アルミ缶の上に
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40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/02(日) 20:17:16.90 ID:sUR+JIhz0
「う〜ん」
少年は腰に手を当て,うなった。
少し考えてから,大き目の紙皿に焼いたウインナーをぽんぽんと並べていく。
そして爪楊枝を一本刺して,少女にその皿を差し出した。
「ほら,全部食べちゃいな。今 店長出て行ってるから,内緒な。」
シーっと人差し指を口元にあてて,少年はいたずらっぽく笑った。
少女は大きな目をまん丸にして,少年を見つめ返した。
口元がプルプルと震える。
『ありがとう』その言葉が出てこない。
せめて,笑い返したい。
なのに顔の筋肉は すっかり強張って,泣きそうな顔しか出来なかった。
42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/02(日) 20:24:32.76 ID:sUR+JIhz0
「あ〜泣かないで泣かないで;ほら おばちゃんが見てるからさ」
少年は あわてた様に手を振った。
そして新たなウインナーの袋を開封してホットプレートの上で逆さにし,ボトボトとウインナーを落としていく。
「それ食べたらお家帰りなよ?」
少年の言葉に,少女は今度こそ本気で泣きそうな顔をした。
「・・・帰れないの・・・」
少女はうつむき,肩を震わせた。
44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/02(日) 20:29:19.94 ID:sUR+JIhz0
少年は困ったように頭を掻いた。
駄々をこねる子供にしては様子が深刻だ。
「よし,ウインナーだけじゃ体に悪いからな。俺今日はバイト12時で上がるんだ。ほら,向かいに公園があるだろう? そこで待ってな。レストランにでも連れてってあげるからさ」
うつむいていた少女の顔が上がる。
相変わらず笑顔は無いけれど,その瞳が輝いている気がした。
少女は長い髪を揺らし,スーパーを出て行った。
47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/02(日) 20:34:01.99 ID:sUR+JIhz0
少年の言ったとおり,スーパーの向かいには公園があった。
少女の住んでいたアパートの側にあった,ちゃちな遊具が数点あるだけの広場ではなく,緑が多く大きな池もある立派な公園だ。
少女はスーパーが見える位置のベンチに腰掛け,足をブラブラさせていた。
母親はもう帰ってきただろうか。
土曜日の休日に家にいない自分に気づくだろうか?
父親を問い詰めるだろうか?
自分を探してくれるだろうか?
しかし,いくら考えても,少女の脳裏に浮かぶのは男に絡みつく『女』の母親の姿だけだった。
「う〜ん」
少年は腰に手を当て,うなった。
少し考えてから,大き目の紙皿に焼いたウインナーをぽんぽんと並べていく。
そして爪楊枝を一本刺して,少女にその皿を差し出した。
「ほら,全部食べちゃいな。今 店長出て行ってるから,内緒な。」
シーっと人差し指を口元にあてて,少年はいたずらっぽく笑った。
少女は大きな目をまん丸にして,少年を見つめ返した。
口元がプルプルと震える。
『ありがとう』その言葉が出てこない。
せめて,笑い返したい。
なのに顔の筋肉は すっかり強張って,泣きそうな顔しか出来なかった。
42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/02(日) 20:24:32.76 ID:sUR+JIhz0
「あ〜泣かないで泣かないで;ほら おばちゃんが見てるからさ」
少年は あわてた様に手を振った。
そして新たなウインナーの袋を開封してホットプレートの上で逆さにし,ボトボトとウインナーを落としていく。
「それ食べたらお家帰りなよ?」
少年の言葉に,少女は今度こそ本気で泣きそうな顔をした。
「・・・帰れないの・・・」
少女はうつむき,肩を震わせた。
44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/02(日) 20:29:19.94 ID:sUR+JIhz0
少年は困ったように頭を掻いた。
駄々をこねる子供にしては様子が深刻だ。
「よし,ウインナーだけじゃ体に悪いからな。俺今日はバイト12時で上がるんだ。ほら,向かいに公園があるだろう? そこで待ってな。レストランにでも連れてってあげるからさ」
うつむいていた少女の顔が上がる。
相変わらず笑顔は無いけれど,その瞳が輝いている気がした。
少女は長い髪を揺らし,スーパーを出て行った。
47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/02(日) 20:34:01.99 ID:sUR+JIhz0
少年の言ったとおり,スーパーの向かいには公園があった。
少女の住んでいたアパートの側にあった,ちゃちな遊具が数点あるだけの広場ではなく,緑が多く大きな池もある立派な公園だ。
少女はスーパーが見える位置のベンチに腰掛け,足をブラブラさせていた。
母親はもう帰ってきただろうか。
土曜日の休日に家にいない自分に気づくだろうか?
父親を問い詰めるだろうか?
自分を探してくれるだろうか?
しかし,いくら考えても,少女の脳裏に浮かぶのは男に絡みつく『女』の母親の姿だけだった。
52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/02(日) 20:44:12.59 ID:sUR+JIhz0
「お待たせ」
少年はエプロンをはずした普段着で少女の前に現れた。
時刻は12時を回ったところ。
少女のお腹はグゥと音を鳴らした。
「はは,じゃあ行こうか。近くにファミレスがあるから,そこでいい?」
少女はうなずいた。
57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/02(日) 20:52:15.51 ID:sUR+JIhz0
ファミレスの中はガヤガヤと騒がしかった。
休日のお昼とあって,親子連れが多い。
少女と少年は4人がけの席に座った。
「好きなの頼んで良いよ」
少女はカラフルなメニューに目を走らせる。
目がチカチカしてきた。
「オレはハンバーグ定食にすっかな・・・。君は?」
少女は相変わらずメニューのあちこちに目を走らせている。
「こんなところ来るの初めてだから・・・分かんないの」
少年はパチパチと瞬きをした。
「初めてなの?」
少女はこくりとうなずいた。
あの男が来る前にも,母親には恋人がいた。
今よりも もっと幼かった少女を置いて,母親はよく男の元に出かけた。
最低限の食事は用意されていたものの,家族でレストランに行き,和やかな時間を過ごす,などということは少女にとっては夢のまた夢だった。
62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/02(日) 20:59:56.95 ID:sUR+JIhz0
「じゃあオレが勝手に決めちゃうよ?」
少年はウエイトレスを呼び,メニューを指しながら注文をした。
「オムライスとシーザーサラダ。それとハンバーグ定食。あ,ドリンクバーも」
「かしこまりました」
ウエイトレスが去っていくと,少年は席を立ち,少女を促した。
「飲み物取りに行こう」
少女は少年の後についていく。
コップを渡され,初めてのドリンクバー。
機械の操作が いまいち分からずメロンソーダを溢れさせてしまい,少年に笑われた。
65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/02(日) 21:03:46.70 ID:sUR+JIhz0
注文した料理が運ばれてくる。
少女はトロトロのオムライスに ごくりとのどを鳴らした。
外食よりも母親の手料理の方が良いという意見も多いはずだが,少女にとっては このオムライスが何倍ものご馳走だった。
「ほら,野菜も食べな」
シーザーサラダをすすめながら,少年は笑った。
料理を一通り平らげ,少年は少女に聞いた。
「なんで,家に帰れないの?」
少女の満腹のお腹がキュッと痛んだ気がした。
69 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/02(日) 21:09:19.62 ID:sUR+JIhz0
「お母さんは家にいるの?」
多分,もう帰っているだろう。それに土日は休みだ。
少女は小さくうなずいた。
「お父さんは?」
ズキンと胸が痛む。
本当の父親は少女が生まれる前に亡くなっている。
あの男は『父親』ということになるのだろうか?
嫌だ。
あんなの『お父さん』じゃない。
少女は首を振った。
74 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/02(日) 21:15:33.59 ID:sUR+JIhz0
「お母さんがお家にいるなら,ちゃんと帰らなきゃ。心配してるよ」
少女は首を振った。
母親が心配をしているところが想像できない。
男の視線から逃れるため,頼ってきた母親。
しかし もう少女の中では頼れる存在ではなくなっていた。
「学校も行かなきゃいけないだろ?お家から通わなきゃ」
少女はまた首を振った。
少年は困ったような顔をした。
「お家はどこ?オレが付いていくから」
77 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/02(日) 21:20:18.86 ID:sUR+JIhz0
「いや!」
少女は強く言った。
「いい加減にしろ!」
少年も強めに返した。
今まで穏やかだった少年に少しおびえたのか,少女は びくっと肩を揺らした。
「イヤイヤじゃあダメだ。いつまでも外でウロウロする訳にもいかないだろう。ほら,帰るよ」
少年は伝票を取り,席を立った。
少女は涙を流しながら嗚咽を漏らしていた。
少年に怒られたことと,そして あの男の家に戻らなければいけないことに絶望して。
83 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/02(日) 21:27:11.57 ID:sUR+JIhz0
少年はファミレスを出てから,少女と手をつないでいた。
放っておくと逃げ出してしまいそうだったからだ。
少女の足取りは重かった。
(帰りたくない)
結構な距離があるが,2人はひたすら歩いた。
少女の歩みは遅いが,少年は根気強く付き合った。
家への距離が縮まるほど,少女の表情は暗くなる。
(そう言えば この子は一度も笑ってないな)
少年がふと思ったとき,繋いだ少女の手がブルブルと震えだした。
少女の瞳は20メートルほど先にある古いアパートを見ている。
「やっぱり嫌!」
少女は少年の手を振り解き,今まで来た道を駆け出していった。
「あ!こら!」
少年は少女を追いかけようと思ったが,アパートの前で言い争いをしている男女を見て,足を止めた。
89 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/02(日) 21:36:12.17 ID:sUR+JIhz0
「このロリコン!最初から あたしよりも あの子の方が目当てだったんじゃないのかい!?」
「うるせえなぁ!ガバガバのババァよりも若いほうがいいのは当たり前だろ!」
部屋着の男女が人目もはばからず大喧嘩を繰り広げている。
女は布団たたきで男をバシバシと叩き,男を追い出そうとしているように見えた。
少年は女に少女の面影を見た。
もしかしてと思い,恐る恐る2人に近づく。
「あの・・・」
「なによ!」
ひるんだ少年だが,負けじと女に向き直る。
「11歳か12歳くらいの女の子を預かっているんですが,もしかしてお宅の娘さんでは・・・
髪が長くて,白い服で,ええと・・・サンダルを履いた」
「ああ多分そうだね」
少年の顔が ぱっと明るくなる。
「さっきまでそこにいたんです,連れてきます!」
少女が走っていった方に駆け出そうとした少年を,母親の声が止めた。
「ああ良いよ良いよ別に!」
98 :いち ◆PHHpeX7gZE :2007/09/02(日) 21:45:27.23 ID:sUR+JIhz0
「あの子は あたしの男を誘惑したんだよ。こいつ追い出したら別の男連れてくる予定だからね。いないほうが都合良いんだよ。」
母親は はき捨てるように行ってから,バシン!と強烈な一発を男の背中にお見舞いした。
少年は呆然と立ち尽くした。
帰れない,と言っていた少女の言葉がよみがえる。
ただの我がままだと思って強く当たった自分に,一気に後悔の波が寄せてきた。
この男は少女を犯そうとし,母親は少女がいない方が好都合だと吐き捨てる。
少年は少女を追いかけた。
105 :いち ◆PHHpeX7gZE :2007/09/02(日) 21:49:41.41 ID:sUR+JIhz0
少女はひたすら走った。
男から逃げた夜のように,後ろを振り返らずに走った。
親切だった少年は,あの家に自分を戻そうとする。
誰を頼って良いのか分からない。
日も暮れようとしている。
ここがどこだか分からない。家への道も分からない。
それでいいのかもしれない。
帰りたくも無いのだから。
お昼にたっぷり食べたはずだが,胃腸は よほど正常な働きをしたらしい。
正直にグゥと音を立てた。
お昼には少年に笑われた。
今は日が暮れた名も知らぬ街で,少女は途方にくれている。
110 :いち ◆PHHpeX7gZE :2007/09/02(日) 21:55:28.49 ID:sUR+JIhz0
すっかり暗くなると,やはり明かりを求めてしまう。
少女はまたコンビニの前にいた。
ペタンと座り込む。
服を見ると,薄汚れている。
(乞食みたいだな)
以前,何かの本で見たことがある。
空き缶を目の前に置いて,レンガの壁を背に道端に座り込んで,たまに通行人がチャリンチャリンと音を立てて,空き缶の中に小銭を落としていく。
(・・・やってみようか・・・)
115 :いち ◆PHHpeX7gZE :2007/09/02(日) 21:59:19.51 ID:sUR+JIhz0
少女はコンビニの前のゴミ箱を漁った。
空き缶のゴミ箱の中には当たり前だが空き缶がゴロゴロ入っている。
しかし,少女が期待したような,上部のふたが缶切りでパカッと開けられたようなものは無かった。
(イワシの缶詰とか捨ててないのかな・・・。ジュースばっかり)
仕方が無いので少女はジュースの空き缶を目の前に置き,再び座り込んだ。
飲み口の小さな穴には,到底小銭は入りそうに無い。
121 :いち ◆PHHpeX7gZE :2007/09/02(日) 22:02:46.90 ID:sUR+JIhz0
少女はじっと座っていた。
たまにゴミを回収しに店員が来たので,そのときはさっと姿を隠した。
しかし,ただでさえ通行人が少ない上,少女のアイデアは外れたのか,小銭を空き缶に放り込もうとする人はいなかった。
123 :いち ◆PHHpeX7gZE :2007/09/02(日) 22:06:10.31 ID:sUR+JIhz0
少女は膝を抱え,顔を伏せた。
お腹は空いたしとても寒い。
たまに聞こえるバチバチという痛そうな音。
顔を上げると,虫がライトに突っ込んでいた。
自分もあの虫と同じくらい馬鹿なことをやっているのかもしれない。
少女は再び顔を伏せた。
こんどは涙が出てきた。
>>次のページへ続く
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