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風俗嬢に本気で恋をして悩んでいます
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94: ↓1◆Gsf67KLP6U:16/05/09(月) 20:55:06 ID:TBH
1「ちょ、ちょっと待って」

入口の前で声をかける。

1「本当に入るの?」

やっぱり今の関係のままここに入るのは ちょっと気が引ける。だが、

藍「もう入口まで来ちゃったよ」

その言葉を最後まで聞く前に、半ば強引に腕を引っ張られ、中に連れていかれてしまった。



95: ↓1◆Gsf67KLP6U:16/05/09(月) 20:55:59 ID:TBH
中に入ると部屋一覧のパネルのようなものがあった。

こういうところに来るのは初めてなので勝手が分からない。

藍「うーん、部屋はここで!」

そう言うと、彼女はパネル上の部屋写真の下についているボタンを押してフロントへ向かった。

なるほど。どうやらそういうシステムらしい。

彼女は、こういうところに来るのは慣れているのだろうか。

なんともいえない感情に襲われた。



96: ↓1◆Gsf67KLP6U:16/05/09(月) 20:56:38 ID:TBH
一緒にフロントまで行くと、前金制であることがわかった。

支払をしようとすると、彼女に止められた。


藍「ここは私が払うからいいの!」


そういってフロントの係にお金を払うと、彼女は鍵を持って、先に行ってしまった。

すぐに追いかけた。

1「俺が払うよ」

藍「大丈夫!払わないで」

若干食い気味に支払を拒否された。

何度か同様のやり取りをしたが、どうしてもお金を受け取る気配がない。

これ以上言い合っても仕方がないので、その場は諦めることにした。



97: ↓1◆Gsf67KLP6U:16/05/09(月) 20:57:58 ID:TBH
部屋に入り、荷物を置くと、彼女はベッドに飛び込んだ。

藍「あー、疲れたー」


結局来てしまった…。自分の意志の弱さに少しガッカリする。

1「本当に来て良かったの?」

もう一度確認する。

ちょっとしつこいかもしれないが、気持ちの整理がつかないので聞かずにはいられなかった。

藍「うん、もっと前から来たかった」





98: ↓1◆Gsf67KLP6U:16/05/09(月) 21:06:58 ID:TBH
藍「ごめんね…」

何故か彼女は謝っていた。

その『ごめんね』がどういった意味の『ごめんね』なのか自分の中で咀嚼しきれなかった。

もしかしたら彼女しか知らない いろんな意味が含まれているのかもしれない。

『何で謝るの?』とは聞けなかった。



99: ↓1◆Gsf67KLP6U:16/05/09(月) 21:09:35 ID:TBH
ずっと立っているのも変な感じなので、ベッドに向かい、うつ伏せになっている彼女の横に座った。

お互い無言のまま時間が過ぎた。

実際には1分にも満たない時間だろうが、とても長く感じたのを覚えている。



100: ↓1◆Gsf67KLP6U:16/05/09(月) 21:41:32 ID:TBH
やがて彼女は身体を起こし、隣に座ってきた。

彼女の方に目をやったが、彼女はまっすぐ前を見ていた。

1「俺たち、まだ付き合ってないよ」

敢えて『まだ』と付け加えて言ってみる。



101: ↓1◆Gsf67KLP6U:16/05/09(月) 21:42:53 ID:TBH
彼女はこちらを向き、笑顔のような、困ったような顔をした。

うまく表現できないが、何か悲しげな表情にも見えた。

藍「うん、知ってる」

1「だったらどうして…」

そう言いかけた瞬間、唇をふさがれた。



102: ↓1◆Gsf67KLP6U:16/05/09(月) 21:45:42 ID:TBH
人の言葉をキスで遮るとか、ドラマだけかと思っていた。

大人のキスだ。長い。

しばらくして、唇を離すと彼女は言った。

藍「いいの」

その日、初めて彼女と事に及んだ。



103: ↓1◆Gsf67KLP6U:16/05/09(月) 21:47:39 ID:TBH
事が終わると、彼女が聞いてきた。

藍「私のこと、好き?」

このタイミングで聞くのか…? 少々複雑だが、気持ちはハッキリしている。

1「今更かもしれないけど、好きだよ」

藍「知ってる」

彼女は笑いながら言った。





104: ↓1◆Gsf67KLP6U:16/05/09(月) 21:49:11 ID:TBH
藍「でも、これ以上好きになっちゃダメだよ」

藍「私、あのお店で働いているんだよ、イヤでしょ?」


『あのお店』とは、彼女が働いている風俗店のことだ。


1「イヤだよ。でも、それが『好きにならない』っていう理由にはならない」

藍「私もね、1のこと好きだよ。でもお互いこれ以上は好きになっちゃダメ」



105: ↓1◆Gsf67KLP6U:16/05/09(月) 21:50:43 ID:TBH
藍「お店もしばらく辞めるつもりはない」

藍「それに…」

藍「私、自分の店は九州に出すつもりなの」

藍「いずれ1とも会えなくなる…」

藍「だから、ダメ…」


彼女は泣くわけでもなく、凛とした表情で壁の方を見ていた。

その視線はどこか遠くを見ているようだった。



106: ↓1◆Gsf67KLP6U:16/05/09(月) 21:58:00 ID:TBH
その話を聞いて、自分が出来ることがほとんど何も無いことに気づいた。

自分は彼女のことが、ただ好きなだけだ。

でも彼女と付き合うには、それだけではダメだ。

あらゆる覚悟や責任が要る。

1「九州か…遠いな…」

そんな言葉しか出てこない自分に嫌気が差す。

そんな半端な気持ちだったのか、と。



107: ↓1◆Gsf67KLP6U:16/05/09(月) 22:00:07 ID:TBH
自分の中の何かと闘っていると、フロントからの電話が鳴った。

退出しなければならない時間だ。

まだまだ話し足りない気持ちだったが、急いで服を着て部屋を後にした。



108: ↓1◆Gsf67KLP6U:16/05/09(月) 22:00:45 ID:TBH
外に出ると彼女は、何事もなかったかのように話し始めた。

藍「上野動物園楽しかったねー」

1「そうだね。サル山も見られたし!」

暗い気持ちを隠すためか忘れるためか、出来るだけ明るく返事をした。



109: ↓1◆Gsf67KLP6U:16/05/09(月) 22:02:14 ID:TBH
終電も近くなり、別れの時間がやってきた。

これが今生の別れになるのかな…。

そんなことを思いながら駅のホームまで彼女を見送りにいった。

しかし、電車が来る直前に彼女は言った。

藍「あんなこと言ったけど、1とはまた会いたい」




>>次のページへ続く
 
カテゴリー:男女・恋愛  |  タグ:胸キュン,
 


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