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ドッペルゲンガーと人生を交換した話
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88 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 21:29:45.71 ID:EjVEnkhT.net
「どうして、なんで入れ替わりなんかしたの?」

七瀬が冷静さを欠いた声で、俺に聞いた。

本当は答えたくない。

でも、俺は答えなくてはいけない。

七瀬に嘘はつきたくない。


89 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 21:30:51.65 ID:EjVEnkhT.net
「嫌だったんだ。変わってしまった自分が。七瀬と昔のように話したいのに、変わってしまった自分を見られるのが怖くて話せない自分が。

そんな時、椿に出会った。椿は、俺に入れ替わりを持ちかけてきた。それで、椿が俺になれば、なんとかしてくれるんじゃないかと思った。

だから入れ替わりを受け入れた。

だけど、多分心のどこかでは、七瀬との問題を椿に任せるのが嫌だったんだろうな。俺は椿に七瀬のことを教えなかった。そんな矛盾をもったまま入れ替わりを続けてたんだ、俺は。

でも昨日七瀬と話して、やっと気づいた。俺は七瀬の力になりたい。

そしてそれは、椿になんとかしてもらった柊 京介じゃなくて、俺が、俺自身がなんとかしたいって……」

俺は全部を話した。自分が思っていること、全部を。


90 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 21:31:19.09 ID:EjVEnkhT.net
「……バカ」

七瀬のその言葉に、棘はなかった。

「そんのことしなくたったって……私は……」

その声はとても優しくて、俺を包み込んでくれるような暖かいものだった。


91 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 21:31:55.97 ID:EjVEnkhT.net
「あのー、甘い雰囲気出すのやめてもらっていいですか?」

椿の言葉で、俺は現実に戻った。

「そろそろ、話を戻しましょうか。何故、貴方と僕が似ているか」

「ああ、教えろ。偶然じゃないのか?」

「何度も言わせないでくださいよ。本当に馬鹿なんですか?」

「いい加減にしろよ。早く話せ」

もう俺の椿に対する感情は、嫌悪感しかなくなっていた。




92 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 21:32:32.49 ID:EjVEnkhT.net
「そうですね、まぁ、その前に貴方さっき、僕が命を狙われていると言いましたね」

「あぁ、俺は、だから俺を身代わりにするために、入れ替わりを持ちかけたと思っていた」

「それですね、まず、それ、さっきも言いましたが、完全に的外れ、見当違いもいいところだ。むしろ命を狙われているのは貴方の方ですよ」

「俺? なんで俺が?」

「昨日のその看板、落とした人は僕ではなく、貴方が柊 京介だと認識した上で、貴方を殺そうとした」

「だからどうして?」

この前も言ったが、俺に命を狙われる心当たりなんて一つも……

「それじゃあ話しましょうか。僕と貴方が似ている理由」


93 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 21:33:06.04 ID:EjVEnkhT.net
こいつは何がしたいんだ?どんどん疑問を増やされる。それでも、俺はただ聞くしかないこいつの話を。

そしてそれは七瀬も同じのようだった。

二つの視線が椿に集まる。


94 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 21:34:06.54 ID:EjVEnkhT.net
「僕は一週目の貴方です」

「は?」

こいつは何を言っているんだ。どういう意味だ。ふざけてるのか?

「はは、冗談ですよ」

「と言うとでも思いました? 冗談じゃないですよ、何度でも言いましょうか? 僕は一週目の貴方です、柊 京介」


95 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 21:35:21.08 ID:EjVEnkhT.net
意味がわからない。話が見えてこない。

「最初に会った時も言ったでしょ、僕は貴方ですって。僕、あんまり嘘つかない方なんですよ」

駄目だやっぱりわからない。何を聞いたらいいかもわからない。一週目ってなんだ。

俺の頭の中は、疑問符で埋め尽くされていた。

それをおかまいなしに椿は話し始めた。

一週目とやらのことを。


96 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 21:38:28.25 ID:EjVEnkhT.net
僕は独りだった。

小学生の頃はまだよかった。たまに、友達と遊んだりした記憶もあるし、少しは社交的だったと思う。

けど中学生になってからは全然駄目だった。

人との喋り方がわからなくなっちゃたんだ。


97 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 21:39:31.96 ID:EjVEnkhT.net
中学生の頃の僕は本当、酷かったと思うよ。

学校では毎日、ずっと時計を見て、早く時間が過ぎないかなと思ってた。

学校っていうのはさ、友達がいない人のためにできてないんだ。

友達がいない人はどうやったって、不幸になる仕組みなんだよ。


98 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 21:39:51.89 ID:EjVEnkhT.net
そしてそれは、高校生になっても一緒だった。

中学の時点で、僕の性格はほぼ固まってしまったからね。人と話すのが苦手になってたんだ。

それが高校生になった途端、急になおるなんてことはありえなかった。

僕はずっと独りだったよ。

そう、いつでも。


99 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 21:40:38.18 ID:EjVEnkhT.net
さぁ、ここで、一人の女の子の話をしておこうかな。

その子は僕が小学生の時、転校してきたんだけどさ、一目見た瞬間に、僕はその子のことしか考えられなくなるくらい、彼女に惹かれていた。

一目惚れってああいうことを言うんだろうね。




100 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 21:41:04.34 ID:EjVEnkhT.net
その子は、いつまでもクラスに馴染めなかった。

彼女は少しは異質だったからね、小学生の僕達はその異質な少女を、受け入れることができなかったんだ。

それは、僕も例外ではなかった。僕は彼女に話しかけることができなかった。何回かチャンスはあったと思う。でも話せなかった。

小学生の仲間意識って怖いんだよ。僕が彼女に話しかけてたら、僕も異質として扱われてただろうね。

僕はそれを恐れた。彼女と話して、自分も異質になる勇気がなかったんだ。


101 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 21:42:26.95 ID:EjVEnkhT.net
そのまま僕は彼女と一度も話せないまま、僕は小学校を卒業した。

中学校も別々だったから、それから彼女に会うこともなかった。


102 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 21:42:48.60 ID:EjVEnkhT.net
そろそろ話を戻そうか。

えーと、そう高校の話だ。

高校生の僕は相変わらず独りだった。

それで、その高校で僕は運命の再会を果たしたんだ。


103 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 21:43:25.82 ID:EjVEnkhT.net
入学式でその子に再会したんだ。そして驚くことに、彼女は僕のことを覚えててくれたんだ。

それからはたまに彼女に会うと、少し話をするようになった。クラスは違かったから、あんまり会う機会はなかったけどね。

でも、僕にはそれだけで十分だった。クラスでは相変わらず独りだったけど、たまに彼女と話せるのが本当に楽しかったんだ。


104 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 21:44:55.63 ID:EjVEnkhT.net
それなのに僕は、やってはいけないことをやってしまったんだ。

彼女と再会してから一ヶ月たったころかな、下校中同じ制服を着た奴が他校の生徒に絡まれてるなと思ったら、その子だった。

かっこいいヒーローだったら、ここで彼女の手を引いて駆け出すんだろうね、きっと。


105 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 21:46:01.68 ID:EjVEnkhT.net
でも、僕はヒーロにはなれなかった。

逃げたんだ、僕は。走って、独りで逃げた。

去り際彼女と目があったんだ。その目はすごく悲しそうだった。


106 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 21:46:21.04 ID:EjVEnkhT.net
次の日から僕は学校に行かなくなった。

ずっと部屋に引きこもってたんだ。

それで、一ヶ月くらい過ぎたころかな、なんかもう全部がどうでもよくなっちゃってさ、僕は久しぶりに学校に行った。

親は喜んでたよ、笑っちゃうよね、僕が何のために学校に行くかも知らないでさ。


109 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 21:48:34.92 ID:EjVEnkhT.net
学校に着いたら僕はすぐ屋上に行った。なんかさ、決着をつけるならここだ、って思ったんだよね。

ずっと僕を苦しめてきた空間。ここしかないなって思ったんだ。

人生に決着をつけるならさ。

僕は屋上から飛び降りた。

そして死んだ……



>>次のページへ続く
 
カテゴリー:読み物  |  タグ:オカルト・ホラー,
 


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