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三十路の喪女に彼氏ができたときのお話
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37 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 19:16:50.10 ID:LZSY7jKs.net
M君の風邪は かなりしつこかったらしい。まずはじめに、お礼が遅くなったことを謝られた。
「参ったよ、年内で治ると思ってたのに。もう歳なのかなあ」
「栄養失調なんじゃないのー?」
冗談めかして言ったけど、M君、わりとやつれてた。
「俺、体調不良が顔に出るんだよね。でもあの差し入れは本当に助かった、実は食料が底をついてたので」
「ほかに誰か、助けてくれる人いなかったの?」
「うん、誰もいなかったねえ…」
「えー?イケメンのくせにー?」
「イケメン全員にそういう人徳が備わってると思うなよな」
「でもほら、そんな時に一番頼りになる人がいるじゃない」
「ん?誰?」
「家族だよ。電話すればよかったのに」
「あー。いまちょっと疎遠になっててね」
「あ、ごめん、そうなんだ」
38 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 19:17:39.17 ID:LZSY7jKs.net
そんなあいさつ代わりの会話をさっくり交わし、話題はまた音楽方面へ。
話してるうちに、昔CMで聞いてメロディーしか覚えていなかった曲をなんとM君がCD持っていることが判明して、私、大はしゃぎ。
「もうずっと気になってたんだよー!お願いです、CDを貸してください神様!!」
「…これでイヤだと言ったら鬼だよねw」
「うおおお、帰りにアパートまで取りに行ってもいい!?」
「えーと……後日じゃだめかな?」
「はああああン?なんでよ???」
「借りる分際で態度でけえなwいぶんと聞いてないから、きっとすぐには出てこないよ。一体どこに埋もれているやら…」
「そんなの、一緒に発掘するよ!」
「いや、勘弁してよ」
M君の風邪は かなりしつこかったらしい。まずはじめに、お礼が遅くなったことを謝られた。
「参ったよ、年内で治ると思ってたのに。もう歳なのかなあ」
「栄養失調なんじゃないのー?」
冗談めかして言ったけど、M君、わりとやつれてた。
「俺、体調不良が顔に出るんだよね。でもあの差し入れは本当に助かった、実は食料が底をついてたので」
「ほかに誰か、助けてくれる人いなかったの?」
「うん、誰もいなかったねえ…」
「えー?イケメンのくせにー?」
「イケメン全員にそういう人徳が備わってると思うなよな」
「でもほら、そんな時に一番頼りになる人がいるじゃない」
「ん?誰?」
「家族だよ。電話すればよかったのに」
「あー。いまちょっと疎遠になっててね」
「あ、ごめん、そうなんだ」
38 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 19:17:39.17 ID:LZSY7jKs.net
そんなあいさつ代わりの会話をさっくり交わし、話題はまた音楽方面へ。
話してるうちに、昔CMで聞いてメロディーしか覚えていなかった曲をなんとM君がCD持っていることが判明して、私、大はしゃぎ。
「もうずっと気になってたんだよー!お願いです、CDを貸してください神様!!」
「…これでイヤだと言ったら鬼だよねw」
「うおおお、帰りにアパートまで取りに行ってもいい!?」
「えーと……後日じゃだめかな?」
「はああああン?なんでよ???」
「借りる分際で態度でけえなwいぶんと聞いてないから、きっとすぐには出てこないよ。一体どこに埋もれているやら…」
「そんなの、一緒に発掘するよ!」
「いや、勘弁してよ」
39 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 19:18:06.84 ID:LZSY7jKs.net
ピシャリとM君に言われて、はっとした。私、はしゃぎすぎて今かなり図々しいこと言った。
そうだよな…。私はM君の彼女でもなければ、友達ですらない。
ただちょっと差し入れをして、その借りをM君はこうして返してくれた。
CDを借りたら、返すときにまた私と会うことになる。
ましてや部屋に押しかけて、一緒に探すとか。
もう彼は、私に付き合う義理はないんだ。ちょっと話が合うくらいで、図に乗っちゃいけない。
「………ごめん!なんか私、馴れ馴れしいねw CDは、発掘終了後に気が向いたらでいいやw」
「え?」
M君はきょとんとしてからの態度急変の理由をすぐに察したようだった。
40 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 19:18:33.45 ID:LZSY7jKs.net
「そっか、ごめん、言い方悪かった。そういう意味じゃない。一緒に発掘してくれる、その気持ちはありがたいんだけどね…」
「……?なに?」
「………部屋が、とても汚いのですよ」
何故かゲンドウポーズで深刻な表情をするM君。
「そう?こないだお邪魔したときは、綺麗だったじゃない」
「あれは人に見せるエリアだから…その奥の生活エリアが、ちょっと」
「エリアわけされてるんだwでも私も人のこと言えないからなー」
「いや…いま喪子が想像した汚さとはレベルが違う。その程度の覚悟で入ったら、きっと後悔するよ」
「なんだそれ、どんなレベルだw」
「えーと、TSUTAYAの倉庫にホームレスが住み着いたレベル?」
「うわあ、なんかすごい具体的に映像が浮かぶwww」
41 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 19:18:58.78 ID:LZSY7jKs.net
「俺はもう、年単位で自分の部屋の床を見た覚えがない」
「ちゃんと掃除しろw」
「そこで掃除って言うのがね…必要なのは産廃業者だよ」
「威張るなwww」
「なんなら、自分の目で確かめてみる?」
「え………いいの?行っても?」
「いいの?って、俺が聞きたいよ……ほんと、マジで汚いぞ?」
49 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 19:26:05.50 ID:LZSY7jKs.net
M君の部屋は、汚いというのとはちょっと違った。
想像してたような、ゴミとか洗濯物が散乱してるような不潔さはなかった。一応、床も部分的には見えてたしね。
ただ、部屋のわりには大きすぎる本棚が一つ。
そこから溢れた本とCDとDVDが、床にうず高く積まれていた。
彼は、読書と映画と音楽をこよなく愛する、かたづけられない男だった。なるほど…TSUTAYAの倉庫ね。
私は映画は全然詳しくないけど、本は好き。
だからM君の蔵書量には驚いた。
「そっか…高校生のころも読書家だったもんね」
「忙しくて、いまは全然だけどね」
「あーでもこれで、えっちいのとか発見しちゃったら気まずいー」
「そこはひとつ、大人な対応で…」
「……………えええっ!M君、何これ!?」
見つけたのは、えっちいのではなくて、とある画家の画集だった。
私がご予算的にマゴマゴしているうちに販売終了してしまった限定版が、無造作に床に積まれていた。
50 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 19:26:38.18 ID:LZSY7jKs.net
「うわー!これ高かったでしょ?」
「あれ、喪子もその画家、好きなの?」
「うん!しかもフルセットだ〜。すげ〜」
「まーそういうのに散財できるのが、独身の醍醐味ですよ」
彼はその他にも、高額そうな画集から中古の文庫本までを、ガンガン床に積んでいた。
DVDも、私が全然知らない映画のボックスがいくつも並んでいた。
そして目的のCDはというと、一目で捜索を諦めるのにじゅうぶんな状態だった。
M君への貧乏疑惑は消えた。
これだけ趣味のものを溜め込んでいるとなると、生活苦ということはないだろう。
アパートがボロいのは、趣味にお金を回すためなのかもしれない。
51 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 19:27:04.38 ID:LZSY7jKs.net
堆積物を夢中で眺め倒している私に、M君が言った。
「なんか、久しぶりに自分以外の人が部屋にいるの見てると部屋の惨状が客観視できて、自分でも引くわ…」
「そこまで卑下することないよ、帰ったら靴下履き替えるけどw でもこの部屋、なんだかすごい落ち着くんだよねー」
「さては、何もない広い空間が苦手なタチだな?」
「ああ、それだw」
まるで図書館のようなその部屋は、乱雑ではあったけど それなりの秩序があって、妙なバランスで落ち着いていた。
なんだかそこに、M君の内面が現れているような気がした。
「じゃあ、CDはまた今度ってことで、本日は ご満足いただけましたかね?」
「うん、あのねM君、お願いがあります」
ちょっと思いきってみた。
52 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 19:27:29.34 ID:LZSY7jKs.net
「ん?なに?」
「私、またこの部屋にお邪魔しちゃ駄目かな?」
「駄目だよ」
「えっ、即答かい!」
「うん、ごめんね」
「じゃあ、私と友達になるとかは?」
「…友達」
「うん、友達。その先の下心、全くない」
「友達……は、どうかなあ」
M君は、飲み会の最初のときに見せたみたいな苦笑いをした。
53 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 19:27:58.09 ID:LZSY7jKs.net
「俺、友達はもう増やさないことにしてるからなあ」
「え、なにそれ。じゃあ彼女なら?」
「さっき自分で下心ないって言ったじゃないかw」
「うん、だって本当にM君の彼女になりたいとかじゃなくて ただ単に仲良くしたいと思ってるんだよ。M君、M君と私は、かなり気が合うよ」
「お。さすがですね、その押しの強さw」
この「さすが」は、私の職業柄をさしての言葉です。
押しが強いってより、言いたいことは言っちゃわないと気が済まないだけなんだけどね。
「だけど、今は仕事じゃないからね… 断られても押しかけたりしないから、大丈夫w」
こういうときの立ち直りの早さは、喪女歴の長さが物を言います。
さーて、あのCM曲のタイトルがわかっただけでもヨシとしよう、なんて思いながら、なるべく上手にさっぱりと立ち去る準備をしていたら。
>>次のページへ続く
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