ドッペルゲンガーと人生を交換した話
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127 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:01:48.59 ID:EjVEnkhT.net
「これが僕の人生です。どうですか?面白かったですか?」
俺はしばらく声を出せなかった。
何を言っていいのかわからなかった。
128 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:02:39.60 ID:EjVEnkhT.net
「嘘だ」
やっと出た言葉は、とても小さい声で、聞こえるか、聞こえないかくらいのものだった。
「嘘じゃないですよ。逆に他に何か思いつくんですか、僕達が似ている理由」
「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ」
「ちょっと、落ち着いて、柊」
そういった七瀬の声も震えていた。
129 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:03:01.10 ID:EjVEnkhT.net
「落ち着けるわけないだろ。こんなの、嘘だ……」
つい声を上げる。
「何回も言わせないでくださいよ。これは真実です。さっき言ったでしょ、僕はあんまり嘘をつかないって」
「こんなの、嘘だろ。なんで、じゃあ俺が生きてきた、十五年はなんだったんだ。お前の模倣なのか。お前が、生きてきた道をただ、たどってきただけなのか」
それは、あまりにも残酷なことだった。
130 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:03:35.44 ID:EjVEnkhT.net
「そうなんじゃないですか。所詮あなたはコピーなんですよ、僕の。貴方初めて会った時言いましたよね、お前はドッペルゲンガーなのか?って。
その時僕言いましたよね、違います、と。繰り返し言いますけど、僕は嘘をあまりつかない。僕がドッペルゲンガーなんじゃない、貴方がドッペルゲンガーなんですよ、僕の。
だから僕は生き残るために貴方を消さなくてはいけない。自分を証明するために」
「じゃあ、まさかあの看板は」
「そうですよ、僕が落としました。貴方を殺すために」
「なっ……」
「まぁ、失敗しましたけどね。貴方も運がいいですよね。まさかあんな寂れた所に、人が通りかかるとは。あっ、知ってますか? 自分の顔をしたやつを殺そうとするのって、結構神経すり減るんですよ」
131 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:03:56.03 ID:EjVEnkhT.net
「どうして……どうしてそんな……」
「どうしてって、許せないからですよ、貴方が柊 京介でいることが、その席に座るべきなのは僕だ」
「そうか……もういいよ……疲れた。勝手にすればいい。どうせ俺はコピーなんだろ。ドッペルゲンガーなんだろ。確かに、消えるべきは俺だ」
もう俺はなにも考えたくなかった。
俺の十五年は。全部決められたコピーだったんだ。そこに俺の意思はなかった。俺に存在する意味はなかったんだ。
132 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:04:22.38 ID:EjVEnkhT.net
「そうですか、よかった、思ったより物分かりいいですね。その通り、貴方はコピーなん……」
「そんなことない!」
椿の言葉を遮ったのは七瀬だった。
「あんたは、柊はコピーなんかじゃない。だった、あんたは私を助けてくれた、何回も、何回も。ねぇ、覚えてる? 私の名前。あんたが意味をもたせてくれた、私の名前」
名前……クリスティーナ……
133 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:04:41.31 ID:EjVEnkhT.net
七瀬クリスティーナ千由。
これが私の名前。アメリカで生まれた私には、クリスティーナというミドルネームがあった。
両親はどっちも日本人だったけど、アメリカで暮らすのに不自由がないようにと、つけられた名前だった。
「これが僕の人生です。どうですか?面白かったですか?」
俺はしばらく声を出せなかった。
何を言っていいのかわからなかった。
128 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:02:39.60 ID:EjVEnkhT.net
「嘘だ」
やっと出た言葉は、とても小さい声で、聞こえるか、聞こえないかくらいのものだった。
「嘘じゃないですよ。逆に他に何か思いつくんですか、僕達が似ている理由」
「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ」
「ちょっと、落ち着いて、柊」
そういった七瀬の声も震えていた。
129 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:03:01.10 ID:EjVEnkhT.net
「落ち着けるわけないだろ。こんなの、嘘だ……」
つい声を上げる。
「何回も言わせないでくださいよ。これは真実です。さっき言ったでしょ、僕はあんまり嘘をつかないって」
「こんなの、嘘だろ。なんで、じゃあ俺が生きてきた、十五年はなんだったんだ。お前の模倣なのか。お前が、生きてきた道をただ、たどってきただけなのか」
それは、あまりにも残酷なことだった。
130 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:03:35.44 ID:EjVEnkhT.net
「そうなんじゃないですか。所詮あなたはコピーなんですよ、僕の。貴方初めて会った時言いましたよね、お前はドッペルゲンガーなのか?って。
その時僕言いましたよね、違います、と。繰り返し言いますけど、僕は嘘をあまりつかない。僕がドッペルゲンガーなんじゃない、貴方がドッペルゲンガーなんですよ、僕の。
だから僕は生き残るために貴方を消さなくてはいけない。自分を証明するために」
「じゃあ、まさかあの看板は」
「そうですよ、僕が落としました。貴方を殺すために」
「なっ……」
「まぁ、失敗しましたけどね。貴方も運がいいですよね。まさかあんな寂れた所に、人が通りかかるとは。あっ、知ってますか? 自分の顔をしたやつを殺そうとするのって、結構神経すり減るんですよ」
131 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:03:56.03 ID:EjVEnkhT.net
「どうして……どうしてそんな……」
「どうしてって、許せないからですよ、貴方が柊 京介でいることが、その席に座るべきなのは僕だ」
「そうか……もういいよ……疲れた。勝手にすればいい。どうせ俺はコピーなんだろ。ドッペルゲンガーなんだろ。確かに、消えるべきは俺だ」
もう俺はなにも考えたくなかった。
俺の十五年は。全部決められたコピーだったんだ。そこに俺の意思はなかった。俺に存在する意味はなかったんだ。
132 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:04:22.38 ID:EjVEnkhT.net
「そうですか、よかった、思ったより物分かりいいですね。その通り、貴方はコピーなん……」
「そんなことない!」
椿の言葉を遮ったのは七瀬だった。
「あんたは、柊はコピーなんかじゃない。だった、あんたは私を助けてくれた、何回も、何回も。ねぇ、覚えてる? 私の名前。あんたが意味をもたせてくれた、私の名前」
名前……クリスティーナ……
133 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:04:41.31 ID:EjVEnkhT.net
七瀬クリスティーナ千由。
これが私の名前。アメリカで生まれた私には、クリスティーナというミドルネームがあった。
両親はどっちも日本人だったけど、アメリカで暮らすのに不自由がないようにと、つけられた名前だった。
134 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:05:38.05 ID:EjVEnkhT.net
アメリカではみんな、クリスと私を呼んだ。
この名前は別に嫌いじゃなかった。でも、日本に来てこの名前は枷になった。
日本の学校に転校して、その時も私は、このクリスティーナという名前を特に隠すことはしなかった。
でも、この名前は日本では普通ではないらしく、私はからかわれた。変なの、と。
それから私はこの名前が嫌いになった。
135 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:06:02.68 ID:EjVEnkhT.net
その後も、私は学校に馴染めなかった。
それも当然か、名前をからかわれた日から、私はずっとむすっとした顔で、誰とも話さなかった。誰に話しかけられても、先生も、学級委員の子も、私にしつこく話しかけてくる男の子にも。
本当に可愛くない子供だったと思う。
136 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:06:56.73 ID:EjVEnkhT.net
ある日、また名前をからかわれることがあった。
確か相手は隣のクラスの子達で、アメリカからきた珍しい私を見に来たとかだった気がする。
それで、その子達に、変な名前と言われた。
私は多分、泣きそうな顔をしてたと思う。
でも、それを必死に隠すように、むすっとした顔をしていたんだろう。
あと少しで本当に泣いてたかもしれない。
でも、私が泣くことはなかった。私が泣く前に、私のヒーローが私を助けてくれた。
137 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:07:20.10 ID:EjVEnkhT.net
「変じゃないよ。かっこいいじゃん。クリスティーナ」
彼はそう言った。私にしつこく話しかけ続けてた男の子、柊 京介。
ずっと無視してたのに、それなのに彼は私を助けてくれた。
私の名前をかっこいいと言ってくれた。
この日自分のクリスティーナという名前を、私は大好きになった。
そしてその日から彼が私のヒーローになった。
138 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:07:55.34 ID:EjVEnkhT.net
「ねぇ、覚えてるでしょ、私の名前。クリスティーナ。
あの日、私はあんたのおかげで、この名前をまた好きになることができた。
それは、あんただからできたこと、あんたにしかできなかったこと。
だからあんたは、絶対にコピーなんかじゃない」
「七瀬……」
忘れるわけがない。
俺と七瀬をつなげてくれた名前。
139 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:08:18.25 ID:EjVEnkhT.net
「いやー面白いですね。クリスティーナ、そんな名前でしたね。僕も呼びますよ、クリスティーナ」
椿が笑いながら言った。
「違う、貴方じゃない。この名前を好きにさせてくれたのは、貴方じゃない。好きにさせてくれたのは柊 京介よ」
「だから、言ってるでしょ。僕も柊 京介だったんですよ。いや、僕が柊 京介なんだ。そいつはただのコピーだ」
「違う、コピーなんかじゃない。私にとっての柊 京介は貴方じゃない」
140 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:09:00.92 ID:EjVEnkhT.net
「そうですか、わかりました。じゃあ、ゲームをしましょうか」
「ゲームだと、この状況でお前はふざけてるのか」
何を言っているんだこいつは、わけがわからなくて、つい聞き返してしまった。
「いえ、真剣ですよ。ふざけるわけがないでしょう。僕は今、ムカついているんですよ。僕の席にお前が座っていることが。許せない。
だからゲームをするんだよ。僕かお前か、どっちが柊 京介かを決めるゲームを」
その声は俺が聞いてきた中で一番真剣で、一番怒りがこもった声だった。
141 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:10:02.69 ID:EjVEnkhT.net
「ちょうどいいことに、今、僕と貴方の格好は一緒です。制服のワイシャツもズボンも僕達のは完全に同じだ。だから七瀬さんに決めてもらいましょう。どっちが柊 京介か」
「どうやって?」
椿が何をしたいのかがわからなかった。
142 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:10:46.40 ID:EjVEnkhT.net
「簡単なことですよ。今から五回連続、七瀬さんにはどっちが貴方かを当ててもらいます。もちろん一言も喋らずに、見た目だけで。できますよね、こいつが柊 京介だと言うのなら」
そんなのできるわけがない。俺達の見た目は完全に一緒だ。それを見分けるなんて不可能だ。
「いいよ」
七瀬は涼しそうにそう言った。
143 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:11:05.75 ID:EjVEnkhT.net
「なっ……」
「じゃあ始めましょうか」
「待て! できるわけがないだろう、そんなこと。無理に決まってる」
「柊、信じて私を。私はわかる、絶対に」
七瀬は俺の目を真っ直ぐ見て、そう言った。
そんな目で見られたら、言い返すことはできない。
144 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:11:33.45 ID:EjVEnkhT.net
でも……それでも七瀬にそんなことをさせたくはなかった。だから俺は止めるように声を出した。
「でも……」
「大丈夫だから、ね」
七瀬にそんな顔をされたら、了承するしかなかった。
「わかった」
「決まりですね、じゃあ、少し後ろを向いていてください」
そう言われて、七瀬は後ろを向いた。
145 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:11:56.72 ID:EjVEnkhT.net
「じゃあ始めましょうか」
俺達は横並びになった。どっからどう見ても、同じ人間が二人いるようにしか見えないだろう。これを見分けるなんて……
「右」
七瀬は振り向いてすぐにそう言った。正解だった。
146 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:12:21.14 ID:EjVEnkhT.net
「当たりですね。まぁ、一回目ですからね。じゃあ、もう一度後ろを向いてください」
椿は飄々とした顔でそう言った。
そうだ、まだ一回目だ。
でも今ので俺の心はもう決まっていた。七瀬が俺に信じてと言ったんだ。それなら俺はただ七瀬を信じるだけだ。たとえ結果がどうなろうと。
147 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:12:45.68 ID:EjVEnkhT.net
「じゃあ二回目、どうぞ」
「右」
また即答だった。正解だ。
「当たりです。偶然ってすごいですね。それでは、また後ろを向いてください」
椿の顔にはまだ余裕が感じられた。
148 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:13:36.49 ID:EjVEnkhT.net
「三回目、どうぞ」
「左」
「なっ……」
椿の顔に焦りが見え始めていた。
「その反応ってことは、正解みたいね。じゃあ次やりましょう」
七瀬はいつも通りの表情で余裕を持っていた。
「くっ……」
反面、椿にはもう余裕はなさそうだった。
149 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:14:00.73 ID:EjVEnkhT.net
「四回目、どうぞ」
「右」
また正解だ。七瀬は本当に俺がどっちだかわかるのか?どうして?
「…………」
椿はもう何も言えないようだった。
「正解みたいね。じゃあ最後やりましょうか」
そう言って七瀬は後ろを向いた。
150 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:15:07.28 ID:EjVEnkhT.net
「五回目、どうぞ」
椿の声は震えていた。
七瀬は振り向くと、少しの間、黙って動かなかった。やっぱり、わからないのだろうか。
俺がそんな風に思っていると、七瀬は前に進んできた。
151 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:15:36.74 ID:EjVEnkhT.net
そして、俺達の目の前までくると、少し止まって、そのあと、俺にキスをした。
152 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:16:31.12 ID:EjVEnkhT.net
時間が止まっているようだった。
一秒が無限に感じられた。
153 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:16:48.58 ID:7aNrB6uZ.net
はよ
154 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:16:49.54 ID:EjVEnkhT.net
「なっ、どうして、なんでわかった」
椿が焦りを隠さない声で、叫んでいるのが聞こえた。
「私の勝ちみたいね。だから言ったでしょわかるって」
七瀬は俺から離れると、まるで当然の結果のようにそう言った。
155 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:17:25.64 ID:EjVEnkhT.net
「なんで、わかるはずがない、どっからどう見ても一緒のはずだ」
椿が叫ぶ。
「違う、一緒じゃない。この世に柊 京介は一人しかいない。わからないわけがない。ちょっと顔が似ているくらいで、わからなくなるわけないでしょ。優しくていつも私を助けてくれる、私が大好きな柊 京介はあんたよ」
俺の方を見て、七瀬はしっかりとした声で言った。
156 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:18:47.50 ID:EjVEnkhT.net
「七瀬……」
「ねぇ、柊、あんたはコピーなんかじゃない。私の名前を大切なものにしてくれたのも、私の手を引いてくれたのも、全部あんた。この世で一人だけの、あんたなの。私が大好きなのはあんたなの。
それでもまだ不安なら、私が証明する、どこにいても何をしていても、あんたはあんただって、私が証明する。あんたの存在を私が証明し続ける。
これでもまだ不満?」
157 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:20:04.46 ID:EjVEnkhT.net
七瀬がここまで言ってくれたんだ、不満なわけがなかった。十分すぎるくらいだ。
「いや、ありがとう……七瀬」
そうだ俺はここにいる。ここにいる俺の、七瀬が好きという気持ちは、俺だけのものだ。
七瀬が証明してくれたことを、誰にも否定なんかさせない。
158 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:20:28.79 ID:EjVEnkhT.net
「そんな……どうして……」
椿が枯れたような小さい声で呟いた
「どうして、どうして僕じゃないんだ。なんでお前なんだ。何が違うんだよ。お前と僕の。どうして……」
そう叫んだ椿の体が、徐々に透明になっていた。
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