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ドッペルゲンガーと人生を交換した話
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54 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 20:56:17.64 ID:EjVEnkhT.net
それから少し話をして、俺たちは別れた。
帰り道、さっきのことがずっと引っかかっていた。
どうして俺は七瀬のことであんなにムキになったんだ。
入れ替わっているとはいえ、椿に七瀬を取られたくなかったのか。
いや、そんなはずはない。
そもそも、取られるとか、元々俺のものってわけでもないのに。
55 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 20:57:37.62 ID:EjVEnkhT.net
ダメだこれ以上考えても、自分が嫌になるだけだな。
やっぱり七瀬だけが俺を、どうしようもなく特別にさせるんだ。
一度考え出すともう止まらない。
俺は自分の燻んだ感情をおさえることがで
「危ない!」
突然背後から声が聞こえた。立ち止まって振り返ると、今度は前方からとても大きな、ガシャンという音が聞こえた。
56 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 20:57:58.02 ID:EjVEnkhT.net
「大丈夫ですか」
先ほどの声の主が、俺に慌てて話しかけてきた。
ただ俺はその問いに応えることができなかった。
俺のすぐ目の前には、上から落ちてきた看板があった。あと一歩でも前に進んでいたら、俺はこれに潰されていただろう。
「すっ、すみません。ありがとうございます」
俺は、目の前の男性に、震えた声で礼を言った。
この人がいなかったら俺は看板と一体化するとこだった。
それから少し話をして、俺たちは別れた。
帰り道、さっきのことがずっと引っかかっていた。
どうして俺は七瀬のことであんなにムキになったんだ。
入れ替わっているとはいえ、椿に七瀬を取られたくなかったのか。
いや、そんなはずはない。
そもそも、取られるとか、元々俺のものってわけでもないのに。
55 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 20:57:37.62 ID:EjVEnkhT.net
ダメだこれ以上考えても、自分が嫌になるだけだな。
やっぱり七瀬だけが俺を、どうしようもなく特別にさせるんだ。
一度考え出すともう止まらない。
俺は自分の燻んだ感情をおさえることがで
「危ない!」
突然背後から声が聞こえた。立ち止まって振り返ると、今度は前方からとても大きな、ガシャンという音が聞こえた。
56 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 20:57:58.02 ID:EjVEnkhT.net
「大丈夫ですか」
先ほどの声の主が、俺に慌てて話しかけてきた。
ただ俺はその問いに応えることができなかった。
俺のすぐ目の前には、上から落ちてきた看板があった。あと一歩でも前に進んでいたら、俺はこれに潰されていただろう。
「すっ、すみません。ありがとうございます」
俺は、目の前の男性に、震えた声で礼を言った。
この人がいなかったら俺は看板と一体化するとこだった。
57 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 20:59:11.86 ID:EjVEnkhT.net
「いえ、大丈夫ですか。怪我は?」
「大丈夫です。貴方の声で立ち止まったので、潰されずに済みました、本当にありがとうございました」
「良かった。看板、老朽化してたんですかね。それとも…… 何か心当たりありますか」
「いえ、特には」
心当たりなんてあるわけない。
そもそも俺は誰かに恨まれるほど、深く人と関わってないんだ。
58 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 20:59:28.09 ID:EjVEnkhT.net
「そうですか。どうします警察とか呼びますか?」
警察か。もし警察を呼んだら、事情聴取とかがあるだろう。椿と入れ替わっている身としては、それはさけたい。幸いここは人気のない、裏通りだ。この人さえ説得すれば何とかなる。
「いえ、あまり警察とか面倒なのは」
「それもそうですね。じゃあ、看板ははじに避けておきましょうか」
「そうしてもらえると助かります」
物分りのいい人で良かった。
59 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 21:02:12.38 ID:EjVEnkhT.net
看板をはじに避けるとその人は、「じゃあ私はここら辺で」と言って去ろうとした。
「あ、待ってください、何かお礼を」
「そんなの大丈夫ですよ」
「しかし」
俺がそう言うと。その人は、
「そうですね、じゃあ、私の名前は磯崎と言います。
もし貴方が同じ磯崎という名前の人に会ったら、親切にしてあげてください。
その人が、もしかしたら僕の家族かもしれないし、恋人かもしれない。もちろん何の関係もない別人の可能性だってある。
どちらにしろ、これって素敵なことだと思うんです。それでどうですか?」
と言った。
61 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 21:03:04.84 ID:EjVEnkhT.net
「わかりました。貴方、面白い人ですね」
俺はいつの間にかそう返事をしていた。俺の口からこんな言葉がまさか出るとはな。椿になって気が大きくなっているんだろうか。
「はは、よく言われます。それじゃあ」
そう言って今度こそ、磯崎さんは去って行った。
62 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 21:04:54.34 ID:EjVEnkhT.net
変わった人もいるもんだなと思いながら、俺はさっきのことを思い出していた。
よくよく考えると、恨まれる心当たりはないと言ったが、それは俺のことだ。椿がどうかなんてわからない。一瞬そう思ったが、椿が恨まれるなんてもっと想像がつかないな。
この一週間で椿の人柄はよくわかった。絵に描いたいい奴だ。ちょっと変わってるけどな。それこそ磯崎さんみたいに。
まぁ、逆恨みって線もあるが、考えすぎだろう。そうしてただの老朽化だと結論付けて、俺は帰って眠りについた。
63 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 21:06:41.62 ID:EjVEnkhT.net
目が覚めたのは深夜二時だった。
このままもう一度寝てもよかったんだが、少し小腹がすいていたので、近所のコンビニに行くことにした。
家を出て、コンビニに入ってカップラーメンを買って、帰ろうとした時、俺は今一番会いたくない人に会ってしまった。
目の前にいたのは七瀬だった。
64 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 21:08:11.12 ID:EjVEnkhT.net
「柊?」
「ひ、ひさ……」
久しぶり、そう言おうとして、口を止めた。椿が、俺として毎日七瀬とは会ってるんだ。久しぶりじゃおかしいな。
「ひさ?」
「いや、何でもない。それよりどうしたんだ、こんな時間に」
七瀬には夜遊びの癖はなかったと記憶している。それにそういうことをする奴でもないはずだ。
65 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 21:08:45.49 ID:EjVEnkhT.net
「柊こそ、何でこんな場所にいるの? あんたの家ここら辺じゃなかったよね」
「いや、ちょっと知り合いと会ってて遅くなったんだ。それでこの時間だと家族も寝てるから、ご飯でも買っておこうかと思って」
我ながら苦しい言い訳だ。俺にこんな時間まで一緒いる知り合いなんているんだろうか?
66 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 21:09:25.29 ID:EjVEnkhT.net
「ふーん」
七瀬は納得してないようだったが、俺は話を無理やり元に戻した。
「それより、七瀬は何で?」
「私は、その……」
七瀬は歯切れが悪そうに口ごもった。
「どうしたんだ?」
「家出したの。親とケンカしちゃってさ、家はこの近くだから、こっそり抜け出してきた」
「ケンカ?何で?」
「それはいいじゃん。それよりさ、少し話さない?」
いいわけがなかったが、このままではらちがあかないので、コンビニの裏の道の縁石に座って、少し話をすることにした。
67 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 21:11:00.20 ID:EjVEnkhT.net
「最近あんたさ、無理してない?」
七瀬から聞かれたその言葉に俺はドキッとした。まさか椿との入れ替わりがバレたのか?
「無理?」
俺はできるだけ平静を装って聞き返した。
「うん、無理…… 一ヶ月前さ私が絡まれてる時、助けてくれたじゃん。あの時さ、すごい嬉しかったんだよね。
だってさ二ヶ月前、せっかくまた会えたのに、柊はそっけなくてさ。私のことなんてもうどうでもよくなっちゃったのかなって悲しかったんだ。
だから柊が、また私を助けてくれて本当に嬉しかった。やっぱり柊は変わってないんだなって。
でも、最近のあんたはなんか無理してる気がする。
この一週間くらいあんたはよく私に話しかけてくれるようになったけどさ、なんか別人みたいで、もしかして私のこと鬱陶しく思ってないかなって不安で……」
「そんなことないさ」
俺はいつの間にか、七瀬の言葉を遮って返事をしていた。
68 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 21:11:46.03 ID:EjVEnkhT.net
「俺は七瀬とまた話せて嬉しいよ」
これは本当の気持ちだ。この一週間、椿がどう思って七瀬に接していたかはわからない。
けど、少なくとも俺はまた七瀬に会えて嬉しかった。同時に怖くもあったけど。
「そっか……それならいいけど……」
「それより、何で家出したのか話してくれないか。こんな時間に外にいたら危ないし、もし家に帰りたくないなら、俺の家に……」
そう言いながら俺は口ごもる。今、俺の家には椿がいるんだ。
69 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 21:12:34.06 ID:EjVEnkhT.net
「うん、ありがと……わかった、大丈夫だから。今日は家に帰るよ。柊と話したら少し楽になった。ケンカの理由は今は言えないけど、いつか話すから」
「そうか、なら良かった。話してくれるまで待ってるよ」
「やっぱ変わんないね、柊は」
「そんなことないさ」
「そんなことあるよ。おせっかいで、優しくて、いつも私を助けてくれる」
「七瀬の力になれたのなら嬉しいよ。それに、さっき言ったことも、本当のことだから」
いつもなら言えないはずの言葉が自然と口から出た。
椿と入れ替わって人と話すのに慣れたからだろうか。それとも相手が七瀬だからか。多分後者だ。
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