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僕とオタと姫様の物語
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273 名前:70 ◆DyYEhjFjFU   投稿日:04/09/04(土) 00:05
最寄駅の改札を出ると、彼女は もう来ていて駅前のパン屋のカフェでコーヒーを飲んでいた。

パン屋のガラスに貼られた大きなロゴを通して、ぼくに手を振った彼女。こういうときって、不思議にすぐ気づくんだよな。

会計は済ませてあるのか、彼女は すぐに腰掛けてたストールから降りると足早に店から出てきた。


ぼけっと立ったまま彼女をみつめるぼく。白いコート。キャラメル色の細い、踵の高いブーツ。長く降ろした髪。上品な化粧色。

心底驚いてしまった。

デートクラブから呼び出されてくる女の軽い匂いなんて どこにも残ってなかった。

はじめて会ったときの子供っぽさも、酔いつぶれてホテルまで運んだときのだらしなさも 昨夜泣いた可哀想な姉としての彼女も どこかへ消えて近づき難い どこかのお嬢様が目の前にいた。

過去を詮索するなんて とんでもない。どこか存在感のない綺麗さ。


ぼくは すぐに、彼女を家へ連れ帰ったときの「家族全員にたいする悪影響と そのダメージ」について考えてみた。

上がりまくる親父。キョドる弟。

白いコートを着た雪女が室内を完全冷凍したみたいに、空気もろともカチンと凍りつかせるだろう。

大げさなアメリカ製カトゥーンの1フレームが間違いなく我が家に再現されるだろう。


ぼくらは連れ立って家へ向かった。だって、そうするしかないもんな。



274 名前:70 ◆DyYEhjFjFU   投稿日:04/09/04(土) 00:08
小さな商店街を抜けると すぐに郊外の田園風景。

風の匂いに草の香りが混ざる。

それでも どこからか運ばれてきた車の排気と人口肥料の鼻をつく匂いも かすかにあって、とてもノスタルジックからは ほど遠い。


彼女は自分の家のまわりの風景に似てると言った。

そうだね。都内も郊外も都市近辺は どこも似ている。画一化された緑化計画と企画品でつくられた建造物。

どこもかしこも、まったく同じプラスチックがシームレスに並んでるように見える。なんだか生きてるみたいだ。

現実は非現実的で、夢物語が現実。

映画のストーリーやテレビドラマの中に生きながら街に溢れる人。


いつの頃からか、ぼくは姫様をこの世のものでなく どこかしら遠い夢の世界の住人として捉えるようになってた。どうしようもない現実の中で苦しんでる姫様を。


これは推測だけど、彼女がお守りとして 後生大事に持ち歩いてるクマのぬいぐるみは きっと彼女が小さかった頃、もっと小さかった弟に作ってあげた大事な品。

首に下げれるように首のとこに紐通しが のこってていまでは そこがほつれて、中身のビーズが飛び出しそうになってる。このクマが つまり ぼくそのもの。

現実には存在するのに、存在しないもの、意識のないものとして扱われる、でも愛すべき対象。

クマのご主人様は とうの昔に死んだ。でも造り手は いまでも その名残と記憶を愛してやまない。

彼女が何年も前に失った弟は いまなお彼女の側にいて、彼女を苦しめてる。

つまり間違いなく実在する現実。



275 名前:70 ◆DyYEhjFjFU   投稿日:04/09/04(土) 00:14
ただいま。と言って玄関で靴を脱ごうとしている ぼくに母親は愚痴のひとつも浴びせてやろうとして飛び出してきたに違いない。

「どこをほっつき歩いてるのこの子は」

そう言ったきり口を開けたまま動かなくなってた。


白いコートを着た雪女の犠牲者第一号。

彼女は控えめな演技で「こんにちは」だか「お邪魔します」とか とにかく そんなことを言ったと思う。

母は、彼女を みつめたきり しばらく動かなかった。


居間へ彼女を通してからが見ものだった。

馬鹿な弟も、普段は陽気な親父も、正座したきり それこそ借りてきた猫みたいに大人しくなってた。

言葉が ありえないほど丁寧になり 何度も自分の後ろ頭を叩きながら喋る弟は、まったく馬鹿そのものだった。


中学のときの同級生で、ばったり駅で何年かぶりに会った。と紹介しておいた。彼女と軽く打ち合わせてたので、スムーズだった。

とはいえ、いままで まったく女気のないモテナイ息子が いきなりこんな美人を連れ帰る説明としては やや足りてなかったのかもしれない。

ただ、彼女にはアドリブのセンスもあって、高校生になってから少しだけ付き合いがあったこと。

ぼくの母が育てていたセントポーリアの鉢植えを、実は こっそり一株分けてもらってたこと。

そんなわけで、お母様には お伺いして一言お礼を言っておきたかったこと。

そんな話をさも事実のように、柔らかな笑みで語ってくれたので家族の注意は そこに注がれた。


これには ぼくも驚いた。居間に通されるまでのわずかな時間に彼女は何をみたんだろう。

そして そこに反応したのは ぼくだけじゃなかった。

母が、ぼくが高校生の頃に、鉢植えがいくつも盗まれたけど、あれは おまえの仕業だったのかと言い出した。

実のところ母はひどく喜んでいた。自慢もたぶんに入ってる。盗まれるほどの自分の技量に対してと、姫様が草花に興味があったこと。


もっと驚いたのは、それきり母と姫様は意気投合してしまったということ。世の中何が起こるか さっぱりわからん。

母がもう充分だと言う姫様に、食べろ食べろと御節の残りを勧め。

親父は姫様に お酌してもらって、悔い無しといった感じだった。

馬鹿弟は馬鹿よろしく、デジカメを持ち出し彼女を撮影すると言い張り 彼女に やんわり否定されて、心底落ち込んでた。


夕方になって ぼくの部屋を見た彼女が、窓辺で やけに悲しそうに外の風景を眺めてるのを見て ぼくは そろそろ行こうか、と切り出した。

彼女が帰ると聞いて、すっかり しょげてしまった親父。


駅へ向かう道の途中、泣き出してしまった姫様。

昨夜のように激しくではなかったけど、静かな鼻をすする音が夜道では やけに響いた。なんで わたしの両親は死んでしまったんだろう。

なんでわたしの弟は、まだ幼かったわたしを最後にひとり残して死んでしまったんだろう。

その理由が知りたい。この世で起こるありとあらゆることには何かしら理由があるんだと思う。

彼女は たどたどしい口調で、見つからない言葉にいらいらしながら そんなことを言った。

「ヒロは いいね。優しい両親と弟がいて」

彼女は そう言ったきり黙りこんでしまった。


セントポーリアの鉢植えの嘘とトリックを、ぜひ聞いてみたかったけど、とてもそんな雰囲気じゃなかった。



283 名前:70 ◆DyYEhjFjFU   投稿日:04/09/04(土) 03:31
渋谷駅に向かう山手線はひどい混みようで、姫様はぼくにもたれてご就寝。まんざら悪い気はしなかった。

ぼくのシャツが姫様のヨダレで汚れようとも、ファウンデーションが付着して色が変わろうとも ぼくは姫様が起きないように、電車の揺れに合わせて体をねじる。

電車が代々木駅のホームに滑りこむのと同時にケータイが震えた。オタからだった。

珍しく長い文章で、2度に分けられて送信されてきた。


 >お待たせ。苦労したよ

 >この真っ黒な画像が ほんとうに真っ黒、

 >例えば#000000なんていう単色で塗られているなら

 >10kなんていう重さにはならない。実際には もっと軽い。

 >じゃあ なんでこの重さになっているかというと

 >それは間違いなく これが画像データだから

 >ピクセルの配色にはバラつきがあるって証拠だ。


オタのメールに目を通した瞬間、それがオタにとっては造作もないこと簡単に見破れるトリックだってことが すぐに分かった。

おそらく交換条件のスニーカと等価値になるよう、自分のやってることに威厳を与えるべく もったいぶってるんだろう。

講釈を すっとばして、肝心の部分を探す。


 >ピクセルが数色あるとして、その配置に意味があるとすると

 >これはなにかコードを表してるのかもしれない。

 >統計解析してみれば すぐに分かるんだけど、生憎そんな高

 >価なアプリは研究室に


ウザイな


 >ふと思ったんだけど、これって画像をモノクロ変換して 

 >コントラスト調整すればいいんじゃないかなと思ってさ


ビンゴ!これだ。思ってたとおりだ。


 >インド、デリーのペダルタクシィの画像が一枚

 >マドラス、チェンナイのペダルタクシィの画像が一枚

 >ボンベイ、ムンバイのペダルタクシィの画像が一枚

 >デリーは あるいは違う場所かもしれない。

 >院に通ってるインド人に確認してもらった。

 >まあ、場所が どこにせよ全部輪タクの画像ってのもなんだかな、

 >と思ってさ。で、ここからが重要。

 >タクシィのナンバープレート。全部あとで手が加えられてる。

 >数字ね。デジタルで。ひどい加工で すぐにわかるよ。

 >とにかく送り返しとく。

 >それにしてもさ。なんで この製作者はこんな手のこんだこ

 >とをするんだろうな。

 >たぶん どこかにスタンドアロンで稼動してるPCがあって

 >人が手でデータを運んでるわけだろ。嬢様がさ。

 >秘密は守られてるだろうに。

 >とはいえ、こうやって おれ達が覗き見してるわけなんだけ

 >どさ。


ありがとうオタ。

やっぱりお前は最高だ。





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カテゴリー:男女・恋愛  |  タグ:純愛, 泣ける話, 胸キュン, 青春, これはすごい, 相手の過去,
 


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