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数年前、自殺しようとしてた俺が未だに生きてる話
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174 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/08(火) 03:58:01.80 ID:diu5J1c8.net
それはなぜだったんだろう。

思い出そうとしても、うまく思い出すことができない。

でもきっと それは思い出したくないからって訳じゃない。

ならなぜか。


きっと、あのときの俺には、何かをするのに確固たる理由や感情なんてなかった。

俺は潮に流されるままの空っぽの小舟だった。何の主体性もなく、ぐるぐる同じ場所を回っているだけの。

レイの言葉は、そんな閉じた潮流に突然現れた、新しい流れだった。

そして、あのときの俺はタイミングよく その流れに入ってしまった。以前の俺は入れなかったその流れに。

きっと、それだけなんだ。俺の意思なんて、舟の流れる先を決められるほど確かなものじゃなかったんだ。



175 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/08(火) 04:01:29.50 ID:diu5J1c8.net
「私がいるわ」

静かに、レイが言った。

「私がいる」

「うん」「ありがとう」

俺はなぜか礼を言った。画面の向こうの名前も知らない誰かが、共犯者になった瞬間だった。



176 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/08(火) 04:10:30.06 ID:diu5J1c8.net
共犯者となったレイと、また明日の約束を交わすと、俺はベッドに潜り込んだ。

疲れているはずなのに、頭は覚醒しきっていて、すぐには眠れそうもなかった。


あいつらを、殺す。


それが怖いことだという感覚はもちろんあった。

けど、同時に背中がぞくぞくして、それは認めたくないけど、「快感」に似ていた。

しばらくは眠ろうと努力していたが、結局 俺はもぞもぞと起き出して、何ヶ月もしてなかったオナニーをした。一回きりじゃおさまらなくて、数回はしたと思う。

それから、やっと疲れ切って眠りに落ちた。



177 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/08(火) 11:29:12.52 ID:diu5J1c8.net
次の夜、俺は青も変わらず廊下に置いてあった飯を食いながら、パソコンの前でレイを待っていた。

今夜は おかかのおむすびに、じゃがいもが溶けかけた肉じゃがだった。

冷えても うまいもんを置いとけよ、気が利かないな。

俺は感謝もせずに それをほおばった。



178 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/08(火) 11:32:46.74 ID:diu5J1c8.net
青も変わらず× 相も変わらず○


けど、あのときの俺に、

「その飯、誰がどんな気持ちで毎日作ってんのかわかってんのか?」って聞いたとしたら、きっと「わかってるに決まってる」って答えると思う。


何だろう。そりゃ、他人の気持ちがわからないわけじゃないから、聞かれれば そう答えられるんだ。

けど、それは本当に「わかってる」わけじゃなかったと思う。

それは質問されて初めて気づいたことだから。

それまでは、改まって そんなことを考えたりもしれないんだから。


自分のことに夢中で、他人(親だけど)のことなんてどうだっていい。

俺はまだ〈頭の中の世界〉の住人だった。



179 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/08(火) 11:43:20.66 ID:diu5J1c8.net
その俺が、いま、ほんの少しだけ その世界から顔を出そうとしていた。


あいつらを殺す、という計画。


その方法がどういうものであれ、計画は俺の目を外に向けさせた。

自分のことだけを考えていた俺は、自分以外のことを考え始めた。


どうやったら、あいつらを殺せるか。


俺が苦しんだ以上に、あいつらも苦しめなきゃいけない。

だって、それが正しいことだ。それが正義ってやつなんだ。

あれこれ計画を想像するのは楽しかった。

何か新しいことを始めるとき、一番楽しいのは その計画だ。

ああでもない、こうでもない、あいつらの苦しむ顔を思い浮かべて、俺は にやにやと笑った。



180 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/08(火) 11:54:16.49 ID:diu5J1c8.net
「推理小説のトリックを使うってのは?」

レイが来る前に、俺はチャットに そう打ち込んだ。

「やるなら、完全犯罪だろ。そうしないと、捕まるし」

「証拠とかを残さないでさ」

「理想は、仲違いさせて、あいつらが殺し合う的な?」

・・・・・・いまとなっては、ちょっと解説不能な考えだから、ここは当時の台詞のまま、羅列するにとどめておく。



181 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/08(火) 11:56:48.87 ID:diu5J1c8.net
ほかにも、「影武者をつくる」

だとか、「学校内でのトラブルは消される」

とかいう文字が散見されるが、同じく、まあ、いまとなってはよくわからん。。。



182 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/08(火) 12:09:09.10 ID:diu5J1c8.net
「目標は誰なのか」

「まずは、そこから」

不意に画面が動き、レイの言葉が並んだ。

「あいつら、あなたは そうひとくくりにするけれど」

「その全員に手を下すつもりなの?」

「その分、リスクは高まるけれど」


「たしかに・・・・・・」

俺が馬鹿なだけかもしれないが、レイの指摘はいつも的確だった。



183 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/08(火) 12:18:17.81 ID:diu5J1c8.net
「それなら、あいつだ」

すぐさま俺が名前を挙げたのは、主犯格のAだった。


ちなみに、ここではAとするが、実際のログでは俺は やつのフルネームを書き込んでいる。

もし、チャットが誰かに見られたら・・・・・・なんて思いもしなかった俺の愚かな行為だった。



184 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/08(火) 12:26:12.65 ID:diu5J1c8.net
A。

名前を思い出すだけで、いまでも あいつのにやけ顔が頭に浮かぶ。

別のクラスではあったが、Aは同じ小学校出身で、それまでチビだったくせに、中学に入ってから驚くほど身長が伸びたやつだった。

よく知らない俺でも、140センチが170くらいになったくらいの印象だったから、本人はそれで一気に自信をつけたのかもしれない。

身長って、少し高いだけで女子にもモテるし。


今考えれば、だからAは背の低い俺をいじめたのかもしれない。

それまで感じてたコンプレックスを、俺にぶつけたんだろう。

けど、どんな理由があったとしても、いじめが許されるわけじゃない。



185 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/08(火) 12:28:55.41 ID:diu5J1c8.net
もちろん、悪いのはAだけじゃない。その取り巻きも同罪だ。

だけど、Aに比べれば そいつらはまだましと言えた。

「A、ね」

レイは言った。

このときばかりは、その冷たい言い方が気に入った。レイがAを見下してるように聞こえたからだ。

俺は千人の味方をつけたような気分だった。



186 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/08(火) 12:34:18.08 ID:diu5J1c8.net
「彼の家を知っている?」

レイは聞いた。

「なんで?」

間抜けにも俺は聞き返した。

俺は〈頭の中の世界〉から、やっと鼻の先を出してるに過ぎなかった。

つまり、殺す殺すとわめいていても、トリックだ何だ考えていても、現実の実行可能性なんて、これっぽっちも考えてなかったんだろう。

いまじゃ笑えるような、そうじゃないような。



>>次のページへ続く
 
カテゴリー:人生・生活  |  タグ:すっきりした話, 修羅場・人間関係, ためになる話, これはすごい, ためになる話, ちょっといい話,
 


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