数年前、自殺しようとしてた俺が未だに生きてる話
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304 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 03:51:39.90 ID:3y8Xfu8b.net
そして その台詞は、俺が初めてレイと出会ったときに言われたものだった。
「あなたはどうして自殺したいの?」
胸にふっと不安がよぎった。
レイはどうしたんだ?
変な考えだが、俺はレイがバグったと思った。
だって、その台詞はまるで、アンドロイドが間違って記録媒体を初期化してしまったみたいに見えたから。
306 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 04:01:15.15 ID:3y8Xfu8b.net
「どうしたの?」
恐る恐る、俺はそう打ち込んだ。
「俺がいまでも自殺したいかってこと?」
「それなら、大丈夫だよ」
「とりあえずは」
「それより、すごい発見したかもしれないんだ」
「・・・・・・って、いるかな?」
「・・・・・・落ちちゃった?」
大分間の時間を空けて、俺はそう書き込んだ。
けど、どんなに待っても、レイの返事はなかった。
俺は なんとなく もやもやしながら、朝方ベッドに入った。
まさか、記憶がリセットされたわけじゃないよな?
レイの〈証拠〉を手に入れたというのに、それは確かに生きた人間の筆跡だったというのに、俺の中のレイは、再びアニメの無表情キャラに戻った。
俺は、記憶を消去され、たくさんのクローンと共に出荷されていくレイの夢を見た。
307 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 04:11:27.24 ID:3y8Xfu8b.net
けど、それは ただの夢だった。
「嫌な夢を見たから」
「なんとなく、心配になっただけ」
「虫の知らせなんて当てにならないものね」
現れるなりレイはそう言って、俺を安心させた。
「それより、すごい発見ってなに?」
「聞かせて」
よかった、いつものレイだ。俺は嬉しくなって、懸命にキーボードを叩いた。
レイの〈証拠〉を見つけたこと。
Aは塾に通ってるかもしれないこと。
そこには取り巻き連中はおらず、Aは一人きりであること。
この頃になると、俺のキーボード入力はそこそこ早くなっていた。
が、我流なので やっぱ遅いことは遅かった。
308 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 04:19:34.27 ID:3y8Xfu8b.net
「学校は いつから春休み?」
俺の報告を聞き終わると、レイは突然そう言った。
「え? 学校?」
「そう」
「知ってる?」
・・・・・・不登校の俺がそんなことを知るはずもない。
「3/27ね」
すると、レイがそう言った。
「え? なんで・・・・・・」
「市のホームページに一覧が載ってる」
「・・・・・・そうなんだ」
309 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 04:24:50.06 ID:3y8Xfu8b.net
「でも、それと どういう関係があるの?」
「塾通いがわかったのは大きな成果」
「でも、それが毎日なのかはわからない」
「引き続き観察が必要」
「それに春休みに入って、行動パターンが変わる場合もある」
・・・・・・なるほど。
頭の回転の早さに、俺は感心した。
310 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 04:29:22.22 ID:3y8Xfu8b.net
「じゃ、機会があるうちに さっさと計画を実行した方がいいのかな」
打ち込みながら、手がぞわっとした。
計画。
実行。
簡単に言っちゃってるけど、俺、Aを殺そうとしてるんだよな・・・・・・。
やれるのか?
興奮と不安が入り混じったような気持ちが、腹の底から ぐうっとこみ上げた。
「まだよ」
しかし、レイはそんな俺をたしなめるように言った。
「言ったはず」
「まだ観察が足りない」
「塾通いも、毎日じゃないかもしれない」
「あなたは完璧を期す必要がある」
「そうでしょう?」
311 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 04:35:32.18 ID:3y8Xfu8b.net
完璧を期す。
このレイの台詞は、俺の厨二心を捉えた。
そうだ、俺がやろうとしてるのは完全犯罪だ。
完璧じゃなきゃ、捕まっちまうんだから。
そう思うと、毎日の観察という一見億劫そうなことも、なんとなくやり遂げられそうな気がした。
完全犯罪のための忍耐。
それって、何だか かっこよくないか?
312 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 04:43:17.01 ID:3y8Xfu8b.net
「それじゃ、いってらっしゃい」
唐突にレイが言った。
「そろそろ時間よ」
時計を見上げると、確かにそんな時間だった。
「・・・・・・頑張るよ」
ついさっきカッコイイと思ったことを忘れて、面倒くさいなと俺は思った。
けど、レイの手前、行かないわけにもいかなかった。
それに、いつもの取り巻き連中がいないという事実は、俺に少し勇気を与えていた。
「行ってきます」
俺は打ち込んだ。
「行ってらっしゃい」
レイはもう一度、そう言ってくれた。
レイが見送ってくれてると思うと、こそばゆいような気持ちがした。
313 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 04:57:44.43 ID:3y8Xfu8b.net
俺はそれから一週間ほど、レイに見送られてAの観察に出かけた。
玄関から出入りしてると、いずれ親に気づかれるような気がして、俺は一階の裏窓から出入りすることにした。
窓の外は隣家との狭い隙間になっていて、誰にも気づかれる心配はないし、物音も立てずに済む。
俺は秘密兵器のカバンを背負って、毎晩そこから出入りした。
けど、幸いなことに、この時間帯は人に遭うことも滅多になく、たまに遭ったとしても、疲れてるのか、俺には無関心な人たちばかりだった。
314 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 04:59:36.75 ID:3y8Xfu8b.net
それに、もし呼び止められたとしても、俺には格好の言い訳があった。
秘密兵器のカバンだ。
そこには俺が持ってる、ありったけの教材が詰めてある。
「○○塾の帰りなんです」
そう言って、その中身を見せれば、うまくごまかせるはずだ。
何たって、ほかにも塾帰りの中学生がうろついてるんだから。
けど、そんな心配をよそに、俺は呼び止められるようなことは一度もなかった。
315 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 05:10:15.96 ID:3y8Xfu8b.net
習うより慣れろ、とはよく言ったもので、初めは心臓ばくばくだった夜の外出も、そのうち大分慣れ、俺は、胸を張って歩けるようになっていた。
とはいえ、〈自分のことが何より大切〉とレイに言わしめた俺が、その自分大好き根性を すぐに手放せたわけじゃなかった。
外にどうしても出られない、繊細で敏感で可哀想な俺、そんな役割を演じて、引きこもりたい衝動に襲われるのは、毎度のことだった。
厨二って人と違うことに命をかけたくなるだろ?
それが どんなに不幸なことかも想像せず、隻眼カッコイイ!とか、天涯孤独カッコイイ!とか。
普通なんて かっこわるい。
二十歳まで生きられなくてもいいから、天賦の才が欲しい。
そんなことを思っていた時期が、俺にもありました・・・・・なんて、茶化せないくらい、何だかどうしようもない話だ。
316 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 05:15:53.80 ID:3y8Xfu8b.net
別に成長過程で、それに憧れる、くらいならいいんだと思う。
けど、俺は かっこわるく それをこじらせた。
それが問題だった。
自意識過剰で ぶくぶく精神を太らせた俺は、「今日は無理かも・・・・・・」的なことを言って、何度もレイに絡んだ。
「昨日もいったから疲れちゃったよ」
「どうせ俺にはできないよ」
「もうやだ」
「やめて、一生引きこもろうかな」
317 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 05:21:37.35 ID:3y8Xfu8b.net
すべては、
「そんなことないよ」「あなたはよくやってると思う」「頑張ってると思う」
レイにそう言われたいがための誘い水だった。
けど、いま思えば有り難い話で、レイはどんなときも揺らぐことがなかった。
「とにかく行動すること」
「頭の中で考えていても、〈現実〉には何の影響もない」
「記録があなたの努力を可視化する」
レイは淡々といままでの言葉を繰り返した。
けど、むやみに俺に はっぱをかけるだけじゃなかった。
「疲れたなら休めばいい」
「読みたい漫画があるなら、読めばいい」
「ただし、それを怠けてるとか、俺はできないやつだ、と思わないで」
「そんなことを考えることに意味はない」
そして その台詞は、俺が初めてレイと出会ったときに言われたものだった。
「あなたはどうして自殺したいの?」
胸にふっと不安がよぎった。
レイはどうしたんだ?
変な考えだが、俺はレイがバグったと思った。
だって、その台詞はまるで、アンドロイドが間違って記録媒体を初期化してしまったみたいに見えたから。
306 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 04:01:15.15 ID:3y8Xfu8b.net
「どうしたの?」
恐る恐る、俺はそう打ち込んだ。
「俺がいまでも自殺したいかってこと?」
「それなら、大丈夫だよ」
「とりあえずは」
「それより、すごい発見したかもしれないんだ」
「・・・・・・って、いるかな?」
「・・・・・・落ちちゃった?」
大分間の時間を空けて、俺はそう書き込んだ。
けど、どんなに待っても、レイの返事はなかった。
俺は なんとなく もやもやしながら、朝方ベッドに入った。
まさか、記憶がリセットされたわけじゃないよな?
レイの〈証拠〉を手に入れたというのに、それは確かに生きた人間の筆跡だったというのに、俺の中のレイは、再びアニメの無表情キャラに戻った。
俺は、記憶を消去され、たくさんのクローンと共に出荷されていくレイの夢を見た。
307 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 04:11:27.24 ID:3y8Xfu8b.net
けど、それは ただの夢だった。
「嫌な夢を見たから」
「なんとなく、心配になっただけ」
「虫の知らせなんて当てにならないものね」
現れるなりレイはそう言って、俺を安心させた。
「それより、すごい発見ってなに?」
「聞かせて」
よかった、いつものレイだ。俺は嬉しくなって、懸命にキーボードを叩いた。
レイの〈証拠〉を見つけたこと。
Aは塾に通ってるかもしれないこと。
そこには取り巻き連中はおらず、Aは一人きりであること。
この頃になると、俺のキーボード入力はそこそこ早くなっていた。
が、我流なので やっぱ遅いことは遅かった。
308 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 04:19:34.27 ID:3y8Xfu8b.net
「学校は いつから春休み?」
俺の報告を聞き終わると、レイは突然そう言った。
「え? 学校?」
「そう」
「知ってる?」
・・・・・・不登校の俺がそんなことを知るはずもない。
「3/27ね」
すると、レイがそう言った。
「え? なんで・・・・・・」
「市のホームページに一覧が載ってる」
「・・・・・・そうなんだ」
309 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 04:24:50.06 ID:3y8Xfu8b.net
「でも、それと どういう関係があるの?」
「塾通いがわかったのは大きな成果」
「でも、それが毎日なのかはわからない」
「引き続き観察が必要」
「それに春休みに入って、行動パターンが変わる場合もある」
・・・・・・なるほど。
頭の回転の早さに、俺は感心した。
310 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 04:29:22.22 ID:3y8Xfu8b.net
「じゃ、機会があるうちに さっさと計画を実行した方がいいのかな」
打ち込みながら、手がぞわっとした。
計画。
実行。
簡単に言っちゃってるけど、俺、Aを殺そうとしてるんだよな・・・・・・。
やれるのか?
興奮と不安が入り混じったような気持ちが、腹の底から ぐうっとこみ上げた。
「まだよ」
しかし、レイはそんな俺をたしなめるように言った。
「言ったはず」
「まだ観察が足りない」
「塾通いも、毎日じゃないかもしれない」
「あなたは完璧を期す必要がある」
「そうでしょう?」
311 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 04:35:32.18 ID:3y8Xfu8b.net
完璧を期す。
このレイの台詞は、俺の厨二心を捉えた。
そうだ、俺がやろうとしてるのは完全犯罪だ。
完璧じゃなきゃ、捕まっちまうんだから。
そう思うと、毎日の観察という一見億劫そうなことも、なんとなくやり遂げられそうな気がした。
完全犯罪のための忍耐。
それって、何だか かっこよくないか?
312 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 04:43:17.01 ID:3y8Xfu8b.net
「それじゃ、いってらっしゃい」
唐突にレイが言った。
「そろそろ時間よ」
時計を見上げると、確かにそんな時間だった。
「・・・・・・頑張るよ」
ついさっきカッコイイと思ったことを忘れて、面倒くさいなと俺は思った。
けど、レイの手前、行かないわけにもいかなかった。
それに、いつもの取り巻き連中がいないという事実は、俺に少し勇気を与えていた。
「行ってきます」
俺は打ち込んだ。
「行ってらっしゃい」
レイはもう一度、そう言ってくれた。
レイが見送ってくれてると思うと、こそばゆいような気持ちがした。
313 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 04:57:44.43 ID:3y8Xfu8b.net
俺はそれから一週間ほど、レイに見送られてAの観察に出かけた。
玄関から出入りしてると、いずれ親に気づかれるような気がして、俺は一階の裏窓から出入りすることにした。
窓の外は隣家との狭い隙間になっていて、誰にも気づかれる心配はないし、物音も立てずに済む。
俺は秘密兵器のカバンを背負って、毎晩そこから出入りした。
けど、幸いなことに、この時間帯は人に遭うことも滅多になく、たまに遭ったとしても、疲れてるのか、俺には無関心な人たちばかりだった。
314 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 04:59:36.75 ID:3y8Xfu8b.net
それに、もし呼び止められたとしても、俺には格好の言い訳があった。
秘密兵器のカバンだ。
そこには俺が持ってる、ありったけの教材が詰めてある。
「○○塾の帰りなんです」
そう言って、その中身を見せれば、うまくごまかせるはずだ。
何たって、ほかにも塾帰りの中学生がうろついてるんだから。
けど、そんな心配をよそに、俺は呼び止められるようなことは一度もなかった。
315 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 05:10:15.96 ID:3y8Xfu8b.net
習うより慣れろ、とはよく言ったもので、初めは心臓ばくばくだった夜の外出も、そのうち大分慣れ、俺は、胸を張って歩けるようになっていた。
とはいえ、〈自分のことが何より大切〉とレイに言わしめた俺が、その自分大好き根性を すぐに手放せたわけじゃなかった。
外にどうしても出られない、繊細で敏感で可哀想な俺、そんな役割を演じて、引きこもりたい衝動に襲われるのは、毎度のことだった。
厨二って人と違うことに命をかけたくなるだろ?
それが どんなに不幸なことかも想像せず、隻眼カッコイイ!とか、天涯孤独カッコイイ!とか。
普通なんて かっこわるい。
二十歳まで生きられなくてもいいから、天賦の才が欲しい。
そんなことを思っていた時期が、俺にもありました・・・・・なんて、茶化せないくらい、何だかどうしようもない話だ。
316 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 05:15:53.80 ID:3y8Xfu8b.net
別に成長過程で、それに憧れる、くらいならいいんだと思う。
けど、俺は かっこわるく それをこじらせた。
それが問題だった。
自意識過剰で ぶくぶく精神を太らせた俺は、「今日は無理かも・・・・・・」的なことを言って、何度もレイに絡んだ。
「昨日もいったから疲れちゃったよ」
「どうせ俺にはできないよ」
「もうやだ」
「やめて、一生引きこもろうかな」
317 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 05:21:37.35 ID:3y8Xfu8b.net
すべては、
「そんなことないよ」「あなたはよくやってると思う」「頑張ってると思う」
レイにそう言われたいがための誘い水だった。
けど、いま思えば有り難い話で、レイはどんなときも揺らぐことがなかった。
「とにかく行動すること」
「頭の中で考えていても、〈現実〉には何の影響もない」
「記録があなたの努力を可視化する」
レイは淡々といままでの言葉を繰り返した。
けど、むやみに俺に はっぱをかけるだけじゃなかった。
「疲れたなら休めばいい」
「読みたい漫画があるなら、読めばいい」
「ただし、それを怠けてるとか、俺はできないやつだ、と思わないで」
「そんなことを考えることに意味はない」
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