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数年前、自殺しようとしてた俺が未だに生きてる話
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187 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/08(火) 12:37:58.67 ID:diu5J1c8.net
「彼の家を知っている?」

レイは二度、同じ質問を繰り返すことになった。

「○○地区だと思ったけど・・・・・・」

「知らないのね」

「どこ、ってのは・・・・・・」

「誰かに聞けば知ってるかもしれないけど」



188 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/08(火) 12:46:27.23 ID:diu5J1c8.net
「誰かって誰?」

「あなたに それを聞けるような人がいるの?」

レイの放った氷が胸に刺さった。

・・・・・・レイの職業は魔法使いなのかもしれない。


「いないけど・・・・・・」

うなだれた俺に、

「じゃ、調べる必要があるわね」

レイは あっさり言ってのけた。



189 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/08(火) 12:55:54.23 ID:diu5J1c8.net
「でも、調べるってどうやって・・・・・・」


「やりようは いくらでもある」

「本人を尾行する」

「その家を探してるふりをして、近所の人に尋ねる」

「SNSから情報を拾う」

「世帯主名から検索する」

「家が自営業をしていれば もっと単純」

まじか。


ほかにも つらつらと並べるレイに、俺は驚いた。

個人情報って、意外とパソコンがない昔の方が堅かったりして。



190 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/08(火) 13:05:52.79 ID:diu5J1c8.net
「○○県○○市○○区○○○番地」

そのとき、ぱっと見覚えのある住所が並んだ。

とはいっても、途中までだ。うちの住所じゃない。

「これって・・・・・・」

俺はおずおずと聞いた。


「お望みの住所」

「彼の祖父は県会議員をしてるのね」

「自宅の隣が事務所になってたわ」


Aの祖父が県会議議員をやってたなんて、知らなかった。あいつ、いいとこの坊ちゃんだったのか。取り巻きも、それを知って金魚の糞をしてるんだろうか。

衝撃は徐々に苛立ちに変わった。



191 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/09(水) 03:24:31.47 ID:e4i9ERjX.net
「じゃあ、無理だろ」

少しでも気に入らないと、すぐに放り出したくなるところからも、どんなに俺の意思ってやつが あやふやか、わかるだろう。

「県会議員の子供なんて殺したら、俺が社会的に抹殺されるじゃん」

完全犯罪を狙ってる段階で、この発言も解せない。

「子供ではなく、孫、ね」

レイは冷静に間違いを正した。

「それに、怖いならやめる?」



192 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/09(水) 03:29:25.44 ID:e4i9ERjX.net
「別にやめるとは言ってないけどさ」

俺は やっぱり日和見だった。きっと、意思なんてない俺は、何でも強い方に流される。この場合は、つまりレイの意思に。


「じゃ、続けるわ」

レイがそう言ってくれたことに、俺は ほっとした。もし、「続ける?」と疑問形で聞かれたら、俺はどうしたらいいのかわからなかったから。



193 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/09(水) 03:40:13.11 ID:e4i9ERjX.net
「家の場所を、ストリートビューで確認して」

「わかった」

俺は言われたとおりにした。ネット時代ってのは便利だ。部屋から一歩も出ないで、やつの家が見れるんだから。


「この、白い家?」

都会風の、小ぎれいな一軒家。

それを睨んだ俺に、レイは首を振った。

「違う、その右隣」

「これ?」

俺は画像を見直した。

そこには ほかとさして変わらないような、田舎の家が鎮座していた。

これが県会議員の家?



194 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/09(水) 03:47:31.68 ID:e4i9ERjX.net
「一口に県会議員といっても、いろいろある」

さしたる興味もないような口調で、レイは言った。

「中には本当のお金持ちもいるかもしれない」

「それとは逆に、負債を抱えた人も」

「破綻するまで誰も気づかないなんて、よくある話」

「そうなんだ・・・・・・」

俺は馬鹿みたいにそう言った。

それから、願わくば あいつの家が破綻して一家離散してしまえばいい、なんて思った。



195 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/09(水) 03:52:49.34 ID:e4i9ERjX.net
「もし、俺がハッカーとかだったらさ」

俺はここでも馬鹿っぷりを発揮した。

「あいつのじいさんのコンピューターとかに入り込んで、ちゃちゃっと不正の記録なんか見つけて、あいつらを社会的に葬ってやれるのに」

・・・・・・何言ってんだかわからんが、馬鹿だということだけはわかるな。

「住所一つ、調べられなかった人が?」

レイも間違いなく、いまの俺と同じ感想を抱いたらしい。



196 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/09(水) 04:01:44.52 ID:e4i9ERjX.net
「それから」

レイはさらに冷たく言った。

「目標をはっきりさせて」

「あなたは何をしようとしているの?」


「何を・・・・・・って?」


「あなたの目標は、なに?」

「Aではなく、Aの祖父を破綻させることなの?」

「目標を変えることは構わない」

「けれど、変えたなら教えてくれないと困る」


「えっと・・・・・・・」

ちょっと言ってみただけじゃん、俺は思った。少しの冗談も許されないのかよ、って。レイが誰のために聞いてくれてるのか、考えもせず。



197 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/09(水) 04:08:54.71 ID:e4i9ERjX.net
「Aだよ」「Aを殺す」

ゲーム上で、今日はどのモンスターを狩りにいくのか、そんな調子で俺は言った。

「だけど、そうやって不幸が降りかかるみたいのもいいかなって」

「そう」

言葉少なにレイは答えた。

「標的はA。変更はないのね」

「もちろん」

意味はないけど、力強く俺は答えた。そうしたほうが、レイに良く思ってもらえると思ったからだ。

けど、この虚勢は一気に崩れることになる。



>>次のページへ続く
 
カテゴリー:人生・生活  |  タグ:すっきりした話, 修羅場・人間関係, ためになる話, これはすごい, ためになる話, ちょっといい話,
 


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