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85 :アキ:2013/03/24(日) 00:24:05.42 ID:pmN8elV80
ショックだった。

夏は、雪と二人きりになりたいから、こんなこと言うんだ。

そう思った。


けれど雪は一人で教室から出て行った。

私の顔を見ずに。

その後を夏が走って追いかけてった。

私に「ハル頼んだ」と言い残して。


なんだか打ちのめされた気分で、ふらふらしながらハルの教室へ向かった。

今の私のメンタルでハルをフォローできっこないのに、と思いながら。

でもハルは もう教室にはいなかった。

ホッとした。

そして一人でふらふらと帰った。



86 :名も無き被検体774号+:2013/03/24(日) 00:24:50.46 ID:sCcm4Qtb0
これが青春か...


87 :アキ:2013/03/24(日) 00:29:03.15 ID:pmN8elV80
次の日学校へ行くのは気が重かった。

あの後の雪と夏を想像するだけで、ひどく胸が痛んだ。


重たい体を引きずるように教室に入ったら、雪はまだ来ていなかった。

その日雪は学校を休んだ。


昼休みになった。

夏達とご飯を食べる曜日だったけれど、どうすればいいのか解らず悩んでいた。

けれど夏が迎えに来てくれた。

後ろには相変わらずヌボーっとしたハルが立っていた。

いつもと変わらない笑顔で「いくぞ」って夏が言って、なんだかすごくホッとした。

三人で定位置で お弁当広げた時も、気まずさを振り払うように夏が喋った。

でもそれも尽きて、三人に沈黙が走った。



88 :アキ:2013/03/24(日) 00:35:53.86 ID:pmN8elV80
「昨日、あの後、雪どうだった?」

最初に口を開いたのは私だった。

「駅で別れたから、その後は解らんけど、それまでは泣いとった」

夏がぽつりと呟いた。

ハルは黙って箸を進めてた。

そんなハルと夏に、

「ごめん、昨日ハルの教室行ったけど、ハル帰ってた」と謝った。


ハルが「教室、来てくれたん?」って、やっと顔を上げた。

「うん」って答えると、そっかぁって少しハルの表情が和らいだ。

そんなハルを見て、夏が言った。

「今日こそは二人で帰ったら?」


訳が分からなくて、「え、なんで」と聞く私に、「二人お似合いやし」と笑う夏。

あまりに衝撃が大きくて、黙り込んでしまった。



89 :名も無き被検体774号+:2013/03/24(日) 00:42:11.66 ID:UpItWECJ0
これは見事なスクウェアでございますこと


90 :名も無き被検体774号+:2013/03/24(日) 00:42:38.22 ID:ac5WhWIZ0
はよはよ


91 :アキ:2013/03/24(日) 00:44:32.89 ID:pmN8elV80
「な、ハル」と笑う夏に、「いや、二人じゃなくていいよ」と返すハル。

「夏はなんで そういうこと言うん?」

喉カラッカラみたいな声で訊ねた。


「二人が上手くいったらいいなぁーと思うし」

夏が笑顔でそう発した時、もう苦しくてしょうがなかったけど、声を振り絞って言った。

「ハルには好きな人がいるんやろ、勝手なこと言わんでよ」

そして一人で教室に戻った。

やっぱり上手くいかなくなってしまったと、めそめそ嘆きながら。



92 :アキ:2013/03/24(日) 00:46:32.38 ID:pmN8elV80
次の日、雪は登校してきた。


明るく振る舞う雪に、かける言葉が見つからなかった。

そんな雰囲気を察したのか

「もうハル君なんかどうでもいいー」と、雪はニコニコ笑顔で言い放った。

だから今まで通り、四人でやっていこうね

雪は笑顔でそう言った。

「昔みたいに戻れるかな」と聞く私に、「努力する」と笑った雪。

雪は強い子だったね。



97 :アキ:2013/03/24(日) 00:51:49.93 ID:pmN8elV80
そして四人で顔を合わせて、雪が笑顔で場を盛り上げた。

ハルも私もホッとして、ぬるま湯に身を委ねていた。

夏だけは、雪のことを真っ直ぐ見ていた。


それから夏は、より甲斐甲斐しく雪を気遣い始めた。

誰が見ても、夏が雪を好きなのは明確だった。

夏は隠そうともせずに、毎日雪にアタックしていた。

けれど「好き」とは伝えていないようだった。



98 :アキ:2013/03/24(日) 00:56:04.98 ID:pmN8elV80
告白されなきゃ断りようがない、雪が ぽつりとそう呟いた。

確かにその通りで、なかなか変化しない関係性に、私の気持ちは 宙ぶらりんになっていた。

夏が告白したと聞いたらショックだろうけど、夏が告白しなければ夏は雪を諦めない。

何度か告白をけしかけたこともあった。

でも夏は笑ってるだけだった。


クリスマスは四人で過ごした。

カラオケに行って、お世辞でも上手とは言えない夏と雪の歌を聞いて笑ってた。

呑気に笑っていられたのは、この時までだった。



101 :アキ:2013/03/24(日) 01:01:41.16 ID:pmN8elV80
少し街をぶらついて、解散になった。


夏と二人で同じ駅に帰れることが嬉しかった。

でも夏は、電車に乗り込む前に行ってしまった。

雪のところへ。

「俺やっぱ雪ちゃん送ってくわ」って、走って行ってしまった。

一人、満員電車に揺られて、クリスマスで浮き足立ってる街を見下ろしながら帰った。

いやな予感がしていた。



102 :アキ:2013/03/24(日) 01:08:03.57 ID:pmN8elV80
次の日、夏が珍しく電話をかけてきた。


受話器の向こうで夏が興奮していて、もうなんとなく予想はついていた。

雪と上手くいったんだろう。

「雪ちゃんとチューした!!」

夏の言葉は私の予想の一寸先進んでいた。

胸が大きく跳ねた。

「告白したん?」と力なく訊ねる私に、「いや、正式にはまだ」と彼は言った。

好きだと伝えけど、付き合ってくれとは言っていない。

「でも確かにあの瞬間、雪ちゃんと心が通じ合ってチューした!」

受話器の向こうで夏が どんな顔してた容易に想像が付く。

私は「うん、うん、へぇ」を繰り返すロボットになっていた。



>>次のページへ続く
 
カテゴリー:男女・恋愛  |  タグ:青春,
 


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