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僕とオタと姫様の物語
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170 名前:70 ◆XI5VKMJ1Ek   sage 投稿日:04/08/21(土) 16:24
明け方近くに目覚めて、彼女を叩き起こした。

まだ眠いとグズる彼女をなだめ、制服を着せてやり、靴下を履かせた。

転がったスニーカの片方を探そうとベッドの下を覗きこんだときミニスカートと太ももの境界線

えっちサイトに転がってるローアングルな定番画像がフラッシュバックして 突然、彼女を傷つけてやりたい衝動に駆られた。

右足首をつかんで、手前に引くと彼女は あっさりベッドに倒れ ぼくは柔らかい真っ白なふとももに顔を埋める。

何の抵抗もない。


しわくちゃになったベッドのシーツに顔を半分埋めたまま眠いような焦点を結ばない綺麗な瞳がぼくをじっと見ていた。

いつかテレビで見たライオンに倒されたシマウマの子供を思い出した。

どこを見ているのか分からないあの大きな黒い眼球。喰われながら痛いのか怖いのか悲しいのか判別不能な、だけど憐れみを誘う瞳。

欲望は一瞬に蒸発して それから ぼくは少し落ちこんだ。


171 名前:70 ◆DyYEhjFjFU   sage 投稿日:04/08/21(土) 16:32
ホテルを出た。

ぼくが先に通りに出て、人がいないことを確認してから彼女に手招きした。

場所柄、こんな早朝新年3日目に人がいるはずもないけど制服はやはりまずい。

機敏な動作で さーっと駆け出してきた彼女が、ぼくの腕をブレーキにとまる。


同じタイミングで、いかにもな おやじと女子高生が一組出てきた。

早足で歩き去りながら後ろを ちらっと一瞥して 勝った。と叫び声を上げた。頭の中で。

勝負になってなかった。髪の毛の一本まで姫様の圧倒的でまったく一方的な勝利。

これも金で買った勝利か?と自問自答したけど考える意味も無い。

ぼくは こと女性に関してはガキで子供だってこと。かわいい姫様が隣にいて有頂天になっているだけだ。


目黒駅まで長い距離を歩きながら「今夜も お姫様を買いたい」と言ってみた。

彼女は前をみて歩きながら瞳だけ こっちに向けて意外。と言いたそうだった。

済ませたい用事があるとかで、彼女は渋谷方向の山手線ホームに消えた。

ミルクスタンドで牛乳を買った。冷たすぎて味がわからなかったが、頭は すっきりと冴えた。



ケータイを取り出して友人のオタにメール。

こいつは電話が嫌いでコールするだけ無駄。絶対に出ない。

昨夜のメール届いたか?内容は把握できそうか?いたらレスくれ。

駅構内は閑散としていて寒さがつらくなってきたので営業開始したばかりのスタンドカフェへ。

暖かいコーヒーを注文して、うとうとしているとメールが届いた。




172 名前:70 ◆DyYEhjFjFU   sage 投稿日:04/08/21(土) 16:36
メールは彼女からだった。

 >-今日も誘ってくれて嬉しかった。家に帰りたくないから、どこかホテル予約してもらえませんか?それから割引はなしで。

でも、ホテル代は その中から払ってもらっていいです。今夜もいっしょだね。楽しみ。


何度も読み返してしまうのは、本気で好きになりつつある証拠なんだろうか。コーヒーをすすりながらレスする。


 >わかった。探してみるね。

それから制服じゃなくてもいいよ。制服フェチは嘘。お姫様の好きな服で。


送信が終わると登録アドレスから、仕事柄よく使う都内のミドルクラスのホテルに電話する。

たまたま偶然にも友人本人が出てくれた。

正確には友人といえる仲じゃないけど、仕事で知り合って数年になるし年も近いせいで何度かいっしょに遊んだこともある。

嘘をつかず正直に話をして、予約を入れた。


向こうが電話を置くとき、「安心して利用してほしい」と言ってくれた。

明日には忘れるという意味だと思う。

持つべきものは友達。



174 名前:70 ◆DyYEhjFjFU   sage 投稿日:04/08/21(土) 21:12
チェックインの時間までホテルのロビーで過ごした。

仕事を終えた友人が来てくれ、飯でも食おうということになった。

美味いチキンライスを出してくれる洋食屋があるというので、迷わずそこへ。


しかし 入れ込んだものだね。とスプーンの先をぼくに向けて友人は言った。経験あるし分からなくもない、と。

うん。とだけ言っておいた。

まあ、本気にならないこった。


会話の内容は、いつの間にか昔行ったビリヤードのスコアの話になり スコアが友人の勤務記録の話になり、仕事を変えたいっていう愚痴になり始めた頃オタがメールしてきた。

内容は 重く、あっさりとしたものだった。


 >アンフェタミン。意味わかるかい?

詳しく知りたかったら、まず そっちの情報教えろ。このファイルは どこで拾った?なぜ この内容を知りたがる?

とにかく全部話すこと。話はそれから。



嫌な予感がした。

友人に、部屋にPCが欲しいと頼んでみた。

構わないよ。ぼくのを使ってくれていい。と ふたつ返事で了解してくれた。すぐに部屋に運ぶよう、誰かに頼んでおくよ。


店の前で友人と別れ、ぼくは そのままホテルに戻った。

さすがにホテルのサービスらしく、ノートPCがベッド脇のサイドテーブルに早速 用意されてた。

彼女が来るまでに、面倒なことは済ませておこう。

メールをまとめるのに数分。

送信してからベッドに横になって すこし眠った。



175 名前:70 ◆DyYEhjFjFU   sage 投稿日:04/08/21(土) 21:19
1時間もしないでオタからメール。


 >まずエクセルファイル。ここに載ってるのはストリートドラッグのリスト。ほとんどが合法なんだけど やばいのもある。でも、まあ そんな目くじら立てるほどじゃない。

ほんとうに やばいのは最下行のひとつ。βエンドルフィン。分かりやすく言うとモルヒネ。

たくさん地紋のように ならんでる数字は おそらく買い付け個数と支払った額と残高。

これは ただの推測だけど、このファイルのみで考えると このファイルの製作者は126万の未払いがある。


目が しょぼしょぼした。

なんでぼくは いつもこうなんだろう。関係ないことに首を突っこんで、面倒に巻きこまれる。


2通目が送信されてきた。


>テキストエディタの2通。

こっちは よくわからん。とにかく一見すると英語がネイティブで使える誰かが その家族に宛てた手紙。それ以上のことは何も書いてないようにとれる。

エクセルファイルに こじつけると中に書かれてある住所が特別な意味を持つとか。。。

もちろんエクセルファイルと因果関係は まったく無いのかもしれない。たまたま同じメディアに記録しただけとか。



しかし すごいな。

さすがオタ。医大出身の ひきこもりだけのことはある。

顔がキモイってだけでヲタ扱いされてた可哀想なオタ。

ぼくだけは愛してるよ。



179 名前:70 ◆DyYEhjFjFU   sage 投稿日:04/08/23(月) 19:25
ありがとう。もうお腹いっぱい。それから助かった

と追加してオタにメールした。

送信と同時に、入れ替わりで3通目が送られてきた。


>ただ盗み見したいだけなら、もう充分だろ。そのくらいでやめとけ。

おまえがモテないのはよく知ってる。だからって誰でもいいと言うなら、心の底から軽蔑してやろう。

その手の女は やめとけ。おまえの手には負えない。

悲しいなら いっしょに飯食ってやるから。出すもの出して さっぱりして、すぐに帰ってこい。



ありがとう。オタ。

飯をいっしょするのは願い下げだけど気持ちはうれしいよ。


オタからの意外なメールに じ~~んとなってるとケータイが鳴った。彼女からのメール。


>-買い物してから向かいます。もうすこし時間かかるかも。


またオタから。


>書き忘れた。リストに日付があって、何度か変更されてる。

日付の変更といっしょに、数字がいくつか更新されてる。在庫を動かしたとか?

まあ、どうでもいいか。



彼女から

>-ね。淡いグリーンと白と どっち好き?


ルール違反は わかってるけど声を聴きたいから ほんとうのケータイ番号を教えて欲しいと彼女にメールした。

あっさり一蹴されるだろうと思ってたのに彼女からすぐに電話がかかってきた。

ぼくはホテルの名と場所を教え、早く会いたいと言い、どっちかっていうと白かな。って馬鹿丸出しで答えた。


ごめんなオタ。




180 名前:70 ◆DyYEhjFjFU   sage 投稿日:04/08/23(月) 19:27
フロントから連絡があり、来客とのこと。

部屋へ通してほしいと伝えると、間もなく彼女が やってきた。

たくさんの紙袋を肩から下げたまま第一声は

「綺麗なホテルだね。こんなとこはじめて」

気に入った?と尋ねると、うんうんと うなずく。

口からチュッパチャプスの白いスティックが飛び出してて首の動きに合わせて大きく上下する。


ぼくは最初に話しておこうと考え、手をとり ふたつあるベッドのひとつに彼女を座らせた。

この頃になると、ぼくは完全に彼女に魅了されていて 離れることが考えられなかった。

お金のことは どうでもいいとさえ思った。貯金すべてを失うわけじゃなし、そのうちの何割かで、美しい思い出を買うのだと自分に言い聞かせ しかもその言い訳を本気で信じさえした。


話があると言った。

きょとんとして、ぼくを覗きこむ彼女。チュッパチャプスのスティックの動きが ぴたりと止まる。

「ぼくの休みは6日まで。あと3日だね。その間ずっと君といっしょにいたい。場所は このホテルかな。実は もう6日までキープしてあるんだ」



181 名前:70 ◆DyYEhjFjFU   sage 投稿日:04/08/23(月) 19:31
彼女の視線が宙を泳ぐ。

スティックの先を小さな指先でつまんで紫色のキャンディーを口から引っこ抜いて彼女は言った。

「うん。いいよ。お家に帰りたくないから、泊まる場所探そうって思ってた。このホテルなら最高。ヒロとも いっしょにいれるし」


ほっとするぼく。

じゃあ、そんなわけで値段交渉なんだけど…

ベッドから彼女をひきずり下ろし、後ろから抱きとめるようにして ちょっとシリアスに彼女とふたりで彼女の残り3日間の値段を決めた。

結局、ぼくが考えていた範囲の最大値で彼女はOKをくれた。「よゆー」と言って笑ってくれた。


あと3日。

その間、全部忘れようと思った。仕事とか、友達とか、ぼくのまわりのこと全て。

彼女のことだけ考えよう。


彼女の着ていた黒のノースリに顔をくっつけると新品の匂いがした。買い物って これだったのか。よくみると上から下まで新調したらしい。

制服はコインロッカーへ?家には帰らなかったんだね。

用事って あのフロッピィを誰かに渡すことだったのかな。

ああ。まあいいや。考えるのはやめよう。彼女を抱きしめていよう。



227 名前:70 ◆DyYEhjFjFU   投稿日:04/09/02(木) 04:12
いまさら こんなことを言っても誰も信じないだろうけど、これは体験談です。

当時の時間の流れたままを小説ぽく書いています。

なぜ、そうするかというと、照れもなくなく自分じゃないように書けるからです。

いくつかは もう忘れてしまっていて曖昧で、もちろん脚色もあります。

例えば彼女の口調とか。

実際には もっと今っぽくて、簡潔で、手短で、もっともっと可愛いかった。

ぼくの筆力なんて たかが知れてるので こんな風にしかまとまりません。

メールも ここに書いた何倍もの量を、彼女と そしてオタの間で交わしました。


ありがとう。>>223

じゃあリスタートします。




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