして、再び後ろ向きになって そこから吐き出される。

二度と立ち上がれないように、、二度と希望なんか持てないように、徹底的に刻み込まれて。



271 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/11(金) 04:07:26.04 ID:cSmjjL1b.net
〈あなたの努力は着実にあなたを変えていく〉


レイはそう言った。

けど、変わってないよ。

俺は ずぶずぶと闇に飲まれながら、そう思った。

それとも、やっぱり俺の行動は認めるに値しないちっぽけなもので、それくらいじゃ なにも変わらないっていうのか?



272 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/11(金) 04:26:45.37 ID:cSmjjL1b.net
けど、そのときだった。

何からの連想かわからないが、俺は ふとレイの最後の言葉を思い出した。

〈記録をつけて〉

記録。記録って?

わからないまま、俺は引き出しからノートを引っ張り出した。

暗闇は その腕まで絡め取ろうとする。けど、俺はそれを振り切るように、ページを開くと そこに殴り書きをした。


『今日。久しぶりに部屋を出て、公園へ行った。レイとの約束のため。』


ぱっと今日の日付がわからなかったから、少し変な書き付けになったが、その後 日付を調べて、書き足した。


『3/9』

そうか、もう三月なんだ、なんて驚いたことを覚えてる。



273 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/11(金) 04:41:02.31 ID:cSmjjL1b.net
三月・・・・・・もうすぐ二年の三学期も終わるんだ。

あのクソ教師のクラスも終わりか・・・・・・。

俺は しばし、ほとんど行くことのなかった教室のことを考えた。

不登校してても、あと一年で卒業できるんだな、そんなことも思った。


でも その前に、あいつを・・・・・・。

俺の思考がそれたためか、気がつくと暗闇は消えていた。あとに残ったのは、ノートに書き付けられた俺の汚い字だけだった。


『今日。久しぶりに部屋を出て、公園へ行った。レイとの約束のため。』

『3/9』

俺は その文字を目に焼きつけるように、何度も眺めた。


記録。


レイの言葉通り、それは俺の行動したという証となって そこに存在した。

努力が可視化されたんだ。



274 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/11(金) 04:50:20.29 ID:cSmjjL1b.net
俺の努力の証・・・・・・。

それを見ていると、嬉しさがこみ上げた。

身体に再び熱が戻り、ほんの少しではあるが、自信のようなものが湧いた気がした。

ノートに書いた文字は、あやふやな言葉よりもずっと確かに俺の努力を証明していた。

俺は なにもしなかったわけじゃない。

確かに行動をしたんだって、自分でも そう思えるような気がした。

・・・・・・俺がいまでも記録魔なのは、きっとこのときの快感を覚えているからだろう。



275 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/11(金) 05:01:22.93 ID:cSmjjL1b.net
この勢いで、Aを観察して、そしていよいよ・・・・・・!

再び浮かれて そう思った時だった。

俺は ある問題に気づいた。


それは・・・・・・時間だ。


ようやく明るくなってきた窓を見て、俺はうなり声を上げた。

朝寝て、夕方起きる。

この生活リズムは、果たして計画実行に向いているのか・・・・・・?



276 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/11(金) 05:12:08.50 ID:cSmjjL1b.net
いや、白昼堂々殺すわけにもいかないんだから、これでいいのか?

いやいや、でも それは手段にもよるだろ。

ナイフで刺すのと、毒殺じゃ、全然違うわけだし。

でも、あいつの行動パターンによっては、その手段も限られて・・・・・・

ってか、夜なら見つからないってわけでもないし。

あ、というより、監視カメラの位置とか・・・・・・



277 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/11(金) 05:19:38.44 ID:cSmjjL1b.net
「そんなことは考えても無駄」

しかし次の夜、そう相談した俺を、レイはあろう事か一蹴した。

「何でだよ、俺、ずっと考えて眠れなかったのに」「じゃあ、どうしろっていうんだよ」

「とりあえず、行動すること」「それが一番大切」「頭で考えても、現実は何一つ変わらない」「何をすべきかすら、見失う」


「でも・・・・・・」


「行動を起こして」「あなたにしかできないこと」

まだ時間も早いというのに、早々にレイはいなくなってしまった。



>>次のページへ続く
 
 


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