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俺を拾った女の話を書く
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124 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/21(日) 02:07:55.32 ID:AvmYbN9t.net
私の元彼は あなたのバンドのDです。

Dに別れを告げられた私は、最後の見納めにライブを見に行きました。

Dへの未練というよりも、バンドへの未練の方が正しいかもしれません。

長い間関わってきたバンドです。愛着もうまれます。

新加入のドラムですって あなたが紹介されていたのも当然見ていました。

その時は、あー、新しい人が入ったんだなぁ、というくらいの感想でした。


125 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/21(日) 02:08:42.93 ID:AvmYbN9t.net
けれども、あなたに会ったのは本当に偶然でした。

私のうちの近くにひとだかりができてて、何だろうと覗いてみると あなたが倒れてました。


126 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/21(日) 02:09:29.97 ID:AvmYbN9t.net
Dのバンドのドラム君だ、どうしよう、と思ってDに電話しようと思ったけど、Dが他の女といるかもしれないと思うと できませんでした。

誰かが警察を呼ぼうとしているのを聞いて、とっさに知り合いのふりをして あなたを部屋に運び込みました。これはあなたにも言いましたね。


127 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/21(日) 02:10:11.69 ID:AvmYbN9t.net
あなたを部屋に連れ込んで、さあ、どうしようと考えたとき、私の頭にまたDが浮かんできました。

そして一緒にいるかもしれない女の事も。


128 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/21(日) 02:10:55.70 ID:AvmYbN9t.net
ここからは あなたにとってとても辛いことを書きます。

そして私にとっても。

あの日あなたが言った「悪意」の話、私には すごく分かります。


129 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/21(日) 02:11:33.24 ID:AvmYbN9t.net
私はあなたを利用してDに復讐をしようと思い付きました。



130 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/21(日) 02:12:08.31 ID:AvmYbN9t.net
あなたが私を抱けば あなたを利用できると考えました。


131 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/21(日) 02:13:38.60 ID:AvmYbN9t.net
あなたを連れ込んこんだ日、目を覚ましたあなたが私を抱くかもしれない。

それはそれでいいと思っていました。

けれども あなたは目を覚ましませんでした。


あなたが目を覚ました時、鍵を渡したのはあなたを逃さない為でした。仕事を終えてから あなたを口説こうと思ったからです。

だから、あえて忘れた振りをして店の名前も教えずにさっさと出て行ったのです。

あなたが鍵を持って帰ってしまっても私は引越すつもりだったので それはそれでも構わないと思ってました。

仕事も辞めるつもりでした。


132 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/21(日) 02:14:11.48 ID:AvmYbN9t.net
家に帰ると、あなたは待っていました。

正直、下心を感じていました。男なんて、隙を見せればすぐ下心を見せる、そう思ってました。


133 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/21(日) 02:14:56.59 ID:AvmYbN9t.net
居酒屋に行って、男に振られた女が酔い潰れれば、あなたはきっと私を口説く、そう信じていたのにあなたは この時も口説きませんでした。

男なんて ばれなければ適当な事を言ってやりたいばっかりだと思ってたし、事実、Dはそういう男でした。

私に魅力が無いのか、正直自信が無くなりました。

どんなに隙を見せてもあなたは乗ってこなかったから。


134 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/21(日) 02:15:29.94 ID:AvmYbN9t.net
私は あなたと関係を持って、Dの前で堂々と私の新しい彼氏だと言ってやろうか、それともあなたに強引に迫られたと言おうか、寝た振りをしながら どんな形がDにとってショックか、そんなことばかり考えてました。


135 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/21(日) 02:16:24.63 ID:AvmYbN9t.net
けれども あなたは私がわざと寝返りをうって、下着を見せて誘っても、優しく布団をかけてなおしてくれるだけでした。

脈なしか、しょうがない諦めようって、思ったら本当に眠ってしまいました。


136 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/21(日) 02:17:13.89 ID:AvmYbN9t.net
朝、目が覚めるとあなたは結局、一晩起きていたみたいでした。

そして私の真似をして「黒酢ジュース飲む?」って笑顔を見せた時、急に愛おしく感じてしまいました。

もう、復讐なんてどうでもいい、私はあなたが好き。瞬間的にそう思いました。

その後の事はあなたも覚えてますよね?


137 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/21(日) 02:18:08.57 ID:AvmYbN9t.net
あなたとの時間は本当に楽しかった。

料理が私より全然上手なのにびっくりしたし、本当に美味しくできていました。

何より私の為にいろいろ頑張ってくれるあなたの優しさに、心の底から癒やされました。


138 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/21(日) 02:18:54.67 ID:AvmYbN9t.net
正直、復讐の事なんて忘れていました。

引越しも退職もやめて あなたとずっと過ごしたいと考えていたし、そうしようと思っていました。


139 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/21(日) 02:20:31.29 ID:AvmYbN9t.net
けれど途中で気付いてしまいました。

辻褄が合わない、と。


140 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/21(日) 02:21:09.71 ID:AvmYbN9t.net
あなたがDとバンドをしている限り、私はどこかでこのことがバレてしまうと考えました。

私たちの出会いが、初めましてじゃなかったよねと。


141 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/21(日) 02:21:52.38 ID:AvmYbN9t.net
何故嘘をついたのか。そう聞かれた時

私はどう取り繕うか言い訳ばかり考えていました。あなたとの時間を失いたくなかったからです。

自分のことばかり考えていました。でもどう考えても うまい言い訳が思い付きませんでした。




142 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/21(日) 02:22:41.13 ID:AvmYbN9t.net
そして、私があなたと付き合っていることがDに知れた時、あなたとDの関係が崩れること、そしてあなたの居場所が無くなることを思ったら急に自分のした事が恐くなりました。


143 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/21(日) 02:23:16.66 ID:AvmYbN9t.net
あなたは「ほんの少しの悪意が思いもよらない結果をもたらす事がある。」って言ってたけど、私に向けて言われているようで、グサリと胸に刺さりました。

でも、あなたから その話を聞いた時はもう遅かったのです。


144 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/21(日) 02:24:06.51 ID:AvmYbN9t.net
あなたは何も聞かなかった。

そして気付いていない振りをしてくれた。

あなたの話を聞いたあと、せめて その優しさだけは裏切ってはいけない、そう思って手紙を書きました。

バンド、頑張ってください。密かに応援をしています。私の事は忘れてください。

本当にごめんなさい。そして短かったけど楽しい時間をありがとうございました。

さようなら。


みどり


145 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/21(日) 02:25:47.18 ID:AvmYbN9t.net
もし仮に見ているひとがいたらすまない。ちょっと仮眠をする。


146 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/21(日) 02:26:22.59 ID:iw6n4JWJ.net
待ってるぞ


154 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/21(日) 04:41:49.76 ID:Rx2uoqhO.net
俺は手紙をしまい、みどりと よく行った居酒屋でひとり酒を飲みに行った。誰にも邪魔されず、考えを整理したかったからだ。

復讐が為に始まった恋が、復讐が故に終わりを迎える、とみどりは考えていた。

何かに似ている。思い出せない。何だろう。そんな思いが逡巡し、ふとみどりの部屋を思い浮かべた。


156 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/21(日) 04:42:56.89 ID:Rx2uoqhO.net
俺は思い出した。

落ちると分かっいて岩を山頂まで運ばなければならない男の話。

みどりと出会った日に読んだ「シーシュポスの神話」それだった。


157 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/21(日) 04:43:30.10 ID:Rx2uoqhO.net
神を欺いた罪に神々が与えた罰、山頂まで岩を運んでも、岩は山頂に運ばれた途端に麓まで落ちる様に細工されている。

何度も麓まで降りては永延と岩を運ばないといけない、確かそんな話だった。


158 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/21(日) 04:44:08.93 ID:Rx2uoqhO.net
みどりは終わると分かっていた恋を育てていた。まるでシーシュポスのように。転げ落ちると分かりながら、素知らぬ顔で。

俺はDに電話をした。バンドを辞める。それだけ伝えると電話を切った。

Dは何かを言っていたが、聞かずに切った。面倒なので携帯の電源ごと切ってやった。

俺は それどころではないのだ。


160 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/21(日) 04:44:55.64 ID:Rx2uoqhO.net
みどりが俺を利用しようとしたとして、それの何がいけないのだろう。

それで出会えたではないか。

Dとの関係は切った。バンドもやめた。

責めることも責められることも、気にすることも気に病むこともなにもない。


161 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/21(日) 04:45:50.79 ID:Rx2uoqhO.net
繰り返す無意味な労働のなかに人間の不条理を暴いた。と、カミュは言う。

それがどうした。俺はカミュに言い返した。

神が同じ結果を用意できるとするならば、人は次は違う結果になるかも知れないと想像する事が出来る。

同じ結果になったとしても、いつか訪れる別の結果に必要なことと思うことができれば、無意味なことなどなにもない。



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カテゴリー:人生・生活  |  タグ:泣ける話, 修羅場・人間関係,
 


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